『チャンネルはそのまま!』全6巻のネタバレ感想。作者は佐々木倫子。ビッグコミックスピリッツ(小学館)で不定期連載されてた、コメディー要素が満載の仕事漫画。

あらすじ

あらすじを簡単に説明しておくと、北海道のローカルTV局「北海道☆テレビ」が舞台。そこで地方のTV局の裏側を映し出してる。報道番組からバラエティー番組まで、その津々浦々が抱えてる問題点であったり、一つの番組を作り上げていく過程、ライバル局との火花、などなどの要素がてんこ盛り。

そして、とにかく主人公である雪丸花子という新入社員が面白い。天然炸裂で、いちいち行動が破天荒。思わずブハッ。まさにドタバタコメディーの典型的な主人公。漫画の大きな軸とも言えて、なかなか読めちゃう漫画。

雪丸花子という天然女

主人公・雪丸花子は今風の表現で言うと、天然。ただ天然を通り越して、もはや『破天荒』。

チャンネルはそのまま1巻/3
(1巻)
例えば☆テレビの入社試験に遅れるんですが、まさかのヒッチハイクで局まで駆け付ける。肝心の試験でも粗相に近いことを散々やらかせる。ただそれなのに何故か採用された雪丸花子。その理由が、☆テレビには代々『バカ枠』というのが存在してる。

チャンネルはそのまま1巻/4
(1巻)
小倉というディレクター曰く、「バカは失敗を恐れない!化けてストライカーになることがある!」。

ちなみに、この小倉自身がバリバリのバカ枠で言動が面白い。
チャンネルはそのまま5巻/2
(5巻)
こんなマリーアントワネット的なコスプレをしたことも。地味にイライラさせる感じが素敵。

その枠で採用された雪丸花子は、まず一番初めに報道番組のレポーターをさせられる。その初っ端からやらかす。大雨で川が増水。そこへ板に乗ったサルが現れ、助けようとするも…
チャンネルはそのまま1巻/2
(1巻)
思いっきり格闘。他にもオオトカゲを捕獲してみたり、お前はイモトアヤコか!

他にもヘリコプターから事故を中継してる最中、高速道路のインターチェンジでトラックが横転。大量の魚を撒き散らす。それを見て雪丸花子は「まるで、ちりめんジャコのようです!」と一言。確かにそれっぽいだろうけど!

同期の山根一には笑顔で、
チャンネルはそのまま5巻/1
(5巻)
「連続放火犯の再現ビデオに出て!犯人役で!」
ここに悪気がないのが素敵。

中継局のアンテナが吹雪で凍った時には、
チャンネルはそのまま6巻/1
(6巻)
思いっきりタイマツで溶かそうとする。おそらくアンテナは繊細な器具だから、きっとこんなことをしたら壊れるんでしょう。そしたら全世帯に電波が届かなくて、もう番組を制作するどころじゃない。あな恐ろしや。

この一つ一つに全部悪意がないだけに、巻き込まれる周りに同情しか禁じ得ない。しかもハプニング要素も満載で、雪丸花子がいる時にだけ何故かちょうどタイミングよく起きる。例えば大地震が起きると、監視カメラから撮影したようなTV局の内部映像が流れがち。雪丸花子がタイミングよく遭遇。だから、その時の雪丸花子の一連の不可思議な行動が全北海道に放送される。

まず地震になかなか気付かない。そして気付いた時に最初に取った行動が、コーヒーをゆっくり飲み干す。慌ててどこかに移動するも、しばらくして焼き芋を取りに戻る。これが東京のキー局を通して全国に流れちゃうっていう。雪丸花子の天然っぷりが豪快で。でも狙ってる感は少なく、すごく自然で良い。

根底にあるTVマン魂!

こういう天然さだけだったら、ただのギャグ漫画っぽく終わりがち。でも、雪丸花子には純粋無垢な「TVマン」としての熱い魂がこもってる。だから、すごい好感が持てる。

最終6巻だとお店を取材した時、テレビ局のスタッフたちは「放送日を教えない」らしい。もし撮影した情報がライバル局に流出すると、先んじて同じ放送をされるのを防ぐためだとか。同期の山根一も「誰のために番組を作ってるのか」と悩む。

ただ、それを雪丸花子は「だって是非見て欲しいから」とアホ面丸出しで、アチコチに教えまくる。基本的に社会人としてはアウツなんですが、職業人としては全然アリ。むしろそのルール自体が無機質で冷たく、間違ってんじゃねーかと思わせるバカのパワーが凄まじい。

そういう仕事に立ち向かうシンプルな姿勢・魂が根底にあるので、この「天然さ」が世相を切るような気持ち良さも伴う。最初に「笑い」がありきの天然ではなく、結果的に「笑い」に繋がってる天然。だから良い。それらが雪丸花子というキャラを作り上げてる。


◯展開★4◯テンポ★3.5
◯キャラ★5◯画力★4
◯全巻大人買い★4
◆86点!!!!