『ボールルームへようこそ』1巻から8巻のネタバレ感想をレビュー。作者は竹内友。掲載誌は月刊少年マガジン。出版社は講談社。ジャンルは少年コミックの社交ダンス漫画。競技スポーツの一種ということで、一応漫画のジャンルはスポーツ漫画に設定してます。

このボールルームへようこそが面白いか、つまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

ボールルームへようこそ5巻 精神的に弱い富士田多々良
(ボールルームへようこそ 5巻)
主人公は富士田多々良(ふじた・たたら)。ただ頭が良いわけでも、運動神経が抜群だったわけでもない、いたって普通の中学三年生。精神的にも弱気で、性格はウジウジしてた。

だから不良生徒によく絡まれることもあったが、ひょんなことからダンススタジオを経営する仙石要に助けられ、富士田多々良はそのまま社交ダンスの道へ歩み出す。

ボールルームへようこそ2巻 コマ割り
(ボールルームへようこそ 2巻)
何気なく始めた社交ダンスだったものの、富士田多々良は才能を遺憾なく発揮する。確かに運動神経は良くなかったものの、仙石要に教えられたダンスの振りをすぐ覚えるなど観察力や洞察力に長けていた。

それ故に肉体が思い通りに追いつかないことに歯がゆさも感じたが、富士田多々良は何より踊り手として一番重要な「情熱」を内に秘めていた。花岡雫や兵藤清春といった強豪選手も触発され、富士田多々良はメキメキと頭角を現していく…みたいなストーリー。8巻までのあらすじをネタバレしておくと、富士田多々良は高校生になって緋山千夏という女生徒とコンビを組んで奮闘中。

ちなみに『ボールルーム』とは日本語で「舞踏室」という意味。要するに社交ダンスそのものを指してる。だから漫画タイトルは「富士田多々良くん、社交ダンスの世界へようこそ」的な意味。


ダンス描写が熱い!すごい!

『ボールルームへようこそ』の面白さがあるとしたら、それは「ダンス描写の熱さ」にあります。

ボールルームへようこそ5巻 自己主張の塊
(ボールルームへようこそ 5巻)
社交ダンスはとにかく自己主張してナンボの世界。作中の表現を使えばまさに「俺を見ろ!!」という一言が似合います。だから一つ一つのダンス描写がたぎってる!ちなみに女子の露出度が高く、男の踊り手と密着することもあって多少エロいようなエロくないような。

ボールルームへようこそ3巻 エンジンかかれ
(ボールルームへようこそ 3巻)
富士田多々良がスタートする直前、「曲 かかれ!」「体が!」「熱くなりたがってる!」といったコマ割りの使い方も上手い。読んでるコッチも思わずテンションが上がる。先程あらすじに貼った2巻の画像も好例。

ボールルームへようこそ5巻 ジャンプ1
(ボールルームへようこそ 5巻)
画像は仙石要がジャンプしてる場面。到達点の高さもさることながら、敢えて静止したように描くことで動きのキレが表現されてる感じ。また斜めったコマ割りや観客に効果線をシャシャっと描くことで、ダイナミックさも同時に表現されてます。

ボールルームへようこそ4巻 楽しい表情
(ボールルームへようこそ 4巻)
主人公・富士田多々良と赤城真子がジャンプした場面も、足だけシャシャッと動かしてる。空中に浮いてるけども、そこでピタッと止まってる。滞空時間の長さを表現するのも難しそうですが、しっかり表現されてる感じ。

主人公・富士田多々良ではないですが、まさに「一瞬」を捉える力がすごい。その「一瞬」が創り出す輝きが、この漫画の面白さの根源と言えます。

ボールルームへようこそ3巻 美しい艶めかしい
(ボールルームへようこそ 3巻)
一方でこういった艶めかしい描写があったりして、意外に女性読者もビビビッと来そうな表現も多いです。


富士田多々良などのキメ顔と表情力

ただ動きのアクションだけではなく、刹那が見せる表情もカッコいい。むしろ表情の力強さがダンス全体の躍動感を下支えしてる感もあります。

ボールルームへようこそ1巻 兵藤清春の表情
(ボールルームへようこそ 1巻)
富士田のライバルになるであろう兵藤清春の表情。富士田多々良にものすごい踊りを見せつけられて、それに発奮されるカタチで練習してる場面。

ボールルームへようこそ4巻 富士田多々良と赤城賀寿
(ボールルームへようこそ 4巻)
富士田多々良が赤城賀寿と戦ってる場面。二人の必死さがビンビン伝わってきて、これだけでも胸熱。

ボールルームへようこそ7巻 富士田多々良と緋山千夏
(ボールルームへようこそ 7巻)
富士田多々良が吹っ切れて緋山千夏をリードした瞬間のキメ顔。ややもすれば滑稽に写ってしまいがちな表情でもありますが、目の力強さがそういったものを全部押さえつけてる。

ボールルームへようこそ4巻 楽しい表情
(ボールルームへようこそ 4巻)
先程貼った画像もそうですが、社交ダンスは常に笑顔でなきゃいけない。だから一歩間違うと、ただただシュールな光景になりがち。リアルな社交ダンスですら観てると、そう感じてしまう瞬間はなくはない。でもそれを一切感じさせないのは、作者・竹内友の画力がなせる技だと思われます。

他にも3巻で結果的に大会で負けてしまう富士田多々良。やはり経験の差がモロに出てしまう。でも自分の頭の中では「理想のダンス」は思い描けてる。だからこそ「何でもっとダンスに出会わなかったんだろう」と悔し涙を浮かべる富士田多々良の表情とかもグッと来ます。

5巻に「自分は下手と肝に銘じろ、自分を下手だと思ってるうちは人は成長する」というセリフがあるんですが、これは何気に作者・竹内友が実践してて、作者本人のリアルの本音なのかも知れません。漫画でもきっと通じる話。


総合評価・評判・口コミ



『ボールルームへようこそ』は、社交ダンスの豪快さや熱さを紙の上に見事に落とし込んだ漫画。「社交ダンスって面白い!」と素直に思わせてくれます。漫画は「音がない」のでダンスや音楽を表現するのは難しいと思うんですが、全てのダンス漫画のお手本が詰まってると言ってもいいぐらいかも。

ただストーリーに関しては、ややモタモタしてる印象。序盤こそ流れはスムーズですが、富士田多々良が高校生に上がった以降は、やたらとウジウジしてる期間が長い。パートナーの緋山千夏と上手くいったりいかなかったり、全体的にテンポ感がない。

1巻の始まりはダンス界最高峰の全英選手権決勝で、富士田多々良が花岡雫とともに喝采を浴びるシーンから始まってる。どう考えても緋山千夏は一生のパートナーにはなり得ないことは明らか。あんまりグズグズと展開を引っ張る意味を感じません。

最近の『ボールルームへようこそ』は無理やり試練やハードルを作ってる感があるので、小難しいことを考えずに主人公をサクッと成長させた方がいい。富士田多々良が強くなっていく姿が、この漫画の一番の見所であり面白い部分のはずだから、展開はもっと単調なぐらいでいいと思う。

また富士田多々良と花岡雫と海外で喝采を浴びてる場面をゴールに設定してるとしたら、あくまでそこは「通過点の一つ」と考えた方が作品全体はこぢんまりしないはず。発行間隔が半年から一年に伸びたことを考えると、いろいろ作者・竹内友も悩んでるのかも知れません。

とはいえ、『ボールルームへようこそ』は面白い漫画。現在少年ジャンプで連載中の『背筋をピンと』という社交ダンス漫画がありますが、きっと参考にしてるはず。もしこのマンガがなかったら『背筋をピンと』も存在してなかったでしょう…と勝手に思ってます。