『悪の教典』全9巻のネタバレ感想をレビュー。作者は鳥山英司(作画)、貴志祐介(原作)。掲載誌はgood!アフタヌーン。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックのサスペンス漫画。最終9巻は今月頭ぐらいに発売されました。

伊藤英明で実写映画化もされたんですが、元AKB大島優子がそれを観て大嫌いだと豪語した作品。果たして悪の教典は面白いのか、つまらないのか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

舞台は晨光(しんこう)学院町田高校。主人公はそこに務める英語教師・蓮実聖司(はすみ せいじ)。32歳と比較的若くてイケメンなので、特に女子生徒たちからは慕われている人気教師。愛称はハスミン。また教師としても有能で学校が抱える様々な困難を解決する能力にも長けている。

ストーリーは問題児学級2年4組の担任を蓮実が任されたところから始まる。初っ端から脳筋丸出しの体育教師・園田が生徒をボコってしまった体罰問題にとりかかる。しかも被害生徒・鳴瀬修平の親は弁護士。園田は園田で昔気質のイデオロギーを持っていて、謝罪する気はサラサラない。そこで悪戦苦闘するものの蓮実はなんとか問題解決に成功する。

悪の教典3巻 蓮実聖司
(3巻)
蓮実はとりわけ支配欲が強く、全ての物事が自分の思惑通りに進むことに一種の快楽を感じている。気分が良くなると、三文オペラの「殺人物語大道歌(モリタート)」を口笛で口ずさむクセがある。

悪の教典3巻 安原美彌
(3巻)
安原美彌という不良女子生徒とはネンゴロな関係になったり、

悪の教典2巻 蓮実聖司が久米を脅迫
(2巻)
久米という同性愛教師に対して恫喝まがいのことだって平気で行う。久米は前島という男子生徒とネンゴロだった。でも蓮実は安原美彌とネンゴロなわけで、まさに自分のことは棚上げ。

果たして、ハスミンこと蓮実は問題生徒たちを更生させられるのか?そもそも晨光学院町田高校で一体何を目論んでいるのか?


ハスミンという人気教師の裏の顔

蓮実の目的はいまいち不明ですが、3巻を参考にすると「この学舎に俺だけの王国を…理想郷を築いてやろう」とのこと。だから自分にあだなす存在は潔癖なほど徹底的に排除する。その方法が放火や事故死に見せかけるなど、手段は厭わない。

結果、釣井という関西弁の教師に目をつけられる。釣井は蓮実の過去を調べていくと、以前に赴任した高校で不審な死を遂げた生徒が何人もいた。更に過去を掘り下げると経歴がうさん臭い。そこで警察にまで足を運んで蓮実の過去を調べ出す。また早水というエリート生徒に怪しまれ、やはり釣井と同じ「蓮実が怪しい」という結論に至る。運良く、それを察知した蓮実は、「鉄は熱いうちに打て」とばかりに躊躇なく彼らを排除。

蓮実の裏の顔は究極的なサイコキラーだった…という話。

ただ蓮実が不穏分子として排除していく数を増やすと、徐々に歯車が狂い出す。ユートピア崩壊のトドメを刺したのが、前述の安原美彌というネンゴロになった女子生徒。蓮実はちょいちょい自分の家に連れ込んではチョメチョメしてたんですが、少し前に排除した早水のスマートフォンを部屋で発見してしまう。女性はすぐ男性の余計なものを発見しますよね(笑)

でも安原美彌は偶然見つけただけに過ぎず、ハスミンを警察に通報する気はサラサラなかったことは後に分かりますが、それでも蓮実からしてみると「ユートピア崩壊の芽」は一刻も早く排除しておく必要がある。しかも安原美彌を排除した直後、更に他の女生徒に勘付かれてしまう。どんどん状況的に追い込まれていく。

悪の教典6巻 蓮実聖司
(6巻)
そこで蓮実が選んだ最終手段が、クラスの生徒たちの殲滅。卒業は卒業でも人生からの卒業。「死体を隠すには死体の山を築けばいいだけ」のことらしい。葉っぱを隠すには山の中的な理論。蓮実が何を持ってるかで、この後の展開は何となく察してください。

蓮実がエリート生徒・早水を抹殺した時に放ったセリフが、「しかし俺はX-sportsの愛好家と同じでやれると確信できれば最後までやり切ることができるんだよ」「途中でためらうとかえって危険だけど、思い切って突っ走れば案外走り切れるものなんだ」。まさにこれを象徴する大惨事が待ってます。


これぞグロすぎるサイコサスペンス!

序盤の展開は、ひたすら蓮実が学校の諸問題の解決に取り組んでいるだけ。だからややもすれば焦れったい。でも言うまでもなく、あくまで前フリ。ハスミンがブチっと覚醒した6巻以降の展開は、まさに怒涛。

蓮実の能力や頭脳は優れているというだけではなく、問題解決にあたっては徹底的に手段を厭わない人間性であることを読者に丁寧に印象付ける。一見すると、単に誠実な教師にしか見えない。でもそれ故に後の起きる惨事では、「生徒の卒業」という究極の問題解決が最後の0人までリセットされるまでは終わらない、という恐怖感に変わる。

最初の犠牲者は安原美彌と思いきや、結果的に亡くなってない。ただ屋上から蓮実が突き落とされてしまう。でも屋上から蓮実が降りてくる場面を見たのが、永井あゆみという女子生徒。ざっくり言うと口が軽い。
悪の教典6巻 ハスミンのパワー
(6巻)
永井あゆみを「卒業」させたときの、ハスミンのパワーがえげつない。まさに「ゴキッ」という音が開始の号砲に聞こえなくもありません。

ここから「狩る側」と「狩られる側」の構図が生まれる。蓮実は冷徹かつ狡猾。徹底した完璧主義者で、生徒たちを一人たりとも逃さない。学校には防犯システムが完備されてるので、その監視カメラを使って生徒たちがどこにいるかを全て把握。そして一人一人を着実に仕留めていく。蓮実が追い詰めていく感じ、生徒たちが追い詰められていく感じがハラハラドキドキ。

悪の教典7巻 廊下が長い
(7巻)
例えば学校の廊下って実は異様に長い。「走っても走っても向こう側に辿り着けない」と焦りまくる女生徒の心理状態が切ない。当然蓮実はライフル銃を保有してるので、ちょっと走ったぐらいでは蓮実のロックオンからは逃れられない。

とは言え、狩られる側も指をくわえて待ってるだけじゃない。
悪の教典6巻 園田
(6巻)
前述の体罰問題を起こした体育教師・園田は、蓮実がライフル銃を持ってようが関係ないほど強い。散弾銃を食らっても、そこそこ余裕。蓮実をボコボコにしてやんよ状態。蓮実も思わず「UFC(格闘技団体)へ行け!」と心の中でツッコむほど。

でも最後は神様は蓮実に微笑んでしまう。まさにクマのような園田がどうやって倒されたかは、実際に読んでみてください。

悪の教典7巻 高木翔
(7巻)
生徒の中にはアーチェリーの名手(高木翔)などがいて、蓮実に立ち向かっていく。後半になってくると「学校立てこもり犯ってハスミンじゃね?」という意見も出てくる。実際、監視カメラの映像を確認できる部屋で蓮実の凶行を目の当たりにした生徒もいる。

でもやっぱり蓮実の頭脳と躊躇なき判断が勝ってしまう。前半部分で「蓮実の人柄の良さ」が散々描写されてしまっているので、いざ蓮実が疑わしいと思った所で判断が鈍ってしまう。

例えば久米先生とネンゴロだった前島雅彦という生徒。さすがにハスミンが怪しいとは分かってるものの、「犯人は久米先生なんだよ」というブラフに動揺。最終局面で蓮実を良い所まで追い詰めるものの、まさに口八丁手八丁で形勢逆転。
悪の教典9巻 前島雅彦をダマして撃つ
(9巻)
「君が一番よく知っているはずだろう?久米先生は他人を傷つけられるような人じゃないって」と前島の判断ミスと愛する久米先生を疑った詰りと共に、即座にドン。このムダすぎるテンポ感。いかに蓮実に躊躇がないかを象徴してる場面だと思われます。

でも同時に楽しんでる側面も読み取れます。例えば、偏差値が高く東大志望の渡会健吾を仕留めるとき。渡会は東大に入りたかった。ただ蓮実はその夢は叶わないとノンノンノン。「You were going to enter Todai (トーダイ)? But, you are going to Die! (トゥダイ)」とニッコリ笑顔で発砲。

訳すと「東大へ入りたかったの?しかし、君はこれから死ぬんだぜ」みたいなこと。トウダイとトゥダイを掛けてるわけですが、単なるオヤジギャグ。おもろいネタ思い付いた!みたいなドヤ顔を蓮実はかましてます。


最終回・最終話はどんな結末なのか?

悪の教典9巻 卒業サプライズ
(9巻)
最終的に残念ながら、蓮実の卒業サプライズは成功。おめでとうじゃねーよ。40人全員のクラスメートたちは人生から卒業しています…

…と言いたいところですが、こんな惨事の中を2人の生徒だけが生き残ることに成功。生徒の名前まで書いてしまうと、どの場面でどう切り抜けたかというトリックが想像できてしまうのでネタバレは控えます。まさか生きてるとは思わなかったので、コイツラが登場したときは普通にビックリしました。ただ蓮実はやはり口八丁手八丁、彼らが生き証人として追い詰めることは叶わず。

悪の教典7巻 伏線
(7巻)
このままモヤッとしたオチで終わるのかと思いきや、実はこの場面が伏線となって蓮実を逮捕させることに成功。友達の命を救いたいという純粋な思いが、最後に蓮実に止めを刺したというオチは素晴らしい。ある程度の知識は必要なものの、何故AEDが蓮実を追い詰めることになるのか考えながら読むのも一興。

ただ裁判後の描写も描かれます。そして蓮実はやはりここでも口八丁手八丁で罪から逃れることに成功。要するに刑法39条。責任能力がない人には罪が問えない。基本的に心神喪失者に対しては減刑か無罪。結果懲役25年の判決が下って、蓮実は医療刑務所に収容される。そして時間がおそらく流れて数年後。ラストの大ゴマは街中で不敵な笑みを浮かべて立っている蓮実の表情で終わる…この後味の悪さからかアマゾンレビューでは酷評されてました(笑)

ちなみにアホなマスコミや一部ネットで散々煽ったりされてますが、こういった判決を勝ち取るのは現実的に難しいので、リアルでは蓮実の思惑通りにはいかないでしょう。


総合評価・評判・口コミ


これぞサイコサスペンス。大島優子がゲボを吐いたのも頷けるぐらい、直接的なグロ描写は少ないものの悪趣味っちゃ悪趣味な内容。生徒たちを仕留めるたびにカウントダウン。「あと4人かぁ…」と呟きながら、また口笛でモリタートを口ずさみながら、読者もただそれを無抵抗で眺めていくしかない。見た目のグロさはそこまで強くないものの発想が気持ち悪くてエグい。かなり不謹慎な作品ではありますが、こういう作品を書きたがってる人も実は多そう。

テンポ感も◯。原作小説のボリュームが、確か上下巻だけ。だから変に展開を引っ張ったりしないのが良かった。全9巻と大人買いしやすい巻数ですので集めやすいはず。

蓮実は安原美彌を突き落とす直前、一瞬ためらう。蓮実にも罪悪感らしいものがあって、体が硬直して動けなくなる。だから最後は蓮実は改心して…という展開も期待させるんですが、最後の最後まではハスミンはハスミン。

あと動機も後付っぽい。いずれ安原美彌や他の女生徒に見つかってなくても、蓮実は同じことを実行したに違いない。9巻では小学生時代の蓮実が描かれるものの、ニターッという表情が如実にそれを物語ってます。蓮実は生まれた瞬間からサイコパス。

欲を言えば、生徒たちの見た目に高校生特有の「幼さ」があれば良かったかも。年齢を重ねていくと、そこら辺のコンビニでたむろってる高校生が年々おぼこく見えてくる。「幼さ=無垢感・無力感」だと思われるので、狩られる側の生徒たちにそういうのがあればハスミンの鬼畜っぷりがより際立ったかも。

◯展開★4◯テンポ★4.5
◯キャラ★5◯画力★4
◯全巻大人買い★5
◯おすすめ度…90点!!!!