『銃夢-Last Order-』全19巻のネタバレ感想をレビュー。作者は木城ゆきと。銃夢の読み方は「ガンム」と読みます。「じゅうむ」ではありません。副題に「ラストオーダー」とありますが前作『銃夢』の続編という位置づけになります。


銃夢は連載途中で講談社へ移籍

『銃夢ラストオーダー』の掲載誌はウルトラジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは青年コミックのSFバトル漫画。

ただ『銃夢ラストオーダー』の終盤は何故かイブニングへ移行して掲載されています。つまり出版社は集英社から講談社へ『銃夢』が移籍したことになります。まだストーリーが完結して、その続編を別の出版社に移して連載されることはたまにあります。

でも連載途中で出版社も変わるのは異常事態。一読者が内情を知ることは難しいですが、どうやら『銃夢ラストオーダー』のWikipediaを読むと作者・木城ゆきとと出版社が「表現方法の違い・許容範囲」でぶつかったらしい。

出版社にはそれぞれルールが設定されていて、そこに触れるような表現はあまり好ましくないらしい。『銃夢ラストオーダー』の場合は集英社のルールに触れた模様。でも常識的に考えると、一つ二つの表現が修正を余儀なくされたところで出版社まで移るとは考えにくい。

おそらく作者・木城ゆきとと編集者や集英社の間で、『銃夢ラストオーダー』を執筆するにあたって恒常的慢性的な衝突があったんだと思います。そういった積み重ねが積もり積もって、ある日爆発して「銃夢ラストオーダーの連載辞めちゃうもん」となったんだと勝手に推察してみます。


とにかくバトル描写がすごい!

とにかく銃夢は画がスゴい。アメコミなんかを軽く超えてて、CGをバリバリ使ってる大作ハリウッド映画並。いや、もはやそれすらも軽く凌駕してるんじゃないかと思わせる程のレベル。

その中でもバトル描写が圧巻。クソ派手。SFマンガということで人外のキャラクターも多数登場。そもそも主人公ガリィたちもサイボーグだったりして、まともな人間は登場してこない。

ストーリーとしてはZOTT(森羅天頂武闘大会)という武闘大会がメイン。その中でも後半ぐらいから登場してくるキラキラネーム丸出しのキャラクターが、ムダにカッコいい。見た目はそうでもないが、男心をまさにくすぐる感じ。

銃夢LO15巻ガリィに吹き飛ばされる刀耳
(15巻)
そいつらが殴りーの!

銃夢LO14巻ガリィに吹き飛ばされる刀耳
(14巻)
殴られーのの連続!ちなみに二枚とも主人公・ガリィと刀耳(とうじ)が戦ってる場面。

銃夢LO13巻汰羅刃の気合
(13巻)
汰羅刃(たらば)が気合を入れてる場面では、何なんだろうか、この濃密さは。

普通であれば、何も考えずブワーッと効果線をムダに引かれがち。ただそれをやりすぎて、極端なことを言えば、キャラの顔の位置すら分からなかったりする。「濃密=描き込みが多い」と勘違いしてるマンガ家も多い中、しっかり「見やすさ」も考慮されてる点で高評価。

(14巻)
刀耳がパンチを繰り出した時の『衝撃波』の描写も秀逸。普通ペンでシャシャっと描きがちですが、この場面ではトーンがふんだんに使われてる。そのことが「目に見えない感」がより強く現れてる。

個人的に一番好きなキャラクターが、絶火(ぜっか)。コイツがメチャメチャ強い。性格も味があって、男気があって、オッサン読者は結構ハマっちゃいそうな雰囲気。

銃夢LO15巻絶火の鉤突き
(15巻)
例えば、ゼクスというキャラに絶火が鉤突きを繰り出す場面。ほとんど絶火は動いてないんだけど、でも微妙に動いてるところは動いているという絶妙さがGood。後頭部の髪の毛みたいなんも微妙に揺れてる。他のマンガでも見られる描写ですが、大体が殴る側がまさに微動だにしてない。さすがに、それはウソとしか思えずリアリティに欠ける。

殴られた側のゼクスの腕の感じも見事で、何気に描こうと思っても描けないと思う。一瞬の出来事だけど、それでも身体がここまで動いてしまう。ゼクスの身体の向こう側に衝撃波もあったりして、過剰だけど過剰じゃない感が、威力のスゴさも物語ってる。

電磁とSFバトルの親和性がすごい!

ちなみに、刀耳などの身体にちょいちょい「電気」みたいなんが見られると思いますが、実際「超電磁空手」という技…というより流派。

銃夢LO10巻ゼクス プラズ魔球
(10巻)
ゼクスというキャラクターは「プラズ魔球」という必殺技を使ったりする。こういう技がバンバン登場してくる。

キャラクターがサイボーグだけあって、電気関係の能力との親和性がスゴく高い。全然違和感がないどころか、作者のトーンの使い方も絶妙なことも相まって、「格闘技」の延長線上のはずのバトルでも、ファンタジーマンガを超えた大胆で派手なアクションが展開されてる。

とにかく画力がすごい!

改めて言及することもないですが、作者の木城ゆきとの画力がえげつない。若干冒頭のバトル描写のクダリと被るのはご了承願います。

銃夢LO16巻絶火の丹田炉心
(16巻)
自分が好きな絶火が飛びかかってくる場面。腕の筋肉描写が見事。手がああいう角度でああいう向きになると、腕の筋肉の付き方はこういうカタチになるんだろうなー…ということを素人目でも直感的に納得できるレベル。

サイボーグのクセにしっかり「人間」をしてるし、だからと言って、ちゃんと「サイボーグ感」も残ってる。そういうデザインセンスの高さも見事で、まさにリアルにいそう感がハンパない。ちなみに、この絶火はお腹の中(丹田)に炉心を抱えてたりします。だから強い。

銃夢LO15巻ザジ無数の弾丸
(15巻)
他にもザジという銃撃の名手が、無数の弾丸を発射した場面も見事。銃弾の無機質で丸みを帯びた感じがよく描写できてて、何より多い。角度によって見え方も違う、配慮の細かさ。

そして地味に賞賛したいのが、背景にトーンを貼ってるところ。もしそれが貼られてなかったら、無数の銃弾は見えづらかったはず。こういう気配りができてるマンガは少なくて、ワンピースだったら背景はただただ効果線を描きかまくってるだけでしょう。

世界観は立派ですが

画力がとてつもなく高い作者だから、独特のSFという世界観・空気感もしっかり構築できてて、そのクオリティーはかなり高い水準。

銃夢LO17巻ブラックホール
(17巻)
例えばブラックホールの描写など、壮大な景色や建物を描くのも上手い。どっかの惑星然り、近未来の街中然り、宇宙船然り、ものすごくリアル。デザイン力も高いから、あり得ないんだけど、でもあり得そうな現実的なデザインをしてるので読んでて違和感は与えない。だから、すっと近未来SFという世界観にも入り込める。

ただその世界観の構築止まり。ベルセルクもそうですが、画力が高くて世界観の構築は立派なんだけど、それに比例してストーリーが面白いかと考えると、そうでもない。土台は比較的しっかりしてるんだけど、別にそこから何か始まることはない。

残念ながら、評価できる部分はやはり「画」のみ。


総合評価評判口コミ


『銃夢 ラストオーダー』は派手な痛快バトルアクションが見所。とにかく緻密で豪快な画力に圧倒されます。本当にバトル漫画やアクション漫画として読むと面白い。世界観の見事で、『銃夢ラストオーダー』SF漫画として必要な要素も兼ね備えてると言えます。

ただ『銃夢ラストオーダー』のストーリーは凡作以下(と書くとまた語弊を生みそうですが)で、正直面白くない。ハッキリ言うとつまらない部類かも知れません。

個人的な独断と偏見を述べさせてもらうと、画力が高い作者ほど、何故かストーリーに対しても高いハードルに挑戦しがち。でも結果は玉砕するというパターンが多く、『銃夢ラストオーダー』もそのご多分に漏れずといったところ。結局ストーリーを読んでもよく分からないという一言に尽きます。

ファンタジーやSFというジャンルの場合、特にストーリーの風呂敷が大きくなりがちですが、逆に考えると回収するのが大変。結果、目の前に処理すべき膨大な作業量に打ちのめされて、長期休載というブランク期間に突入してしまうパターン。

銃夢LO19巻フォギアとガリィ
(19巻)
ちなみに最終19巻ではフォギアとガリィ(ニセ?)が抱き合って大団円。もう一人のガリィはどっかで旅をしてるようですが、「完結させたこと自体を評価すべき」というオチでしょうか。

ただ『銃夢ラストオーダー』…もとい作者・木城ゆきとの画力の高さだけは天下一品。おそらく誰もが思わず唸ってしまうレベル。そこだけでもおすすめできるSFマンガだと思います。そんじょそこらの漫画家ではマネができるレベルでもクオリティーでもない。まさに『銃夢ラストオーダー』のバトル描写は死ぬまでに人生一度は読んでおかないと損をするレベル。