『はんだくん』全7巻のネタバレ感想をレビュー。作者はヨシノサツキ。掲載誌は月刊少年ガンガン。出版社はスクウェアエニックス。ジャンルは少年コミックの4コマ漫画。いわゆる『ばらかもん』という漫画のスピンオフ。AmazonのKindleでもダウンロード可能です。

ついに『はんだくん』最終7巻が先月9月半ば頃に発売されて、ようやく完結しました。少し前には『はんだくん』のアニメも完結。ネット上だと「クソアニメ」や「腐向け」と一部で酷い言われようだったらしいですが、アニメを一切観ない自分としては原作漫画である「はんだくんが面白いか面白くないか」を全巻まとめて考察してみたよ。

ちなみにもっと早くレビューしようと考えていたものの、ホンダ・バモスのフルモデルチェンジ情報などマニアックな記事も書いてるクルマのブログ(くるまン。)に時間が割かれるなど遅れてしまいました。うーん、時間が流れるのが最近早いのは気のせいか…って、単に自分が仕事が遅いだけという(笑)


あらすじ物語 ストーリー内容

主人公は半田清。名前の読み方は「はんだ・せい」。山下清的なノリでは読みません。具体的には本作『ばらかもん』を参照して欲しいんですが、後に「半田清舟(はんだせいしゅう)」を名乗る新進気鋭の書家。この『はんだくん』は半田清舟の高校時代(高校二年生)の話を扱ってるので漫画タイトルも『はんだくん』。

半田清は学校中から尊敬と羨望の眼差しで見られていた。高校時代から書家として活動していたことと、何よりルックスがイケメン。クールな雰囲気がありながら、実は非暴力主義を貫くようなガンジー的平和主義者。もはや嫌われる要素がない。

はんだくん1巻 半田清の妄想
(はんだくん 1巻)
ただ何故か半田清は自分が「かなりの嫌われ者」と思い込んでいた

だからジロジロ見てくる生徒たちに対して「おいおい…まだニラマれてるんだけど俺」とガクブル状態。しかも自分が相手を見ると視線をそらされる。もちろん相手の生徒は恥ずかしいから目をそらしてるだけなんですが、半田清からしてみるとよりいっそう自分が嫌われていると確信を抱いてしまう。

でも半田は優しすぎる性格から「安心しろよ。オレはお前らと友達になりたいと思ってないからゼッタイ話しかけねーよ」と、とことん卑下しまくり。その結果、クールな佇まいも単なる『新世紀エヴァンゲリオン』のATフィールド的なノリで発生される心の壁でしかない。

半田に友達は一人もいないんですが、厳密には一人だけ川藤という友達がいる。実はこの川藤のせいで半田は自分が嫌われ者と思い込んでしまってる。川藤は冗談半分で「お前嫌われてるらしいぞ」とシンプルにからかったら、純粋な半田は見事に信じ込んだ。それを川藤は面白いからずっと放置してる状態(笑)

だから半田清の学校の中では「驚異的なすれ違い」が発生してしまってる。周囲からは「謎に包まれた学校のカリスマ」や「孤高の男」とキラキラと崇められているのに、当の本人は「学校一の嫌われ者」と廊下の端っこをコソコソと日陰を歩くように生活してる。

『はんだくん』はそんな半田清の不憫な日常生活を描いた内容の4コマスピンオフ漫画になります。果たして半田清が良い意味で「現実」に気付く日が来るのか?本当の意味で人気者になれる日がやって来るのか?


はんだくんの被害妄想が止まらない

これまで『はんだくん』の感想は書いてきたので、ざっくりレビューしたいと思います。結論から書いておくと『はんだくん』の面白さは主人公・半田清の被害妄想っぷりにあります。

例えば、半田清は学校中から羨望の的として憧れられているので、半田がすべき教室の掃除も他の生徒たちが代わりにやってしまう。もし半田の指や手が怪我でもしたら、書道に支障をきたすかも知れないので大変。中高生は箸が転んでもおかしい世代ということもあって、クラスメートたちはそんな配慮ができるオトナな自分たちに盛り上がる。

はんだくん1巻 半田清 掃除強制免除
(はんだくん 1巻)
でも半田清はその光景を教室の外から見ていて、思わず「邪魔なら邪魔って言えよな…あー掃除サボれてラッキーだわ」とナゾの強がりを見せる。当然、半田の周りには負のオーラが。肩をすくめながらカバンを持つ仕草が絶妙に上手くて面白い。

修学旅行のクダリでは新幹線内でクラスメートがお菓子を配り合う。実際によくある光景か。それが半田の元にもやって来て、「俺のような嫌われ者にお菓子をくれるのか…?」と疑問に思いながらも勇気を出してお菓子を取る。でもクラスメートは半田がお菓子を食べてくれると思ってなかったので軽くザワつく。
はんだくん5巻 修学旅行 半田清
(はんだくん 5巻)
それを見て半田は「しまった!取ってはいけないパターンだったか!」と震え出す。いや、どんなレアすぎるパターンだよ(笑)

「はい半田くん」と呼びかけられて、自分の目の前にお菓子の袋も出されている状況で「取ってはいけないパターン」があったとしたら、それこそイジメだろうと。それこそ人間不信に陥るぞ。どうあがいても被害妄想に陥っていくはんだくん。


はんだくんの被害妄想には理由と原因がある

でも半田清が妄想を炸裂させるにはしっかり理由がある。その最大の理由はあらすじでも書いた川藤のウソに行き着くんですが、現在進行形で半田が人間不信に陥っても仕方ない出来事が頻発する。

はんだくん4巻 押し花 キモチ
(はんだくん 4巻)
例えば近藤幸男という半田軍の一人から押し花をもらったら、そこには「キモイ」の文字が書かれてる。最初近藤幸男は「キモチ」と書いてただけなんですが、「チ」の部分だけ手汗でにじんでしまった。神様のイタズラにも程がある。

中途半端に文字がにじんでしまったが故に、変におどろおどろしさも加味されてて半田のメンタルが余計に傷付く。

はんだくん5巻 修学旅行 半田清と近藤幸男
(はんだくん 5巻)
修学旅行では近藤幸男に袋を思いっきりかぶらされて、あわや事件化されかねない状況も発生する。「はんだくんは見かけによらず傷付きやすい人なんだ」と近藤は語っているものの、これほど言葉と行動が全然合ってない場面も珍しい。

かなり突拍子もない状況なので画像を説明しておくと、灰校と呼ばれる不良高校と修学旅行先でバッティング。当然のように半田清が番長のように勘違いされたので、それを隠すために半田清の頭に袋をかぶせてる。でも言うまでもなく、もっと上手い隠し方があったやろという(笑)

はんだくん3巻 半田清 記憶喪失1
(はんだくん 2巻)
他にも半田清が記憶喪失になった時は、半田軍のメンバーたちが思いっきり殴って記憶を取り戻させようとする。でもその手に握られているのはトンカチやハンマー。半田清のことを「完全無敵」と思っているとはいえ、さすがにコレはない。正月の餅つきじゃねーんだから。もう躊躇のなく振り下ろす感じがひたすら恐怖(笑)

半田は周囲から好かれているとは言いつつも、これだけフルボッコされそうになってたら人間不信に陥らない方が無理な話。


はんだくんの悲しいトラブル処理

そして、何故か半田清はちょいちょいトラブルに巻き込まれる。人望と共に不幸も呼び寄せているのかも知れない。

あるとき、川藤の友達・長谷川たちと遊びに行くことになった半田。でも長谷川が不良たちにカツアゲされていたので、半田が勇気を振り絞って助けに行く。不良たちは半田の登場に恐れおののいて、長谷川に「悪かったな長谷川。半田と知り合いならそう言えよ」と言って立ち去る。

はんだくん3巻 半田清 カツアゲ2
(はんだくん 3巻)
長谷川は「恐れ多い」という意味で「知り合いなわけないでしょう」と発言するものの、半田の心はグッサグサ。半田が好きな生徒はことごとく言葉を端折って丁寧に話さないことが多く、半田の被害妄想に拍車がかかるばかり。

はんだくん3巻 半田清 カツアゲ3
(はんだくん 3巻)
半田は半田で「自分に関わったと知られたら更に長谷川が不良に絡まれる」と親切心から、「このくらいで知り合いヅラするんじゃないぞ」と突き放す。これを善意でやってるだけに切ない。川藤も状況が飲み込めず思わず固まる。

そもそも不良たちに立ち向かっていった瞬間の半田が切なすぎる。

はんだくん3巻 半田清 カツアゲ1
(はんだくん 3巻)
さぁ嫌われ者の登場だ!殴るならオレを殴れ!」という吹き出しが泣けて仕方がない。しかも何故よりによって往年の少女漫画風の白目。ここまで悲壮感に満ち満ちたヒーローもいないでしょう。

このようにトラブルの解決をするものの、肝心の半田本人だけが「誰かを助けた事実」を知らない。周囲は「当たり前のように助けてくれただけ」と思っているので、わざわざ細かく感謝を述べることも少ない。だから一方的に周囲の評価が高まっていく中、半田の自己評価だけは一方的に低いまま。

こういった半田清は周囲から慕われまくってるのに、そこに気付いてない勘違いから生まれる悲しいすれ違いが面白い。まともに意思疎通ができないんだから当然っちゃ当然ですが。


二階堂礼緒や筒井あかねといったサブキャラクターが個性的

『はんだくん』の登場人物も割りと個性的。具体的には半田軍と呼ばれる、ちょっとした4人組の親衛隊。具体的には相沢順一(あいざわじゅんいち)、二階堂礼緒(にかいどうれお)、筒井あかね(つついあかね)、近藤幸男(こんどうゆきお)。

相沢順一はテストで学年一位を取るなど秀才。でも頭の使い方が下手くそなのか、やはり半田清を崇拝。半田軍の中でもリーダー的な存在を誇る。

二階堂礼緒は読者モデルをやるぐらいにイケメン。でもナルシストキャラのせいか、女子の注目を全て半田清に奪われる。最初こそ恨みを抱くものの、半田清の魅力にいつしか吸い寄せられて逆にファンになってしまう。

筒井あかねは高校入学当初は美少年。いや可愛らしい男の娘。それ故にイジメの対象にされてしまい不登校になる。そのことをバネに身体を鍛え上げるとゴリゴリの悪役レスラーみたいな風貌に変身。もはや輪廻転生を何回繰り返してんレベル。半田清は普通にプリントを届けに来ただけなんですが、何故か「学校へ再び来るように誘ってくれた」と筒井は勘違い。その後は迷惑にも半田清のボディーガードとして活動する。

だから個性的なメンバーばかりの半田軍なんですが、唯一の没個性キャラが近藤幸男。名前からもフツー感がハンパない。
はんだくん4巻 近藤幸男 とばっちり
(はんだくん 4巻)
でもそれゆえに周囲の女子生徒たちからは疎まれていて、「凡人のくせに半田軍を気取るの止めてください」と直々に呼びつけを食らう。何が悲しいって、似たような凡人女子に言われていることでしょう。せめて女子は女子で個性的な女子を連れてこいよ。

はんだくん4巻 美画部 桜目ねお1
(はんだくん 4巻)
他にも美画部の「桜目ねお」もキm…個性的。廃部寸前の危機を前に、半田を美少女化した同人誌を売ろうと画策。そこで半田の生態を調べるために、何故か自身のフィギュアを使って話しかける。思わず半田も「プラスチック人形に話しかけられた」と震える。

いや背後に人間いるの明らかやん。普通は気付いて良さそうなもんですが、桜目ねおの存在に気付かない未来ある書道家とプラスチック人形の間では何故か会話が成立してしまう。そこで桜目は色気を使って「このスカート脱がしてもいいよ」と誘うものの、
はんだくん4巻美画部 桜目ねお2
(はんだくん 4巻)
そして半田は「たとえ人形であっても女の子がそんなこと言うのはダメだと思うぞ」と紳士にハンカチをかけてあげる。何故か感動的なシーンっぽく描かれてるんですが、いやいやコッチはゼッタイ感動せえへんからな!!ツッコミどころ満載(笑)


「はんだくん」のガチ最終回は同窓会で大団円

既に割りと長文になってしまったので、最後は『はんだくん』の最終回についてネタバレしたいと思います。ネタバレが嫌な方は下へズバッとスクロールして下さい。

『はんだくん』の最終巻は7巻なわけですが、実は6巻の時点で最終回のクダリは発表済み。文化祭で体育館の舞台上でラスト喝采を浴びる半田。いつものように「血祭りに上げられているだけ」と勘違いするものの、そこで川藤が今までのウソをネタバレ。実は「お前めっちゃ好かれてんねんで」と教えてあげる。

はんだくん6巻 最終回 川藤 みんなお前のことが好き
(はんだくん 6巻)
半田もようやく自分が嫌われていない事実を知ったことで大団円…と思いきや、全校生徒で作ったと思しき巨大なはんだくん人形が爆発して燃え盛る。この直前に半田を乗せようと考えていただけに、「あれ?オレ乗ってたら殺されてないか?」と再びネガティブ思考が巡る。

ただ、それでも半田清は極端なネガティブ思考は消え去って、いつも一人だった朝の登校も半田の隣には半田軍のメンバーたちが…という場面で終わりを迎えてる。でも最終7巻では真の最終回が描かれています。

それが高校二年生だった半田清たちの一連の出来事から6年後。近藤幸男は身の丈に合った大学に入学した後、身の丈に合った会社で働いていた。そこへ委員長・相沢順一から同窓会(クラス会)を開催するというハガキが来た。その名も「神・半田くんを崇めるクラス会」。やはり色々とツッコミどころ満載。

はんだくん7巻 最終話 大人版筒井あかね
(はんだくん 7巻)
大人になった筒井あかねたちが再登場します。「さすがに誰だよ」とツッコミを入れられてますが、面影があるようなないようなやや中途半端感はあって、個人的には「良い部分だけ残った」という印象です。探せばこんなユーチューバーいそうです。

はんだくん7巻 最終話 大人版イレイサー
(はんだくん 7巻)
だから大人になったキャラは意外とフツーに成長してて、その中でもイレイサーのガッカリ感がハンパない。しかもイレイサーは小学校の教師として働いてる。なんという堅実な人生の選択。ちなみに、シレッとかつての面影は見せたりしてるので、それは是非ご自身の目でチェックしてみて下さい。

はんだくん7巻 最終話 6年後の同窓会
(はんだくん 7巻)
残念ながら半田清は来なかったものの、「半田が子供を連れ立っていた事実」がニセによって発覚。驚愕するかつての級友たち。しかしそこへ半田清の母親が代理で店にやってくる。実は同窓会のハガキを半田清に渡し忘れていた。そりゃあ半田が来れるはずがありません。

そして半田清の母親に級友たちが近況報告をガヤガヤと聞きに来る、といった場面で本当の完結を迎えます。まさに大団円といった最終回と言えるでしょう。ただ半田清が結局参加するわけではないので、最後の最後まで「ハブられてる状態」は変わらないとも解釈できますが(笑)


はんだくん最終7巻はスピンオフのスピンオフ漫画

ラストは最終7巻のざっくりした感想をレビューしたいと思います。

はんだくん7巻 半田清の初詣
(はんだくん 7巻)
月刊少年ガンガンで掲載されていたカラー漫画が7巻では掲載されています。画像は2014年の時に、半田清が初詣に行くと何故か毎年のように胴上げされる。「くっ…こいつら…毎年毎年…」と心の中でキレるものの、いや分かってるんやったら行くなよと。せめて時間ズラすなりしろと(笑)

はんだくん7巻 最終巻 オマケマンガ1
(はんだくん 7巻)
書店購入特典の描き下ろし4コマなども収録されています。画像はイレイサーが女子たちの半田に対するプレゼントをサッと処分してる場面。怒りの表情すら浮かべないことから、もはやルーティンワークの一つとして習慣化されていたのでしょう。

はんだくん7巻 最終巻 オマケマンガ2
(はんだくん 7巻)
文化祭に着た半田の衣装が女子たちによって細切れにされてる場面を見て、近藤が「当然だろうね」と相づちを打ってる場面。半田にセリフはないものの「え?オレそこまで嫌われてんの?」という心の声が聞こえてきます。

ただ前述のように描き下ろし漫画こそありますが、おまけページ的なんが大半を占めているので基本的に「スピンオフのスピンオフ」に近い内容か。『はんだくん』全巻をまとめてレビューするためにわざわざ最終7巻の発売を待ちましたが、正直わざわざ待つ必要はなかったかなと。だから7巻については別に購入してもしなくてもどっちでも構わないと思います。


はんだくんの総合評価 評判 口コミ


『はんだくん』全7巻のネタバレ感想をまとめると、よくぞここまで主人公のキャラクター(半田清舟)を破壊したといったところ。キャラを崩そうとすると変顔や突飛な言動に走らせたり極端なことをさせがちですが、そういう変化球を多用してないのが好印象。悪い意味で痛さがないので、漫画としてシンプルに読みやすい。

半田は卑屈さが全開なものの、ドヨーンとした周囲も落ち込ませるような卑屈さではないので読み味は良い。陰キャラを不快感なく見事に作り上げてるのは見事で面白い。半田はイケメンなので女性読者は「守ってあげたい」という庇護欲がそそられるのも大きいか。

あと「1ページに4コマだけ」というスタイルは読んでて疲れないのも良い。1ページ8コマも詰め込まれると正直疲れる。そもそも4コマ漫画だからといって、必ずしも4コマにとらわれる必要はない。別に2コマでもいいし3コマでもいいし、もっと変則的に自由に描いた方が単調にならずに読者としても読みやすい。