『幻覚ピカソ』全3巻のネタバレ感想をレビュー。作者は古屋兎丸。掲載誌はジャンプSQ。出版社は集英社。ジャンルは少年コミックですが、一風変わったアート漫画。テーマがテーマなだけに随分と奇をてらった設定ですが、独特な絵柄さえ気にならなければそこそこ読めます。

そこで面白いかつまらない漫画か考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

軽く設定を紹介しておくと、主人公の葉村ヒカリは絵を描くのが大好きな高校生。そのアダ名が「ピカソ」。ただ友達がいない根暗…と言っても一人だけ山本千晶という女生徒が同じ部活の仲間がいた。

しかし事故で山本だけが死んでしまう。ピカソは生き延びた代わりに、『人助け』をしなければ腐っていく体になってしまった。そこで周りの生徒たちの悩みを解決していくという流れ。


悩みの解決手段が独特でハマる?

悩みの解決の仕方が独特。まず主人公のピカソは、その事故がキッカケで人の心の中が見えるようになる。いわゆるトラウマをスケッチブックに2B鉛筆だけで模写。例えば幼いころに飼ってたウサギが亡くなった過去に悩んでると、スケッチブックにはウサギが描かれる。
幻覚ピカソ1巻/2
(1巻)
そして、その絵の中にダイブ。主に悩みを抱えてる生徒の過去を掘り下げたり、描写したキャラクターや物体を接することでトラウマを解決していく。ややオカルトチックな要素もありつつも展開的には王道だったりする。


山本という天使とのコンビ

幻覚ピカソ3巻/山本千晶
(3巻)
主人公は一人で活動するんじゃなく、前述の亡くなった山本千晶が小さい天使として復活。こいつとコンビを組んで一緒に問題を解決していく。

この二人が対照的。ピカソはイヤイヤだけど、千晶はやけにノリノリ。一見相反する二人ですが、実は連携したコンビプレイは笑いを誘う部分もあって悪くない。

根暗な主人公はどうしても嫌味な奴だけで終わってしまう場合も多いですが、どこかしらに愛嬌は残せてるのは山本千晶のおかげかも。


スケッチブック

幻覚ピカソ2巻/1
(2巻)
スケッチブックには具体的にこんな感じの絵が描かれる。どういう悩みかってのを分かりそうで分からない微妙なラインが読者の想像もかき立てる。

ちなみに画像は性同一性障害で悩むゲイ少年の話。自分をジャンヌ・ダルクに扮して、世間という敵と一人果敢に戦ってるという図。甲冑が自分の性別を隠してるという意味合いもある。

その子の悩みが解決して、結果的に絵がどう変わったかというと…
幻覚ピカソ2巻/2
(2巻)
鎧を脱いで自分を曝け出して、勝利の旗を降ってる。こんな風に悩みが解決する前と後で「絵が変わる」という設定が面白い。読者からしてみると解決したことがハッキリ答えとして見えるし、具体的にどんな理由でどう解決したのかも分かりやすいので読後感も悪くない。


総合評価・評判・口コミ


『幻覚ピカソ 全3巻』のネタバレ考察をまとめると、アートという難しいテーマを扱ってる割に、エピソードごとに笑いやシリアスが込められて読みやすい。また絵の中に入るというオカルト的な設定を用いることで、いかにも漫画として仕上がってる。思春期のキャラクターの悩みを解決するという展開も、ジャンプスクエアの読者層を考えると狙いも定まってた。

最終回の結末も大団円。ずっと一人だった主人公・ピカソには大勢の友達ができて完結を迎える。ずっと共にしてきた山本千晶とは決別するものの、その悲しみの分だけ得たものは大きかったというオチ。ベタな終わり方ですが、決して読後感は悪くない。良い感じに余韻の残る and 後を引く終わり方で泣ける人は泣ける。

とはいえ個人的には意外にも良かったマンガなんですが、なんだかんだで独特な絵柄も含めて読者は少し選ぶとは思います。