『ブルージャイアント-BLUE GIANT-』1巻から6巻のネタバレ感想をレビュー。作者は石塚真一。掲載誌はビッグコミック。出版社は小学館。ジャンルは青年コミックの音楽漫画。個人的に気に入っているマンガなので「ブルージャイアントが面白い漫画か」を考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

ブルージャイアント2巻 宮本大
(2巻)
主人公は高校3年生の宮本大。元々はバスケットボール部だったものの、近藤周平という友達にジャズのCDを借りてからというもの、すっかりジャズの魅力にハマる。バスケは身長など肉体的な限界はあるものの、きっと音楽に限界はないと考えてる。そこから独学でひたすら川べりでサックスを一人練習しまくる。

ブルージャイアント4巻 最初から咲いてる
(4巻)
ただ宮本大は途轍もない才能を秘めている。途中からあるオッサンに師事するんですが、宮本大はテクニックは荒削りながらも、ジャズに「必要なもの」を最初から全部持ってる。努力の才能も含めて、ジャズを愛する才能も含めて、宮本大自身がハマった以上に聴衆はジャズに魅了されていく。

この宮本大が世界一のサックス奏者を目指す…というすごくシンプルなストーリー。ちなみに「ブルージャイアント」の意味は作中の説明だと、世界一輝くジャズプレイヤーのこと。あまりに高温なため赤を通り越して青く光る巨星のことだそう。


宮本大のサックス描写に泣け!

とにかく宮本大がサックスを吹いてる描写がすごい。思わず泣ける。音楽を聴いてると無性に涙が出てくることがありますが、『ブルージャイアント』を読んでるとまさにそんな状況になる。

ブルージャイアント1巻 サックス描写・光明1
(1巻)
敢えて音符などを描写しないことが多い。でも何となくグイッと引きこまれていく感じが見事。見えないものは見えないものとして描く勇気。画像は転校する光明という友達のために最後のお別れの一曲を吹いてる場面。

ブルージャイアント6巻 音楽と会話
(6巻)
説明描写はあるものの、そういった場面でも音符を描くことは少なめ。説明とは言っても、所詮は一言二言。それでも状況が鮮明に頭の中に浮かぶ。

ブルージャイアント2巻 音楽と会話
(2巻)
この説明描写も一種音楽と会話しているようで、テンポ感も素晴らしい。


聴き手の反応を描写するのがコツ?

宮本大のサックス描写のすごさをどう説明すればいいかは難しいんですが、自分なりに分析してみると「聴衆の反応」を描く上手さに秘訣が隠されている気がします。

ブルージャイアント1巻 サックス描写・光明2
(1巻)
先程のクダリでは、転校していく光明は思わず号泣する。ここでもやはり音符らしきものは描かないものの、宮本大がどういった演奏をしているかは何となく伝わってきます。

ブルージャイアント2巻 聴き手の反応を描写
(2巻)
宮城県仙台市にある数少ないジャズバーの店長は思わず「こんな音の店にしたかったんだよな…」とシミジミ目頭を押さえる。このジャズバーでは出資者やお客の意向で、ムーディーで静かなジャズしか流してこなかった。でも宮本大にジャズの真髄を垣間見た。

後述しますが宮本大は高校卒業後に世界一のジャズプレイヤーになるため上京する。でも宮本大の妹は寂しいから上京してほしくない。
ブルージャイアント4巻 宮本大の妹
(4巻)
ただ宮本大が家族の前で別れの一曲を吹くのを聴いて、「もう兄ちゃんは帰って来ないんだ」と気付く。あまりにすごい演奏から「宮本大の本気度」と「世界一になれるという説得力」を幼いながらも聴き取れた。必死に寂しさを噛みころし、でも演奏のすごさ自体にも涙する。何とも言えない反応が泣ける。

ブルージャイアント4巻 聴き手の反応を描写
(4巻)
最初は若造の演奏なんて…と背中を向けてたツンデレおじさんも、宮本大の演奏に次第に身体の向きが変わっていく。そして若干前のめりがちに宮本大の演奏に聴き入る。周辺の情報を描くことで対象を描く技法はありますが、それを音楽マンガで見事表現できている気がします。巧み。


上京編以降はやや停滞気味?

ただ上京編以降はやや微妙。

ブルージャイアント5巻 沢辺雪祈
(5巻)
宮本大は沢辺雪祈という似たような天才ピアニストと組む。ちなみに沢辺雪祈も最初に宮本大のサックスを聴いたときは、思わず涙する。テクニックや経験を超えた「何か」を宮本大は持ってる。

この沢辺だけだったらまだいいんですが、他にも玉田がドラム担当として仲間に入る。玉田は大学進学と共に、宮本大と同じく宮城県から上京した同級生(バスケ部員?)。でもドラム素人。玉田の両親はドラム教室か何かを開いているようですが、少なくとも宮本大や沢辺クラスには追いつけない。言っちゃえば、足を引っ張ってる。

ブルージャイアント5巻 宮本大
(5巻)
一応、宮本大は「音楽をやりたいって気持ちに、お前はノーって言うの?」と玉田の加入反対を主張する沢辺を説得するんですが、マンガとして考えると大げさに言えば「誰が主人公なの?」という気持ちも芽生えます。

『ブルージャイアント』は宮本大という主人公の物語。音楽・ジャズに対する情熱や才能が圧倒的。その宮本大がシンプルに世界一のジャズプレイヤーに成り上がっていくストーリーで良い。そこに「玉田」という要素は果たして必要なのか?玉田は一応それなりに実力を身に付けるものの、それはそれで宮本大の輝きを奪う。

下手に丁寧にストーリーを描こうとしてる節もあって、それがダイナミックさを奪ってる感じもします。もっと大胆に独善的にストーリーを進めて欲しい。

総合評価・評判・口コミ


何か分からないけど、『ブルージャイアント』は無性に涙腺が刺激されるマンガで面白い。音楽が持つ得体の知れない「感動」がこのマンガにはある。まさに音楽の真髄や音楽の真骨頂を紙の上で投射し、マンガという一つの商品に昇華できている気がします。

これを「表現力」というのなら、これぞ「表現力」と呼ぶのでしょう。前作『岳』もいずれレビューしたいと思いますが、作者・石塚真一はすごいマンガ家だなーと思いました。