『アド アストラ ペル アスペラ(AD ASTRA★PER ASPERA)』1巻のネタバレ感想をレビュー。作者は畑健二郎。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックのSF漫画。「AD ASTRA★PER ASPERA」の意味はよく分かりません。

掲載誌は少年サンデー。月一で連載されていたそうですが、先日「シーズン1」が完結。そこで、この長ったらしくて舌を噛みそうな『アドアストラペルアスペラ』が面白いかつまらないか考察してみた。


あらすじ内容 ストーリー 登場人物

外宇宙の帝国に銀河系の大半が支配されて100年。もちのろん地球もこっぴどく侵略されていた。ただ「侵略」という言葉に反して、地球上からは戦争や飢餓の問題は解決。緑といった自然も蘇り、地球は「史上最も平和」な時間を甘受していた。

例えばリストラはなくなり、ブラック企業は壊滅。高校生のバイトでも最低賃金は時給1800円。生活保護は毎月30万円超え。ふははは!アベノミクスがまるでゴミのようだ!(ムスカ大佐風)

そんな平和に見える地球で怒りを抱いていたのが、高校生のシャトー。
アド アストラ ペル アスペラ1巻 シャトー
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
何故なら「ガラスの仮面が完結しない」から。もちろん『ハンターハンター』や『ベルセルク』も同じく完結するはずがない。

シャトー曰く、「何一つ不満がないのに漫画なんて描けるわけがない」から。つまり帝国と戦い続けていれば今頃ハンターハンターもベルセルクも完結していたとのこと…なん…だと!?確かに平和だと一日中ゴロゴロ座っていたら腰も悪くなりそうだぜッ!!

シャトーは帝国に頼って腑抜けて、すっかりニート化してしまった地球人を目覚めさせるために革命を起こそうとしていた。ただ主人公はシャトーではなく、このシャトーのご高説を毎日聞かされている友達・葉月忍(はづきしのぶ)。すぐ何でも信用してしまうお人好し。

ある日、帝国軍が遺したロボット兵器を発見。シャトーはこれを使って帝国に対するテロを企てようと考える。さすがにここまで来ると、お人好しの葉月忍も「マジでアカンやつや」と気付く。それを未然に防ぐために、自らが兵器ロボに乗り込んで帝国軍へ届けようと考える。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 ロボット
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
ただ帝国法では植民惑星の住民が帝国軍の兵器を無断で使うと死刑。葉月忍の説明は全く相手にされない。自分が助かるには逃げるしかない。結果、葉月忍は指名手配されてしまう。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 パティ
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
ロボット兵器内に潜んでいた謎の少女・パティと共に、葉月忍は帝国の皇帝に直訴するために銀河の中心帝国の首都へ向かう。しかしながら帝国の首都は地球から三万光年離れてる。しかも無敵の防衛網に守られ無数の軍隊が守ってる。

果たして葉月忍は無事生還することはできるのか?パティという謎の少女は誰なのか?絶望的な状況だけど絶望はしてない、何となくゆる~い内容のSFコメディー。


割りと本格的なSFロボット物かと思いきや…

畑健二郎がSFマンガに挑戦したということですが、割りとロボット兵器がかっこいい。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 ヴェルサイユ
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
例えば葉月忍が発見し、パティが乗っているロボットの「ヴェルサイユ」。「今まで見たことがない目新しさ」とまで表現するつもりもありませんが、ロボットのくせに敢えて衣装みたいなんをひらりと着せているのが乙。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 タイプF22
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
敵の「タイプF-22 薔薇」というロボットも真逆に漆黒。刀を腰に携えてるなど、全体的に「和風テイスト」を上手く取り込めている印象。もちろん実際にこんなヒラヒラさせた着物パーツを羽織らせてしまうと「戦いづらい」というレベルではないと思いますが、そこはご愛嬌。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 サテラ
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
ストーリーを少しネタバレしておくと、帝国軍の軍人・サテラという美少女に狙われる。優しい母親に育てられたものの、現在は冷酷な戦士。少し葉月忍と仲良くなったものの、「悪とは度し難い」と銃口を向ける。

だからつい「シリアスな展開」に期待に胸が膨らむんですが、全体的には畑健二郎ワールド全開。例えば、ヴェルサイユの中は普通のワンルーム。水回りには豪華なバスタブとドラム式洗濯機が用意されているなど、何という快適空間。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 ギャグ展開
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
また月面にはマツモトキヨシならぬ「マツモトキヨシロウ」がある。葉月忍は風邪で倒れたパティを救うために風邪薬を買いに行く。しかしバファリンだけではなくイブクイックもナロンエースもとにかく価格が高い。月の物価は地球のそれより遥かに高かった。愕然とする葉月忍!!…みたいなコメディー展開が発生します。

アド アストラ ペル アスペラ1巻 葉月忍 パティ
(アドアストラペルアスペラ 1巻)
パティの登場シーンからして、かなりグロテスク。最初パティはウサギのキグルミを着てて、「手を貸すぞ」と葉月忍を助けようとする。でも自分の腕を目玉から出そうとしてる場面。寄生虫に乗っ取られたカタツムリを彷彿とさせると思ったのはオレだけ?(笑)

だから本格的な「SFマンガ」を期待すると肩透かし感、ガッカリ感は避けられません。あくまでゆるいギャグがベースで、そこにちょこっとSFが乗っかってる程度に思っておくべし。逆に言うと、畑健二郎ファンはきっと良くも悪くも裏切られることはない面白い内容でしょう。


総合評価 評判 口コミ


『アド アストラ ペル アスペラ(AD ASTRA★PER ASPERA)』のネタバレ感想をまとめると、あくまで日常系漫画の延長線上として評価したら、いつもの畑健二郎ワールドなので安定した笑いがあって面白いといえば面白い。

ただ悪く言うと、内容は想像の範囲内・範疇で留まってるとも言えます。トータルで読むと、いつもの世界観にどうしても収斂していくので、あまり特筆すべき点は見当たらない。これだと畑健二郎がせっかく新しいこと(SF)に挑戦した意味がない気がする。

もっと言えば、敢えて少年サンデーで連載を開始させる必要があったかは不明。この漫画の分だけ新人の連載漫画や読切漫画を掲載させた方が、将来的には少年サンデーの糧になりそうですが、はたして。

せめて少年サンデー以外のビッグコミックスピリッツなどで連載した方が宣伝効果的には意味があったはず。結局、畑健二郎なんて少年サンデー以外の購読者では大して知名度は高くないでしょうから。