バズマン。

健全な漫画の感想ブログ。基本的に面白いマンガだけレビューしてるつもり。

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『孤独のグルメ』1巻のネタバレ感想。月刊PANJAという雑誌で、約20年前に連載されてたグルメマンガ。作者は久住昌之と谷口ジロー。最近この実写ドラマがなんか人気らしい。

ちょっと画像のサイズが重くなった気がするので、1.5秒ほど待ってからこの記事を読み始めると良いかも。

あらすじ

主人公は、井之頭五郎(いのがしら・ごろう)。独身中年。個人で雑貨輸入を営んでる(ただし店は構えてない)ので厳密にはサラリーマンではないですが、便宜上タイトルでは使ってみました。

その井之頭がご飯を食べてる描写に焦点をあてたグルメ漫画。言っちゃえば、独身の中年男が飯を食ってるだけの漫画。だからか、その井之頭が飯を食ってる描写が切ないぐらい哀愁が漂ってて、おそらく笑わせようとはしてないんだろうけど、何故か吹いてしまうような内容。

基本的に独り言

井之頭はずっと一人で行動してる以上、当然そこには喋る相手がいない。だから井之頭はどうしてもずっと独り言が多い。

孤独のグルメ1巻心の中で独り言1
例えば心の中で献立を組み立てていく。「よし今日はアレとコレを食べて…いやいやこの組み合わせは…」みたいなシミュレーションを延々と楽しんでる。

孤独のグルメ1巻心の中で独り言2
美味い焼き肉を食ってる時には「うぉぉ俺は火力発電所だー!」と心の中で一人盛り上がる。他にも心の中で一人ノリツッコミしてみたり、一人飯あるあると言えば一人飯あるあるですが、どんどん言葉が止まらない。そこまで料理を食べた感想を共感したいなら、思わず誰が誘えよって言いたくなる。

ある時には、さすがに心の中だけでは満足できなくなったのか、
孤独のグルメ1巻大きな独り言
普通にコンビニでベラベラ喋ってしまう。ここまで来ると怖すぎる。重度の病気。周りからすると「このオッサン何喋ってんねん」って話。

基本的に優柔不断

井之頭はずっと一人で行動してたせいか、性格的にはやや優柔不断。自分から何かを仕掛けることができない。

雑貨輸入を営んでるものの店を構えてないと冒頭で書きましたが、井之頭は心の隅では店を持ちたがってもいる。
孤独のグルメ1巻昼飯に悩んで夕方
そこで不動産屋を巡って物件を探してると、いつの間にか夕方の4時半。昼飯を食べるのを忘れるぐらいですから、どんだけ店を持ちたがってんねんっていう。

その後も何を食おうか延々と悩む井之頭。そして散々悩んだ挙句、選んだのが回転寿司。ただその回転寿司屋が繁盛してて、ガヤガヤと客の会話で店内がうるさい。だから自分の注文の声がなかなか通らない。
孤独のグルメ1巻回転寿司で声が届かない
そこでまさかの隣の主婦のオバちゃんに助けてもらう。「ふぅ…なんでこんな思いをしなきゃいけないんだ…」という井之頭の表情が切なすぎ。お前は中学生か。

他にも色々とドン臭い井之頭が可愛らしい。新幹線でヒモを引っ張ると温まるシューマイを購入した井之頭。ただ、それはものすごい臭が充満。
孤独のグルメ1巻ドン臭い井之頭
そこでパニクった井之頭はフタを閉めようとするも、指を軽くヤケド。思わずチュパチュパ。「ああダメだあ!もう取り返しがつかない」というセリフが可愛すぎて笑う。

基本的に切ない

だから基本的に井之頭のやることなすことに哀愁が漂いすぎて、『孤独のグルメ』はとにかく切ないグルメ漫画。

孤独のグルメ1巻公園で一人メシをほうばる井之頭
例えば、若者たちがバスケを楽しんでる公園で、一人で飯を黙々とカツサンドを食う井之頭。このギャップ感ある構図が泣けるぐらい切ない。「俺もバスケに誘ってくれよ―」という井之頭の声が思わず聞こえてくる。

さすがに寂しさでたまらなくなったのか、人間以外のモノで心のスキマを埋めようとする。
孤独のグルメ1巻サボテンを購入
ただ、まさかのサボテンを購入。楽しそうに嬉しそうに眺めてる表情が切なすぎる。せめて生き物のペットを買おうぜ。何故よりにもよって植物?しかもトゲトゲしいサボテン?誰か井之頭の深層心理を調べてあげて!(笑)

一人暮らしをしていると、無性にテンションが上がる時があると思います。井之頭はコンビニで不意にそれに襲われた。結果、めっちゃ大量に商品を買いまくる。
孤独のグルメ1巻切ない哀愁1
ただ帰宅して改めて大量の食料品を眺めてると、「俺…いったいなにやってんだろ」と気付く井之頭が泣ける。読者から言わせてもらうと、井之頭の人生そのものが「いったいなにやってんだろ」状態ですが。

総合評価

とにかく独身の中年の侘び寂びが描かれてるグルメ漫画。どんどん未婚世帯が増えてる現状、共感できるあるあるネタがふんだんに盛り込まれてるかも知れない。それが実写ドラマがウケてる理由なのか。

一人飯や便所飯という言葉が存在してるように、「孤独」を演出する点ではある意味「グルメ」は最強の組み合わせ。寂しさを通り越して、さすがに笑ってしまう。というか笑わなきゃ、もはや生きていけないレベル(笑)

画力は絵柄の古さを除けば、なかなか上手い方。料理描写も平均以上。実際の町並みも多く描かれてるので、おそらくリアルにお店は存在してそう。…と旧ブログで書いたら怒られました。作画の谷口ジローは画力に定評がある重鎮漫画家さんらしい。


◯展開★4◯テンポ★4.5
◯キャラ★5◯画力★4
◯全巻大人買い…★5
◯88点!!!!

『極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-』上下巻のネタバレ感想。原作は武論尊、原哲夫。作画はヒロモト森一。週刊コミックバンチで連載されてた漫画。

極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-2巻ジャギ
(2巻)
タイトルから分かるように、北斗の拳のスピンオフ漫画。言わずと知れた、ジャギが主役。とにかく不遇な人生を歩んでるというストーリー(笑)

ケンシロウへのコンプレックス

極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-1巻ジャギは拾い子
(1巻)
ジャギは拾い子。北斗神拳を受け継ぐリュウケンに拾われる。現在のいかついマスク仮面とは反して、当初は真っ当に育ってた。

そもそも「北斗の拳」というマンガのテーマは、その北斗神拳伝承者を決める争いが根底にある。ケンシロウやラオウなども、同じくリュウケンの養子。

ただその北斗神拳伝承者を決める争いに、ジャギの名前はない。そこでジャギは激しく慟哭葛藤。何故なんだと…。
極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-1巻ケンシロウに嫉妬
(1巻)
まだ兄貴的なラオウだったらいざ知らず、年端も行かないケンシロウに自分が負けてることに納得がいかない。そこからどんどん人格的にねじ曲がっていく。「兄より優れた弟など存在しない」という思い込みが生まれる。

リュウケンはジャギを愛するが故に…

ただリュウケンも意地悪からジャギを伝承者争いから除外したわけではない。むしろ自分の子供の中で一番ジャギが好きだからこそ、こういう争いに足を踏み入れてほしくなかった。つまり愛にあふれた親心から。

極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-1巻泣くリュウケン
(1巻)
その証拠にジャギの熱意に負けて伝承者争い候補にした時には、思わずリュウケンは涙する。それぐらいジャギのことは大事に育てたかった。

でもリュウケンの中では、最初から北斗神拳伝承者はケンシロウだけだと決めてた。ジャギは頑張れば自分が北斗神拳伝承者になれると信じてただけに、憎き弟に負けたことはショックどころではなかった。
極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-2巻ジャギに謝るリュウケン
(2巻)
リュウケンは親心に負けてジャギを伝承者争いに巻き込んだが故に、更にジャギを傷つけてしまった。ジャギに謝罪するも、ジャギの傷ついて腐った心は戻らない。

極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-2巻悲嘆にくれるジャギ
(2巻)
悲嘆にくれるジャギが、ただただ切ない。「自分が愛されていたからこそ…」なのに、そこに最期まで気付けない。

残酷なすれ違い

リュウケンが北斗神拳伝承者に巻き込んだクダリも然り、ジャギと愛する人とのすれ違いが残酷。つくづく何をやっても上手いこと行かない。

極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-1巻アンナ
(1巻)
アンナというジャギを愛してくれる、唯一の女性がいた。

でもケンシロウ打倒に燃えるジャギは、一向に目もくれない。核戦争後、世界はまさに世紀末。そこで初めてアンナの安否を気にかけるジャギ。ただその時にはもう遅い。弱肉強食の世界。アンナは無残にも暴力に散る。

大人になったジャギは、もはや「復讐心」しか残されてない。その後は仮面を被って悪行三昧。そして自分はケンシロウだと吹聴。自分のプライドを傷つけた弟を貶めるためには、どんなことだってやるようなゲスに成り下がる。
極悪ノ華-北斗の拳ジャギ外伝-2巻ジャギの目に涙
(2巻)
ただ内心はひたすら「虚しさ」だけを感じてて、仮面の下は泣いてる。これもただただ切ない。

最終的にケンシロウに殺されるジャギ。そこで初めて「生きる意味・意欲」を発見するジャギだが、もう遅い。何の成功体験も残せないまま、無残なまま死んでいく。何の救いもない。

こんな悲しい人生ってあっていいの?間違いなく鬱になれる。

総合評価

悪役は、悲惨な過去があってこそ悪役。だからこそ輝く。だからこそ好きになれる。ただここまで悲惨な末路が似合うキャラクターは、このジャギの他をおいていないかも。

現代人にも通じる悲哀がここにはある。親に愛されないと嘆いてる子供は多い。でも実はちゃんと親からは愛されてて、それに気付かないだけ。

だから不良など落ちこぼれほどに是非読んで欲しい。親に愛されないから非行に走るなんて、まさに不良少年そのもの。今の時期、まさに暗黒面に落ちちゃう青少年も多いんじゃないだろうか。その時にこそ、反面教師にできる部分も多そう。

やっぱ「素直さ」って大事やん。


◯展開★5◯テンポ★4
◯キャラ★4.5◯画力★3.5
◯全巻大人買い…★5
◯87点!!!!

『しばちゅうさん』全5巻のネタバレ感想。イブニング(講談社)で連載されてたギャグ漫画。三国志で登場する歴史的な偉人たちがめちゃめちゃイジられまくります。

あらすじ

主人公は、曹操の部下だった司馬懿仲達(しばいちゅうたつ)。最終的には、晋という国を治めたそう。とにかく偉い歴史上の人物っぽいんですが、コイツがかなりコメディータッチで描かれてる。

司馬懿仲達はニート?

司馬懿仲達の性格はナマケモノだったらしい。今で言えば、ニートの類い。とにかく働きたくない。でも実力的には有能。

そこで天下の曹操に見初められて、部下になるように勧誘される。ガッツリそれを最初は断るものの、その方法が…
しばちゅうさん1巻仮病を使い司馬懿仲達
(1巻)
小学生並みの仮病を使う。一体、穴という穴から何が出てくるんでしょうか。それに百歩譲って正しいとしても、夜中限定なのでバッチリ昼間は働ける。

その言い訳が見透かされたかどうかは不明ですが、司馬懿仲達は半ば強引に曹操の部下にさせられる。でも、とことんヤル気がない。実際に史実でも戦争にはあまり駆り出されなかったようですが、もはや…
しばちゅうさん2巻自暴自棄な司馬懿仲達
(2巻)
「魏とか滅べばいいのにー!」とか言っちゃう。ちなみに魏という国は、曹操が治めてる国。夏休みの宿題を8月31日まで放置してた小学生が「学校とかほろべばいいのにー」とか言っちゃうノリ。

しばちゅうさん2巻シラミを食べる司馬懿仲達
(2巻)
しまいには、その布団にはびこるシラミを食っちゃったりする。『残念』とかいうレベルをもはや超えてる。

司馬懿仲達が不憫な件

そういう性格だからか分かりませんが、周りにやたらイジられる。ただそのイジられ方が、もはや常軌を逸してる。

しばちゅうさん1巻嫁にボコられる司馬懿仲達
(1巻)
自分の嫁さんからはドラクエで登場しそうな武器でドーン!

さすがの鬼嫁・北斗晶もここまではしない。司馬懿仲達も、何故か叫び声がサザビー。他にも曹操の息子・曹丕から事ある毎に思いっきりド突かれる。ただただ不憫すぎるんですが、司馬懿仲達の性格も残念すぎるので不思議と同情心はあまり芽生えない。

うそ臭い逸話もコミカルに

そして司馬懿仲達は殴られ続けた結果かは不明ですが、
しばちゅうさん1巻首が回転する司馬懿仲達
(1巻)
首がやたらグルングルン回る。

ただ「晋書」という歴史書によると、司馬懿仲達は実際に首が真後ろまで180度曲がったらしい。それをネタにしてる。これが事実かどうかはかなり疑わしいですが、だから余計にキモい。

日本の武将(もっと広く言えば、日本史全般)でも、こういう「ホンマかよ?」っていう下らない類いの逸話が多いイメージ。現在進行形だと北朝鮮の王様など、マンガにすれば結構面白いんだろうなーと思った。

曹操もイジられまくり

そして司馬懿仲達だけではなく、司馬懿が仕えていた豪傑な曹操もイジられまくり。曹操はめっちゃスゴい歴史上の人物と言われがちですが、それとは裏腹に実物はチビだったらしい。

しばちゅうさん1巻身長を気にする曹操
(1巻)
でも、まさかそれを帽子でカバーする。曹操のプライドがちっぽけすぎて泣ける。

しばちゅうさん2巻曹操
(2巻)
しかも司馬懿仲達並にド突かれて、すきっ歯状態。でも強がって、まさかの痛くないアピール。お前は地獄のミサワか。もっと怒れよ。

しばちゅうさん2巻関羽の首で殴る曹操
(2巻)
そして重用してた関羽が死んだ時には、その生首を振り回して大暴れ。最期まで哀れな関羽。

総合評価

『しばちゅうさん』の感想としては、三国志に精通してなくてもそれなりに笑えた。余白で軽く(たまにフザけた)説明もあるので、戸惑うことは少なかった。また少しだけ勉強にもなる。

三国志に詳しければ、更に笑えるのかも。ただ司馬懿仲達はマイナーな歴史上の人物っぽいので、どこまで歴史に精通してる人がいるのかはアレですが。


◯展開★3.5◯テンポ★3.5
◯キャラ★4◯画力★3
◯全巻大人買い…★4.5
◯83点!!!!

『史上最強の弟子ケンイチ』全61巻のネタバレ感想。少年サンデー(小学館)で連載されてたセクシー格闘漫画。作者は松江名俊。「史上最強の弟子ケンイチは面白いのか?」を考察してみた。


あらすじ

あらすじは、タイトル通り。最強すぎる師匠たちに師事する弟子の話。
史上最強の弟子ケンイチ8巻白浜兼一
(8巻)
その弟子役である、主人公は白浜兼一。イジメられっ子の高校生。ただある日、最強すぎる格闘家たちが経営する「梁山泊」と呼ばれる道場に入門する。そして格闘技を極めていって肉体だけではなく精神的にも強くなっていく物語。だから漫画の展開としてはシンプル。

その最強すぎる師匠たちは。
史上最強の弟子ケンイチ17巻梁山泊の面々
(17巻)
とにかく空手(逆鬼至緒)から柔術(岬越寺秋雨)から中国拳法(馬剣星)、ムエタイ(アパチャイ)、忍術(香坂しぐれ)など幅広いジャンルの最強格闘家ばかり。

梁山泊トップ・長老の風林寺隼人に至っては、
史上最強の弟子ケンイチ12巻風林寺隼人が海面を爆走
(12巻)
海上を思いっきり爆走!風林寺隼人が自分の実力を0.0002%に抑えても、主人公の白浜兼一たちはほぼ歯が立たない。そんな感じの格闘漫画っす。


風林寺美羽などムチムチすぎる女キャラクター

史上最強の弟子ケンイチ33巻ムチムチすぎる女キャラクター
(33巻)
『史上最強の弟子ケンイチ』の特筆すべき点は、登場する女キャラクターがとにかくムチムチ。しかも、その上露出度が激しく、単行本にだけ描かれてるオマケページでは更に激しく曝け出させる。

史上最強の弟子ケンイチ43巻風林寺美羽のムチムチボディー
(43巻)
ヒロイン・風林寺美羽に至っては、露出度は低いものの、やたらピッチリすぎるコスチューム。全身スパッツ。しかもこの下に何も着用してないので、地区ポッチが浮き出まくり。少年サンデー冒険しすぎやろ!って感動を覚えるぐらい、しつこく描写。

普段はメガネっ娘でポニーテールで、っていかにも狙いすぎ。でも、そんな風林寺美羽がオジサンは大好きです!(;´Д`)ハァハァ

史上最強の弟子ケンイチ41巻セクシーすぎる格闘描写
(41巻)
だから格闘描写一つ取ってみても、「他の格闘漫画だったらおそらく隠すであろう箇所」が惜しげも無く描写。敵の攻撃で衣服が破けたり、しっかり『史上最強の弟子ケンイチ』は青少年が欲する部分を描く!その潔さたるや見事成り!


格闘描写も多種多様で豪快

じゃあセクシー描写に逃げてるかと言えば、そんなことはなく格闘描写はしっかり本格派。

史上最強の弟子ケンイチ24巻格闘描写
(24巻)
全然及第点の合格点。

史上最強の弟子ケンイチ30巻格闘描写(岬越寺秋雨)
(30巻)
めちゃめちゃ強い師匠(画像だと岬越寺秋雨)のバトルも多々展開されるので、結構飽きずに読める。そこまで強くない主人公の格闘描写だけだと、画的に物足りない部分もあったでしょうが。

史上最強の弟子ケンイチ41巻格闘描写(武器使用)
(41巻)
本当に多種多様な格闘技が登場する中、当然武器での戦闘もアリアリ。

史上最強の弟子ケンイチ40巻格闘描写(トラック上)
(40巻)
フィールドもトラックの上でバトルしてみたり、良い意味で「大げさ」な要素があって、『史上最強の弟子ケンイチ』は漫画としてちゃんと楽しめる。

格闘漫画の悪い部分って「リアルさ」を追求しすぎて、作品として小じんまりしがち。「もっとデフォルメや有り得ない展開があっても良いのに…」と思うことがしばしば。


ダラダラ読める格闘漫画

『史上最強の弟子ケンイチ』のテイストは、『タフ』をややコメディータッチに仕上げた感じ。

史上最強の弟子ケンイチ42巻少し変態の馬剣星
(42巻)
例えば、師匠の一人・馬剣星だとスケベ。シリアスな格闘描写や展開が続くかなーと思ったら、そういうコメディー要素が入ったりする。だから良くも悪くも緊張感が…ここらへんの「ゆるさ」は好き嫌いがやや分かれるかも。

また『タフ』でも言えるけど、敵キャラクターのデザイン・存在感が物足りないなど共通する部分も多い。ラグナレクや闇(YOMI)などいるものの、敵キャラが見えそうで見えない。だからダラダラ読めるものの全体的にメリハリがなく、あまり読後感としてはスッキリしない。

ここで改めて思うのは、非少年ジャンプの「敵キャラ作りの下手さ」を痛感する。主人公たちのキャラ作りを頑張っても、それだけでそのキャラクターは輝かない。もちろん白浜兼一は「殺さない」という一貫した主人公性があって悪くないが、魅力的な敵がいてこそ、主人公はもっと内なる輝きを放つんだと思う。

総合評価


『史上最強の弟子ケンイチ』のネタバレ感想ですが、画力やアクション、セクシーなどはレベルが高くて面白い。少年サンデーのレベルを考えたら「かなり面白い漫画」と評価しても良いんですが、もう少し突き抜けた部分も欲しかった。格闘描写にしても「松江名俊にしか描けない!」という部分は少なかった印象。

あと気になるのが60巻というボリューム。さすがにまとめ買いするには躊躇する人が多いはず。内容の面白さを考えたら40巻前後が妥当で、ダラダラと読めるからといって長続きしすぎても新規読者は参入しづらい。

ただ間違いなく言えるのは「少年誌でここまで地区ポチを描いた漫画は存在しない!」ということ。『ToLOVEる』に全然負けない水準。『史上最強の弟子ケンイチ』はそこの割り切りがあったからこそ、ここまで長期連載が続いたんだと思う。一貫して「漫画の狙い」を外さなかったのが、長寿の秘訣。既に作者の松江名俊は少年サンデーで新連載を始めてますが、未だに連載終了を惜しむ声もあるとかないとか。

『結界師』全35巻のネタバレ感想。作者は田辺イエロウ。掲載誌は少年サンデー。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックの妖怪漫画。かなり前に日テレ系でアニメ化もされてて、個人的に少しハマったマンガでした。そこで今回は「結界師が面白いかつまらない」を考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は墨村良守(よしもり)という結界師。代々受け継がれる職業であり、一族の息子。私立烏森学園に集まってくる妖怪を退治して、周辺の市民の安全を守ってる。
結界師15巻/結
(15巻)
こんな風に「結!」と叫ぶと周囲に立方体の空間ができて、妖怪が閉じ込められる。そして「滅!」と叫ぶと、その中の妖怪が消滅する。この良守が結界師として、また人間として成長していくような物語。


好感が持てる絵柄だが展開は陳腐

絵柄にはクセがなく、おそらく大体の読者は好感を持つはず。ただそれ以上に見た目が地味で、華もない。キャラクターデザインなどのアイデアが貧困。別に誰が誰か識別が混乱することはないが、全体として印象に残らない。新作のバードメンが特に顕著にヒドいが、良くも悪くも、「地味に上手い」という表現がまさにピッタシ。

ただストーリーも同じように地味。バトル漫画として評価するなら、見せ場・ヤマ場となる展開が少ない。まだ序盤は学園マンガ風の展開でそこそこ読めるが、『退屈』という影がコチラを少しチラチラ見やる。それもそれで読後感はスカッとしない。サンデー系全般のマンガに通じる話ですが、何故なら明確なオチがない。

そして後半になるにつれ、徐々にシリアスな展開(バトル漫画的な展開)が始まるんですが、それ如実に読むのが苦痛。本当に退屈。少年ジャンプの漫画のように「◯◯編」「△△編」という明確な区切りがないので、今読んでる場面の状況が不明。この展開が始まった・あの展開が終わったみたいなことが分からない。

この結界師もその御多分にもれず。ただ淡々とダラダラと描いてるだけで、良くも悪くも『波』がない。ワクワクさせられる展開がない。サンデー系全般の漫画家に言えるが、基本的にストーリーやプロットが作れない。だから全体として、残念ながら読んでて退屈。


能力設定の応用

冒頭で主人公・良守の能力を説明しましたが、この設定をフルに活かす力も作者・田辺イエロウには足りない印象。

結界師28巻/極限無想
(28巻)
ジョジョのスタンドのようなキャラクターを途中で出す。でもこの肩に乗っかってるキャラは、ほとんど活躍しない。バトル描写の時にコラボしたりして、新たな展開を作っていくんではないのか。ましてや自発的に喋ってるので、そこから面白いやり取りも生まれるはず。

結界師29巻/墨村良守
(29巻)
最終的には「結」という必殺技も使わず、オーラみたいなんまとっちゃう。HUNTERXHUNTERでいう『念』の類いではないので、そこから様々に派生することはない。NARUTOのチャクラの類いでもない。系統的にはドラゴンボールの『気』に近いが、だからと言って飛んだり跳ねたりカメハメったりはない。だから、むっちゃ地味。

というか、28巻の能力に目覚めたのに後半は主人公・良守がほとんど登場も活躍もしない。
結界師34巻/墨村正守
(34巻)
その代わりに活躍するのが兄である正守(まさもり)。この正守がメインでラストの結末までストーリーは進んでいく。一応最後らへんで主人公・良守は登場するものの、そのままフワッと最終話を迎えて終わります。

もっとズバズバーっと必殺技を出してラスボスを倒せばまだしも、主人公は「え?お前なんかしたっけ?」状態。最近のNARUTOで言えば、オビトのクダリを更に更にフワッとさせた感じ。なんかものすごく平和的に解決しちゃう。ラストのオチも然り、全体的にスカッとしない読後感の完結でした。


総合評価 評判 口コミ


『結界師』のネタバレ感想をまとめると、最初は面白そうに思えるんですが、いざ読み始めると意外につまらない。

もし少年ジャンプに掲載されていたら10巻程度で打ち切りされてるレベルか、頑張って20巻程度までかなーという内容。初連載時はアンケートで上位に位置するものの、失速感が読者に見抜かれてある時を境にグンと下がりそうな感じ。

少年サンデーだからなんとか連載できてたレベルで、画力に関してはプロ上位レベルですが展開力があまりない印象。作者・田辺イエロウの絵は上手いのでそこは十分満足できるんですが、やはり肝心のマンガ的な部分やストーリー展開に面白さが欠けます。

『鏡の国の針栖川』全3巻のネタバレ感想。少年ジャンプ(集英社)で連載されてたセクシー漫画。作者は叶恭弘。

あらすじ


主人公は、針栖川哲(はりすがわ・てつ)という男子高校生。
鏡の国の針栖川1巻針栖川哲
(1巻)
ある時、大好きなヒロイン・里見真桜を事故から救おうとすると、そこは鏡の中だった的な内容。

作者・叶恭弘の過去作『プリティフェイス』然り、あとはセクシーな展開が待ってる。鏡の中からいろいろ覗くと、やっぱり色んなモノが都合よく見えちゃう(;´Д`)ハァハァ

中途半端なストーリーもの

ただ、内容は中途半端なストーリーもの。

結局、主人公の針栖川やヒロイン・里見真桜は一体どうしたいか、何をすれば目的達成なのかが分からない。針栖川はずっと鏡の中に閉じ込められてたらまだしも、普通に里見とタッチすれば外に出れる。

全体的にメリハリがなく、ダラダラと話が展開してる。「これ以上もう描くことは何もない」と作者が語ってますが、アイデア不足。2巻半ばからストーリーの締めに入るんですが、もうちょっと頑張れたでしょ。

鏡の国の針栖川3巻里見真桜

ラストはヒロイン・里見が今どきアメリカへ引っ越しせざるを得なくなって終わり。2011年2012年に使うようなオチ?展開力もなく、一話一話が薄味。

つまるところ「出オチ」という表現がぴったり当てはまる。面白い設定は思いついたものの、その設定をあまり上手く活かすことができなかった。一話完結のオムニバスだった方が、サラッと読めたはず。中途半端に感動などを狙おうとすると失敗する典型。

セクシー描写は及第点

冒頭のあらすじに続きですが、セクシー描写は合格点。『鏡の国の針栖川』は2011年から2012年にかけて少年ジャンプで連載された漫画だそうですが、その割に結構頑張ってる。

鏡の国の針栖川1巻セクシーハプニング2
(1巻)
都合よく鏡がヒロイン里見の股間下に…とかであったり、

鏡の国の針栖川1巻セクシーハプニング
(1巻)
特に、お風呂の鏡からコンニチワ描写がヤバイ。2巻だと温泉描写があって、こういうセクシーハプニングのオンパレード。

ただストーリーが後半のまとめ・締めに入るに従って、セクシー描写も減少。最後の最後までパソチラにこだわれよ!と言いたくなる。

総合評価

作者・叶恭弘が少年ジャンプ電子版ジャンプ+で『KISS×DEATH』の連載開始したらしいので、前作『鏡の国の針栖川』を記事化。この『KISS×DEATH』が強烈。是非、グーグルプレイなどでアプリをダウンロードしてみてください(;´Д`)ハァハァ

改めてになりますが、『鏡の国の針栖川』の内容は退屈。面白いアイデアを閃いたは良いが、結局それを広げることはほぼできずに萎んじゃった印象。ギャグやボケのノリは悪くないと思うので、ToLOVEるのように割り切った方が良さそう。


◯展開★2.5◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★4
◯大人買い★3.5
◯74点!!!!

『岸辺露伴は動かない』のネタバレ感想。作者は荒木飛呂彦。言わずと知れた「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズで有名なキャラクター・岸辺露伴が主人公。第4部に登場した有名漫画家という設定で、未だに何故か人気。その岸辺露伴を中心とした、これまでの読み切りマンガを集めた短編集。

岸辺露伴のスタンド『ヘブンズ・ドアー』を使って、他人のプライバシーを覗き放題。

描き下ろしはありません

ただ注意したいのは描き下ろしが一切ない点。過去少年ジャンプなどで掲載した読み切りの寄せ集め。10年以上前の作品も載ってます。

その作品をまずは列挙。『懺悔室(1997年)』、『六壁坂(2008年)』、『富豪村(2012年)』、『密猟海岸(2013年)』、『岸辺露伴グッチへ行く(2011年)』の5作品。この中のどれを選ぼうかなーと悩むところですが、とりあえず5つしか無いので全てレビューしていきます。

懺悔室

まずは『懺悔室』。

結構古い作品なので絵柄が変わってるかと思いきや、荒木飛呂彦の容姿と同じくあまり変わらず。設定は岸辺露伴がイタリアのヴェネツィアに旅行した時の話。そこで教会の懺悔室にたまたま入り神父と間違えられ、信者からとんでもない話を聞くという流れ。

ざっくり言うと、その信者が見殺しにした浮浪者から復讐される。これが怖い。自分の幼い娘の舌からコイツが登場する場面はガクブル状態。そこで浮浪者がチャンスをやると、ポップコーンを上に放り投げて三回連続食えるかという勝負をする。これがハラハラドキドキ面白い。そういえば、この読み切りをタイムリーで読んだことがあるかも…と書いてる内に少し思い出してきた。それだけ記憶に残る作品を描ける荒木飛呂彦はやっぱりすごい。

六壁坂

続いて、『六壁坂』。ちなみに「むつかべざか」と読むそう。何故かグーグルのIMEでは岸辺露伴と打つと、必ず「岸辺露伴は動かない-六壁坂-」が候補に出てくるナゾ。それだけみんなに検索されてるワードなのか、それを証明するようにクオリティーも高く、これも結構怖い話。

大里楠宝子(なおこ)というお金持ちの娘がメインのキャラ。この女の子がボーイフレンドを殺害しちゃう話。サスペンスチックな展開になるのかと思いきや、全く違う。むしろ、ボーイフレンドの方から勝手に死んでしまう。というか、そのボーイフレンドは死んでるようで一向に死なない。「何を言ってるか分からないだろう」とジョジョのセリフを借りたいところですが、読んでもらえたら分かります。

そもそも何故この話が岸辺露伴が知ってるか。別にニュースにもなってないし、この大里楠宝子が自身の口で見ず知らず岸辺露伴に話すわけもない。それはもちろん…
岸辺露伴は動かない 六壁坂
ヘブンズ・ドアーで勝手に覗いたから。画像はオチに繋がるその娘に対しての場面なんですが、「芸術追求のためだ許してくれ」と言い訳めいたセリフを岸辺露伴は吐いてるんですが、どういう流れでそうなったのかという記述がない。キレイな女の子を見かけたら手当たり次第にスタンドを発動してるんだとしたら、悪趣味極まりない(笑)

富豪村

2013年に少年ジャンプに掲載された読み切り『富豪村』は、まさにその村へ行くとお金持ちになれる。ただそのための試練が、地味にものすごくハード。とにかくマナーを守らなければいけない。一つでもミスると「お帰り下さい」状態。

岸辺露伴は動かない 富豪村 もろこしの食べ方
例えば、トウモロコシを上品にマナーよく食べるにはどうすればいいでしょう?
この答えを知った時は「ミスリード半端ないやん!」とキレそうになる。

岸辺露伴は動かない 富豪村1
この村を案内してくれる子供がまた不気味。「マナーは『正しい』か『正しくないか』のどちらかです。寛容はございません」と正論をバンバン吐いてくる。こんな感じであまりに容赦がないのでチャンス一回だけしかないのかと思いきや、実は再挑戦できる。ただその代わり、「自分の大切なモノや人を失う」。岸辺露伴は若い女編集者と一緒に村に来たんですが、その編集者の母親や婚約者が死亡。

まさに「ゴゴゴ」状態でピンチに追い込まれる岸辺露伴ですが、そこはヘブンズ・ドアーで見事に乗り切る。荒木飛呂彦はスタンド(能力)の使い方が見事。ちゃんとストーリーの流れにも組み込んでて上手い。

密猟海岸

そして『密猟海岸』。2014年に少年ジャンプでも掲載され、既に自分もレビュー済みなので内容は省略。同じく第4部で登場した料理人・トニオ(スタンドの能力者でコイツの料理を食べると健康になる)に密猟を持ちかけられ、それに岸辺露伴が同意しアワビを密猟したりする話なので、あまちゃんとコラボとか言ってみました。まさに「じょじょじょじょ?」(笑)

岸辺露伴は動かない 密猟海岸
あとがきによると作者の荒木飛呂彦は、この画像のクダリを描きたかったそう。岸辺露伴的には「現代社会のルールより大切なもののために乗り越えていく」んだそう。

岸辺露伴グッチへ行く

『岸辺露伴グッチへ行く』は「SPUR(シュプール)」という女性向けの高級ファッション雑誌に描いたそう。ファンション誌ということもあってか…

岸辺露伴は動かない SPURとコラボ、グッチ
画像のように何故かジョジョ立ちのポーズ(しかも1ページまるまる全部を使ってる)が多めな印象。荒木はページの見た目を特に意識してたのか、トーンをふんだんに使ってる。これ以前の作品とは明らかに雰囲気が違う(笑)

だからと言って、内容的に特別見劣りすることはないので御安心を。最初はグッチのバッグを批判してる。何故かお金を入れると消える。「正直どうなの?」と思って読んでたんですが、最後の最後で大どんでん返し。「グッチのバッグってスゲー」と思わせるオチを持ってくる力。量的には一番少なく15・6ページぐらいしかないんですが、荒木飛呂彦の「まとめる力」が見事。





◯展開…★4.5◯テンポ…★4
◯キャラ…★4◯画力…★4.5
◯全巻大人買い…★-
◯おすすめ度…86点!!!!

『からくりサーカス』全43巻のネタバレ感想をレビュー。作者は藤田和日郎(ふじた・かずひろ)。今まで「わびろう」と読んでたのは内緒。掲載誌は少年サンデー。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックのバトル漫画。

最近読んだ・読み終わったので、今更ですが『からくりサーカス』とかいうマンガが面白いか、つまらないか考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

主人公は3人。内容的にはかなり複雑。

一人目は小学5年生の才賀勝(さいが・まさる)。お金持ちの御曹司。ただ父親が亡くなったことで、莫大な遺産を相続。ヒロインは、その才賀勝を守るエレオノール。そして、屈強な19歳の加藤鳴海(かとう・なるみ)。他人を笑わせないと死んでしまう病気「ゾナハ病」に罹患。

ただ厳密には、この3人ではない。もっと時代は遡(さかのぼ)って、国境すら超えて、この3人の先祖が抱えてる執念や悲恋や過去が綿々と続いているストーリー。

からくりサーカス27巻フランシーヌ
(27巻)
舞台は200年前の中国。フランシーヌという貧しい少女がいた。この女性を巡る壮絶な戦いを繰り広げたのが、白銀と白金という兄弟。弟の白金はフランシーヌを愛していたんですが、横から結果的に兄・白銀に奪われてしまう。

からくりサーカス27巻兄とフランシーヌを恨む白金
(27巻)
ストーリーの肝はこの『憎悪』一点のみ。愛する兄・白銀がフランシーヌの最愛の彼氏だったからこそショックは大きくて、弟・白金が暗黒面に陥ってしまう。「僕はもう…笑わない」というセリフがシンプルに強烈。

つまり世界中に「ゾナハ病」を撒き散らした張本人は白金であり、『からくりサーカス』のラスボス。この「数百年前の悲恋」を軸に物語が展開していきます。


弟・白金の壮絶な執念が気持ち悪い、切ない、泣ける

だから、弟である白金の執念がとにかくエゲツナイ。錬金術を駆使することで、永遠に近い命を得る。厳密には他人の身体に白金の記憶を移動させて、いわば乗り移っていく感じ。

そこで白金はどうするかと言えば、フラれたフランシーヌの生まれ変わりと恋仲になろうとする。それがアンジェリーナであり、冒頭で紹介したエレオノール。この執念がえげつないし、吐き気がするし、切なすぎる。この計画が何度も破綻しつつ、何度も繰り返される。

そして200年後、冒頭でこれまた紹介した才賀勝に繋がる。父親が亡くなって莫大な遺産を想像したと書きましたが、
からくりサーカス26巻才賀勝に乗り移ろうとする白金
(26巻)
実は、その父親ってのが白金。エレオノールに自分(才賀勝)を守らせることで、徐々に恋仲に発展という計画。

からくりサーカス27巻才賀勝に乗り移った白金
(27巻)
だから、最終的に白金に乗り移られる才賀勝?という展開も。

ただ一方、兄・白銀は死亡してしまうものの、その意志や痕跡も受け継がれていく。それが才賀勝の養祖父にあたる、才賀正二。白銀が作ったカラクリ人形を作る技術など、様々な教えを乞う。
からくりサーカス24巻才賀正二とアンジェリーナ
(24巻)
才賀正二はフランシーヌと瓜二つのアンジェリーナと結婚。弟・白金はディーン・メーストルという人間だった時、そのアンジェリーナの幼少期とパートナーとして働いてた。そうやって恋を成就させようとしてた。

だから兄・白銀はフランシーヌと恋仲になる運命で、弟・白金はフランシーヌと失恋する運命。まさに残酷なDNA。主人公の才賀勝は白金のDNAを引き継ぎ、加藤鳴海は白銀のDNAを引き継ぐ。ラストは、まさに想像通りのオチ。

連綿と壮大に繋がっていく執念と恋。この『からくりサーカス』というストーリーの醍醐味。


熱い名言・名場面が泣ける

からくりサーカス27巻才賀勝のセリフ
(27巻)
主人公・才賀勝のセリフも熱い。もはや名言に言い換えてもいいでしょう。「なんでみんな幸せになれないのさあ?」というセリフは、勝の人間性がもろに現れている名場面。

からくりサーカス32巻才賀勝のセリフ
(32巻)
幸せが似合わない人なんて、いない」というのも、まさに名言でしょう。藤田和日郎は周りくどいストーリーを作りますが、セリフはストレートすぎるぐらいストレート。「夢はいつか必ず叶う」などグッと来る名言が多い。

からくりサーカス最終43巻 しろがねとナルミ
(最終43巻)
ちなみに最終回をネタバレしておくと、才賀勝は白金の失恋DNAを引き継ぎつつも、最後は加藤鳴海(ナルミ)にエレオノールを譲る。最終巻だとマサルとナルミが二人が背中合わせで戦う場面も名シーンだったと言えるでしょう。マサルだけは背中合わせの相手がナルミだと気付いてる。でもエレオノールと一緒にさせるため、自分だけ犠牲になることを決意して気付かせないように動く。

こういう実直なキャラクターだからこそ全員が幸せになる方法を才賀勝は選択できた。もちろん序盤で加藤鳴海との友情を醸成してたことも手伝って、失恋DNAの負の連鎖を引きちぎれた最終話の完結シーンも名場面と言えるでしょう。


キャラクターの関係性が複雑

ただ反面として、あらすじでも書いたようにキャラクターの関係性がかなり複雑。

からくりサーカス26巻白金=才賀貞義1
(26巻)
例えば実はアイツはコイツだった…みたいな演出が多い。例えばラスボスの失恋クソ野郎・白金は、ディーン・メーストル・才賀貞義・フェイスレスの合計3人になりすましてる。また完全になりすましてなくても、その系譜を受け継いでいたというパターンもある。それがあまりに多すぎて、ちょっと理解するのが大変。

からくりサーカス・フランシーヌの系譜Wikipedia
Wikipediaを読むと「よーまとめたな…」と思わず感心しましたが、白金が片思いしてたフランシーヌだけでもこれだけの繋がりがある。これは視覚的にまとめてくれてるので分かりやすいですが、この関係性をマンガを読みながら把握していかなきゃいけない。正直「小学生読者とか大丈夫?」と訊きたくなるレベル。

しかも時間軸は現在から過去、その過去から更に過去といった具合に、時代もアチコチ頻繁に飛び回る。それこそが藤田和日郎作品の醍醐味・真骨頂と言えますが、今回の『からくりサーカス』は読者として付いていくのが大変。自分も偉そうにレビューを考察してますが、まだ完全に把握できた自信がない。このネタバレ感想記事でも間違って記載してる情報もあるかも。

そして、相変わらずフワッとしたワードも多い。「しろがね」というキーワードがあるんですが、これもいろいろ存在。『うしおととら』でも共通したけど、特別な固有名詞が少なくて分かりづらい。作者の藤田和日郎が必死こいて考えた内容だからこそ、それを一瞬で理解するのは不可能。


自動人形を使ったバトルは不発

『うしおととら』や『月光条例』でも言えるけど、アクション描写は良い。

からくりサーカス23巻自動人形
(23巻)
からくり人形(自動人形)を操ることで敵と戦う。ここだけ見ると結構期待できちゃうんですが、バトル漫画的な要素はそこまでない。少年サンデー全般に言えますが「必殺技」に対する意識が不足気味。

『からくりサーカス』はストーリーがメインとはいえ、「自動人形」という設定が抜群だっただけにもう少し活かせなかったものか。こういったバトル描写があるだけで、読者はたとえストーリーに付いていけなくても漫画そのものは読める。良く悪くも「上手な普通のアクション」の域止まりだったのは残念。


壮大ゆえに最後まで読めない?

作者・藤田和日郎が描くマンガは内容自体面白いものの、やたら長ったらしい。この『からくりサーカス』は特に長かった。読めないまま途中で挫折した人も多いでしょう。

ストーリーが壮大に作りこまれてるが故に、いつまでも展開がたたみきれない。もちろん描いてる作者・藤田和日郎が一番大変だったと思いますが、これを読んでて「うわ…まだ続くの?」と何度か感じなかったと言えばウソになります。辛辣なことを言うと、全体的にテンポ感や充実感が欠ける

既に30巻台半ばぐらいで、白金や白銀の過去などおおよその設定は出切ってた印象。それにも関わらず、以降の10巻分ぐらいはグズグズ続いて展開が回りくどかった。『ワンピース』などもムダに長いですが、一つ一つのエピソードは長くて10巻分程度のボリューム程度に収まってる。その一つ一つのエピソードを連結させることで、最後の秘宝ワンピースをゲットするという大オチに繋げてる。

でも、この『からくりサーカス』の場合、一つのエピソードがまるまる43巻分あると言っていい。もう少し要所要所で大きな区切りが欲しい。だから最後の最後で完結した最終話まで読まないと、読後感が一切得られない。良くも悪くも期待通りの結末だっただけに、さすがにオチを勿体つけすぎ。

もっとコンパクトにまとまらなかったのか疑問。正直ここまで長かったら、さすがに読んでる内に冷めていく部分が少なからずある。中規模のオチ(適度な充実感)があるからこそ、読者は継続的に読めるんだと思います。


総合評価・評判・口コミ


『からくりサーカス 全巻』のネタバレ感想をまとめると、クオリティーだけ考えると名作の部類に入るでしょう。

ここまで惨めで悲しいラスボス・フェイスレスは存在しない。まさに誰にも愛されない男の悲哀。ニュースを騒がす大きな凶行に走った犯人も、きっとこんな感じの男のはず。だからこそフェイスレスを嫌いになれない自分もいます。

ラストの最終話でフェイスレスは才賀勝を助ける。そして一人になった時(正確にはグリュポンもいるが)に、ようやく「僕が間違っていたよ。銀兄さん」とポツリ。その時の何とも言えない表情に胸がギュッと締め付けられる。最後の最後まで素直になれない姿勢や性格に涙が出てくる。

ただ少年ジャンプだったら10巻も経たない内に打ち切りコースかも。良くも悪くも、少年サンデーだからこそ連載できてるマンガであり、マンガ家。それが作者・藤田和日郎の良さなんですが、『からくりサーカス』はあまりに自由にやらせてる分だけここまでダラダラ続いてしまった印象も否めません。

プロットがグチャグチャってわけではないですが、さすがに長過ぎる。風呂敷を広げすぎたと言ったら語弊があるが、ストーリーが良かっただけにもっと小気味の良さやテンポ感も欲しかった。また読み直したいかと思うと、ちょっと躊躇しちゃうボリューム。

良くも悪くも手軽には読めない名作漫画。「挑戦」したい方は是非どうぞ。

『うしおととら』全33巻のネタバレ感想をレビュー。作者は藤田和日郎。掲載誌は少年サンデー。出版社は小学館。ジャンルは少年コミックの妖怪バトル漫画。1990年代の初め頃から連載されてたので結構古い作品ですが文庫版(全18巻)が発売されたり、最近また完全版が発売されたらしい。またアニメ化も始まるなど息が長い人気作品。

実際一つ一つのフリが壮大で心が揺さぶられる・響く展開が多め。絵柄の古臭さも含めて好みが分かれそうですが、無骨だけどなかなか楽しめる漫画に仕上がってる。そこで今更ですが面白い漫画かつまらないか考察してみました。


あらすじ物語・ストーリー内容

うしおととら1巻/潮と虎
(1巻)
タイトルの『うしおととら』の意味は、そのまんま。主人公の蒼月潮(あおつき・うしお)という少年と虎(とら)という妖怪から来てる。この潮はお寺の住職の子供だったんですが、ある日秘密の蔵にたまたま入ると封印されてた大妖怪・とらを発見。そしてひょんなことから500年ぶりに虎を復活させてしまう。

うしおととら9巻/潮
(9巻)
とらを封印してたヤリが「獣の槍」。どんな妖怪も駆逐できる最強のヤリ。これを引き抜くことで封印が解かれたんですが、何故かこの獣の槍を潮が扱えた。封印が解けたらトンズラを決め込んでたとらは誤算。

うしおととら9巻/潮と虎コメディータッチ
(9巻)
結果、とらは潮に頭が上がらない生活を送る。潮は熱く真っ直ぐ、正義感溢れる少年。とらは悪態をつくものの、実は潮が好きというツンデレ。普段はツンケン悪口とか言うくせに、性根は優しい。潮はいかにも主人公主人公してて、とらはとらで潮を引き立てるキャラに仕上がってる。

最初はバチバチといがみ合う二人だったが、徐々に友情が芽生え出す。そしていつの間にか凸凹コンビが穴ぼこが見事に合致してて、絶妙なコンビプレイを生む。たまに魅せるコメディータッチな二人のやり取りには思わずほっこり。そんな人間と妖怪の垣根を超えた友情に胸熱で泣けるような内容となっています。


白面の者(九尾)

うしおととら30巻/白面の者
(30巻)
この二人の主人公が戦うラスボスが、『白面の者』。ざっくり言うと、NARUTOでも登場するような「九尾」。ある意味、そういう類いのマンガの先駆者的な感じだろうか。

2000年以上前の中国大陸で生まれる白面の者だったが、それを恐れて日本にやってくる。そして、そのまま日本の地脈に巣食って、あわや日本沈没。ただ、そこで潮の先祖がそのまま地下深くに封印。そして2000年後の現在、その封印が解かれそうになって日本が再び沈没の危機!?的な展開。

うしおととら23巻/白面の者
(23巻)
ただ唯一、恐れるのがとらも封印してた「獣の槍」。それで対抗して戦う潮ととら。


タイムスリップという仕掛け

2000年前の出来事が発端だから、当時を再現するためにちょいちょいタイムスリップする。ここが結構ミソ。「現在と過去との因縁」が効果的に描かれてて、ある部分とある部分が繋がった時に芽生える感情は気持ちが良い。歴史マンガにこそあってほしい連綿と繋がる「何か」が、そこにはある。

うしおととら23巻/潮とギリョウ
(23巻)
例えば、「獣の槍」は白面の者に妹・ジエメイを殺された兄・ギリョウが恨み骨髄で作り上げた。その恩讐が恐ろしいほど込められてる。だから白面の者然り、どんな妖怪も駆逐できる。

うしおととら31巻/シャガクシャ
(31巻)
その白面の者は、インドのシャガクシャという男から白面の者が生まれる。シャガクシャは最愛の女性が殺された復讐心を芽生えさせ、それを糧に白面の者が誕生。つまり、白面の者は「人間の負の感情」を餌に強くなる。

それを潮や虎が見たことで、ギリョウよろしくそんな感情で立ち向かってもダメだということに気付く。
うしおととら33巻/うしおととら
(33巻)
結果ラストは二人の友情パワーで倒すオチは、シンプルで爽快。いかにも少年マンガ的で読後感の良さは言うまでもない。それは決して初期のONE PIECEに引けをとらない。

ちなみに、そのシャガクシャが「とら」。獣の槍を使った人間は。代々そんな風貌の字伏(あざふせ)というバケモノに変わる。その初めの人間。

後付け設定っぽいっちゃっぽいんですが、それがキャラとキャラとの『壮絶な因縁』を描き出してる。それが結果「ストーリーの深さ・壮大さ」を生み出し、良いスパイスを与えてる。

作者の藤田和日郎は、そういった「過去に遡る」演出をメチャクチャ多用する。この『うしおととら』以降の、『からくりサーカス』でも当然見られて、『月光条例』のクオリティーは極まってる印象。まだまだうしおととらは雑な部分も散見するが、先の先を見通した仕掛けやフリは見事で、藤田和日郎作品を週刊誌で毎週見られるのは何気にスゴいこと。


心を揺さぶる名場面が泣ける

そういったストーリーに用いる小細工だけではなく、このマンガの根底に流れてるのは『熱さ』。ラストの展開も然り、潮と虎の友情物語然り、読んでて何か心が揺さぶられることも多い。

「白面の者(九尾)を倒す」という大きなストーリーの軸はあるものの、その間にちょいちょい「雑魚妖怪を倒す」というオムニバスの展開も挟む。例えば、飛行機を乗っ取る衾(ふすま)や霧の妖怪・シュムナなど。基本的に白面の者の手下の妖怪であることも多いんですが。

その中でも泣かせるエピソードもある。

例えば、20巻に登場するさとり。敢えて詳しく説明するまでもなく、心の中が読める妖怪。ある時、失明した子供と仲良くなる。目が見えないからこそ、仲良くなれたんでしょう。

その子供を助けるために、さとりはどうしたか。色んな人間から目ん玉を引き千切ってくる。この描写はなかなかエゲツナイんですが、ただ普通に手術をすればその子供の目は治る。
うしおととら20巻/さとり
(20巻)
それを気付かずに、さとりは人間を襲いまくってた。この時のさとりの描写は切ない。

ただ問題点もあって、それがオムニバスの話数が少し多い。もう少し減らしてコンパクトなストーリーにした方が、マンガ全体のテンポが更に生まれた気がする。またオムニバスが多いということは、同時にモブキャラも多いということ。紙面が限られてる現状、余計な描写は無用。★5キャラに評価してないのは、それが理由。最終的に白面の者を倒すためにみんな集結…っていうのはあるけど。


基本的にちょいダサいデザイン

ただ致命的な問題もあって、この「うしおととら」というマンガは全体的にダサい。

例えば絵柄。画像を見れば何となく分ってると思いますが。これは90年代初頭から後半にかけてのマンガだから…という訳ではない。作者・藤田和日郎の絵柄は、現在でもこんな感じ。良くも悪くも、完成されきってる。

他にもネーミングセンス。「獣の槍」というラスボス白面の者を倒す重要な武器。ハッキリ言って、センスのカケラもない。読み始めは、いずれもっとカッコいい固有名詞が付くんだろうなーと思ってたが、いくら待っても変わらず。物語のキーとなる部分は、しっかりビシッと決まる呼び名が欲しい。サンデー系マンガ全般にも通じるが、決めワードが疎か気味。

うしおととら29巻/武装化した潮と虎
(29巻)
絵柄がダサいってことは必殺技・奥の手のデザインも非常にダサい。後半にかけて、主人公たちの潮と虎は武装化するんですがこんな感じ。虎の顔の上にもう一個顔とか要る?っていう。ただ「古き良き少年コミック」として読むと、その古臭さは却って絶妙にマッチしているという解釈も可能か。


総合評価・評判・口コミ


『うしおととら 全巻』のネタバレ感想をまとめると、いろいろ批判もしましたが「読ませる漫画」で面白い。キャラクターや展開、名セリフにシンプルな熱さがある。うしおととらの熱い友情は、少年誌に必要な要素をほぼ全て満たしている。

とはいえ、相当先のオチまで考えた伏線や前フリなどストーリー作りは綿密。しっかり物語が完成されてる。最終回のラストも白面の者が最後になりたかった存在が「赤ちゃん」という完結・結末も、何か良い。この作品以降の藤田和日郎作品にも通じるマンガとしてのクオリティーの高さ。それらが毎週提供されていた事実は『感服』の一言。

ただ後半の批判にも繋がりますが、少年マンガとして考えた場合は絵柄のダサさはやっぱりキツい。自分も小学生か中学生の頃に友達に勧められたんですが、実際絵柄のダサさがネックで読まなかった。「何故少年誌で連載してるんや?」と詰問したくなるぐらい若い読者を寄せ付けない絵柄。『進撃の巨人』も絵柄も大概ですがそれなりに売れてるので、思ったほど影響もないのかも知れないですが、それでもキャラクターなどを視覚的にカッコ良く描く努力は必要。

でも絵柄はダサいとは言え、画力はそこそこ高い。しっかり「情報を伝える」力が高い。読んでて「これはどんな状況?」と困惑することは薄い。それがマンガ全体のテンポ感の良さにも、ある程度寄与してる。アクション描写もそれなりにカッコいい。

◯展開★5◯テンポ★4
◯キャラ★4.5◯画力★4
◯全巻大人買い…★5
◯92点!!!!

『アストロ球団』全5巻のレビュー。少年ジャンプで1972年から1976年まで連載されてた野球マンガ。作者は遠崎史朗、中島徳博。

あらすじ

『アストロ球団』は元巨人の選手・沢村栄治の遺志を受け継いだ、超人的な野球選手ばかりを集めてたアストロ球団が読売巨人軍やアメリカ大リーグの打破していく物語。

この超人的な野球選手は全員昭和29年(1954年)9月9日生まれで、全員身体にボール型のアザを持ってる。江戸時代の『南総里見八犬伝』をモチーフにしてるそう。かなり使い古されたド定番な設定ということに少し驚き。

非正統派な野球マンガ?

主人公は、宇野球一。他の選手では伊集院球三郎や上野球二、明智球七、明智球八などがいる。読売巨人が許可したのか、長嶋茂雄や王貞治や沢村栄治、江夏豊、川上哲治などが登場する。じゃあ正統派なスポーツマンガ・野球マンガかと言えば、結構ルール無視のハチャメチャな展開が待ってる。

アストロ球団1巻15話 伊集院球三郎のビリヤード打法
(1巻15話)
例えば伊集院球三郎とい選手は、ビリヤードのようにバットのてっぺんで打とうとする。ただ相手ピッチャーが豪速球を投げるので、「甘かった!ビリヤードの方法じゃあてるのがやっとだぜ」と悔し涙。いやいや、当てるだけでもスゴいやろ。

アストロ球団1巻4話 明智球七郎と明智球八
(1巻4話)
明智球七と明智球八という双子は、まさに幽☆遊☆白書の戸愚呂兄弟さながら。きっと冨樫義博は絶対読んでたに違いない。そして想像通り、兄貴の明智球七を思いっきり頭上に放り投げて、どんなライナー性のボールでもキャッチしちゃう。

アストロ球団は基本的にこんな調子でルール無用だから、球場内で殴り合いや殺し合いがちょくちょく発生する。
アストロ球団1巻14話 上野球二が死す
(1巻14話)
例えばグラウンド上で上野球二というキャッチャーは、結構早々に死んでしまう。最期はボールをキャッチしたまま。お前は武蔵坊弁慶か。

アストロ球団1巻12話 パラシュートの糸を切られる・ブラック球団に
(1巻12話)
主人公・宇野球一も思わず「ヌオオーぶっころしてやる!」という物騒な発言もチラホラ。ただ、理由がヒドイ。実は宇野球一が上空からパラシュートで球場に降り立とうとした瞬間、パラシュートの糸を敵チームに切られたから。飛んでくる方も飛んでくる方だし、その糸を切る方も切る方。だからツッコミどころは多い。

ムダにタメを作る野球描写

『アストロ球団』という野球マンガでは、やたらと「タメ」を作りたがる。もちろん「タメ」自体はマンガにしろ映画にしろ、必要不可欠な演出。ただアストロ球団では、その「タメ」が長くてしつこい。聖闘士星矢の車田正美も思わず賞賛。

アストロ球団1巻1話 投げる前がしつこい宇野球一
(1巻1話)
「長島さん行くぞー」と宇野球一が挑発宣言。長嶋茂雄も「オオーこい!」と受けて立つ。じゃあ次のコマで宇野球一がボールを投げ出すかと思いきや…

アストロ球団1巻1話 投げる前がしつこい宇野球一2
(1巻1話)
再びの挑発。いや、そのクダリいいからマジで。一瞬コピペを錯覚させる(笑)

しかも、この後がまたスゴい。さすがにもう宇野球一がおとなしく投げるかと思いきや、「長いグリップ太めのバットときたね!」と何故か語りだす。長嶋茂雄も「すこしさがるか…」とバッティングの位置を気にし出す。全然投げない。

3巻9話でアストロ球団たちを望遠レンズで眺めてる奴のクダリとか、同じ画が続くことがしょっちゅう。宇野球一の登場場面からしてかなり回りくどい。一瞬「あれ?俺ページめくったっけ?」と強烈な既視感に襲われる。家の鍵ちゃんと締めたっけなーレベルの比じゃない。

正直ページの水増しと言われても仕方ないですが、この傲岸不遜ぷりはむしろ賞賛に値するか。

野球のルールをとにかく無視

アストロ球団は野球マンガと言いつつ、基本的に野球のルールは無視。冒頭のあらすじを読んだだけでも分かると思いますが、とにかく無茶苦茶。ただあらすじに書いたことは、まだまだかわいいレベル。

アストロ球団2巻6話 上半身裸でユニフォームを着ない
(2巻6話)
金田ロッテ戦に登場したリョウ坂本というキャラクターは、まさかのユニフォームを脱いで登場。野球のルール以前にスポールのルールとして、ユニフォームを脱ぐという選択肢がありえない。言っちゃえば、大相撲の白鵬がいきなりスーツを着用して取り組みを始めるもん。

伊集院球三郎に至っては、4巻か5巻でいきなり真っ白な死に装束で登場する。さすがにその意気込みは分かるけれども(笑)周りの味方選手は死ぬんじゃねーと必死に止めるんですが、止める部分は他にもっとあるやん。

アストロ球団3巻9話 伊集院大門のヌンチャク
(3巻9話)
伊集院大門というキャラクターに至っては、バットすら持たない。冒頭でも書きましたが、この伊集院大門は陣流拳法総帥。だからもともと野球と全く関係ない。

アストロ球団3巻1話 キック
(3巻1話)
挙句の果てには、ボールを捕球してから投げるんじゃなくて、そのままキック。ハリケーンキックじゃねーよ。せめて百歩譲ってパンチ。

冒頭のあらすじでも書きましたが、アストロ球団では実在する巨人軍の選手や監督が登場する。当時の巨人軍監督だった川上哲治がブラック球団と対峙する場面が結構スゴい。

アストロ球団1巻17話 川上哲治VSブラック球団 巌流島の戦い 動きすぎ
(1巻17話)
ブラック球団のピッチャーが左右に動きまくって、川上哲治を惑わす。一応巌流島の戦いを模してるんですが、さすがにピッチャーマウンドから離れたらアカン。反則という概念を軽くとらわれなさすぎ(笑)

結果的に川上哲治が思いっきりかっ飛ばす。やっぱさすがやなーと思ってたら…
アストロ球団1巻19話 いまさらルールを持ち出す
(1巻19話)
まさかの真っ当なルールを持ち出して、ドヤ顔で批判してくるブラック球団。今更すぎるやろ。川上哲治もガーンちゃうし(笑)

アストロ球団1巻インタビュー庵野秀明
(1巻)
エヴァンゲリオン監督の庵野秀明も巻末インタビューに答えてるんですが、「これ野球のルールを知ってたら、こんなこと描けないよなー」と一言ポツリ。

アストロ球団はギャグマンガではない!

ここまで読むと、アストロ球団はただのギャグマンガにしか思えない。ただ庵野秀明も言ってますが、少なくとも作り手側の遠崎史朗や中島徳博などはギャグマンガと思って描いてないはず。

例えば、宇野球一が魔球を投げるために、自分の手のひらに傷を付けようとする。実際の野球でも変化球を投げるためには、ボールに対して引っかかりが必要。だから指に油をつけたり舐めたりする。

じゃあ主人公の宇野球一がどうしたかと言えば、手の平に溝を掘ろうとする。感覚的には、でっかい指紋を作ろうとする感じ。
アストロ球団3巻16話 宇野球一が変化球を投げるためにドリル改造
(3巻16話)
ただドリルがめちゃめちゃデカイ。小さい溝どころじゃなくて、お前の手が無くなってしまうやろ。ここまで来ると狂気。ギャグマンガをもし描こうとすると、逆にここまでの発想はできないはず。

アストロ球団5巻インタビュー後藤編集者2
(5巻)
アストロ球団の担当編集者だった後藤という人がインタビューで答えてるんですが、作画の中島徳博に対して、「何故面白いネームが描けないんだよ!」と怒りのあまりに頭を殴ったらしい。編集者が思わず漫画家を殴打するって、それだけ作り手側からしてイカレt…もとい『熱い何か』を持っていた。

だからアストロ球団は笑いを狙ったものではなく、あくまで「破天荒さ」みたいなんを狙ったもの。実際、原作者の遠崎史朗曰く、「反権力」というテーマが根幹にあるそう。安保闘争が下火になって、若者がしらけてると言われた時代。そこにブワッと再び大きな火を灯したかったんだそう。

確かに、ややこじつけっぽいですが、まさに既存の価値観をぶっ潰そうという、狂気じみたものをアストロ球団には感じる。少なくとも、当時の社会思想や時代背景が色濃く反映されてたことに違いはなさそう。

まさに一試合完全燃焼。それを体現した野球漫画。「一試合を描ききる」情熱やパワーは今のスポーツマンガに足りない要素であることに違いない。最近のスポーツマンガは良くも悪くも、2巻分前後でポンポン試合が終わっちゃいますから。

ただその割に、2巻の金田ロッテ戦では9回表に一挙大量12点を入れたり、展開が地味に雑な部分もありますが。ラストにしても日米の野球リーグから追い出されて、まさかのアフリカへ向かってマサイ族と戦ったり(笑)

総合評価

アストロ球団は、かなりハチャメチャな野球漫画。今読み返してみるとギャグマンガにしか思えない。ただ考えてみるとサッカーマンガの金字塔と言われるキャプテン翼だって、サッカーのルールを忠実に守ってるかといえば甚だ疑問。それでもサッカーマンガの代表格みたいな扱いですからね。

ちなみに作画の中島徳博が、現在にも受け継がれる少年ジャンプの「アンケート人気至上主義」の導入を編集者に発案したそう。少年ジャンプに限らず、アンケート至上主義は批判されがちですが、逆にこのアンケートがなければ、今日の少年ジャンプはなかったでしょう。

だからアストロ球団は「既存の価値観や常識」を壊すようなマンガではありつつ、脈々と受け継がれるほどの「普遍的な価値観や絶対的な常識」を築いたマンガという矛盾が面白い。ただその「絶対的な価値観」に作画の中島徳博は潰されたようですが。

そんな中島徳博は昨年半ば頃に亡くなったようで、今更ながらお悔やみを申し上げます。もっと早い段階でアストロ球団は記事化したかったんですが、ここまで伸びてしまいました。あと言うまでもないですが、アストロ球団を好意的に評価したがる有名人も多いですが、もし漫画家を目指すなら話半分に聞いて鵜呑みにしない方が賢明。

◯展開…★3.5◯テンポ…★4
◯キャラ…★4◯画力…★3.5
◯大人買い…★3.5
◯おすすめ度…80点!!!!