『鋼の錬金術師』全27巻のネタバレ感想をレビュー。掲載誌は月刊少年ガンガン。ジャンルは少年コミック向けのバトル漫画。出版社はスクウェア・エニックス。言わずと知れた荒川弘の出世作。「ハガレン」といった愛称でも呼ばれてます。

結論から書くと面白い漫画なんですが、とりあえず「鋼の錬金術師は面白いか?つまらないか?」を考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

「錬金術」という必殺技を使うエルリック兄弟が主人公。兄のエドワード(通称エド)と、弟の鎧人間アルフォンス(通称アル)。ストーリーは、その弟アルの身体を元に戻す旅がメイン。

何故弟のアルフォンスが鎧人間(鎧に魂だけが付着)になったかというと、錬金術の禁忌「人体錬成」に失敗したから。錬金術は、基本的に『等価交換』。何かを得れば、何かを失う。つまり、人間を生き返らせようとすると大量の人間の命も必要となる。

だからエドやアルは人体錬成以外の方法論を探すんですが、数千数万の人間の命の結晶である「賢者の石」を頼らざるを得ない?みたいな展開。その賢者の石で作られた敵(人造人間)も、とにかく強い。

要は「錬金術とはなにか?」「等価交換とはなにか?」みたいなテーマが根幹にあって、人間の命の重さとかを問うてる内容。おそらく荒川弘は元農家だから、等価交換という設定は「働かざるもの食うべからず」という延長線上のノリもありそう。


アクション描写がかっこいい!

『鋼の錬金術師』はバトルマンガだからアクション描写もそれなりに豊富。結論から書くと、それらがかっこいい。敵キャラクターになりますが個人的に好きだった、キング・ブラッドレイをメインにピックアップしてみたいと思います。

鋼の錬金術師25巻/スカーVSキング・ブラッドレイ
(25巻)
後半のスカー戦はまさに鬼気迫る。

鋼の錬金術師24巻/キング・ブラッドレイ
(24巻)
眼光の軌跡がヤヴァイ。自分の好物な表現方法。スポーツマンガでも応用できたり汎用性に優れてると思います。


荒川弘の画力の高さ

だから荒川弘の画力がそもそも高い。14巻に付属してくる付録でラフ画が載ってるんですが、まー上手い。

鋼の錬金術師14巻/ロイ・マスタングのラフ画2
(14巻)
老若男女、体型も問わず、どんな人間のキャラクターを描かせても上手い。動きを描かせても上手く、アクション描写にそれが如実に反映されてる。あと動物などの非人間も上手。デフォルメも良い感じに効いていて、人外などキャラクターの種類の幅を広げてる。

是非じっくり見て欲しいと思うんですが、やっぱり「マンガ家は画力」に尽きる。マンガ家志望(もっと言えばプロのマンガ家ですら)の方は、そこら辺で逃げる人も多い。でも、ダメダメ。読者の目は、誤魔化せない。結局画力が低ければ、マネキンの人形のカツラを変えてるだけのような薄っぺらいキャラしか描けない。

鋼の錬金術師24巻/スロウス
(24巻)
スロウスという同じく敵。『電撃』のように見えるのがいわゆる錬金術。物質が変化する過程・状態の時に、そういう電撃が走ったように見える。画力がないマンガ家が表現したら、きっと違和感しか抱かないでしょう。

極端な話、ストーリー自体がどれだけ陳腐であっても、表現力が多彩であれば購入する読者も多いはず。『ワンパンマン』などが好例。


後半の展開が面白い

でもストーリーも面白い。特に後半にかけての展開が見所。中盤から佳境に入るんですが本当に読ませる。

鋼の錬金術師26巻/お父様
(26巻)
「お父様」と称するボスがとにかく最強。何千万人という単位の人間の命を吸収してるんで、ほぼ神様状態。

ちなみに画像は地表から現れてます。いわゆる『真理の扉』を開けてる場面。日食だったか月食だったかの時に上手いこと錬成陣を組むと…大きい月の目が開眼。

だから考えてみると、現在連載中の『NARUTO』も似たような展開。タイミング的にはナルト側がインスパイアした可能性もありますが。ただその作者の岸本斉史と比較すると、荒川弘の画力の高さがイヤってほど伝わる。岸本斉史は画力があると一部で評判ですが、むしろ全然無い方だと思うのは自分だけ?

ただ、この『鋼の錬金術師』は週刊誌ではなく月刊誌で連載されたから、やや一話一話が間延びしがち。後半はそれほど気にはならないですが、序盤は退屈な部分も目立つのは注意。ハガレンに限らず、月刊誌のコミックはリズムが悪いことが多い。そう考えると進撃の巨人は見事にテンポ良く読ませてくれる。


魅力的な敵登場人物たちの名言

また人造人間(ホムンクルス)は敵ですが魅力的なキャラクターも多い。

鋼の錬金術師26巻/キング・ブラッドレイ
(26巻)
アクション描写でもピックアップした、キング・ブラッドレイは渋いオッサン。ムダに人間的で、クールだけど熱い。最期の「なめるなよ。あれ(妻)は私が選んだ女だ」というセリフがツボ。ブラッドレイは三人家族だけど、奥さんだけがフツーの人間。

鋼の錬金術師27巻/グリード
(27巻)
グリードという超絶的なツンデレ野郎の最期も良かった。後半はアルやエドと共に一緒に戦うみたいな展開になるものの、最終的に「お父様」に吸収される。でもそれ反抗してお父様の中で暴れまくる。「遅めの反抗期だよ!親父殿!」というセリフが熱い。

鋼の錬金術師15巻/紅蓮の錬金術士
(15巻)
唯一ショボいと思ったのが、紅蓮の錬金術士。一見強そうに見えますが、ほとんど活躍せず。噛ませ犬的な要素が強く、プライド(セリム・ブラッドレイ)が負ける場面を演出するためだけに登場させられた感がある。もっとまともなバトルシーンが見たかった。


欠点は見当たらないですが…

とにかくトータルバランスが高いマンガ。荒川弘の画力は高い、ストーリーも完成度が高く、キャラクターはそれぞれ魅力的。正直欠点らしい欠点は見当たらない。

ただ悪く言えば、手堅すぎる。ストーリーは完成度が高くて、キレイにまとまってて読後感も良い。だから同時に「予定調和感」も感じてしまう。まるで三谷幸喜作品を観てるよう。あれはこの伏線だったのかなど見事なプロットに感心するものの、じゃあアレを観て笑えるか?と問われると『笑えない』。

画力に関しても、「荒川弘ならもっと頑張れたんじゃね?」と思ってしまう。85点という点数は決して悪くないですが、もし秀才の生徒だったら95点ぐらい頑張れたんじゃね?という見方をしてしまう。

三谷作品ほど極端ではないですが、ハガレンもそれに近い匂いをやや感じる。うまく事が運びすぎてるというか、プロットがキレイすぎても却って面白味を感じさせない不思議。贅沢すぎる悩みですが。進撃の巨人の場合、それが良い感じに無骨。


アニメが神すぎた弊害

とは言え、別が採点を大きく下げる要因にはなってない。じゃあ何故、少し採点を下げてるかの理由を書くと、『アニメ版が神すぎた』から。

ちなみに第一弾のバージョンではなく、第二弾のフルメタルアルケミスト(Fullmetal Alchemist)版。自分はマンガより、先にそのアニメ版を視聴した。これが進撃の巨人並にクオリティーが高く、いやむしろそれ以上の出来だった。ガチで毎週毎週楽しみに観てた記憶がある。

だからどうしても自然とハードルが高くなった。『結界師』もやや少し似た理由。決してマンガ版も面白くないってことはないものの、荒川弘には悪いですがアニメ版よりも見劣りしてしまう。

例えば、15巻前後にあった建物か電柱の上に立ってるリン・ヤオに、キング・ブラッドレイが襲い掛かる場面。アニメ版では、高い位置に立ってるリンの元へ、垂直の壁を猛然と駆け上がってくるブラッドレイを描写がスゴかった。ブラッドレイのスピード感、襲い掛かってくる恐怖感にはただただ奮えた。

でもマンガ版ではどうだったか。そんなシーンは一切ない。気付いたら、ブラッドレイが一瞬で辿り着いてる。そしてハッと驚いたリンの表情。それだけ。「荒川弘はもっと画力で頑張れたんじゃね?」と言いましたが、そういう部分。


総合評価・評判・口コミ


『鋼の錬金術師』の感想をまとめると、素直に面白い漫画だと思います。ただハガレンのアニメ版を基準にすると、どうしてもマンガ版が面白くないように感じてしまう部分もあります。それだけ『アニメ版の衝撃(面白さ)』がありました。でも決して「つまらない」ってことではありません。

ハガレンのマンガ全巻を集めても決して損はしないと思いますが、お金があるならアニメ版(フルメタルアルケミスト)のハガレンを観た方がゼッタイ良い。アニメDVDは高価格だから手が出しづらいのも現実ですが、『ハガレン』と『進撃の巨人(諫山創)』のアニメだけは5万円10万円払うだけの価値はマジであると思います。