『甘々と稲妻』が面白いか、つまらないか考察してみた。作者は雨隠ギド。掲載誌はグッドアフタヌーン。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックの育児グルメ漫画。「このマンガがすごい2014」のオトコ編8位にも選ばれたこともあるらしい。

最近このアニメも放映されているらしいのでレビューしてみる。Kindleなどでも電子配信されているので是非ダウンロードしてみてください。


あらすじ物語 ストーリー内容

主人公は犬塚つむぎ。5歳の女の子。父親は犬塚公平。高校の数学教師として働く。ただ妻・多恵は半年前に病死して、一人で子供を育ててるシングルファーザー。当然料理などは妻に任せっきりにしていたため、てんで料理はできない犬塚公平。しばらくは中食の弁当ばかり買っていた。

ただ飯田小鳥という女生徒と出会うことで、心機一転。これではいかんと自炊を始める犬塚公平。そうすると…
甘々と稲妻1巻 つむぎの表情
(甘々と稲妻 1巻)
犬塚つむぎは今まで見たことがないような美味しそうな表情を浮かべる。そして父親である公平はグルメ(料理)を通して、娘・つむぎと改めて向き合っていく…みたいなストーリー。

基本的にギャグ要素が強めの内容。つむぎは普段明るく気丈に振る舞うことが多いものの、言っても5歳。母親を亡くした実感にどうしても欠ける。だから不意に襲われる孤独や悲しみに、ふと涙を浮かべることもある。それに対して父親として公平はどう向き合っていくのか、みたいな展開も描かれたりします。


タイトルの意味

甘々と稲妻1巻 タイトルの意味
(甘々と稲妻 1巻)
ちなみに漫画タイトルの意味は、あとがきを読むと「五感やニュアンスから直感」だけで作ったっぽい。作者・雨隠ギドによると「一日人生を見つめ直して今のタイトルをひねりだした」とのこと。他のタイトル案には「甘々と稲妻駆ける」ってのがあったらしい。それを考えたら今のタイトルで正解だったんでしょうね。

詳しい内容などは後述しますが、まったりとしたコメディー展開の中に、たまに含まれるピリッとしたシリアス展開が描かれるような物語ので、おそらくそういったタイトルになったんだと推察されます。だから深い意味が無いといえば無いのかも知れない。


つむぎの表情がかわいい

あらすじでも貼りましたが、つむぎの食べてる時の表情が実に美味しそう。

甘々と稲妻4巻 クレープ
(甘々と稲妻 4巻)
例えば、クレープを食べた時の表情はこんな感じ。口のヘニャヘニャ感がまさに恍惚を物語っています。

甘々と稲妻7巻 つむぎ表情 栗きんとん
(甘々と稲妻 7巻)
栗きんとんを食べた時の表情はこんな感じ。程よいデフォルメが効いてて、それでいて子供らしさも残っているのかなーと思います。


知らないことが世の中には多すぎる件

犬塚つむぎのこういった表情の豊かさは、コメディーや笑いの面でも発揮されます。

甘々と稲妻2巻 ピーマンの肉詰めハンバーグ
(甘々と稲妻 2巻)
例えば、父・公平がピーマンの肉詰めハンバーグを作った時は、こんな表情。子供はピーマンが嫌いですが、つむぎもご多分に漏れず。公平的には肉詰めにして一応ごまかしたつもりなんですが、冷静に考えるまでもなくピーマンはむき出し状態。思わず「ひっ」と仰け反るつむぎが笑った。

甘々と稲妻4巻 サンタさんはいない コメディー
(甘々と稲妻 4巻)
他にも、サンタさんはいないと知った時の表情がこちら。「ちょっとワタシ聞いちゃったんですけどー?」みたいな。大人の階段登る的な表情が少し切ないです。生まれて4・5年しか経ってないので知らないことが多すぎる。子供ならではリアクション芸が笑えます(笑)

7巻だと「死」に対する恐怖感があって、特に「地獄」という存在にビビっていた。だからこそ父・公平は「天国と地獄は存在しないかも」と教えてあげる。
甘々と稲妻7巻 天国と地獄はない
(甘々と稲妻 7巻)
その事実を知らされた時の表情がこちら。「なんですと?」というセリフもピッタリでしょう。きっと「ワタシの恐怖を返して?」と思ったはず。

甘々と稲妻4巻 コメディー 父指怪我
(甘々と稲妻 4巻)
父・犬塚公平が指を怪我した時は、必死に「見せて」と凝視するものの、ただただ痛々しいだけなので苦悶の表情を浮かべるつむぎ。一体何がしたいんだと。

まあ子供がこんなリアクションするか?という、多少の「あざとい」部分が見えなくもありません。『甘々と稲妻』は「このマンガがすごい」で何故かオトコに好評だったのも、女性読者からしたらそういった部分が透けて見えるからか。おそロシア、ジャパニーズ大和撫子。でもそこまで変なリアリティーなどを求めなければ普通に笑えるでしょう。


亡き母への想いや寂しさが泣ける?

だから『甘々と稲妻』は笑える場面も多いんですが、あらすじでも書いたように母親を亡くした過去は、つむぎの中に大きな影を落とす。

甘々と稲妻3巻 カレーライス
(甘々と稲妻 3巻)
例えばカレーライスを父・公平とわいわい楽しく作った時は、生前の母親と一緒に作ったときの楽しい記憶も不意に思い出される。

他にも友達から粘土を貰ったつむぎ。でも男子から「借りたの返さないの?うわっ、どろぼー」と批判される。そして男子と取っ組み合いのケンカ。結果的に勝つものの後味は悪い。男子は更に謝ったものの、自分は謝らないの一点張り。
甘々と稲妻1巻 つむぎ悪い子ねんど返さなかった
(甘々と稲妻 1巻)
母親の死と絡めるわけではないですが、父・公平は「もし間違えて悪いことをしたとしても、つむぎが好きだよ。父さん、つむぎがどんな子でも大好きだよ」と愛情たっぷりで包んであげようとする。こういうのは否定すれば否定するほど、子供の性格が屈折していきそうな気がします。

ただ、だからこそ母親の死を乗り越えようとするつむぎの健気な姿にも共感を覚える。

すぐる君という幼稚園の友達の母親が入院する。でも、すぐる君は寂しさのあまりにワガママ放題。そこで犬塚家に一時的に預かることに。ただすぐる君は犬塚家の仏壇を見て、「僕のお母さんも死んじゃうんだ」と思わず泣きじゃくる。
甘々と稲妻5巻 すぐる君ママは入院中
(甘々と稲妻 5巻)
それに対するつむぎの反応が涙をこらえつつ、「うtむぎのママはいない…でも、すぐる君のママは病院にいるでしょ」と諭してあげる。そして落ち着いたすぐる君に対して、少し涙を浮かべながら笑顔で「あのね!お持ち食べると超強くなるよ!」と健気に元気付けようとする姿は泣いた。

前述のコロコロと変わる面白い「つむぎの表情」も前フリとして活きて、コメディーとシリアスな空気の良いギャップ感を生む。思わず感情が揺さぶられて泣いた方の理由も頷けます。


総合評価 評判 口コミ


『甘々と稲妻』が面白いかの考察をまとめると、つむぎが色んな表情を見せてくれてるので面白い。出し惜しみもせず、乱発もせず、要所要所でタイミングよく使われてウザさは感じない。

犬塚つむぎの成長ストーリーとして読むと面白いマンガかも知れない。心が清らかな状態で素直に読めば、そこまで狙ってる感は感じないでしょう。ただ育児マンガとしての話。逆にグルメ漫画としておもしろいかというと、それは「フツー」かな。あくまでグルメ描写はサイドメニュー的な位置づけ。

甘々と稲妻6巻 レシピ
(甘々と稲妻 6巻)
ちなみに画像のようにレシピ情報は記載されてます。ただ『甘々と稲妻』に限らず、グルメ漫画の多くでは載せるのがもはや定番と化してますが、実際どれだけの読者がそれを参考に料理を作ってるんでしょうか?自分はほぼ全て流し読みしてるので、素朴な疑問。