『不滅のあなたへ』1巻のネタバレ感想をレビュー。作者は大今良時。掲載誌は少年マガジン。出版社は講談社。ジャンルは正直なんと表現していいかは分かりませんが、強いて言えばSF漫画の少年コミック。絶賛AmazonのKindleでもダウンロード購入・無料で試し読みが可能です。

『不滅のあなたへ』1話のネタバレ感想は「すごないマンガがすごい」で既にレビュー済み。最初の1話目ではどうなるか皆目見当がつきませんでしたが、やっぱりそこは作者の大今良時。2話目3話目としっかり作品として仕上げてきた印象。

最近、新刊の単行本コミックが発売されたということで、改めて『不滅のあなたへ』が面白いのかどうか考察してみました。


あらすじ物語 ストーリー内容

『不滅のあなたへ』1話目のネタバレ感想で既にあらすじは書いたようなもんですが、改めてバズマンでも軽くあらすじめいたものを説明しておきたいと思います。

主人公は得体の知れない「不死身のなにか」。最初は球体だったものの、それは徐々に苔から岩、そして極寒の地に生息するレッシオオカミに姿を変えた。最初は意思など持たなかった、それは次第に「意識」や「感覚」を獲得した。

どうやらそのレッシオオカミは飼い犬だったらしく、記憶を頼りに移動すると飼い主のもとへ辿り着いた。飼い主は一人きりで、村の住民たちの帰りを待っていたが、ついには自分も旅に出る。しかし願いも叶わぬまま死んでしまった。

不滅のあなたへ1巻 あらすじ
(不滅のあなたへ 1巻)
飼い主は「それ」に対して最期に言った。「僕のこと。ずっと覚えていて」。そして「それ」は今度は飼い主にカタチを変える。言語を理解したかどうかは疑わしいが、まるで飼い主の遺言を叶えるかのように旅に出る。

不滅のあなたへ1巻 あらすじ2
(不滅のあなたへ 1巻)
ただ「それ」は何の知恵や知識も持たず、言うまでもなく何の防衛策も持たない。途中で凶暴な熊に襲われたり、苛烈な環境に耐えきれず、何度も死んだ。何度も蘇った。痛みは「それ」を成長させた。

不滅のあなたへ1巻 あらすじ3
(不滅のあなたへ 1巻)
その過程で「それ」はある少女・マーチに出会う。果たして二人の出会いは「それ」に一体何をもたらすのか?といった内容のストーリー。1話目のレビューでも触れましたが、やはり『不滅のあなたへ』1巻を読み終わっても思うのは、テーマとしてはやや取っ付きにくくて観念的で難しいか。


マーチが可愛らしい

『不滅のあなたへ』の評価は1巻の段階で評価は難しいものの、現時点ではマーチのキャラクターが面白い。

不滅のあなたへ1巻 マーチ1
(不滅のあなたへ 1巻)
マーチは大人に対する強い憧れを持つ。小さい子供だとありがち。画像はマーチが食事中に父親と母親に詰め寄ってる場面ですが、口に食べ物がわんさか。いかにも幼児らしい。

不滅のあなたへ1巻 マーチ2
(不滅のあなたへ 1巻)
そこで父親は「大人しくしないと大人になれないんだぞ。大人だけにな」と小ボケをかますと、マーチは「なにそれいみわかんなーい」と言ってケラケラ笑い出す。思わず母親も「この子が大人になるのが想像できないわ」。

『不滅のあなたへ』をもう少しネタバレしておくと、マーチは村の掟に従って生け贄にされる。オニグマという凶暴な熊が村や畑を襲ってくるため、誰かの命を捧げることで平和を保とうとする。日本でもかつては洪水や天災を回避しようと犠牲になった村人もいます。いわゆる「人身御供(ひとみごくう)」とか呼ばれるもの。

不滅のあなたへ1巻 マーチ3
(不滅のあなたへ 1巻)
言ってしまえば、しょうもない宗教儀式や土着信仰ですが、マーチにとってみたら「死にたくないんだけど」と断固拒否。「だから死にたくないんだけど」と何度も拒否するものの、それを頑なに拒否される。マーチの無表情が良い。

そしてしまいには「なんでマーチのことかってに決めるのよ!!」と殴りつける。まさに激情の塊。それ故に儀式が始まる前に逃亡することに成功し、その後にあらすじでも説明した「何か」に出会う。言語すらまともに理解できない「何か」と、激情的な幼女の組み合わせ。嫌な予感しかしません。

不滅のあなたへ1巻 マーチ4
(不滅のあなたへ 1巻)
甘い果物をめぐって、まさかの大げんか。このマーチの泣き顔。

ただ立場ではやはり知性に勝るマーチが上。木の上に成る甘い果物を取ってこれるのはマーチだけ。地上だと体格差から奪われてしまうので、木の上からぽいぽいと果物を投げつける。それがマーチにとっては心地良い。

不滅のあなたへ1巻 マーチ5
(不滅のあなたへ 1巻)
そして、このマーチの勝ち誇った表情よ。さっきまでの泣き顔どこ行ってん。『聲の形(こえのかたち)』で登場した永束(ながつか)がフラッシュバックしたのはきっと自分だけではないはず。

不滅のあなたへ1巻 マーチ6
(不滅のあなたへ 1巻)
結果、「何か」はマーチを餌をくれる人と理解して、マーチがどこへ行こうとも付いていく。そこでマーチは「もうマーチはあんたのママじゃないんだからね」とすっかり母親顔。ただ最終的に再びマーチは囚われてしまう時にも、「何か」に対して「じゃあママ行くね。なんちゃってありがとう」と言って立ち去る場面も泣かせます。

短い期間ではあったものの、マーチの成長も読み取れます。


手塚治虫の「火の鳥」のように周囲の人間を描くことで…

『不滅のあなたへ』の話の構成をネタバレしておくと、主人公の得体の知れない「何か」がストーリーを動かしていくというよりかは、その「何か」を中心として周囲の人間が主体的に動いていく感じなんだと思います。少なくとも序盤においては。

だから手塚治虫の『火の鳥』と比較されることもあるそう。実際、『火の鳥』も同様に「不死身の不死鳥(火の鳥)」を軸として、その周囲の人間の葛藤や悩みを描写することに焦点が当たってるなど、あらすじやストーリー構成は『不滅のあなたへ』と似てる。

『不滅のあなたへ』の2話目以降から登場するマーチという少女は、前述のように村の掟に従って人柱として「生け贄」にされそうになるものの、マーチは幼いながらも残酷な運命や理不尽な世の中に抗おうと立ち向かう。

そこからは人間が持つ力強さやダイナミズムが読み取れます。マーチは幼いからこそ、その意思は純粋であり真っ直ぐだからこそ、シンプルに読者の心に響くもんがあります。

不滅のあなたへ1巻 ヤノメの国の女
(不滅のあなたへ 1巻)
ストーリーをネタバレしておくと、結果的に「何か」の助けによってマーチは生け贄にならず済む。そしてヤノメの国へ舞台を移す。もちろん「何か」はただ進行上は流されてクッついていくだけで、最終的に「死ぬか生きるか」という運命や人生を決断していくのはマーチやパロナ(隣の女)。

もし『火の鳥』をモチーフにしているのであれば、あくまでマーチも数多くいるキャラクターの一人であり、今後は様々なキャラクターの人生模様が「何か」を軸に展開されていく可能性はありそう。それ故に『不滅のあなたへ』は壮大なスケール感を伴った作品になるのではないかと期待されています。

不滅のあなたへ1巻 言葉を覚えるそれ
(不滅のあなたへ 1巻)
『火の鳥』との違いを強いて挙げるとしたら、『不滅のあなたへ』の「何か」は成長を見せること。画像は「何か」が言語を一つ覚えた場面。火の鳥は時空も時代も飛び越えるような、まさに神のような存在。

ただ「何か」は不死身ではあるものの、脆弱そのもの。いや脆弱というと語弊があるか。実際レッシオオカミの姿で巨大な熊を倒してるわけですから。「何か」が不死であること、成長を見せること、様々な姿にカタチを変えること。

それらが展開にどう反映され活かされていくのか、ってのが『不滅のあなたへ』が面白くなるか面白くならないかカギを握ってそうです。


「不滅のあなたへ」の総合評価 評判 口コミ


『不滅のあなたへ』のネタバレ感想をまとめると、正直評価はしにくい。少年マガジンだから打ち切りはないと思いますが、どこがどうめっちゃ面白いかは説明しづらい。

やはり作者・大今良時は才能溢れた漫画家さんであることを誰しも疑う余地はなく、自ずと『不滅のあなたへ』も期待を持てるマンガだと思うんですが、それでもストーリーのゴールが見えない。これを言い換えると、「どんな風に面白くなっていくのか?」が良くも悪くも読めない。

だからどういう風におすすめすればいいかも難しい。この考察レビューでこそマーチのキャラをホメてみましたが、もちろんそこが決してメインとなるようなマンガでもないはずなんです。それ故に『不滅のあなたへ』は完結してようやくどうだったか評価できる…いや完結したところでどう面白いかを説明するのも難しい漫画だと思います。

不滅のあなたへ1巻 アクション描写2
(不滅のあなたへ 1巻)
もちろん最終回を迎えるまでもなく現時点でもアクション描写などが非常に卓越してて、絵的にも読み応えはあるので『不滅のあなたへ』を買って損はしない気がします。