『でぶせん』全9巻のネタバレ感想をレビュー。作者は安童夕馬(原作)、朝基まさし(作画)。掲載誌はヤングマガジン。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックの学園漫画。AmazonのKindleでもダウンロード購入は絶賛可能です。

『でぶせん』は2014年から連載が始まった『サイコメトラーEIJI』のスピンオフ漫画なんですが、つい先日に惜しまれながらも最終9巻が発売。それと同時にhuluで『でぶせん』の実写ドラマも開始されたらしい。

そこで原作漫画の『でぶせん』が面白いかつまらないかを全巻まとめて考察してみました。


「でぶせん」のあらすじ物語 ストーリー内容

主人公は福島満(ふくしま・みつる)。『サイコメトラーEIJI』に登場した有名サブキャラクター。とにかくデブス(ニ頭身)の23歳の男。これまで不遇な人生を歩んできた福島満は、もはやイジメられなかった時代がなかったぐらい。親からも縁を切られて見捨てられる始末。

でも福島満には唯一の楽しみがあった。それが「女装」。心まで女性になりきって町を闊歩することで得られる充足感は何よりも得がたいものだった。福島満にとって人生の希望で、ここまでナントカ生きてこれた。

ただ訪問販売員を解雇されたことで、ついに人生に諦めが付いた福島満は愛しの女装グッズと共に富士の樹海へ向かった。アベノミクス成功とマスコミははやし立てますが、やはり富士の樹海には数々の先客。どうやら日本はまだまだ不景気な様子。

でぶせん1巻 あらすじ1
(でぶせん 1巻)
そこで死に場所を追い求めて樹海を歩き回っていると、福島満はある女性の亡骸を発見する。ただ免許証などを見ると、自分にソックリ。しかも名前も一文字違いの「福島満子(ふくしま・みつこ)」。ほとんどドッペルゲンガー。

この福島満子が持っていた財布には大量の札束。バッグなども高級品ばかり。どうやら福島満子はお金持ちだったらしい。そして福島満子の指にはキレイな指輪。福島満は思わず女装心がくすぐられてハメてみた。

でぶせん1巻 あらすじ2
(でぶせん 1巻)
そうすると福島満の頭によぎったのが「じゃあ自分が福島満子として生きていけばいいんじゃね?」という良からぬ妄想。でも実は指輪をハメたことで、福島満子の霊が福島満に憑依してしまった。そしてあれよあれよという間に、自分の自宅へ福島満を招き入れる。

じゃあ亡き福島満子は一体何を目論んでいるのか?答えはシンプル。自分が志半ばで倒れてしまって続けられたなかった「仕事」を福島満にやらせようとしている。では一体どんな仕事なのか?

でぶせん1巻 あらすじ3
(でぶせん 1巻)
それが不良ばかりが集まる「ド底辺高校の教師」という仕事。いやいや高校生というレベルじゃない。右に角が生えてるヤツとかおるし、画像に載ってませんが舌先が二股に分かれてるヤツとかどこの珍獣アニマルパークだよ。今日日の893さんでも、もう少しマトモだぞ。

果たしてイジメられっ子の福島満は「福島満子」として教師という仕事をこなせるのか!?果たして誰にもバレずに隠し通すことはできるのか!?そもそも無事命を守ることができるのか!?…という内容の少し変わった学園漫画。

だから漫画タイトルも「でぶのセンセー」の略語になります。以下は「福島満子」や「福島満」と表記が安定しませんが前後の文章などで何となく察してください。


主な登場人物は義志沢月人など最凶不良高校生たち

まず『でぶせん』で説明しておかなければいけないのが不良高校生のキャラクターたちでしょう。あらすじの画像に登場した不良は、見た目からいかにもモブキャラだと分かるので割愛。というか詳細な情報は不明。

まず義志沢月人(よしざわ・げつと)。一見するとチャラい学生に見えますが、めちゃめちゃムッキムキで強い。そして弱い者いじめが許せずにイジメっ子をフルボッコしまくる。でも、そういった仕返しがあまりに度が過ぎる。福島満子曰く、「ただ暴れたい理由を探してるだけなのでは?」。

でぶせん2巻 義志沢月人
(でぶせん 2巻)
その結果、空手部や柔道部など体育系部活が血眼になって義志沢月人を狙ってる。体育系の部活は上下関係が激しいのでイジメも発生しやすい。それだけ義志沢月人は色んな「人間凶器」たちをフルボッコにしてきた「人間凶器」そのもの。

しかも義志沢月人の父親は土建会社を経営してるので、一年前に工事現場からダイナマイトを持ち出して学校に持ち込もうとしたことも。一体学校で何を企んでるんや。もはや革命戦士か。

でぶせん2巻 神夜晶
(でぶせん 2巻)
神夜晶(かみや・あきら)という女子生徒だと、何故か左腕がでっかいナイフ。フック船長でもギリギリ鋭利じゃないものを身に着けてるぞ。作中では「百鬼丸」扱い。しかも超絶的なカッティングセンスを持ってるので、動く人間の髪型をキレイに剃り込むことも可能。どこの中国雑技団やねん。

でぶせん1巻 緋熊五郎 くまモン
(でぶせん 1巻)
緋熊五郎(ひぐま・ごろう)だと「人喰いくまモン」という異名が付いてる。「いっぺん味見してみっか」というセリフが笑えない。謎の額の傷は一体どうやって負傷してんと。クマを超えるクマが世の中におるんかと。

ちなみに「くまモン」と掛けた「くるまン。」という自動車総合ブログを漫画以外にも運営してるのでお暇な方はどうぞチェックしてみてください。それと関連するわけではないですが、不良とは言いつつもあまりバイクや自動車を乗り回すシーンは少ない。不良と組み合わせたらまさに鬼に金棒だと思うんですが、これも時代というヤツか。

でぶせん4巻 黄龍力生
(でぶせん 4巻)
黄龍力生(きりゅう・りきお)は名前からしてヤバイですが、見た目はもっとヤバイ。更に言動はヤバババイ。トゲが刺さった同級生に対して「俺がトゲを抜いてやっから」と出したナイフの殺傷力が想像するに余りある。しかも黄龍力生の両親が極悪893というウワサもあって、その真相とは?

もうここまで来ると、「はじめてのおつかい」が可愛く見えるレベル。逆に制服を着用してちゃんと学校へ登校してるだけでも拍手喝采しても良いでしょう。『でぶせん』の内容は基本的にギャグ寄りなので、これぐらい大げさなキャラクターでも違和感はありません。


不良キャラクターにありがちな可哀想な背景

ただ不良キャラには付き物ですが、彼らだって最初から悪者だったわけではありません。暗黒面に堕ちるには堕ちるだけの理由があります。

でぶせん1巻 緋熊五郎1
(でぶせん 1巻)
例えば前述の人喰いくまモンこと緋熊五郎だと、いつも食事は独り。食事もご飯にコロッケを乗せただけの簡素な料理で、もはやペットの餌と言ってもいいぐらいでしょう。くまモンは見た目が怖すぎることもあって、同じ家族でも緋熊五郎が来るとみんなササッと逃げてしまう。こういった寂しさから悪の道に走ってる。

でぶせん7巻 七星心美
(でぶせん 7巻)
他にも七星心美(ななほし・ここみ)だと、自分の薄っぺらい顔が嫌い。母親にもバカにされるほど存在感が薄く、自分自身の顔に対するコンプレックスが積み重なる。それを払拭するようにざわちん並みのメイク術を身につけるものの、そのことで「どんどん本当の自分」が見えなくなっていく。

だから『でぶせん』の内容は福島満子がひたすら不良生徒たちにボコられるわけではなく、こんないわく付きの不良生徒たちの悩みを福島満子が果たして救うことができるのか!?といった展開がメインになります。


福島満子が何とかしてくれる

でも全く心配ない。幽霊となった福島満子が福島満の代わりに生徒たちの悩みを次々と解決してくれる。正確には福島満を誘導していく。

でぶせん1巻 緋熊五郎 福島満1
(でぶせん 1巻)
例えば、人喰いくまモンこと緋熊五郎が神夜晶に刺されそうになった瞬間、その間に立って身を挺して守ろうとする。ただ福島満の中では別にくまモンを守る意図は全くない。でもコレにはちゃんとした理由がある。

でぶせん1巻 緋熊五郎 福島満2
(でぶせん 1巻)
福島満が大事にしている警察手帳入りお守りが偶然くまモンの前に落ちてしまったので、それを必死に守ろうとしただけ。「このコに何かあったらどうしようかと思った」と語ってるものの、あくまで「このコ」とはくまモンのことではありません。犬やネコといったペットでも「子供扱い」する痛い人が世の中には多いですからね(笑)

でぶせん2巻 福島満子 すれ違いコント
(でぶせん 2巻)
福島満はこの警察手帳入りお守りを守るために義志沢月人を火災から守ろうとしたことも。こういった偶然を福島満子がことごとく演出してくれる。だから福島満は教師という仕事において、まずミスや失敗をしない。

他にも家の中で突然ポルターガイスト現象が発生してそのまま逃げるように外出したら、大事なコスプレグッズがピザ配達のバイクに引っかかって結果的に奪われる。そのために必死に自転車をこいで追いかける福島満子。

でぶせん7巻 福島満子 指輪パワー
(でぶせん 7巻)
その結果、ETみたいに自転車でスーンと飛び立つことも。横からは電車がやって来てるんですが、それでも構わず自分のコスプレグッズを追いかける様が華麗すぎる。もちろん生徒を助けるために福島満子に誘導されている。

でぶせん3巻 福島満子 生徒を助ける
(でぶせん 3巻)
またある時には父親から虐待されている神夜晶を救うために、福島満は窓から肉団子状態で華麗に登場する。格闘ゲームだと中国人キャラクターが割りと高確率でこんな必殺技を使いそう。

でぶせん5巻 覚醒 福島満子
(でぶせん 5巻)
もう場合によっては福島満に対して直接憑依。目が逝っちゃってるのはご愛嬌。生徒を説き伏せてみたり、悪者をフルボッコしてみたり、強引に実力行使。もちろん福島満は何が起こったか全く覚えてないので、ちょっとした『名探偵コナン』における江戸川コナンと毛利小五郎の上位互換版。

最初からこうやっとけよってツッコミに関しては、後で批判的な考察をします。


「でぶせん」は割りと王道学園漫画だったりする

だから福島満は何もしてないものの、勝手に周囲の不良生徒たちからどんどん信頼を得ていく。まさに「とんでもないキセキ」を刮目せよといった展開が笑えます。

でぶせん1巻 緋熊五郎 福島満3
(でぶせん 1巻)
人喰いくまモン・緋熊五郎は家族の温かみを知らなかったので、福島満子の温かい言葉に感動して「これからは俺がアンタを家族だと思って守りますから」とすっかり惚れ込んで舎弟・子分。ただ前述のように守ったつもりが一切ない福島満は「おかしな事になってしまいましたね…ありがたいような迷惑なような」と冷や汗状態。たまに動物って訳分からんヤツに懐いたりしますからね。

でぶせん7巻 福島満子 勝手に良いように解釈
(でぶせん 7巻)
こういった様々な経緯で不良生徒たちの悩みを解決していくもんだから、勝手に生徒たちの方から良いように解釈してくれる。「自分ほどのデブスのブタでもこんなに楽しそうに笑えるって言いたいの?あたしなんかまだ全然不幸じゃないって言いたいの?」と散々な言われようすぎて笑っちゃいます。

そういった「すれ違いコント」ばりの奇想天外な展開は笑いに繋がっていて、それと同時に福島満が見事に難問を解決していく小気味の良さが痛快でもある。『サイコメトラーEIJI』時代を知っている読者からは福島満が教師として活躍していく様は一種の爽快さもある。

もちろん展開は究極のご都合主義そのものですが、それでも福島満子の亡霊的なオカルトパワー、女装デブス男が女教師をやれてしまっている非日常性、不憫な日陰人生を歩んできた主人公の人生逆転への期待感、そして何よりの異次元の笑いで全てが許されてしまう空気感が醸成されている。

でぶせん6巻 学園漫画 王道展開
(でぶせん 6巻)
そして不良たちが結果的に更生していく様はさながら「王道学園漫画」のそれが詰まってると言っていいでしょう。少なくとも意外と読み味は変わらない。きっと学園漫画好きの読者なら、あくまでギャグベースという前提で読めばそれなりに面白いはず。


「でぶせん」の最終回と犯人の正体は?ネタバレ注意

ここからは『でぶせん』のオチに関する部分をネタバレするので注意。

でぶせん3巻 犯人
(でぶせん 3巻)
『でぶせん』のストーリーは学園モノ以外にも話の軸があって、それが福島満を狙う謎の犯人の存在。実は福島満子の死因は他殺。しかも、その犯人が同じ高校内にいた。果たしてその犯人の正体は誰なのか!?冒頭で説明した実写ドラマではこのクダリがストーリーのメインになってるっぽい。『サイコメトラーEIJI』がミステリー漫画だったのでその要素も取り込もうという編集者の判断か。

でぶせん9巻 最終回
(でぶせん 9巻)
でも結論から書くと、『でぶせん』の最終回は打ち切り気味に終わってる。最後は福島満子がまさかのFA移籍で他校から引き抜きにあって終了。思わず「プロ野球かよ」とツッコんでしまいました。引き抜きなどはどういった業界でもあり得るんでしょうから、それ自体は別に珍しくもないのか。

でぶせん9巻 福島満子 犯人 朝比奈景子
(でぶせん 9巻)
だから犯人とのラストも一応湿っぽい感じでこそ終わってますが、全体的にはかなり雑に処理されています。一応犯人の正体をネタバレしておくと、同僚の女教師・朝比奈景子。この朝比奈の過去もツッコミどころ満載なんですが、何故福島満子に殺意を抱いているかなど実際に読んで笑ってください。

ただ最終回が打ち切りだったかどうか微妙なのが、武良(むら)という生徒の存在。冒頭からメインキャラクターのように登場してるものの、最後の最後まで悩みが解決されてない唯一の生徒。そもそも悩みが何かすら不明。つまり武良だけ福島満子と大きく絡んでない。

しかも、この武良が福島満子が移籍した高校の始業式に参加してる。また犯人である朝比奈景子も同じ高校に赴任していて、再び殺意をメラメラと燃やす。だから『でぶせん』の続編がありそうな臭い(伏線)がしなくもない最終話。

別に「先生」とは学校の教師に限らない。医者や政治家も「せんせい」と呼ばれる職種。作者の安童夕馬と朝基まさしは『クニミツの政』という政治漫画も描いてたぐらいですから、そこと福島満を絡めても面白いのかも知れません。


個人的に面白かったものの「でぶせん」の残念だった点

『でぶせん』は個人的に面白い漫画でした。だからもう少し連載が続くと思ってました。でもその理由を考察してみると、おそらく主人公・福島満(福島満子)のルックスや言動にありそう。『でぶせん』を面白いと思った自分ですら、どうひいき目に見ても気持ち悪い。

でぶせん2巻 福島満子 勃起
(でぶせん 2巻)
『でぶせん』はギャグに比重が置かれているためか、どうしても福島満の下品な行動が目立つ。画像は股間のビッグマグナムを屹立させている場面(実写ドラマではどうなってるか色んな意味で気になりますが)。

他にも強烈なゲップなど気持ち悪い見た目通りの行動を取るので、何のギャップ感もない。キモいキャラがキモい言動を取ったら、ただただキモいだけでしかない。ギャグマンガだからと言ってやり過ぎも良くない。

もちろん『サイコメトラーEIJI』時代からそういったキャラクターなんですが、やっぱり主人公となれば別。サブキャラクターだと視界に入る機会が少ないですが、主人公は当然ずっと出っぱなし。どこかしらで好きになれる部分は必須。

でぶせん6巻 義志沢月人 福島満子 美化
(でぶせん 6巻)
例えば義志沢月人は福島満子のことが大好きなんですが、月人の中では完全に美化されてる。それでも福島満子はゴリゴリのデブスですからね。本当元がどんだけ酷いんだと(笑)

だから福島満子の「愛着が湧かないルックス」はマンガとしては致命的。特に女性読者の99%は嫌いなはず。せめて化粧で青ヒゲを無くしたという設定を加えるだけでも大分マシになったはず。福島満の中身は良いヤツなので、読者から好かれる要素は十分あっただけに残念。

あとは福島満が一切成長しないのも残念の極み。前述のように亡霊・福島満子の力を借りることで教師として評価されていく福島満なんですが、ただ人間的に社会人的に成長を見せない。あくまで福島満子の力にタダ乗りしてるだけ。誘導されてるだけ。

落ちこぼれ生徒たちが成長していく姿は心地良いものの、その「落ちこぼれ」の中には福島満だって含まれていなきゃおかしいはず。福島満子が憑依する場面などが描かれているのだから、福島満と福島満子を対話させる描写があっても良かった。そこで福島満の考え方などが変化して成長していけば読者は共感を生む。

結局、『でぶせん』を読み終わっても福島満だけは何も変わっていないので、意外と読後感としては何も残らない。もっと辛辣な評価をすると「マンガとしては薄っぺらい」「ストーリーに何の深みもない」。ギャグベースだからと言って、そこを蔑ろにしていいはずがない。もったいない。


でぶせんの総合評価 評判 口コミ


内容が内容なのでもっとサクッとレビューを終わらせる予定だったんですが、ムダに長文になったので最後は短く終わりたいと思います。

『でぶせん』全9巻のネタバレ感想をまとめると、個人的にまあまあ面白い学園漫画でした。キャラクターはそれぞれ濃く、意外に展開は「王道要素」が満載でサクサクっと読めます。『サイコメトラーエイジ』時代から知っていた不憫すぎるキャラ・福島満が、結果的に人生が好転したのも良かった。

でもだからこそ福島満の中身が最後まで成長しなかったのは、ひたすら虚しい。言い換えると「キャラとしても成長してない」って意味。結局指輪ありきの好転でしかなく、福島満子の亡霊なしでも自分で生き抜く力を体得できたらもっと読者の共感を得ることができたはず。福島満はグズキャラだからこそ、そういった機会を利用できなかったのはもったいないの一言。