『どうぶつの国』全14巻のネタバレ感想。別冊少年マガジン(講談社)で連載されてた漫画。作者は雷句誠。少年サンデーで「金色のガッシュベル!!」を連載してた漫画家。小学館といろいろ揉めたようだから、講談社に移っちゃった感じか。

あらすじ

人間が死に絶えた星「どうぶつの国」。動物たちが暮らす「弱肉強食の世界」だった。そこにたった一人だけ「人間」が存在した。

どうぶつの国3巻全ての鳴き声が理解できるタロウザ
(3巻)
それが主人公・タロウザ。全動物の言葉を理解できる人間。でもそんな弱肉強食の世界につねづね疑問を強く抱いてた。

どうぶつの国4巻弱肉強食ハンタイ
(4巻)
むやみに小動物を殺めるライオンたちに対しては「くだらないことで生命を奪おうとするなぁぁ!」と激怒する。

どうぶつの国5巻2
(5巻)
ただ「動物を食べなきゃいけない現実」も存在。一方ではそれを受け入れる成長さも見せる。凶悪な動物同士によるアクション描写がありますが、どちらかと言えば「メッセージ性」に重きを置いたストーリー展開がメイン。いわゆる、お説教系。

動物に命の重さを問う無意味さ

しかし面白いか面白くないかで言えば、やはり微妙。

表紙から可愛らしいキャラクターが登場するので、『金色のガッシュベル』のようなポップな展開を期待してしまった。でも中身を開けば、めんどうくさいテーマの内容。またリアルな動物しか登場しないので、画的に地味な印象。金色のガッシュベルと比較すると、肩透かし感がハンパなかった。

あと『命の重さ』などを問いかけるのは構わないんですが、ただし「動物相手に説得して意味ある?」というのが正直な感想。逆に動物たちが人間に問いかけるならまだしも、例えば飼い犬相手に「何故、こんな所でオツッコするの!?」と説教してるようなもん。また動物が動物を殺すことにしても、自然の摂理だから仕方なくね?としか思えない。

中盤以降はカオス

しかも中盤の青年編以降は更に「カオス」としか表現できない。序盤の世界観も取っ付きにくいんですが、そこへ更に意味不明な展開が始まる。

どうぶつの国7巻意味不明な敵
(7巻)
例えば、それまで普通の動物が登場してたのに形容しがたい敵が登場。悪い意味で「斜め上」的なSF要素がどんどん追加。設定としては、今の世界は大昔の人類が作ったということらしい

そして、派手なバトルアクションがバリバリ展開されていく。序盤では主人公のバトルらしいバトルは見られなかったものの、途中から「金色のガッシュベルのようにしてください」と編集者に要求されたとしか思えないほど後半の展開はバトル三昧。

どうぶつの国14巻壮絶なバトルアクション
(14巻)
例えば、かめはめ波ーー!!

どうぶつの国13巻壮絶なバトルアクション
(13巻)
レーザー光線がビュインビュイン!!

読者としてもはやこの展開の振り幅に付いて行けない。一体作者はどうしたいんだ!?状態。

描き込み頼み

画像を見てもらったら分かるように描き込み自体は細かくて丁寧。悪く言えば、よく分かんないストーリーの「罪滅ぼし」と言わんばかりに作者アシスタントが懸命に頑張ってくださってる。

どうぶつの国12巻緻密な描き込み
(12巻)
例えばライオンの数とかめっちゃ多い。徹夜で頑張ったんだろうなーと、素人目にも直感できる大変な作業っぷり。

どうぶつの国9巻緻密な描き込み
(9巻)
巨大なビルの断面も、かなり細かく描写されてる。画質を落とした画像では伝わりづらいかも知れないですが、見てるだけで目が痛くなってくる。

つくづく涙ぐましい努力を感じるんですが、逆に言えばそれ以上でもそれ以下でもない。頑張って時間を掛けて描いた以上の価値を見出すことはできず、この「緻密な描写」以外に見所を探すのも難しい。言っちゃえば、頑張ったら平凡な人でもこれぐらいは描けそう?というレベル。

総合評価

金色のガッシュベル!!のような漫画を期待すると失敗します。ホメる所を探すのが難しかった。

Amazonの擁護レビューではやたら「難しいテーマ」という言葉が散見されましたが、個人的には批判の言葉としても聞こえた。テーマ自体は手垢にまみれて、目新しさには欠ける。普遍性もあるテーマですから、そこだけをもって言い訳とするのは難しそう。

また色んな賞を取ったみたいですが、その小難しいテーマを採用したことだけをもって評価された可能性が高そう。逆に考えると、商業漫画としては駄作という裏返し。

どうぶつの国(1)
雷句誠
講談社
2012-11-30

◯展開★2.5◯テンポ★2.5
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2.5
◯76点!!!!