『アイシールド 21』全37巻のネタバレ感想をレビュー。掲載誌は少年ジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは少年コミックのアメフト漫画。作者は稲垣理一郎(原作)と村田雄介(作画)。

『アイシールド21』は10年以上前に連載されていたスポーツ漫画ですが、今更ながら面白いかつまらないか考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は小早川瀬那(セナ)。私立泥門高校に通う一年生。気が弱くて、不良生徒たちからパシリの扱いを受けてる。でもパシリ経験が長いせいか、人混みをかき分けて高速で走り抜けることが身に付く。それに目をつけた蛭魔妖一(ヒルマ)たちによって、ほぼ強制的にアメフト部へ入部させられる。

アイシールド21・8巻小早川瀬那(セナ)
(8巻)
ただ身元がバレないように、グラサンのようなアイシールドを着用して試合に出場させられる。そこから『アイシールド21』としての選手生活が始まる…みたいな話。主人公のセナがフィールドを駆け抜けて巨漢選手たちを圧倒していく姿が、この『アイシールド21』という漫画の醍醐味。


魚眼レンズ的試合描写が圧倒

現在『ワンパンマン』を作画してる村田雄介だって、試合描写は迫力たっぷり。ただ個人的に線がキレイすぎて、こういうスポーツ漫画ではどうかと思ったりしますが、マンガ家の中でもトップクラスではないだろうか。

アイシールド21・33巻魚眼レンズ的
(33巻)
特徴的なのが、魚眼レンズ的な描写。後ろの背景を見ると、グニュッとちょっと曲がってる。そのことで全体的に奥行きが広がって、限られた紙面の中で効果的な役割を果たしてると思う。

アイシールド21・25巻試合描写タックル
(25巻)
タックル描写はこんな感じ。

アイシールド21・31巻試合描写キャッチ
(31巻)
キャッチ描写ではコマからはみ出て、迫力あり。

アイシールド21・27巻試合描写キャッチ
(27巻)
ジャンプしてキャッチした後の描写も手抜かりなし。ズザーッと地面とこすれる感じは、むしろ描かなきゃいけない部分。

アイシールド21・27巻試合描写タッチダウン
(27巻)
タッチダウンの描写はこんな感じ。やや魚眼レンズ的。迫力がある。

ただ見開きが多くて、ちょっとスキャンしづらかった。「何であのコマ貼ってないの?」と言われそうですが、大体そういうのって見開きなことが多いので悪しからず。主人公のセナが相手選手を抜いてる場面とか。

そもそも見開きページは「影」ができて読めなくなる部分が増えるので、あまり多用しないで欲しい。ましてやちょうど真ん中の部分に、キャラクターを描写したり重要なことを描写したりして、「おい!」と思うこともしばしば。このことは前からずっと考えてて、機会があれば個別記事化したいと思う。


チームカラーを表現した登場人物やキャラデザが見事

アイシールド21では、色んな個性的なキャタクターが登場。特にデザインが秀逸。明確なチームカラーがそれぞれの高校にあるんですが、それを如実に表現出来てる。

アイシールド21・5巻太陽スフィンクス
(5巻)
例えば、太陽スフィンクスだったら、選手全員がエジプトチックなキャラデザ。でも普通デザインを似通らせてしまうと、キャラの見分けが付きづらくなる。ましてやヘルメットみたいなんを被って髪型を隠してしまうと、なおさら識別が困難になる。

でも、このアイシールド21の場合、そういうことが少ないのがスゴい。

見た目のデザインだけではなく、試合描写にも反映。
アイシールド21・14巻ポセイドン
(14巻)
例えば、巨深ポセイドンではタックルandパスカットする描写だと『大津波』のように表現。こういうのが随所に見られて、アメフトというスポーツを知らなくても、視覚的に楽しめる仕掛けが作れてる。

アイシールド21・20巻ナーガ阿含1
(20巻)
個人的に好きだったキャラクターが、神龍寺ナーガの阿含。めちゃめちゃ反応が早い。身体能力もかなり上。でも天賦の才に恵まれすぎてて、努力や練習はしない。だから試合よりオンナを取るような、絵に描いたように悪いヤツ。まさに中二病がホレそうなキャラ。

アイシールド21・20巻ナーガ阿含2
(20巻)
ヘルメットから飛び出たドレッドヘアーがなびく感じが、素敵。描くのは難しいんでしょうが、「躍動感」を表現できる道具として髪の毛ほど優れてるもんはないのかも。

魅力的な敵キャラクターが多いスポーツ漫画の一つだと思う。


早めに全国大会編を始めるべし!

ただ後半になるにつれ、読むテンションは下がっていく。アイシールド21に限らず、どうしてもスポーツ漫画や部活漫画は、最初の県予選1回戦あたりからコツコツ丁寧に描きたがる。でも、それだと色んな意味で「引き出し」が無くなっちゃう。

アイシールド21・35巻ミスタードン
(35巻)
最後は、アメリカ代表のミスタードンというラスボス的なキャラクターが登場するも、ヒゲもたくわえてリムジンを乗り回すは、さすがに無茶苦茶。却って陳腐で意味不明。もっと言えば、それ以前の日本編の我王というキャラもヒドイ。相手選手を次々と骨折させていって、もはやスポーツちゃうやん、とかなり興ざめした。

どうしても予選の段階で強敵ばっか登場させすぎると、え?全国大会編ではモンスターや宇宙人が出てくんの?みたいにハードルが上がりまくる。こんな有能な選手たちが予選の段階で登場する日本って、どんだけアメフト先進国やねんと笑ってしまうほど。

先日連載が完結した『黒子のバスケ』の場合、最初からキセキの世代という「限界点」を作ってるので強敵は言うほど必要ない。その「限界点」を最低限作者の中で作ってないと、無制限に広がって際限がなくなる。スポーツ漫画はモタモタと律儀に予選を描くな!と言いたい。


試合以外の展開がつまらない

冒頭で「試合描写がスゴい」と書きましたが、ただその試合を読み終わった読後感はフツー。想像以上に「何か」が残らない。なんと表現すればいいか難しいですが、「読み物」としてはちょっと物足りない。画はスゴいけど、展開としては「?」という疑問符。

試合前(試合外)のクダリがあーだこーだ結構長くて、なかなか試合が始まらない。時間を掛けて下地作りを頑張った割に、肝心の試合のボリューム感は薄い印象。見開きページや大ゴマも多用してるので尚更そういう風に感じるかも知れませんが。少年マガジンで言えば、『ダイヤのエース』みたいな感じ。

もっと言えば、展開の煽り方も、やや稚拙。

武蔵や真のアイシールド21(大和猛)といったキャラクターも引っ張って登場させた割に、そんなに大したことない。武蔵の場合だと、高校を退学(実際は休学扱い)した理由もすごい過去が待ってるかと思ったら、単なる父親の怪我。しかも、そこそこピンピンしてて、肩透かしもいいところ。重大なトラウマ的なもんがあるかと思いきや、結構ありがちな理由。蛭魔妖一がいれば、お金という現実的な問題はどうにでもなりそう。

ストーリー展開も付け焼刃的で、話の整合性も気になった。関西の高校は、主人公たちがいる関東よりも強いと言ってたのに、アメフトワールドカップで日本代表に選ばれてるのは、ほぼ関東のメンバー。

主人公のセナが日本国内で最後に戦うのが、真のアイシールド21・大和猛が率いる帝黒アレキサンダーズ。それが関西大会では、無失点の完勝で勝ち上がってくる。あまりに雑すぎる設定で、そこにドラマがない。そんな相手に勝利しても達成感は少ない。なんか違うなーって感じ。ドラマを作ろうとしてるんですが、そのドラマを作れてない印象。


最終回のその後

ちなみに全巻のネタバレ感想記事ですので、簡単にラストの結末を書いておきます。ネタバレが嫌な方はスクロールをズバズバっとお願いします。もう忘れてる人もいるかも知れませんが、最終回はワールドカップユースでアメリカと引き分けという決着から2年後から物語が始まります。

雷門(モン太)や甲斐谷陸たちは炎馬大学へ進学。一足早く入学していたのは、栗田。再び同じようなアメフト人生が始まるのかと思いきや、蛭魔妖一は最京大学へ進学。また武蔵は社会人チーム・武蔵工バベルズへ入団。それぞれ別々の道を歩んでいた。

他にも炎馬大学には金剛雲水、最京大学には金剛阿含や大和猛や本庄鷹、武蔵工バベルズには蛾王力哉にキッド。他にも進清十郎が率いる王城大学など、再びライスボウルを巡っての戦いが始まる。特に最京大学が最強・最凶すぎる。

そしてクリフォードから誘われてアメリカ留学してたセナが最終話で日本へ帰国し、炎馬大学に合流。一網打尽に敵選手を追い抜いて、そのまま完結を迎えます。いわゆる「俺達の物語はまだまだ続くぜ」的なノリのオチ。

ちなみに姉崎まもりは蛭魔妖一と同じく最京大学へ進学してるっぽいです。


総合評価・評判・口コミ


『アイシールド21 全巻』のネタバレ感想をまとめると、序盤の方は毎週リアルタイムで読んでただけあって「面白いマンガ」でした。アメフトという激しいけれども、日本ではマイナーなスポーツをここまで激しく描いた漫画は史上初でしょう。その圧倒的な描写が魅入られます。リアルタイムで読んでいた当初はあまり高く評価されてなかったことに軽く憤慨してたぐらいです。

ただ少年ジャンプそのものを読まなくなったと同時に、『アイシールド 21』も途中から読まなくなりました。連載そのものが続いてたのは知ってたので、あの調子で面白いままかなーとてっきり思い込んでた。

ただ改めて全巻まとめて読み直してみると「あれ?」。試合が始まるまでは期待できる雰囲気だけど、いざ試合が終わると「うん?単調?つまらない?」。作者の村田雄介は画力が高く絵が上手いし、キャラクターデザインなども良いはずなんですが、何故かあまり面白くない…という不思議な感想も同時に抱きます。どこが具体的に悪いかを問われると答えづらいんですが、ちょっと物足りないかなーとも感じます。