『秒速5センチメートル』全2巻のネタバレ感想をレビュー。作者は新海誠(原作)と清家雪子(作画)。新海誠の同名小説をコミカライズしたものらしい。掲載誌は月刊アフタヌーン。出版社は講談社。ジャンルは青年コミック。後述しますが、あらすじ的には恋愛漫画っぽいですが、どちらかと言えば青春漫画っぽい側面が強い?


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は遠野貴樹。東京のとある小学四年生。

秒速5センチメートル1巻 篠原明里
(秒速5センチメートル 1巻)
ある日、篠原明里という女子生徒が静岡県から転校してくる。実は遠野も長野県から転校してきた過去もあって二人は仲良くなる。学校のクラブを何に選択するか、図書館で一緒に本を読み合ったり、他愛もない時間が二人を満たした。

6年生に進級すると受験シーズン。二人は同じ中学へ行くことを約束し合った。しかし、篠原明里は再び父親が転勤をすることとなり、卒業をキッカケに栃木県へ引っ越すこととなる。その日から遠野貴樹とはギクシャク。ろくにお別れを言うこともできずに、二人は離れ離れになってしまう。

そして中学生になった遠野貴樹に、ある日、篠原明里から手紙が届く。二人の歯車がまた動き出したかに思えたが、今度は遠野貴樹が鹿児島・種子島へ引っ越すこととなる。そこで二人は本当に離れ離れになる前に、再び会うことを決意。

遠野貴樹と篠原明里の運命は?…みたいな展開。


地味にツッコミどころ満載

遠野貴樹は社会人になって、水野理紗という彼女と付き合う。でも篠原明里のことが忘れられずに、水野理紗に対して素っ気ない態度を取ってしまう。

秒速5センチメートル2巻 遠野貴樹と水野理紗1
(秒速5センチメートル 2巻)
結果的に、水野理紗からは「貴樹くんの気持ちが分からない」と告げられてしまう。そして「一番見せたくない部分を見せて」と言われた遠野貴樹は篠原明里との思い出が残る岩舟駅に二人は向かう。

秒速5センチメートル2巻 遠野貴樹と水野理紗2
(秒速5センチメートル 2巻)
でも水野理紗を岩舟駅にまさかの置き去りにする遠野貴樹。

秒速5センチメートル2巻 水野理紗が置いてけぼり
(秒速5センチメートル 2巻)
最終的にド田舎の道端でポツンと佇む水野理紗。遠野貴樹、コイツひでー!(笑)

他にも、篠原明里が再び転校することになった事実を遠野に公衆電話で伝えるクダリ。篠原は焦って十円玉を入れることができずに電話が切れてしまって、二人の会話はそれで終わり。

何故、小学生が公衆電話なのか?別に篠原もお金があるんだから、もう一度電話を遠野にしたらいいやん?電話が切れた後、何故か篠原は電話ボックスでうなだれたまま。

小学生時代に篠原明里が栃木県へ転校するときも、父親の仕事の都合でってことなら何故小学校を卒業するまで待ってたのか…などなど展開にご都合主義的な部分もチラホラ。


良くも悪くも小説的

『秒速5センチメートル』は良くも悪くも小説的。基本的に「何も起きない」と言って構いません。

とにかく遠野貴樹が何も動こうとしない。高校に入っても大学に入っても社会人になっても、篠原明里に対してアプローチを試みない。遠野貴樹はひたすら努力せずに、ひたすら流れに身を任せてるだけ。ほぼほぼ惰性だけで生きてるくせに、漠然とした篠原明里へ想いや悩みだけを抱えてる。これが非常に面倒くさくて、キャラクターに共感することを邪魔してる。

中学生時代、栃木県にまで篠原明里に会いに行った後も、二人は手紙のやり取りをする。でも次第に疎遠になっていく。共通のネタがない(互いの現在を掴みかねて)からってことなんですが、遠距離恋愛だからこそ現況を伝え合うのが手紙なんじゃね?むしろ同じ高校生なんだから受験など共通のネタが多いんじゃね?

原作小説が2007年に発売ってことで、一応ケータイ(メール)というツールもあるわけです。確かにありがちな別れ方(フェードアウト)ではあるかも知れませんが、だから何なんだ?って話。高校生だったらバイトして金貯めて、篠原明里に会いに行けよってのが正直な感想。

そういう過程が色々とあって、何か明確にフラれるような出来事があればまだしも、遠距離恋愛が成立しない理由が弱い。そのくせ遠野貴樹は「どうすればまた君に会えるんだろうか」と社会人になっても篠原明里のことをウダウダと忘れられない。いや、キメーよ。

『秒速5センチメートル』では遠野貴樹の「ほろ苦い初恋」を描いてるのかも知れませんが、さすがに根暗にも程がある。自分も中学生の頃に好きだった女の子をたまに思い出すことはありますが、だからと言って、オッサンになって常に思い続けてることはない。「え?コイツ、キモくね?」の一言に尽きます。

遠野貴樹は篠原明里に「宇宙飛行士になることを応援」される。結果的に宇宙飛行士になる努力すら諦めてしまった遠野貴樹。篠原の期待を裏切った自責の念と、将来の夢を諦めた自分に対する歯がゆさが遠野は常に支配してる。

だから『秒速5センチメートル』では「宇宙への憧れ」がテーマの一つだったりすると思うんですが、これだと恋で悩んでるのか夢で悩んでるのか、どっちの比重の大きいか分かりづらい。オチでは遠野が少しだけ「自分の道を歩み出そう」とするものの、キッカケは水野理紗置き去り事件。何故現カノをこっぴどく振ったことが、前向きに歩き出す理由に繋がるのかも感覚的に理解しづらい。

他方では、篠原明里は大人になって立派に成長して、遠野貴樹の幸せを願ってる。この対比がより遠野貴樹の男としての惨めさを象徴してる。でもその「惨めったらしさ」がマンガのメインや主軸になることも多々ありますが、そういうわけではない。だから全体として何がメインなのかが分からない。

小説はダラダラと書くことが真骨頂みたいなところがあるので、「何も起きない」ことが許されている部分があります。でもマンガでは「何か起きない」と面白くないと思いました。またグズグズとした心理描写もリアリティや後味に繋がったりもするんだと思いますが、マンガだと2巻というボリュームはあまりに短く、余韻という部分では弱め。


総合評価・評判・口コミ


『秒速5センチメートル』のネタバレ感想をまとめると、さして面白い漫画ではありません。マンガ的な盛り上がりに欠けて、コレ!と呼べる確固たるイベントや見所は少ない。主人公・遠野貴樹もストーカー気味で少し共感しづらい。それっぽく「切ない恋」を描けてるような気もしますが、男が好感を持てないのは致命的だと思いました。女なら尚更共感しないはず。「泣ける」とは程遠いか。

秒速5センチメートル1巻 桜が落ちる速度
(秒速5センチメートル 1巻)
ちなみに漫画タイトル『秒速5センチメートル』の意味は「桜の花びらが落ちる速度」のこと。最初はキスする速度(唇と唇が触れ合うまでの時間)を意味してるのかと思ったんですが、これも分かりそうでよく分からない。二人が出会った時期や桜が散り始める時期を意味してるのか。桜が散る儚さや二人の別れを意味してるのか。一体何なのか。

遠野貴樹の成長するスピード・遅さを表しているのなら、「時速5センチメートル」の方が適切だった気もします。時間的な変遷を意味してるなら、遠野貴樹の歩みはそれぐらい遅い。それっぽいことを描こうとはしてるんでしょうが、最後まで「それっぽい」だけのマンガでした。

他のブログがレビューして、その記事にいっぱいコメントが付いてたので何となくレビューしてみた。特に後悔はしていない(笑)