『アイアムアヒーロー』最終22巻のネタバレ感想をレビュー。作者は花沢健吾。掲載誌はビッグコミックスピリッツ。出版社は小学館。ジャンルは青年コミックのゾンビ漫画。AmazonのKindleや楽天などでも試し読み・立ち読みが可能です。

今回のネタバレ感想は『アイアムアヒーロー』の最終22巻になります。Twitterで最終回について一言だけ触れましたが、割りと悪い意味で衝撃でした。この最終22巻のAmazonレビューを軽く見てみると、発売から数日も経たずに50以上の酷評で大荒れ状態。

そこで『アイアムアヒーロー』はどういう最終回だったのか、自分なりの考察も含めて簡単に触れたいと思います。


アイアムアヒーローの最終回をざっくりネタバレ


主人公・鈴木英雄はビルの屋上に逃げ込む。ZQN化した小田妹に助けられながら、なんとか生き延びる。そこでライフル銃のスコープで覗くと、数百メートル先にあるビル屋上にはヘリコプターと数人の人間。「選択ミスだったか」と少し後悔するものの、「どうせ操縦できなかったし」とすぐ受け流す。

このヘリポートに居たのは、もちろんクルスたちと中田コロリの一味。今まさに飛び立とうとしていたものの、クルスが本性を現す。そして一悶着。ここに割って入ったのが、数百メートル先にいた鈴木英雄。ライフル銃で応戦したことで、さらなる混沌に繋がる。

何やかんやがあって中田コロリたちはヘリコプターで飛び立とうとするものの、オバちゃんが巨大ZQNに食べられてしまう。でも中田コロリは必死に救い、一行は伊豆七島へ逃亡する。

アイアムアヒーロー22巻 最終回 オバちゃん若返り
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
最終回は、そこから一年後。ZQNたちは影を潜め、中田コロリたちは一種のコミュニティーを築き上げる。そこには中田コロリの子供をはらんだオバちゃんの姿。何故かZQNに取り込まれた直後、オバちゃんはどんどん若返っていった。

アイアムアヒーロー22巻 最終回 中田コロリ
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
中田コロリは子供たちに囲まれながら、ひたすら漫画だけを描いていた。いつか鈴木英雄と再び再会したときに恥ずかしくないように。まさに漫画の天才・中田コロリ。

しかし鈴木英雄は東京に一人孤独にポツンと過ごしていた。ZQNたちは跡形もなく消えてしまったが、都会はジャングル化。野生動物が溢れかえっていた。それ故に食糧にはあまり困らなかった鈴木英雄。

アイアムアヒーロー22巻 最終回 ハゲた鈴木英雄
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
ただ鈴木英雄の頭はゴリゴリの不毛地帯。無事生き残ったものの、ひたすら孤独。「かかってこいよ…俺の人生…」という強がりも虚しく響く。そして、都会の中でで鈴木英雄の孤独で無様な人生が始まる。

以上、最終22巻の内容をざっくりネタバレするとこんな感じです。正直サラッと読み流した直後に抱いた感想を一言で片付けると、うーんイミフ?www


ZQNの正体は落伍者たちの反逆と復讐


だから最終回まで読んでも結局ZQNが何故発生したのかといった、これまでの伏線やナゾが明らかになることはありません。海外でも奇行ZQNがいましたが、一体何だったんでしょうか。確かに荒れるのもうなずける最終巻。

でも、そこで終わっても面白くないので個人的にいろいろと考察してみたいと思います。まずはZNQというか、クルスの正体。これに関しては明らかになります。

アイアムアヒーロー22巻 ZQNとクルスの正体とオチ
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
クルスは生まれたときから、ずっと寝たきりだった中年のオッサン。誰ともコミュニケーションを取ったことは一度もなく、一人で夢の中で生きてきた可哀想なヤツ。まさに「何のために生きているか分からない存在」の象徴。こいつの負のオーラに様々な落伍者が吸収されていった。

つまりZQNの正体は「落ちこぼれたちの反逆」みたいなオチなんだったと思います。


落ちこぼれにもなれなかった「本当の落ちこぼれ」が鈴木英雄


作中の言葉を借りると、ZQNとは「ウイルスは絶望状態の人間には希望の光となる」もの。崇たちは選ばれた「次世代の覇者」とも呼べる存在。どうしようもない弱者も連帯することで強くなる、というメッセージも込められてる。

ただ落ちこぼれの鈴木英雄はZQNになれなかった事実を考慮すると、そこにすら選ばれなかった本当の意味での落ちこぼれだったと言えるでしょう。本当に、主人公・鈴木英雄は最終22巻に至るまで、どうしようもないクズ。

アイアムアヒーロー22巻 鈴木英雄の誤射
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
例えば前述のライフル銃で応戦する場面では、まさかのZQNではなく勘違いして普通の人間を撃とうとする。状況の深刻さを考えたら、足を引っ張るというレベルではない。主人公・鈴木英雄は最後の最後まで役立たず。

何が悲しいのかって、この天下泰平のTシャツを着ているのが、漫画家時代に唯一優しく接してくれた中田コロリ。しかも鈴木英雄は「マスク付けて女とイチャイチャしやがって」と危機的状況でも嫉妬を全開。まさにクズ。そして鈴木英雄は最後の最後まで中田コロリだと気付かない、という。

これまで鈴木英雄は判断ミスの連続だった。一方、中田コロリは人気漫画を連載し続けただけではなく、ZQN討伐でもリーダーを務めたり仲間を救うなど要所要所で活躍。女とイチャコラという点でも、最終的に若返ったオバちゃんと何人も子供を作る。

まさに「勝ち組」と「負け組」の構図は人類滅亡の状況であっても変わらない、というまさに絶望的で残酷すぎるメッセージが込められてる。


最後までヒーローになれなかった英雄だが…


だから早狩比呂美との関係性も、最終的には不和のまま終わる。

アイアムアヒーロー22巻 早狩比呂美の復讐
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
早狩比呂美らしき意識が「この男は生きている方が勝手に苦しむから生かしておいて」と言う。そこに呼応するようにガチっぽい早狩比呂美が「生きて」と優しく畳み掛ける。結果的に鈴木英雄は生き延びるものの、それは早狩比呂美といった世のオンナたちからの復讐のようにも思えます。

だから実は『I am a hero(アイアムアヒーロー)』というタイトルも、「俺が世界中を救うヒーローですねん!」という強いメッセージ性は皆無。「a」は英語で「一つ」という意味がある不定冠詞。だから漫画タイトルを正確に解釈するなら、「僕はどこにでもいる一人の英雄(ひでお)」と考えるのが自然だったのかなーと思います。

アイアムアヒーロー22巻 鈴木英雄の一歩
(アイアムアヒーロー 最終22巻)
ただ最終回のオチも完全に一人になったことで、鈴木英雄はようやく「男としての第一歩」を踏み出せる。この降り積もる雪に付けた足跡で終わっているのが、何とも意味深ではないですか。どこぞの某宇宙飛行士ではないですが、「一人の人間にとっては小さな一歩だが、鈴木英雄にとっては大きな一歩」だった。

つまり『アイアムアヒーロー』という物語が完結して、そこで初めて鈴木英雄の物語が始まる。もちろん結末が面白かったかどうかはさて置き、少なくとも作者・花沢健吾は最初からこのオチを考えていたんだろうと推察されます。

たとえ世紀末に世界が陥っても、所詮は有能なイケメンが全てをかっさらっていく。一方、現在進行形で無能なクズは誰にとってのヒーローにもなれないという、救いがたく根暗で自虐的なアンチテーゼが『アイアムアヒーロー』という作品には込められていたのではないか。そう解釈すると、そこまで最終22巻はヒドい結末ではなかったのかも。良くも悪くも、何だかんだで花沢健吾的な作品に着地したオチと言えましょう。

でも、まあ、うん、『アイアムアヒーロー』は最初の1巻目のクオリティーがすさまじすぎました(笑)