『暗殺教室』全21巻のネタバレ感想をレビュー。作者は松井優征。少年ジャンプ(集英社)で連載してた学園漫画。発行部数が2000万部を突破した大人気漫画。また二度も実写映画化されるなど少年ジャンプを代表する人気マンガでした。

つい先日完結したばかりで現段階では最終巻こそ発売されてませんが、「暗殺教室が面白いか?面白くないか?」という感想考察記事を書きたいと思います。ちなみに『暗殺教室』最終回が掲載された少年ジャンプ巻末の各漫画家のコメントや反応が様々で面白かったので、お暇だったらそちらも是非。


暗殺教室のあらすじ物語・ストーリー内容

舞台は椚ヶ丘(くぬぎがおか)中学校の3年E組。落ちこぼれの生徒たちが集められたクラス。

暗殺教室1巻 殺センセー
(1巻)
ある日そこへ突如として現れたのが、月を7割方蒸発させてしまった謎の生命体・殺せんせー。そして「来年3月には地球も爆発させる」と宣戦布告。ただ何故か、3年E組の担当教師になりたいと言い出す。

暗殺教室1巻 マッハ20で高速移動する
(1巻)
殺せんせーの最高速度はマッハ20。防衛省など政府機関の人間でも倒せない。そこで止むなく日本政府はせんせーの意向を汲みとって、E組の担任にさせる。しかし地球を爆破されてもいけないので、一方でE組の生徒たちに殺せんせーの暗殺を依頼する。

そこから「落ちこぼれが集まる教室」は、まさに「暗殺教室」へ変わった日だった。果たして3年E組の生徒たちは殺せんせーを倒して地球爆破を阻止することはできるのか?せんせーの目的とは一体何なのか?…みたいなストーリー。


殺センセーの百変化

あらすじだけサラッと読むと『暗殺教室』はシリアスな展開が始まるのかなーと思っちゃいますが、殺せんせーのルックスや風貌通り、ベースはコメディータッチ。殺せんせーがちょくちょく色んなモノに変化します。

暗殺教室13巻 センセー百変化
(13巻)
例えば、レレレのおじさん風。赤塚不二夫事務所から許可を貰ってるかは不明。

暗殺教室9巻 センセー百変化
(9巻)
アメリカの保安官風ですが、いまいち怖いのか怖くないのかはやはり不明。

暗殺教室14巻 センセー百変化
(14巻)
もはや食べ物になっちゃった。見ようによっては、ただの『ちびまる子ちゃん』の永沢君。他にも殺せんせーは犬やカブトムシにも変化…というか単なるコスプレマニア的な側面は否めません。

暗殺教室1巻 殺センセー百変化
(1巻)
また殺せんせーは感情が表に出やすくて、特に顔色が緑や赤など色彩豊かに変化します。でも時には画像は「怒り」に震えると顔面が真っ黒にビキビキ。恐怖でしかありません。

前述の通り最高速度がマッハ20など、殺せんせーはほぼ無敵。ただ「水には弱い」「お色気にはすぐ引っかかる」といった弱点など、キャラクターとしての振り幅は魅力的。ややもすると幼稚そのものな演出だったりもしますが、少年漫画であればコレぐらいが分かりやすくてちょうどいい。

また見た目こそコロコロと変化させますが、生徒に対する愛情だけは一貫して変化しない。そのギャップ感を演出するために、敢えてデフォルメ全開の大げさな表現に走ってる感もあります。そういった部分が大人読者も極端には遠ざけない理由でもあるか。

まさに『暗殺教室』という漫画の絶対的な主人公として、しっかり確立されたキャラクター。まずはここが第一の面白さと言えます。


毎回コンパクトにまとめる展開力

ただ殺せんせーはほぼほぼ無敵であるが故に、言うまでもなく殺せんせーを倒せるヤツは存在しないワケです。

暗殺教室5巻 鷹岡
(5巻)
防衛省の烏丸の同僚だった元自衛官の鷹岡や、

暗殺教室14巻 浅野理事長
(14巻)
スパルタ教育全開の、椚ヶ丘中学校の理事長・浅野や、

暗殺教室10巻 イトナ
(10巻)
殺せんせーと同じ触手を持ったイトナなど個性的な強敵が登場するものの、基本的に『暗殺教室』のストーリーは毎回あっさり呆気なく解決します。殺センセーが倒されそうになったり苦境に立たされそうになるなど、もちろん山場や見せ場こそ用意されてますが、必ず最後は超人的なパワーで事態を打開する。

良くも悪くも、期待通りのオチを迎えて大きなドンデン返しが起きることはまずありません。あまりにキレイにコンパクトに毎回展開がまとまるので「余韻」という点では『暗殺教室』の最後はいつも物足りなさがやや残ります。

せんせーのキャラ設定からして「負け」という選択肢はそもそもないのは仕方ないものの、ある意味、究極のワンパターンな展開。それでも20巻以上までよく保たせる作者・松井優征はすごいですが、自分はこの点について『暗殺教室』のレビューでは毎回批判的なことを書いてた気がします。

暗殺教室20巻 175話 死神とせんせー
(20巻)
でも最後まで『暗殺教室』を読むと、その理由も分かります。おそらく「VS 死神改 戦」のために殺センセーが不利になる展開は残してあった気がします。このキャラクターの存在が『暗殺教室』の大オチにも繋がってます。

しかも少年ジャンプをリアルタイムで見てると、この殺センセーが不利になった場面の掲載順位はよろしくありませんでした。『脳噛ネウロ』の時もそうでしたが、作者・松井優征のドSっぷりを読者は望んでいるのでしょう。やはり『暗殺教室』では「殺センセーというキャラが周囲を翻弄していく様」がウケてたんだと思います。

もちろんコンパクトに展開がまとまるメリットは大きいです。例えば『暗殺教室』は下手な引っ張りや出し惜しみは少ないので、テンポ感や読みやすさという点では◎。期待を超える展開は少ないものの、逆に期待を裏切る展開も少ない。常に安定して80点前後のハイテンションを維持できてるような漫画。だからこそ反面として90点以上の展開も読者としては高望みしてしまう。

「読者に展開を読まれたら負け」と思い込んでる漫画家も多く、敢えて展開をゴチャゴチャと分かりづらくさせる漫画家も多い。でも、それって本末転倒。別に展開を読めたところで面白くなるってワケでもない。見せ方やテンポ感でいくらでも読者の想像を超えることは可能。そこで付け焼刃的な選択をしても、却って面白くなくなるだけだろうに。



渚やカルマなど生徒たちの成長を独特の観点で描く

正直せんせーの無敵さはバトル漫画的な側面で見れば面白くありません。

暗殺教室1巻 センセーの愛情
(1巻)
ただその無敵さは生徒に対する絶対的な「包容力」や底なしの「愛情」や慈愛に上手く転換されてる。だからいざ読んでると気になる部分は少なく、せんせーの手の平の上で生徒が成長していくストーリーとして読めば面白い。まさに『暗殺教室』の醍醐味は「暗殺」というマイナスのアイテムを使いつつ、その対局に位置するプラスの「教育」を描いてることにある。

暗殺教室3巻 暗殺=調べる=成長
(3巻)
生徒たちは暗殺術を学ぶことを通して人として成長していく。暗殺術を体得していくことで、それが積極性や自信に繋がったり人間としての精神的な成長を見せる。もちろん「言うは易く行うは難し」で、この奇をてらってるだけの演出を紙の上で表現するのは至難の業。でも何の違和感もなく漫画の中でアッサリ体現してる作者・松井優征が、一周回って鼻につく(笑)

暗殺教室14巻 テスト擬人化
(14巻)
例えば、中間テストや期末テストを擬人化するという発想も面白い。試験をさもバトルのように演出することができるので、これまで学んだ暗殺術を実践的に使えるように見せられる。「勉強は大事」「試験で良い点数を取るべき」と単に煽って促すのではなく、間接的に学ぶ楽しみや点数を取る喜びを教えられている気分になります。

暗殺教室6巻 寺坂の成長
(6巻)
生徒たちが道を誤りそうになる度に、地球の爆破を目論む殺センセーによって更生されていく。この対比が見事。画像は寺坂。

暗殺教室13巻 渚ママを説教・烏丸になりきる
(13巻)
時には生徒の母親を叱責することもある。画像は渚の母親に対するそれ。「渚君の人生は渚君のものだ。貴女のコンプレックスを隠すための道具じゃない」と簡潔で力強いセリフも魅力的。

暗殺教室18巻 命に対して命で向き合う
(18巻)
最終的には「人の命の大事さ」という紋切り型のありがちなテーマを説いてるワケですが、そこも敢えて「暗殺」という真逆のアイテムを使ってるからこそ変な説得力が増す。相手の命と向き合うってことは、まさに自分の命と向き合うってこと。「暗殺」というテーマを使いつつも、誰もころさなかったことで色んな示唆に富んでた。

暗殺教室20巻 177話 せんせーと渚
(20巻)
だから殺せんせーとの最期の別れのクライマックスでは泣けます。そういった長い前フリがあったからこそ、最期にだけ「暗殺」を持って来ることで「人の命の重み」がズシンと伝わってくる。敢えて渚が笑顔で実行してるのも、様々な過去や記憶も思い出させて感動的な演出に繋がってる。

『暗殺教室』はご都合主義的な展開でチャンチャンと丸く収まってることも多いですが、ここだけは避けて通れない。何故なら、しっかり生徒たちを「卒業」させることで暗殺は二度も行わない、というケジメとしての役割も果たしてる。

暗殺教室21巻 最終話 教師になった渚
(21巻)
最終回では教師になった渚たちがエピローグ的に描かれる。渚は相変わらずナヨナヨとしてて、不良の生徒たちになめられる。何も進歩してないのかなーと思いきや、不良たちを猫ダマシなどを使って軽くいなす。

「誰もが聞いたことのあるありふれた言葉だけど、僕らにとっては勇気をくれる魔法の言葉」と渚が語って終わるんですが、殺せんせーとの一年間が渚の自信に脈々と繋がってる。「成長」や「生きる」といったテーマを真逆のアプローチで攻めた大胆な試みは見事に成功してました。


暗殺教室 全21巻の総合評価 評判 口コミ


『暗殺教室』のネタバレ感想をまとめると、無難に面白いと思います。

奇をてらってる設定に見えますが、しっかり中身は王道。展開の安定感は抜群で、失速することは最後までありません。笑いがベースにあるので中高生でも読みやすく、たまに始まるシリアス展開とのギャップ感も小気味良い。

殺センセーのふざけたルックスとは相反してテーマ性も高い。「暗殺」というアイテムで「命の大事さ」や「子供たちの成長」を描くという、難しい試みを見事に何の落ち度もなく実現させている作者・松井優征の漫画力には脱帽。あまりにすごいことをあっさり体現してるので、逆に作者のすごさに気付きづらい。手品やマジックでもすごくすぎて逆に驚けないパターンと同じ。

個人的にはもっと『暗殺教室』は面白くなるんじゃないか?と期待してたんですが、それは安定した面白さがある故の高望み。悪く言えば「無難」と捉えることもできますが、逆に下手なことをしないからこそ王道漫画。それ故に最初から最後まで作品の完成度は高いまま、『暗殺教室』は最終回を迎えました。

強いて言えば、殺せんせー死後の展開が長い。そこが余韻として機能してるかはやや疑問か。また細かい部分だと、優秀な生徒だった赤羽カルマも何故か経済産業省のキャリア官僚。経産省ってどちらかと言えばショボい官庁なんじゃね?もしかするとクールジャパン(漫画)繋がりで作った設定かも知れませんが、個人的にややガッカリ感は否めなかった。