『火ノ丸相撲』1巻から7巻のネタバレ感想をレビュー。作者は川田。掲載誌は少年ジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは少年コミックの相撲スポーツ漫画。面白いか、つまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

舞台は大太刀高校(通称ダチ高)の相撲部。主人公は新入部員として入った、潮火ノ丸(うしお ひのまる)。小学生時代は相撲日本一に輝いたことが実力の持ち主だったが、中学時代は身長が伸びずに苦戦。表舞台から姿を消した。

火ノ丸相撲1巻 潮火ノ丸
(火ノ丸相撲 1巻)
しかし潮火ノ丸は陰ながら努力に努力を重ねた。身長は150cm台と小さいながらも、圧倒的な体幹とパワーを身に付ける。

チビながらも相手とぶつかる真っ向から撃ち抜く横綱相撲はどこまで通じるのか!?相撲愛ナンバーワンの小関信也、元不良の五條佑真、レスリングの国体王者・國崎千比路、辻桐人や三ツ橋蛍といった部員と、果たして潮火ノ丸たちは高校相撲の頂点(横綱)に輝くことはできるのか!?…みたいなストーリー。

一言で表すと「ちっちゃくても横綱になっていいやんか!いや、横綱になるんやで!」という相撲マンガ。


相撲描写が熱くて、かっこいい!

『火ノ丸相撲』の相撲描写は迫力があります。コマ割りの大きさも、小さすぎずムダに大きすぎず。ちょうどいい。某少年マガジンだと1ページまるまる使ったアクション描写を多用してますが、何でもかんでも大きけりゃいいってもんじゃない。

火ノ丸相撲1巻 潮火ノ丸と五條佑真
(火ノ丸相撲 1巻)
画像は、潮火ノ丸が五條に張り手をかます場面。擬音を書かないことで、一瞬のインパクト感が表現されてます。何も装飾しまくることが全てではありません。二人は同じ部員ですが、五條佑真は不良で相撲部を荒らしてた。

火ノ丸相撲1巻 石神高校の金森
(火ノ丸相撲 1巻)
こちらは潮火ノ丸が石神高校の金森を持ち上げてる場面。さり気ないシーンにも見えますが、実は同じコマの中に複数のキャラクターを収めて描くのは難しい。特に主人公・潮火ノ丸は身長が極端に低く、周囲のキャラクターの身長が極端に高いので難易度は更に高め。

それでも無理せず収めることができて、しっかり迫力もあるアクションに仕上がってるのは作者・川田のセンス。

また主人公・潮火ノ丸がいるダチ高はもともと小関信也しかいなかった。前述の通り、五條佑真が相撲部の部室を陣取って荒らしてたから。あらすじで少し説明した感もありますが、異色の経歴を持つ相撲部員も多い。だからプレイスタイルというか相撲の型が良い意味でハチャメチャ

火ノ丸相撲4巻 五條佑真
(火ノ丸相撲 4巻)
五條佑真だと空手を習ってたので、張り手がただの突き。

火ノ丸相撲3巻 国崎チヒロ
(火ノ丸相撲 3巻)
國崎千比路だとレスリング王者。相手の懐に素早く入り込んでの投技が得意。

火ノ丸相撲6巻 荒木源之助 石神高校
(火ノ丸相撲 6巻)
國崎千比路のライバル石神高校の荒木源之助だと柔道。

相撲マンガは世の中にいくつかありますが、それを読んでると取り組みの戦い方やバリエーションは意外に少ない印象。でも『火ノ丸相撲』はしっかり王道さを踏襲しつつも、その王道の枠にとらわれず自由に相撲の取り組みを描けてる。そのオリジナリティに溢れた迫力あるアクション描写が、相撲に興味がある読者も相撲に興味がない読者も満足させる内容になってる。


敵登場人物の作り方が上手い

火ノ丸相撲3巻 栄華大附属 狩谷俊
(火ノ丸相撲 3巻)
『火ノ丸相撲』ではキャラクターを「国宝(日本刀)」に例える。画像の狩谷俊だと「小龍景光(こりゅうかげみつ)」。主人公・潮火ノ丸だと「鬼丸国綱(おにまるくにづな)」。石神高校の沙田美月だと「三日月宗近(みかづきむねちか)」。栄華大学附属高校の久世草介だと「草薙(くさなぎ)」。

もちろん誰でもってことではなく、力士として有望なキャラクターのみ。言ってしまえば、国宝を持ち出すことでキャラクターのブランディングを行ってる。本格的な相撲マンガだった場合はかえって陳腐に写ってしまいますが、掲載誌が少年マンガなので効果的にブランド化できてる。

あとはボスクラスの敵を作るのも上手い。
火ノ丸相撲6巻 天王寺に負ける沙田美月
(火ノ丸相撲 6巻)
画像は鳥取の天王寺。序盤の強敵として描かれる、中学横綱だった沙田美月が完敗することで、天王寺の実力を良い感じに煽ってる。ライバルの基準が一気に覆るってのは、演出としては王道。

火ノ丸相撲2巻 久世草介 大きな鬼丸
(火ノ丸相撲 3巻)
この国宝級のボスキャラクターがそこそこ登場するんですが、キャラ被りはそこまで多くはありません。画像は最後の日本人横綱・大和国の息子である久世草介。あまりに強すぎるので、父・大和国に高校相撲には出るなと命令されてた逸材。


地味に冴えるセリフ力

火ノ丸相撲5巻 辻桐人 セリフ力
(火ノ丸相撲 5巻)
あと『火ノ丸相撲』はセリフ力も意外に光ります。ダメな例だと『僕のヒーローアカデミア』があったりしますが、シンプルな言い回しですがセリフに力強さがあって読みやすい。しっかりストーリーの流れも頭の中に入ってくる。

火ノ丸相撲7巻 小関
(火ノ丸相撲 7巻)
分かりやすい場面をピックアップすると、例えば小関信也が覚醒した場面。表情に力強さもあってワクワク感もかきたてられますが、セリフの区切り方が絶妙。「成っちまった」と「らしい」で分けてるので、視覚的にセリフが読める。このおかげで展開そのものにテンポ感も生まれやすい。

ダメなマンガだと「成っちま」と「ったらしい」で分けてたりする。

火ノ丸相撲5巻 辻桐人 セリフ力
(火ノ丸相撲 7巻)
こういったセリフ力は取り組みの場面でも活きてきます。分析力もあるのか一つ一つの理論もしっかりしていて、理論技の説明も比較的分かりやすく、迫力ある取り組みがそのまま展開される感じです。

例えば、『テラフォーマーズ』や『トリコ』のバトル描写とかもそうですが、最近のマンガでは四角い吹き出しを使ってアクションにセリフをポン、アクションにセリフをポン…という演出を多用しがち。もちろんハマればズドンな演出ですが、セリフが下手くそだとムダにテンポ感がそがれてしまう。『テラフォーマーズ』はその好例だと個人的に思ってますが、『火ノ丸相撲』だとそういう欠点はない。

例えば、7巻の五條佑真だと不良で周囲を苦しめた過去を払拭するため「覆水盆に返すため」など、言葉遊びに若干終始しすぎてる側面も見られますが、潮火ノ丸などキャラクターの熱いたぎる感情や苦悩や苦しみといった感情も素直に受け入れられる。スポーツ漫画やアクション漫画に多弁は不要だと思ってますが、雄弁は面白くすることも当然あるんだなーと。

ただ意味もなくキャラクターを苗字で呼んだり、下の名前で呼んだり使い分けるのは止めてほしい。恋愛漫画でもあるまいし、そこで距離感や親しみ度合いを表現する意味が分からない。覚えづらい+ややこしいだけ。


総合評価・評判・口コミ


『火ノ丸相撲』の感想レビューをまとめると、まあまあ「面白い」方だと思います。絵柄はもっと泥臭い方が好きですが、少年コミックってことを考えるとこれぐらいで良いのかも。キャラクターも良く、取り組み(アクション)描写も良く、テンポ感も良し。比較的どの世代にもそれなりに面白いと受け入れられるはず。

この記事は7巻までのレビューですが、8巻9巻10巻以降の展開も『火ノ丸相撲』は失速しない気がします。よほど変な編集者でも付かないかぎり、全国一の横綱に輝くまでストーリーは最後まで処理されるでしょう。だから多分『火ノ丸相撲』の連載は20巻30巻ぐらいまで続きそう。あくまで設定は「高校生」なので異常に長期連載にもならないと思うので、今のうちからまとめ買いor大人買いしても損はしない。もしその後の続編が描かれるとしたら、きっと少年ジャンプ以外の他誌。

もちろん国宝級のキャラクターとの取り組みをどう消化していくか、そこで出し惜しみがないとも限りません。作品の中身同様に作者にはしっかり燃え尽きて欲しいと思います。