『ハイキュー!!』1巻から20巻のネタバレ感想をレビュー。作者は古舘春一。掲載誌は少年ジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは少年コミックのバレーボール漫画。

今年2016年秋ごろにはアニメ3期が放送されるなど、いまや少年ジャンプを代表する人気スポーツ漫画へ成長。そこでハイキューのどこが面白いかを考察してみた。


ハイキュー!!のあらすじ物語・ストーリー内容

主人公は日向翔陽(ひなたしょうよう)。幼い頃に宮城県立 烏野高校バレーボール部のエースだった「小さな巨人」に憧れて自分もバレーボールを始める。圧倒的な敏捷性とジャンプ力を持っていたものの、中学時代は部員が全くいなかった。

そこで3年間必死に集めてようやく出場できた最後の試合で、「コートの王様」と呼ばれる影山飛雄(かげやまとびお)と相まみえる。影山飛雄は圧倒的なトスセンスを持つものの、それに付いてこれる選手はいなかった。

ハイキュー4巻 日向翔陽と影山飛雄
(ハイキュー 4巻)
この二人が同じ宮城県立烏野高校へ進学し、全国インターハイ優勝を目指すというストーリー。トスの天才とアタックの天才がコンビを組んだ。烏野高校と対戦した音駒高校の猫又監督曰く、「鬼と鬼」。

バレーボールは日本語だと「排球(はいきゅう)」と書くので、漫画タイトルの『ハイキュー!!』はそのまんまのタイトルです。作者・古舘春一も学生時代にバレーボール部をやってたらしく、そこら辺の経験も活かされているようなスポーツ漫画。


試合の迫力が圧倒

『ハイキュー!!』の醍醐味や面白い見所は、やはり試合描写。見開きページいっぱいを使った大胆かつ派手な描写が面白い。

ハイキュー3巻 レシーブ 見開きページ
(ハイキュー 3巻)
例えば、レシーブ一つにしても見開きページいっぱいで迫力があります。セリフや吹き出しを使わないことで、コート上の「空気が止まった感」や「息を呑む感」が表現されてて、画像の西谷夕のレシーブのすごさが伝わってきます。

ハイキュー18巻 試合描写 西谷夕 レシーブ
(ハイキュー 18巻)
画像は西谷夕の同じようなレシーブですが、コマ割りや選手の表情、短いセリフを上手に配置されてます。ちなみに烏野高校と白鳥沢学園戦。

ハイキュー16巻 試合描写
(ハイキュー 16巻)
画像は烏野高校と青葉城西高校戦で、日向翔陽がアタックを打つと見せかけてのフェイントをかました場面。日向翔陽のしてやった感、及川徹のしてやられた感が上手に表現されてます。スコアボードも表示させることで、肉薄した試合展開の状況であることもしっかり伝わります。

ハイキュー17巻 烏野vs青葉城西 田中龍之介 レシーブ
(ハイキュー 17巻)
同じく烏野高校と青葉城西高校戦ですが、こちらも見開きページいっぱいで烏野高校の田中龍之介が決死のダイビングレシーブをかます。スクリーントーンで影を作ることで立体感が出て迫力があります。そしてボールを天高く上げて、烏野選手たちに「繋げぇぇ!!!」と叫びながらボール一点に凝視させてるので、思わず次のページをめくりたくなります。

ハイキュー15巻 試合描写 矢印の演出
(ハイキュー 15巻)
他にも『ハイキュー!!』ならではの演出としては、擬音のカタカタに矢印を付ける。これでどちらの選手がどの方向へ移動しているか直感的に伝わります。バレーボールは相手選手をダマすために、色んなフェイントを掛け合うそう。どの選手がアタック(スパイク)やトスをするかで得点率が変わってくる。バレーボール以外のスポーツ漫画でも応用できるでしょう。

ハイキュー19巻 牛島若利 スパイクアタック
(ハイキュー 19巻)
単ページでも白鳥沢学園の牛島若利のスパイクをかます場面は、影を多くつけることで迫力が出てます。

ハイキュー18巻 ブロック 天童覚
(ハイキュー 18巻)
天童覚のブロックもグイッと手が横に伸びてくる感じがGood。指はこんなに曲がりませんが、表現としてはこれぐらい誇張するぐらいでオッケー。

ハイキュー16巻 日向翔陽のクイックジャンプ
(ハイキュー 16巻)
主人公・日向翔陽は機敏に飛び跳ねることを得意としてる選手なんですが、画像の場面は流れが分かりやすいだけではなく、シューズをアップで描くことでインパクトが大きくて読者は目が行く。『はねバド』というバドミントン漫画ありますが、こちらはラケットの持ち手をアップさせてたりする。スポーツ漫画ならでは面白い表現・有用な演出と言えるかも。

ちなみにバレーボールというスポーツの特質上、選手がローテーションを組んでポジションをグルグルと移動する。もっと言うと、外の選手と中の選手が頻繁に入れ替わる。つまり選手のポジションは固定されてないに等しいので、今どこに誰がいるのかはパッと分かりづらい。

日向翔陽が前線にポジションを取った方が点を取りやすいなど、試合展開の中で活かされる設定でもありますが、作者・古舘春一ですらオマケページで頻繁に間違いを謝罪してるぐらいなので流し読み推奨。基本的に試合描写の迫力など雰囲気で楽しめばいいと思われます。


アングルの圧倒的迫力がかっこいい

試合描写の中でも特筆すべきなのが「攻めのアングル」。

ハイキュー7巻 アングル アタック
(ハイキュー 7巻)
例えば、日向翔陽のワイドブロード攻撃。試合中にちょいちょい出てくるんですが、実写映画にしたってマンガにしたって、こんなエグい角度からアタック・スパイクを描いた作品はなかなかありません。それ故に迫力があります。この時に選手(日向翔陽)の靴裏を細かく描くことで、「空中で止まってる感」が強く演出されて一層の迫力を生んでると考えられます。

ハイキュー1巻 アングル アタック
(ハイキュー 1巻)
主人公・日向翔陽と影山飛雄が中学時代に最初かつ最後に戦った試合も、見開きページいっぱいに日向翔陽がワイドブロード(移動攻撃)をかましてる。これ自体が一つの画になって日向翔陽の迫力が出てますが、2コマ目に影山飛雄の目線を持って来てるのが良い。迫力だけではなく同時に日向翔陽の動きは見えてるのに対応できてない、影山飛雄の「してやられた感」も表現されています。

ハイキュー15巻 スパイクアタック 京谷賢太郎
(ハイキュー 15巻)
青葉城西高校の京谷賢太郎のスパイク場面は更にすごくて、ネットキワキワのほぼ無角度状態からのスパイクをかます。ネットを床から舐めるように見上げるようなアングルが素直に新鮮。作者・古舘春一が部活でバレーボールをやってたからこそ、こういった視点が生まれたんだと推察されます。

ハイキュー5巻 日向翔陽 かっこいいアングル
(ハイキュー 5巻)
個人的に一番ツボったアングルがコチラ。日向翔陽がスパイクするために飛ぶんですが、まるで翼で羽ばたくように見えるのがカッコいい。「烏野高校」の生徒ということもあって、ちょくちょくカラスと選手を引っ掛けてることも。

ただ翼のようなアングルが、あまり多用されてないのは残念。他の描写も含めて、もう少し勝負の見せ場のタイミング使えるとかなり効果的な演出になるはず。今のところ、それっぽい場面でそれっぽく使ってるだけ。それはもったいない。また試合展開が面白くないってことではないものの、最近は構図のアプローチはやや単調かも。


熱いキャラクターたちの名言

キャラクターの表情やセリフからは、心の底からの悔しさなどが読み取れる。スポ根らしいドラマ性が試合の中に詰まってる。

ハイキュー14巻 東峰旭と澤村大地
(ハイキュー 14巻)
東峰旭と澤村大地が思いをバトンに託してる場面。烏野高校と和久南高校戦で田中龍之介と接触、澤村大地が頭を強く打って、病院で精密検査を受けなきゃいけなくなる。もちろん試合に負けたら3年生の澤村大地は最後の試合。無念と悔しさを抱えながらも、期待と信頼を同じ3年生のエース・東峰に託してる。

ハイキュー14巻縁下力
(ハイキュー 14巻)
結果的に和久南高校に勝利できた烏野高校。縁下力という選手はようやく少し活躍できたんですが、試合後に嬉しさ反面、満足しきってる自分に対して「安心してんじゃねぇよ!!」と活を入れてる場面。何故なら試合中で縁下力はミスも多かったから。

縁下力は大したことない選手だからこそ、この向上心の現れに強い共感を覚えることができます。実は作者・古舘春一の心の声が反映されてたりするのかも知れません。

ハイキュー17巻 及川徹の迫力
(ハイキュー 17巻)
及川徹の迫力にはゾクゾクしました。烏野高校に負けた直後、白鳥沢学園の牛島若利に「お前は取るに足らないプライドのために、俺がいる最強のチームに来なかった。お前は道を間違えた」と挑発される(牛島自身はそんなことを露程にも思ってませんが)。

それに対して「俺は自分の選択が間違いだと思ったことは一度もない。俺のバレーボールは何一つ終わってない。俺の取るに足らないプライドを絶対に覚えとけよ!」と宣戦布告してるのが画像の場面。及川キュンは普段ひょうひょうとしてるだけに、このギャップ感は特に女子はたまらないか。

ハイキュー7巻 及川徹 セリフ
(ハイキュー 7巻)
その及川徹が挫けそうになった時、チームメイトから「相手が牛島だろうが6人で強い方が強いんだろうが!」と発破をかけられてる場面など地味にセリフも熱かったりします。


日向翔陽の迫力

選手の中でも一番の迫力を内在してるのが、主人公・日向翔陽。「負けたくないことに理由って要る?」というセリフに代表されますが、とにかく負けるまで試合を諦めない。あらすじでも説明しましたが、中学時代は部員が集まらなくて試合にほとんど全く出場できなかった。その悔しさが全部詰まったようなキャラクター。

ハイキュー4巻 日向翔陽の迫力 負けたくないことに理由はいる?
(ハイキュー 4巻)
気迫といってもウワーッていう感じじゃなくて、日向翔陽の気迫は「得体の知れない」感じの、下からゾワワーっとせり上がって来る感じの迫力。

ハイキュー1巻 日向翔陽の迫力
(ハイキュー 1巻)
中学時代に二人が初めて戦った時は、日向翔陽の気迫に思わずゾクッとビビる影山飛雄。

ハイキュー20巻 日向翔陽
(ハイキュー 20巻)
東峰のスパイクがブロックされて、その下にいた日向翔陽が顔面ブロック的な感じでレシーブできて結果的に烏野高校に点数が入る。でも日向翔陽は鼻に当たったらイヤだから、瞬間的に顔をずらす。その理由が「鼻血が出たらベンチに下げられる」から。そこまでして試合にがむしゃらに出場したい。日向翔陽の表情は見えませんが、周囲の敵味方を含めた選手のドン引きした表情で察することはできます。

ハイキュー20巻 日向翔陽 vs 牛島若利
(ハイキュー 20巻)
普段は誰にも対抗心をむき出しにしない牛島若利も、思わず「何か嫌だ。お前を叩き潰したい」と闘志がメラメラ。作者・古舘春一は「周囲のキャラクターを描くことで中心人物のキャラクターを際立たせる」という演出が地味に上手いかも知れません。

ハイキュー3巻 日向翔陽
(ハイキュー 3巻)
日向翔陽は気持ちが純粋。何故アタック(スパイク)したいかと言えば、「ネットの向こう側がばあっと見える」から。そこがキャラとして気持ち良い。もちろん勝ち負けは重要ですが、純粋にバレーボールが楽しいって気持ちも大事。『ハンターハンター』の主人公・ゴンにやや近い雰囲気もある。

ハイキュー9巻 日向翔陽のジャンプ力
(ハイキュー 9巻)
日向翔陽のジャンプ力を披露する場面でも、あまりの俊敏性とジャンプ力に牛島若利が対応できてない。牛島若利は宮城県王者ってことで、日向翔陽の物怖じしない姿勢が、まさに主人公キャラクターに相応しい。絵的にもカッコいい。

ハイキュー13巻 日向翔陽
(ハイキュー 13巻)
そして、ときたま見せる笑いがエッセンスとして有効に働いてます。影山飛雄との普段の掛け合いやコンビっぷりを含めて、こういうギャップ感は女の子読者も好きそうかも知れません。


ネーミングセンスはない

ただ『僕のヒーローアカデミア』でもツッコミましたが、とにかくキャラ名が面倒くさい。音駒高校の孤爪研磨(こづめけんま)とか一体何なんだと。

そもそも高校名に関しても意味不明。音駒(ねこま)って何だよ。パッと見て、パッと聞いて、地名なのか人名なのかすら分からない。「高校」の部分を略しちゃうと、一体何の名前か分からないのは致命的。確かにカッコいい名前だとは思いますが、それだけ。

その上、下の名前で呼んだり上の苗字で呼んだり、いかにも体育会系的なノリを出そうとしてるんでしょうが、それもウザったい。別に『ハイキュー!!』に限った話でもないですが、少年マガジンだと『ダイヤのエース』なんかもそう。ましてやアダ名が加わってきたり、呼称は一つに絞れよーっていう。ますますワケ分かんねーよ。

白鳥沢学園の牛島若利は良い名前。苗字と名前の上部分だけを取って「牛若(ウシワカ)」というアダ名がある。ただ呼び方がマチマチというか、牛島かウシワカかどちらかに統一しないと間違えて覚える。アニメだと耳から情報が入るのでそこまで気にならないんでしょうが、楽してキャラクターの個性を出そうとするなと言いたい。

作者・古舘春一の初めての読み切りマンガ『王様キッド』はインターネット上で読めますが、そのキャラクター名は至って普通でシンプル。作者に一体何があったのか。


ハイキュー!!の総合評価・評判・口コミ


『ハイキュー!!』の感想としては、バレーボールというスポーツの良さを最大限引き出せてて面白い。ここまで大胆に切り取ったアングルっていうのは、他のスポーツ漫画でも応用できるような演出。絵的に飽きない。シンプルに飽きない。

バスケットボール漫画の金字塔が『スラムダンク (SLAM DUNK)』だとしたら、バレーボール漫画の金字塔は間違いなく『ハイキュー!!』と言われる日は遠くないかも。多少のツッコミどころがあったとしても、全体的には面白い部類に入ると思われます。

現在は全国大会・インターハイを描いてる最中ですが、もし優勝まで描くとしたら40巻50巻ぐらいまで続きそう。おそらく途中で烏野高校を負けさせて、変にマンガとして延命を図ることもしないと思います。少年ジャンプの掲載順位的にも比較的安定してるので、『ハイキュー!!』が途中で打ち切りになる可能性も低いはず。