『ゴールデンカムイ』1巻から6巻のネタバレ感想をレビュー。作者は野田サトル。掲載誌はヤングジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは青年コミック。

最近この『ゴールデンカムイ』はマンガ大賞というのに選ばれたらしい。でも「書店員=本をたくさん読んでる」みたいな発想って何なんでしょうね。書店員っていちいち本の内容を読んでから並べてんの?っていう素朴な疑問。書店員なんて所詮マンガや本を陳列しては片してを繰り返してるイメージ。

正直書店員1000人がおすすめした漫画より、自分がおすすめした漫画の方がよっぽど有益な情報を提供できそう…とか言ってみる。べ、べ、別に、そういった選考委員に選ばれたことがない八つ当たりじゃないかんねッッ!!(●`ε´●)

ま、それはさておきマンガ大賞受賞を記念して、ゴールデンカムイが面白いのかつまらないのか考察してみた


ゴールデンカムイのあらすじ物語・ストーリー内容

日本が近代国家としての歩みを始めた明治時代。舞台はその頃の北海道。

主人公は日露戦争で獅子奮迅の活躍をした杉元佐一。戦場では「不死身の杉元」と鬼神のような戦いぶりを恐れられたが、戦後は戦友の妻・梅子を養うため北海道で砂金掘りに勤しむ。だが既に砂金は掘り尽くされたあと。ひたすら北海道の山奥で川の砂を漁ってるだけの、徒労の日々を送るだけだった。

ある日、杉元佐一は酔いどれのオッサンから与太話を聞く。北海道ではかつてゴールドラッシュに湧いたが先住民族のアイヌ人たちが侵略者の日本人に抵抗するべく、それら大量の金塊を密かに軍資金として貯めていたた。その量たるや2万貫(75トン)。金額に換算すると8000億円

ただ一人の男がアイヌの財宝を全てぶん盗って、とある場所へ隠してしまう。そしてアイヌ人を皆殺しにした罪で、男は死刑囚として網走刑務所に収監されてしまう。つまりアイヌの財宝は未だ行方知れず。

しかし男はこの大量の金塊の在り処を伝えるために、同じ死刑囚たちの背中に地図の一部を刺青に掘った。ただし、あくまで一部のみ。この死刑囚全員の刺青を集めることで、初めてアイヌの金塊の在り処が分かる仕組みになっていた。そして死刑囚たちは脱獄した。

杉元佐一は「脱獄犯や金塊はどうなった?」と質問するものの、酔いどれのオッサンは「それっきりさ。脱獄犯は誰も捕まってない。金塊がどうなったかも誰も知らない」とはぐらかす。いつもの与太話とウタタ寝した杉元だったが、気づくと酔いどれのオッサンが「しゃべりすぎた」と杉元に銃口を向けて立っていた。

鬼神・杉元は軽く返り討ちにしたものの、「さっきの与太話が急に真実味を帯びてきたじゃねーか」と心臓の鼓動が高鳴る。所詮は酔いどれのオッサン。山の中へ逃げたものの、無残にもヒグマに食われてしまった。ただそのオッサンの死体を発見した、杉元佐一は衝撃の事実を知ることとなる。

ゴールデンカムイ1巻 刺青人皮
(ゴールデンカムイ 1巻)
そのオッサンこそがアイヌの財宝の在り処を示したとされる刺青を持つ死刑囚の一人だった。杉元佐一は決意。直後にアシリパというアイヌ民族の少女も加わって金塊探しの旅が始まる。果たして杉元佐一とアシリパは無事アイヌ民族の財宝を探し当てることはできるのか?!…みたいなストーリー。

当然『ゴールデンカムイ』の展開としては、一癖も二癖もある極悪死刑囚たちが次々と襲ってくるワケですが、それとは別に同じくアイヌ民族の財宝を狙う陸軍第7師団(元屯田兵)が行く手を阻む。また箱館戦争で死んだと思われた新選組・土方歳三の魔の手も迫る。つまり死刑囚(アイヌの財宝)を中心として三つ巴の戦いが展開されます。

ちなみにカムイとは「神」のこと。自然現象や衣服や食器など全てにカムイが宿ってる的なことらしく、いわゆる神道的な宗教的概念でしょうか。だから漫画タイトル『ゴールデンカムイ』とは「アイヌの財宝(埋蔵金)」をそのまま意味してて、まさに悠久のロマンが詰まったような漫画。


登場人物が魅力的で個性的

『ゴールデンカムイ』の魅力は、まずキャラクターの面白さ。具体的には、アイヌの埋蔵金の場所を示した刺青が掘られている死刑囚たち。というか、ほぼほぼ殺人鬼たち。とにかく個性的なキャラばかり。

ゴールデンカムイ3巻 二瓶鉄造
(ゴールデンカムイ 3巻)
まずは二瓶鉄造(にへいてつぞう)。熊狩りの名手。二瓶鉄造が山に入れば、そこの熊が全て消えてしまうという逸話がある猟師。口癖が「猟師の魂がボッキング!」。ちなみに前作『スピナマラダ!』にも二瓶というオッサンが登場してるので、作者・野田サトルのお気に入りキャラだったのか。

何故二瓶鉄造が逮捕されたのかといえば、自分の獲物の熊を横取りした連中を「ケモノ以下の貴様らにはボッコで殴りころす!」とブチ切れて、3日かけて山の中に隠れたそいつらを見つけ出してフルボッコ。最後の一人は警官に捕縛され、まさに衆人環視の中、二瓶はそいつの首の骨をへし折った。ヤベーよ。

後述しますが、最後のニホンオオカミとされるレタラと戦って二瓶鉄造は倒されるものの、「だが満足だ」というセリフを遺して死んだ最期がしびれた。

ゴールデンカムイ5巻 辺見和雄
(ゴールデンカムイ 5巻)
辺見和雄(へんみかずお)は見た目こそフツーですが、息を吸うように他人をあやめる。とにかく興奮が止まらない。「煌めかせてください」の吹き出しの位置が笑えます。辺見和雄も最後はある凶暴な動物に倒されるんですが、その最期も面白いです。

ゴールデンカムイ5巻 辺見和雄2
(ゴールデンカムイ 5巻)
弟の死をキッカケにトンデモ性癖に目覚めたんですが、同時に自分も派手に殺されることを望んでるフシがある。だから夢見がちな妄想野郎だったりする。ニシンカスを杉元佐一と一緒に切断してる場面は、まさに自分を想像して「あはああッ!!切れちゃった!!切れちゃったねぇ!?」とハイテンション。直前でドピュッシー済みだったりして、多分コイツは絶対アニメ化できないだろうなと(笑)

この死刑囚たち and アイヌの埋蔵金を追いかけるのは、前述のように陸軍最強部隊・第七師団もいる。この第七師団の将校を務めるのが極悪日本兵・鶴見中尉。ちなみにフルネームを作らず、階級や肩書とセットで呼ぶのは賢いネーミングの付け方。

ゴールデンカムイ2巻 鶴見中尉
(ゴールデンカムイ 2巻)
その結果か分かりませんが、鶴見中尉はとにかく狂気。杉元佐一に対しても「私はお前の死神だ!お前の寿命のロウソクはいつでも吹き消せるぞ」。別の場面では「ロウソクボリボリしちゃおうか」というセリフも笑いました。ちなみに実際に鶴見中尉は結構よく噛み付いてくる。

ゴールデンカムイ5巻 鶴見中尉と二階堂
(ゴールデンカムイ 5巻)
また裏切り者の兵士・二階堂の耳を削いで、それに向かって鶴見中尉は「造反者は他に誰がいる」と大声で発狂。こんな吹き出しの使い方、初めて見たわ(笑)

一応ネタバレしておくと、二階堂は杉元佐一に対する復讐をエサに再び鶴見中尉の手下に入って事なきを得ます。ただ二階堂はこの耳を大事に持ち歩くんですが、鶴見中尉に耳を放り投げられたり、ピアノのフタでバンバンやられたり散々な目に合います。鶴見中尉やめたげてー!二階堂の耳のライフはゼロよ!

ゴールデンカムイ4巻 鶴見中尉
(ゴールデンカムイ 4巻)
そして、この鶴見中尉の野望がアイヌが金塊・8000億円を使って北海道に軍事政権を作ること。THEクレイジー。北朝鮮の国家予算が4000億円前後らしいので現実的には十分可能。

でも鶴見中尉の動機には共感を覚える。

ネトウヨとデヴィ・スカルノが愛した田母神俊雄のようなアホな上官のせいで、田母神のようなアホが指揮したせいで、兵士たちは大量に戦死し、生き残った兵士たちも日露戦争後も不憫な生活を送らされた。鶴見中尉自体も極めて有能だったものの、アホ上官のせいで頭に傷を負ってちょくちょく脳みそ汁がこぼれ落ちる。

そこで不憫かつ憤りを感じた鶴見中尉は「戦友たちへの餞(はなむけ)」と「長期的に安定した仕事を与える」ことを決意する。鶴見中尉が思い描く独立国家は、もはや正当性しかない。完全な悪ではないのが、鶴見中尉の魅力かも知れない。

ただアイヌの財宝を狙う勢力は、まだ別にいる。それが新選組のリーダーだった土方歳三。歴史的には既に亡くなってますが、『ゴールデンカムイ』では生き残ってたという設定。土方歳三の「いいか小僧ども!この時代に老いぼれを見たら【生き残り】と思え」というセリフが印象的。

ゴールデンカムイ3巻 土方歳三
(ゴールデンカムイ 3巻)
とりあえず、めっちゃ強い。愛刀・和泉守兼定でバッサバッサと敵を斬り倒していく。「生き残りたくば死人になれ」などセリフがいちいちカッコいい。波乱の時代を生き延びたからこその迫力と含蓄が込められてる。

ゴールデンカムイ4巻 土方歳三と鶴見中尉 三つ巴の戦い
(ゴールデンカムイ 4巻)
この土方歳三も北海道の独立を目論んでて、まさに三つ巴の戦いが展開される。だからストーリー自体もシンプルで面白い。

他にも同じ新選組だと永倉新八がいて、コイツの「一度この永倉新八に火をつけたら全員の返り血を浴びんと鎮火せんぞ?」というセリフもしびれます。そして、やっぱり永倉新八も強い。
ゴールデンカムイ6巻 永倉新八2
(ゴールデンカムイ 6巻)
バッサバッサと斬り倒した後に、その刀を地面に突き刺す。このダンスのような華麗なステップやリズムは一体なんなのか。ヤダッ!カッコいいッッ!ジジイのくせにッッ!ハゲのくせにッッ!ハゲのくせにッッ!ハゲのくせにッッ!

しかしヒラマツ・ミノルの『アサギロ』とかも読んでると、新選組ってただチンピラの集まりですよね。時代が時代だと暴力も超絶的に煌めいてしまうのか。

ゴールデンカムイ6巻 杉元佐一と牛山
(ゴールデンカムイ 6巻)
この土方歳三組には、死刑囚の牛山も参加済み。「不敗の牛山」という異名を持つ牛山は、足払いで馬をもコカすほどの怪力柔道家。杉元佐一と組み合った時も殺気バチバチ。図体がやたらデカイくせに俊敏性が高く、杉元佐一に一本背負いをかまされた時もクルッと反転して回避。着地した壁はメリメリと
壊れて…みたいな派手な格闘描写が展開されてます。

ゴールデンカムイ6巻 家永と牛山
(ゴールデンカムイ 6巻)
だから死刑囚同士でのバチバチも当然ある。画像左は死刑囚・家永。一見すると女性に見えますが、ゴリゴリのお爺さん。人体を食すことで肉体の若返りを図ってる、これまたクレイジーキャラ(笑)


アシリパちゃんの顔芸が笑える

味方でも面白いキャラがいまして、それがアシリパ。アイヌの財宝を隠した「のっぺらぼう」の娘とされる、謎多きアイヌ少女。ちなみに未だに自分も名前をちょくちょく間違えますが「アリシパ」ではありません。

ゴールデンカムイ3巻 アシリパ
(ゴールデンカムイ 3巻)
普段のアシリパは寂しがり屋だけど生真面目で、しっかりシリアスな表情もできる有能な女の子。画像は杉元佐一がアシリパを置いて、一人で刺青探しに出たものの第七師団に返り討ちにあった。それに対する詰り(なじり)。

このアシリパは美少女ですが、顔芸がいろいろとワロタ。

ゴールデンカムイ2巻 アシリパの変顔
(ゴールデンカムイ 2巻)
生乾きの靴下を履いてる杉元佐一を想像した場面の表情。口曲がりすぎ。

ゴールデンカムイ3巻 アシリパの変顔
(ゴールデンカムイ 3巻)
アシリパが雪山の山中で水を独占しようとガメってる時は、とんでもないパワー。杉元佐一を一向に見ようとしないのが笑えます。ちなみに、このクダリも野田サトルの前作『スピナマラダ!』で登場するネタだったりします。

このアシリパはとにかく食欲がハンパない。例えば、前述の辺見和雄はネタバレしておくと巨大なシャチに倒される。その巨大なシャチを捉えて、杉元佐一たちは竜田揚げとして食う。リアルではどうか分かりませんが、作中だとめっちゃ美味い。

でもアイヌ民族では人間を食べた動物は食せないので、アシリパは食うか食わないか迷う。そこで杉元佐一は辺見和雄に致命傷を与えたのは自分だと説明。それでも確証はないのでアシリパは食べないのかと思いきや…
ゴールデンカムイ5巻 アシリパ しゃちの竜田揚げ
(ゴールデンカムイ 5巻)
なんやかんや理屈をごねてシャチをむさぼり食いよったー!うさん臭いヤツほど多弁ってホンマやったー!

語るに落ちたとは、まさにこのこと。さすがに「人を食ったウェンカムイを食べるなっていうのは単純に気持ち悪いからかもな」はヒドい。食欲のために都合良くアイヌの歴史すら解釈してしまうアシリパ。ヤダこの娘、アイヌの風上にも置けない。

ゴールデンカムイ4巻 アシリパの変顔
(ゴールデンカムイ 4巻)
画像のアシリパはまさに悪代官風。

ちなみに「オソマ」はアイヌ語で「う◯こ」のこと。杉元佐一が持ってるお味噌を勘違いしてた。でも一度食べて味噌の美味しさを知った以降はすっかりハマる。ただずっとオソマと騒いでただけに、素直にお味噌を入れて欲しいとは言えない乙女心。その心理描写が非常にウザい表情であり場面です(笑)

ゴールデンカムイ6巻 アシリパの顔芸
(ゴールデンカムイ 6巻)
お味噌は料理に出された時に原形は留めてませんが、カレーを始めてみた時はアシリパもさすがにギョギョ。明らかに別人としか思えず、どっからこの表情を持ってきてん。中国や東南アジアでこんな人形売ってそう。

また杉元佐一の「それは食べてもいいオソマだから」というセリフも面白い。お父さんが娘に抱くような慈しみを毎回感じます。

ゴールデンカムイ6巻 アシリパ ギャグ
(ゴールデンカムイ 6巻)
でもアシリパはオソマが苦手なくせに、杉元佐一が山中でノグソフィアをした時にはソッコー見に行く。そりゃあ食うのと見るのとでは全然違うけどさー。

前述の死刑囚・牛山のオデコに入った鉄板も取ろうとしたり、たまにアシリパは無邪気もすぎる。落ちたハンペンを牛山のデコ板と勘違いして「チ◯ポ先生!」と泣き叫んでみたり、子供キャラながらにギャグ線が高め。ちなみに何故牛山がチ◯ポ先生なのかは実際に読めばすぐ理解できます(笑)

他のキャラクターも含めて、作者・野田サトルは間の使い方も上手い。だから意外に笑える場面が多くて面白い。不意に来るそれは大人の読者でもクセになる。


展開力も秀逸で読みやすい

『ゴールデンカムイ』は展開も面白い。

アイヌの財宝を巡る三つ巴の戦い」というストーリーの大きな軸と構図が常に守られているので、たとえ新キャラクターの死刑囚が次々と登場しても読者は混乱しない。『東京喰種(石田スイ)』も毎回のように新キャラが登場しますがそれとは一線を画します。

だから展開が至ってシンプルなので、『ゴールデンカムイ』は話に多少の脱線があっても読者は置いてけぼりにならない。「死刑囚たちの死亡=ストーリーの消化」とすら言っても良く、キャラクターの面白さに目が行ってると自然とストーリが進んでる感じ。

さすがに『進撃の巨人(諫山創)』や『HUNTER x HUNTER(冨樫義博)』ほどグイグイと引っ張る展開力はないかも知れませんが、それでも『ゴールデンカムイ』のテンポ感の良さはクセになる。良い意味でそこまで頭を使わされるストーリーではないので、むしろ進撃やハンタより読み進めやすく万人受けする面白さがある。

あと作者・野田サトルは画力が高いからこそ、情報を的確に柔軟に伝える力に優れてる。
ゴールデンカムイ3巻 二瓶鉄造 顔の角度
(ゴールデンカムイ 3巻)
例えば一コマの中に情報を集約することも可能。画像は二瓶鉄造が熊の血の腸詰めを作ってる場面ですが、この角度から人間の表情を描くのは意外に難しいはず。アングルや構図も含めて当たり前の画力が高いからこそ、情報をコンパクトかつ的確に読者に伝えることができてる。

他にも良いタイミングで全体を俯瞰できるコマを差し込んだり、キャラクターの目線の動きだけで誰がどこに位置してるかも漠然と伝わる。マンガ全体もボヤーッと見えてくることで、読者は労せず話の展開に付いていける。コマ割りや構図もワンパターンではないので、それだけでもグイグイ読める。

バトル描写や格闘描写は後述しますが、派手なアクション描写にしても変にゴチャゴチャしてない。こういうことも含めて画力が高いと評価すべきであって、またそういうことが漫画にとって必要な「読みやすい」ってこと。そういったセンスは『テラフォーマーズ』なんかにはありません。


アクション描写だってかっこいい

『ゴールデンカムイ』はアクション描写もイカしてる。前述のように作者・野田サトルは画力が高く、構図やアングルを切り取るセンスも高い。個性的なキャラクターたちが生き生きと動いてることが、更なる面白さに繋がってます。

ゴールデンカムイ3巻 アクション描写のコマ割り
(ゴールデンカムイ 3巻)
コマ割りの使い方もシンプルだけど映像的。真ん中のコマの杉元佐一の視線が後ろを向いてますが、この些細な描写一つで後ろから鶴見中尉が追いかけてきている印象を更に強めてくれます。

ゴールデンカムイ5巻 杉元佐一 vs 辺見和雄
(ゴールデンカムイ 5巻)
杉元佐一と死刑囚・辺見和雄との一戦ではこの描写が好き。テンポ感が見事。この時もやはりキャラの目線の使い方が上手い。

ゴールデンカムイ4巻 日本狼 レタラ 襲撃シーン
(ゴールデンカムイ 4巻)
ニホンオオカミのレタラが二瓶鉄造を襲撃してくる場面。見開きページいっぱいに使った迫力ある描写。目線の軌跡をゆらーっと描く自分が好きな演出ですが、動物だと意外に少ない気がしました。何も考えずに見開きページを描いてる漫画家も多いですが、しっかり左右のページ中央に見所を持ってきてるので、紙のコミックスでもハッキリ見やすいはず。

ゴールデンカムイ1巻 巨大なヒグマ
(ゴールデンカムイ 1巻)
野田サトルは動物を描かせても超絶的に上手くて、同じくヒグマが登場する漫画に『くまみこ(吉元ますめ)』ってのがありますが、全然その比じゃないリアリティ!本来クマって怖いんだよと改めて実感させられる。無言の空間がヤバイ。ヒグマがただのそっと近寄って来てるだけなんですが、この圧倒的なプレッシャーと緊張感がハンパない。

『ゴールデンカムイ』ではアイヌ民族では神扱いされてるからからヒグマが頻繁に登場するんですが、その度に人間を攻撃してくる。画像こそ貼りませんが、ヒグマに攻撃された兵士たちの顔面の皮がベリっとめくれたり想像以上の展開も待ってます。


グルメ描写はアイヌネタの延長線上

ゴールデンカムイ5巻 アイヌ知識
(ゴールデンカムイ 5巻)
『ゴールデンカムイ』ではアイヌ知識やウンチク話が頻繁に登場して、画像のように笑いのネタに使われたりします。

ネット上ではグルメ描写のことが話題になりますが、そういうのもアイヌネタやウンチクの延長線上にあることが多い。アイヌ少女のアシリパがリスや鹿の脳みそを食べさせようとしてくるギャグチックなクダリも、結局はアイヌ文化を披露してるに過ぎません。

例えば土方歳三だと「松前藩が生んだ良い物は、永倉新八と松前漬けだな」と語ったり、あくまで「グルメ」というツールは北海道の歴史を分かりやすく伝えるために使われてる。だからグルメが先にありき、って漫画ではない印象を受けます。

でもアイヌの言葉は馴染みがない言葉ばかりなのでイラッと来ることも多い。正直そんなに連呼する必要があるのか?と個人的には思ったりする。

ただ作者・野田サトルは北海道出身。だから『ゴールデンカムイ』の舞台が北海道であったり、アイヌ民族も設定として使われている。前作『スピナマラダ!』も北海道を舞台としたスポーツ漫画だったことを考えると、野田サトルの北海道愛がとてつもない。まさにそういった愛国心ならぬ愛郷心がモチベーションを上げている可能性が高い。

つまりアイヌネタを減らすことが、もし野田サトルのヤル気を削ぐとしたら自分としても不本意。一応は『ゴールデンカムイ』の世界観の構築にも繋がってるので、どうやら読者は我慢せざるを得ない模様です。

未だに懲りずに「日本は単一民族」と主張する政治家やネトウヨもいます。最近も「アイヌ民族はいなかった」と大騒ぎしてた自民党議員もいました。北海道は「開拓の歴史」と言われますが、実は先住民族であるアイヌ民族からしたらそっくりそのまま「侵略の歴史」。今でも不当な扱いを受ける現代日本のアイヌの価値を高めたい狙いが野田サトルにあるのかも知れません…って、それはさすがに考え過ぎか(笑)


ゴールデンカムイの総合評価・評判・口コミ


以上、『ゴールデンカムイ』の考察レビューをまとめると、今のところはシンプルに面白い。歴史とフィクションとアクションを絶妙に織り交ぜて、不思議と読ませてくれる。少なくとも「つまらない」ということはないか。

画力も高く、アクション描写も派手で引き込まれる。会話力やセリフ力も高くて、キャラクターの一挙手一投足がいちいち面白くて笑える。それでいてキャラが時たま見せる「迫力ある表情」には思わずしびれる。

この考察記事では長々と書いてしまいましたが、実際の漫画はもっとアッサリ かつ グイグイ読めます。ストーリーもゴチャゴチャしてないので、大人でも安心して読める数少ない漫画。欠点らしい欠点が見当たらないので万人の読者におすすめできます。

でも少しギャグ線が高くて全体的に笑える場面も多いものの、意外にグロ描写が連発。だからグロが苦手な読者に『ゴールデンカムイ』はおすすめしません。例えば少年ジャンプだったら間違いなく黒塗りが入る。キャラだって面白いものの、ちょい一線を越えた悪趣味さもあります。あと個人的には『キングダム(原泰久)』などと同様に電子配信が遅いのがうざい。