『アルスラーン戦記』1巻と2巻のネタバレ感想。別冊少年マガジン(講談社)で連載中の歴史物。原作は田中芳樹が書いた歴史ファンタジー小説。作画は荒川弘。このオバちゃん、どんだけ働くねん。2015年4月からはアニメも放送。

ちなみにアルスラーン戦記という小説が発表されたのは30年近く前だそう。だからコミカライズされたのも実は今回の荒川弘で二回目。最初にコミカライズ化されたのが1990年代前半ということからも、いかに古い小説であるかと同時に、長く支持されてる人気作品であるかも分かると思います。

あらすじ

舞台はパルスという王国。主人公は、その王国の王子様がアルスラーン。つまりタイトルの『アルスラーン』は主人公の名前。経済的に発展しててかなりの軍事力を誇る。

アルスラーン戦記2巻ルシタニア軍
(2巻)
パルスがルシタニアという国家と戦争を起こすものの、かなり苦境に立たされる。ルシタニアは、イアルダボート教のみを崇める宗教国家。また同時に貧困であるが故、ルシタニアの人民はちょくちょくパルスで奴隷として働かされてる。そういう背景がありつつの、ピンチ。

ただ二国のシンプルな対立構造の裏には…
アルスラーン戦記1巻仮面の男
(1巻)
ナゾの仮面の男が暗躍してたりして、だからファンタジー要素が前提にありつつも、やや本格的な歴史漫画として読んでもそれに耐えうるかも。原作小説が未だに楽しまれてることを考えると、クオリティーの高さを容易に窺い知れる。

主人公のアスラーンは、気弱で優しい。一方、父であるパルス王・アンドラゴラスは、豪快で豪胆。対照的な二人だから、なかなか折り合わず齟齬が多い。親子的な対立が解消されないまま、戦争に突入。主人公アルスラーンの「成長物語」的な側面も描かれるんだろうと思う。

馬描写が圧巻すぎる

架空の世界観ではありつつも、おそらく中世ヨーロッパあたりぐらいを想定してそうな世界観。だから馬を乗りこなして戦う騎士が多数登場。とにかく、その「馬」の描写が見事。

アルスラーン戦記1巻馬
(1巻)
馬が急ブレーキかけてる場面ですが、並大抵の画力では描くのは困難な描写だと思う。

アルスラーン戦記2巻戦闘描写2
(2巻)
戦闘描写も馬が駆けてる疾走感も手伝って、更に迫力が増す。

おそらく荒川弘でなければ、小説の世界観は体現できなかったかも。

グロい描写もチラホラ

とは言え戦争が展開のメインになることも多いのでグロ描写も目立つ。実際アニメでもよくこんなん放送しますわ…というBPOに挑戦的な描写も。

例えば、上記に貼った急ブレーキしてる馬の画像。そこで兵士たちは油まみれの落とし穴に落とされて、焼き殺される。他にもグチャっとかべチョっとか。荒川弘の絵柄はポップだから、そこまで残酷に写らないかも知れないが、苦手な人はやや注意。

アルスラーン戦記2巻戦闘描写1
(2巻)
額に矢がブスッみたいな描写もあったりする。

ただコマの使い方は上手い。別々の角度・構図から描いてるコマのはずですが、頭の位置はほぼ同じに描くことで、屋が射抜かれる方向と読者の視線移動が同じになる。結果的に読みやすくなって、ダイナミズムやテンポ感を生んでて単調さも減る。兵士の視線の方向が刺さった矢に向けてないことで、唐突感や矢のスピード感が現れてる。

総合評価

架空の歴史物として読んでも、そこそこストーリーも楽しく読めた。原作小説は読んだことはないですが、荒川弘が作画を担当してるからこそ高いクオリティーに仕上がってる感じもする。ちゃんと小説を読み込んでアルスラーンの世界観を理解した上で表現できてる印象。ちなみに1巻のラストで荒川弘と田中芳樹の対談インタビューも載ってるんですが、荒川弘はソッコーハマったそう。

例えば、荒川弘は一人一人のキャラクターを個性的に描けてる。アルスラーン戦記では登場キャラクターが多いんですが、そこまで混乱しないのも作画担当に描き分ける力があってこそ。
アルスラーン戦記2巻ナルサス2
(2巻)
ナルサスという戦略家は個人的にツボ。頭の回転も早く性格は紳士的で、女性読者は好きそう。ちなみにナルサスは絵を描くのが下手くそ。個人的には勝手に美形ダウンタウン浜田と呼んでます。

でも難点を挙げるとしたら、オリジナルのワードや単語が多用されすぎ。どうしても架空の世界観だから多く作らざるを得ないことは理解できますが、それにしても距離の単位などもオリジナルである必要はあるのか。現代と同じく数字という概念を使ってる以上、マイルでもなんでもいいけど距離という概念も同じように使っとけばいいやん。さすがに面倒くさい。

そこら辺、読者にはチャラっと読み流せる力は問われそう。またストーリーの内容も考えると、読者の対象年齢はやや高め。ギリギリ高校生ぐらいで、小学生や中学生が読んでも内容はチンプンカンプンかも。荒川弘の実力を加味したとしても、テンポ感という点ではやや低めに採点してみた。展開の★もやや低めな理由はまだ1巻2巻では真骨頂にまでは達していない雰囲気がしたから。


◯展開★4◯テンポ★3.5
◯キャラ★4◯画力★4
◯全巻大人買い…★4
◯86点!!!!