『亜人』が面白いかつまらないか考察レビューを書いてみた。作者は桜井画門。掲載誌はgood!アフタヌーン(グッドアフタヌーン)。出版社は講談社。ジャンルは青年コミックのアクションバトル漫画。最近アニメ化も始まるなど、割りと人気作品らしい。

ちなみに作者名(桜井画門)の読み方は「さくらい がもん」。ダチョウ倶楽部が寺門ジモン、亜人が桜井画門とでも覚えてください。


亜人のあらすじ物語・ストーリー内容

世界で「絶対に死ぬことはない」とされる亜人が発見されて、はや17年が経過しようとしていた。亜人を捕獲すると莫大な報奨金が得られる?亜人は人体実験される?など、まことしやかなウワサが世間では流れていた。少なくとも「亜人は人間ではない」という価値観が一般には浸透していた。

主人公は永井圭という高校生。秀才だったものの、他人に共感や同情心を抱くことができない性格。それでも永井圭は将来のため、「立派な人間」になれるように勉強を日夜励んでいた。しかし、ある日、永井圭はトラックに轢かれてしまう。

亜人1巻 永井圭
(亜人 1巻)
誰もが死んだと思った瞬間、トラックの後部から立ち上がる永井圭。そこで初めて自分自身が「亜人」だったことに気付く永井圭。自分が生きていた事実にホッとしたのも束の間、世間で流れるまことしやかなウワサが頭をよぎる。

必死に自分は人間だと永井圭は説明。友達はうろたえながら「信じるとも!友達だもんね」と引きつった笑顔。明らかにウソだった。そして、そこから永井圭の逃亡の日々が始まる…みたいな展開。

亜人2巻 黒い幽霊・IBM
(亜人 2巻)
もう少しストーリーをネタバレしておくと、亜人の中には「黒い幽霊(IBM)」を操れるタイプがいる。この黒い幽霊(IBM)は亜人だけにしか見えない。このIBM同士のバトル描写があったりします。左は厚生労働省の亜人を追い詰める戸崎という人間。

亜人5巻 戸崎と永井圭
(亜人 5巻)
最初は反目し合っていた永井圭と戸崎だったんですが、ある「共通の目的」のために二人は結託する。その理由は後述しますが、亜人である主人公・永井圭の運命は?


アクション描写が秀逸!

『亜人』の面白さはひとえにアクション描写。これが秀逸。特に5巻の佐藤 対 SAT戦がぶっ飛んでたので、そこをピックアップしてみた。作者・桜井画門の腕っ節が見事に炸裂。

亜人5巻 佐藤 VS SAT2
(亜人 5巻)
一言でいうと「佐藤無双」。亜人は不死身だから無敵っちゃ無敵なんですが、SATの集団にそのまま突っ込んでバンバンバン。SATは同士討ちしないために発砲しづらい。そのスキを佐藤はつく。

亜人5巻 佐藤 VS SAT3
(亜人 5巻)
亜人はケガをしても一度死ねば、その傷は再生する。だからバトル中にケガを負ってしまうと、即座に自分を撃ち◯す。画像はSATが佐藤の足を撃ち抜いた直後の場面。ケガを負っても死なないものの、戦闘では不利益に働くから。設定を巧みにバトルに活かしつつ、佐藤の躊躇のなさがバトルにエグいテンポ感を産む。

亜人7巻 アクション描写・仲間も撃つ
(亜人 7巻)
7巻では味方同士で連携。一瞬仲間割れにも見えますが、麻酔銃を撃たれた亜人を味方がフラットにしてるだけ。つまり全ての亜人に対して「生かさず殺さず」を同時に実行しないと捕獲できない。いろいろ亜人のヤバさが伝わってくる画像だと思います。

亜人5巻 佐藤 VS SAT
(亜人 5巻)
そして佐藤がSATを下からズドンとした場面も衝撃的。SAT隊員はヘルメットみたいなんを被ってるが故、パット見はグロ描写に見えないのが良い。ある意味、描き放題。作者側の視点で立って考えると、顔の潰れ具合など細かい描写は描かずに済んで、読者の想像で補ってもらえるので楽だし効果的。

亜人5巻 黒い幽霊のアクション描写
(亜人 5巻)
もちろん黒い幽霊(IBM)を使ったアクション描写もあります。どこでも移動できるのでビルの窓を歩いて移動したり、そのまま飛びかかってきたり、画像はビルの窓の外からSAT隊員をガシャッとする場面。

亜人7巻 オスプレイで襲撃
(亜人 7巻)
肉弾戦や白兵戦だけではなく、米軍のオスプレイまで登場。ビルに隠れてる永井圭たちをババババ。どこのハリウッド映画やねん。ただ一応ネタバレしておくと、画像は主人公・永井圭の夢オチ。でも「いずれ!?」と思わず期待感が膨らみます。

いやぁ、もっとアクションの画像をペタペタ貼りたいんですがキリがないので是非漫画を読んで下さい。


ラスボス佐藤という強烈キャラクター

アクション描写にほぼ登場したのは佐藤というキャラクターですが、永井圭とは反目する亜人。つまり佐藤は敵。まさに「純粋悪」と呼べるオッサン。あらすじで永井圭が厚生労働省(戸崎側)に味方したかというと、逆に戸崎側も永井圭を引き入れたかというと、この「純粋悪」を倒すため結託した。

最初、佐藤は虐げられてる亜人を開放するために政府に対して武力闘争を目論む。それ故に田中を筆頭とした亜人の仲間も多い。アクション描写にはほぼ佐藤しか登場してなかったのは、そういうこと。ただ実際には、佐藤は単なる戦闘狂。実は思想やイデオロギーも無い。だから佐藤はありとあらゆる破壊を目論んでくる。

亜人4巻 飛行機テロ1
(亜人 4巻)
例えば巨大なジャンボジェット機を乗っ取って、そのままビル群の中に落とす。

亜人4巻 飛行機テロ2
(亜人 4巻)
佐藤は亜人なのでそのまま復活。「スリル満点♪」じゃねーよ。ただ飛行機の残骸の描写など頑張ってるんですが、右隣に写ってる遺体がキレイすぎるので描き直し。普通はバラバラ。講談社のコード的にアウトってことなら、敢えての描写は不要。緊張感を損なうだけ。

佐藤は最初こそ逃げ惑う永井圭を救おうと装ってたものの、それは永井圭の中に「人間に対する憎悪」を炊きつけることで、自分たちの味方に引き入れようとしていただけ。ただ永井圭は感情に起伏が少なくフラットなので、それが良くも悪くも佐藤側にシンパシーを抱かせなかった。

亜人3巻 佐藤
(亜人 3巻)
だから結果的に主人公・永井圭は佐藤を裏切るんですが、ナタを持って追いかけてくるさまが恐怖。ナタの握り方が力が入っててヤヴァイ。「私を殺したことを死ぬほど後悔させてやる」という、亜人でしか言えないセリフもグッド。これを名言と表現していいかは不明ですが(笑)

この佐藤がカッコいいと思ってしまう自分がいる。もちろん基本的にはアクション部分が大半ですが、いちいち行動や思考パターンがシンプルで良い。そして、とにかく自由。とりあえずコイツに注目して読みましょう!

主人公・永井圭も佐藤もお互い潰し合おうとするものの、前述のように「他人に対する共感を持てない」という点で両者は同じ。例えば、前述の佐藤とSATの一戦をテレビ中継で見てても、永井圭は表情一つ変えない。いくら多数の人間が亡くなったとしても、「自分とは関係ない」から永井圭は同情心や哀れみの感情を抱けない。でも佐藤を倒すことで、結果的に人類を救おうとする。

ただ他者をひたすら攻撃していたぶるのか他者にひたすら無関心なのか、それだけの違いではあるものの、結果としてはかなり対比的に描かれてます。果たして似て非なる者同士の二人はどういった運命をたどるのか?みたいな仕掛けもミソ。


亜人の総合評価・評判・口コミ


『亜人』の考察レビューをまとめると、とにかくアクション描写のすごさに尽きます。そして佐藤という強烈な登場人物が見事にマッチ。マンガの中で狂気と暴力が見事に大暴れしてくれています。

ストーリーそのものはグッと引き込まれる展開ではないものの、月刊誌ということを考えたらテンポ感はそこまで悪くありません。最初は三浦追儺が原作を担当してたものの、2巻からは桜井画門のみになったことも、良くも悪くも功を奏してるのかも知れません。

だからしっかり割り切って読めば『亜人』は面白い漫画だと言えます。