『惑星のさみだれ』全10巻のネタバレ感想。作者は水上悟志。ヤングキングアワーズ(少年画報社)で連載してたファンタジーバトル漫画。漫画タイトルの読み方は「ほしのさみだれ」。

2月初め頃にリクエストがありましたのでレビュー。既に所有しているマンガであれば比較的すぐ感想を書けますが、当然自分が所有してないマンガの方が多いですのでアマゾンギフト券をプレゼントしてもらえたら色々とはかどります。

そういえば作者・水上悟志は『スピリットサークル』とか書いてる人なんですね。今後はレビューを増やすかも知れません。予定は未定ですが。

あらすじ

惑星のさみだれ1巻 ビスケットハンマー
(惑星のさみだれ 1巻)
悪の魔法使い・アニムスは宇宙空間にビスケットハンマーなる武器を発動。今まさに地球に落とされようとしていた。

惑星のさみだれ7巻 泥人形 ピュアノプシオン
(惑星のさみだれ 7巻)
アニムスは泥人形と呼ばれる12体の敵を次々と地球に送り込んでくる。画像はピュアノプシオンと呼ばれる泥人形。

惑星のさみだれ2巻 泥人形
(惑星のさみだれ 2巻)
コンビニで立ち読みしているとコンニチワしてきたり、泥人形は神出鬼没。

惑星のさみだれ9巻 魔法使い アニムス
(惑星のさみだれ 10巻)
魔法使い・アニムスはこんなヤツ。手書きの文字はもっとおどろおどろしい方が良い。

主人公は大学生の雨宮夕日(あまみや ゆうひ)。ある日、人語を話すトカゲ(ノイ=クレザント)と出会い、「悪の魔法使い・アニムスから世界と姫・朝日奈さみだれを守るため貴公の力を貸して欲しい」と指輪の騎士に選ばれる。つまり漫画タイトルはヒロイン・朝日奈さみだれのことを指してる。

惑星のさみだれ5巻 朝日奈さみだれとアニマ様
(惑星のさみだれ 5巻)
その朝日奈さみだれは左。右は精霊アニマ。精霊アニマは雨宮夕日たちと契約をして能力を与えてる存在で、アニムスの双子の妹。ネタバレしておくと兄・アニムスの暴走を食い止めるために未来からやって来た。言ってしまえば、壮大な兄妹喧嘩がストーリーの根幹にあります。

そしてノイ=クレザントは雨宮夕日の従者となり、二人はパートナーを組む。「獣の騎士団」と呼ばれる組織として活動し、南雲宗一郎、白道八宵、風巻豹、星川昴、月代雪待、日下部太朗、宙野花子、茜太陽、東雲三日月たちも後から加わって共にアムニスに立ち向かう。

果たしてアムニスの暴走を雨宮夕日たちは止めることができるのか?みたいなストーリー。


掌握空域という超能力

精霊アニマと契約した指輪の騎士たちは「掌握空域」という特殊能力が使えるようになる。この掌握空域は超能力(念動力)の類いってことらしい。

惑星のさみだれ5巻 掌握空域 方天戟
(惑星のさみだれ 5巻)
画像は主人公・雨宮夕日の方天戟(ほうてんげき)という必殺技。「天の庭(バビロン)」などもあります。

惑星のさみだれ8巻 風巻豹の泥人形
(惑星のさみだれ 8巻)
風巻豹(しまき・ひょう)だと、泥人形を自ら生産することが可能。アニムス曰く、「魔法使いに最も近い人間」らしい。特に風巻豹のバトル描写は個人的に面白かったです。むしろ及第点はデブメガネの風巻豹ぐらい。

だから全体的には『惑星のさみだれ』は能力バトル要素が強い漫画とも言えそうです。


よく分かんないままストーリーは進む

ただ『惑星のさみだれ』の設定がいまいちよく分からないままストーリーが進む。

まず「地球を守ろう」という目標があるのに、何故か姫である朝日奈さみだれが「地球を壊そう」とする。また「朝日奈さみだれを守れ」という目標もあるのに、朝日奈さみだれはそもそも強い。守る意味ないやん。

実は朝日奈さみだれは重病。いつ死んでもおかしくない。でもアニマに姫として選定されたことでパワーを得てめっちゃ強くなる。ただアニムスを倒してアニマの目標が達成されると、朝日奈さみだれは普通の人間に戻る。つまり悪の魔法使い・アニムスを倒すことは、「朝日奈さみだれ死亡」に直結する。

じゃあ朝日奈さみだれもアニマに頼んで、自分の病気を根治してもらえばいいはずなんですが、何故かそれをしない。地球を壊そうというゴールに無理やりこじつけようとしたんでしょうが、これも意味不明。しかもオチをネタバレしておくと、朝日奈さみだれはフランスで手術して普通に病気が治る。えーーーー!!!

トカゲのノイ=クレザントも何故記憶喪失だったのかも意味不明。ツッコミどころというのか、腑に落ちない箇所や気になる部分をあげつらうとキリがない。

バトル面でも何故泥人形を倒せたのかという納得感がなく、いつもフワッとモヤッと終わる。3巻だと泥人形との戦いで東雲半月が雨宮夕日をかばい死亡。このことがキッカケで泥人形と戦えなくなる。結果的にそれを雨宮夕日は克服する。

ただ雨宮夕日がトカゲのノイ=クレザントに対して唐突に「俺を頼れ!」と叫んで震えも唐突に止まる。え?意味不明。そもそも主人公・雨宮夕日の性格からして、都合良く、ビビりキャラになったり男前キャラになったり不遜なキャラになったり安定感はない。表情を描く力があるだけに、余計に変な違和感を抱きました。

惑星のさみだれ6巻 宙野花子
(惑星のさみだれ 6巻)
せいぜい腑に落ちたのは宙野花子のバトルぐらいかなー。幼なじみの日下部太朗が亡くなったことで覚醒したという王道パターンではありますが、読後感としてはスッキリいきました。

雨宮夕日が朝日奈さみだれにホレた理由など、ストーリーの重要な根幹部分も納得いかないままズンズンとお話だけが進んでいく。置いてけぼり感がハンパなく、正直こういうブログを運営してなかったら1巻2巻で挫折してたはず。


オチはそれっぽく熱い

ただ『惑星のさみだれ』はラストにかけてのオチはそこまで面白くないってことはありません。むしろアクション描写やバトル描写も増えて、やや面白い部類に入るかも知れません。

惑星のさみだれ10巻 オチ 朝日奈と雨宮夕日
(惑星のさみだれ 10巻)
主人公・雨宮夕日と朝日奈さみだれのクダリや、

惑星のさみだれ10巻 オチ 雨宮夕日とノイ
(惑星のさみだれ 10巻)
これまで共に戦っていたトカゲのノイ=クレザントのクダリなど、大オチはよく分からんなら分からんなりに、それっぽく熱くて感動的な終わり方を迎えています。まさに大団円というヤツか。

またバトル描写やアクション描写を惜しみなく描かれるので、いかにも「ラストバトル」といった雰囲気で面白く楽しめます。伏線も回収されているはずですので、読後感としては不思議とものすごくスッキリ。少なくとも、モヤモヤしたような気持ち悪い終わり方はしない。

惑星のさみだれ10巻 茜太陽
(惑星のさみだれ 10巻)
ラストは大学生になった茜太陽など、サブキャラクターたちのその後のエピソードが描かれて余韻が残る終わり方にもなってます。ちなみに全体を通して、茜太陽の心理描写が比較的マシでした。他にも白道八宵が風巻豹が結婚するなど、意外なエピローグ感が満載。


総合評価


『惑星のさみだれ』の感想としては、全体的には「それっぽい」だけのマンガ。設定は荒唐無稽でもオッケーだと思いますが、変に複雑奇怪。序盤から色んな軸を詰め込みすぎてて、マンガの全体像が掴めない。最初の流れや勢いが作れてないのかなー。

「地球を救った後に、地球を壊す」という流れがやはり意味不明。政治の世界でも言えますが「第三極(第三勢力)」を自負してるヤツって、言葉だけは勇ましいですが基本的に何をしたいのか分からないですからね。だから、その肝心の部分を明快に説明できてると良かった。

キャラクターも感情移入がしづらい。目的や動機も理解しづらい。原因と結果も理解しづらい。読者の意志に関係なく、良くも悪くも結論だけを強引に不躾に押し付けてくる。それ故に、作者・水上悟志はマンガ自体を完結させられたんだと思いますが、読者的には『惑星のさみだれ』を読み進めるには意外に体力が必要かも。

ただ完結させたこと自体に意味があって、まさに「終わり良ければ全て良し」を体現したようなマンガ。しっかり完結させられたら、これほど作品としてまとまった感じになるんだなーと驚きました。冨樫義博や井上雄彦に作者・水上悟志の爪の垢を煎じて飲ましてやりたいです。

だから『惑星のさみだれ』が面白いか面白くないかでいうと、非常にムラがあるような面白さといったところ。