バズマン。

健全な漫画の感想ブログ。基本的に面白いマンガだけレビューしてるつもり。

トップページ> >

『霊媒師いずな』全10巻のネタバレ感想をレビュー。作者は真倉翔(原作)と岡野剛(作画)。掲載誌はビジネスジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは青年コミック。いわゆる『地獄先生ぬ~べ~』のスピンオフ漫画。続編の連載が既に開始しているらしく、なんとなく面白いかつまらないか考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

霊媒師いずな8巻葉月いずな
(8巻)
言わずと知れた『地獄先生ぬ~べ~』のスピンオフ。脇役キャラクターだった女子高生霊媒師・葉月いずなが今回の主人公。同じように悪霊や妖怪を退治していくだけのストーリー。あらすじを詳しく説明する必要はないと思うので割愛します。


小気味良いオムニバスで読みやすい

少年ジャンプに連載されてた『地獄先生ぬ~べ~』と同じく、この『霊媒師いずな』も一話完結のオムニバス。相変わらず、展開もベタだから読みやすい。

また掲載されてたのがビジネスジャンプが隔週雑誌だったので、一話あたり30数ページというボリューム。結果的に掲載本数も少なくなって、それが全体的な「小気味の良さ」にも繋がってる。

霊媒師いずな4巻ベタすぎるオムニバス展開
(4巻)
結構感動チックなストーリーもあれば、

霊媒師いずな8巻ベタすぎるオムニバス展開
(8巻)
ちっちゃいオジサンが登場するシュールなストーリーまで幅広い。この画像だけ見たら何が「ありがとう」やねんって話ですが。

霊媒師いずな9巻玉藻京介
(9巻)
地獄先生ぬ~べ~の名物キャラ・妖狐・玉藻京介なんかも登場。スピンオフならでは。


ホラー描写たっぷり

地獄先生ぬ~べ~に負けず劣らず、『霊媒師いずな』も独特のホラー描写が健在。

霊媒師いずな7巻ホラー描写
(7巻)
猿みたいな妖怪だと、歯並びの悪さが絶妙に気持ち悪い。

霊媒師いずな4巻ホラー描写
(4巻)
のっぺらという妖怪に取り憑かれたお金大好きホステス。目がヤバイぐらいにくぼむ。


青年誌ならではのポロリ

もちろん地獄先生ぬ~べ~と言えばホラー描写だけではなく、忘れちゃいけないのがセクシー描写。残念ながら、実写ドラマでは山本美月のプリケツは堪能できませんでしたが( ;∀;)

『霊媒師いずな』では掲載されてたのが青年誌だけあって、更に描写がスゴくなってる。ToLOVEるに負けないぐらいポロリしまくり。葉月いずなだって、主人公らしからぬヤラレっぷり。タイトルでは「ちょっぴり」という表現を使ってますが、全然それどころじゃない。

霊媒師いずな2巻セクシー描写
(2巻)
毎回登場するモブキャラクターたちも、いかにもド直球な職業も多い。

霊媒師いずな9巻セクシー描写
(9巻)
ただ牛乳が顔にかかってるだけでも、何故か(;´Д`)ハァハァ
ちなみに、この早乙女というシスターも工ロんな意味でヒドい。


総合評価・評判・口コミ


『霊媒師いずな 全10巻』のネタバレ感想をまとめると、方向性や狙いはハッキリしてるので読者としては買いやすい漫画。ストーリーものはダラダラ続きがちですが、オムニバスということでスッキリしてテンポ感は良いです。基本的にテイストは『地獄先生ぬ~べ~』と変わらないものの、ギャグ要素やバトル要素が若干減ったものの面白いっちゃ面白いです。

昨年2014年末に『地獄先生ぬ~べ~』が実写化されたので、別ブログ「すごないマンガがすごい!」で何となくレビューした感想記事を再編集して移行してみました。ちなみにビジネスジャンプが廃刊したので、現在はグランドジャンプに移籍して続編にあたる『霊媒師いずなAscension 』が第二弾として連載されてるらしいです。

『死刑囚042』全5巻のネタバレ感想。作者は小手川ゆあ。2000年代半ばにヤングジャンプ(集英社)で連載されてた死刑制度に関するマンガ。ジャンル的には「社会派マンガ」に属するのかなーと思いますが、そこまで内容はハードでもないかも。

ちなみに042は「オシニ(お死に)」と読みます。

あらすじ

ある日、死刑制度も終身刑(無期懲役刑)も無くす代わりに、死刑囚たちを学校などで半強制的に国民への社会奉仕をさせようという試みが日本で始まる。

ただ脳にチップを挿入されて、破壊衝動に駆られると爆発するという条件があった。その初めの被験者として選ばれたのが、死刑囚042号。それがタイトルにも繋がってる。本名・田嶋良平。7人ぐらい殺害した凶悪犯。

死刑囚042第5巻キグルミを着させられる田嶋良平
(5巻)
この田嶋こと042号が集英高校で働き出すんですが、こんなキグルミを着させられたり、結構コミカルな展開もある。

凶悪犯は更生できるのか?

死刑囚042第5巻3盲目ゆめ
(5巻)
田嶋は初めて学校で出会ったのが、盲目のゆめという女生徒。ただ目が見えないせいか、何も別け隔てなく接してくれる。それに心を打たれる田嶋。

死刑囚042第3巻椎名
(3巻)
その実験の責任者である法務省の椎名が、やや自暴自棄になってる田嶋を熱く説得。

田嶋が殺害した被害者遺族も登場。孫を殺された山口茂という爺さんは、最初復讐のため学校に乗り込んでくるも、花の手入れに熱心に励む姿などを見て徐々に気持ちが変わっていく。
死刑囚042第2巻1山口茂
(2巻)
徐々に心を許し、「人を愛せ、辛いことがあっても人を恨んだり神さまを恨んだりしちゃあいかん」とさとす。

だんだん周りの助けもあり、ゆっくりと人間と改心しつつある田嶋。5巻で布団に入りながら「許されてぇな…」と心の中で呟いたりする。4巻では無実の罪で裁判にかけられてる人のため、自分の証言で冤罪を晴らしたりする。自分と同じ留置場にいた奴がどうのこうの…っていう。

犯罪者もひとりの人間


5巻で田嶋が少し更生したと思えた、実験の責任者の椎名が集英高校で演説する。

犯罪者の多くはこの社会に戻ってきてる」「気付いてないだけで、彼らは確実に我々社会の一部」「死刑判決を受けた者、何年何十年かして社会に戻ってくる者、別世界の人間でしょうか?
というセリフは示唆に富んでて、現代では勇気がある描写。普段テレビや雑誌では聞こえてこない主張で考えさせられる。

『容疑者』『被告』『受刑者』というのも、一種のレッテルにすぎないと考えることも可能ですから。出所した後も、その十字架をずっと背負い続けなければいけないのか。いや実際犯罪を犯した人間にも「良心の呵責」は備えてるわけだから、ずっと背負ってはいく。

ただ周りからずっと白い目で見られたり、非難され続けなければいけないのか、ということは社会全体で考えていって損はしないんだろうなーと思う。

オチがやや微妙

でもオチがやや微妙。何故なら、この流れを見てる限りは「実験は成功」を収めると思う。

でも結果的に実験は失敗してしまう。そして最終的に田嶋は死刑囚に逆戻り。その数カ月後に、速攻死刑が執行されてしまう。

死刑囚042第5巻椎名の結婚式に参加2
(5巻)
椎名の結婚式に参加してみせたり、もちろん田嶋の罪は一生消えることはないんでしょうが、「え?救われてよくね?」とも思ってしまう流れだった。

結局、田嶋が死んだらこの漫画的には元も子もない。急に現実に引き戻されて読後感がよろしくない。ずっとモヤモヤしたものが残る。ある意味、それが『狙い』だったのかも知れないが、スッキリはしない。

総合評価

個人的にはハッピーエンドで終わった方が良かった。ハッピーといういう表現を使っていいかは不明ですが、架空の物語である以上、敢えてこういうリアリティーは不要だったと思う。もしバッドエンドでなかったら85点ぐらいでも良かったかも。

ただ田嶋の死刑が執行されたからこそ生まれた「モヤモヤ感」。そのモヤモヤはある意味、このマンガの『テーマの深さ』や『誰にでもある命の重さ』『ヒューマニズムの温かさ』を裏打ちしてくれてるとも言える。アマゾンのレビューなどを読む限り、それが素晴らしくて泣ける人も多いよう。

また、しっかり(と言ったら語弊があるが)田嶋が死刑執行されることで、一方的に思想的に偏ることもなく死刑賛成派でも読みやすくしてる効果を生んでるかも。

アマゾンのレビューを読んでて思い出したけど、展開に少し違和感もある。例えば、上記の椎名が演説した場面。結構良いこと言ってるんですが、実はコイツは学校で問題を起こした生徒を退学に追いやったりする。元犯罪者は許容するけど、現問題児は許容しないんすか?みたいな(笑)

テーマが深いっちゃ深いですが、案外浅いっちゃ浅い部分もある。だからあまり難しく考えず、あっさり読んだらそれなりの読後感は得られるかも。


◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★3.5◯画力★2.5
◯全巻大人買い★3.5
◯81点!!!!

『正しいコドモの作り方』全7巻のネタバレ感想。作者はもりた毬太と黒田高祥。少年サンデー(小学館)で連載されてたラブコメ漫画。

あらすじ

主人公は、高校生の田中悠(たなか・ゆう)。ある日、未来から辰未来人(たつみ・らいと)がやって来る。

正しいコドモの作り方1巻 変異原遺伝子
(1巻)
そこで初恋相手の高嶺今日子と結婚して子供を作らないと、人類が滅ぶと告げられる。戸惑うだけの田中。

正しいコドモの作り方1巻 敵の誘惑
(1巻)
しかし同じく未来から人類滅亡を目論む敵組織が現れて、次々と主人公・田中に子作りを迫ってくる…的な内容の漫画。

ごくごく普通の漫画

タイトルこそ煽ってるものの、内容はごくごく普通。

正しいコドモの作り方2巻セクシー描写
(2巻)
もちろんパソチラなどセクシー描写はそれなりにあるものの、少年サンデーは少年誌だからその水準は知れてるレベル。

正しいコドモの作り方2巻 辰未来人
(2巻)
そして辰未来人には能力が備わっていたりして、異能バトル的な展開もチラホラ。

ただ展開は可もなく不可もなし。厳しく言うと、地に足がついてない。主人公・田中は色んな女性に誘惑されることで、それを発見した結婚しなければいけない高嶺今日子が激怒。更に結婚からは遠ざかるというギャグ展開があるものの、結局このマンガのウリが見えない。

ストーリーか、笑いか、セクシー描写か、アクションか、一体「どういう漫画か?」という部分が不明瞭。それなりに読みやすいものの、読んでてても何か残るものが少なく、特筆すべき点はあまり見当たらない。

総合評価

クオリティー的にはド深夜に放送されてるアニメレベル。バトル的なことが少しあって、お色気的なことが少しあって、ストーリーも月並み。基本的にどれもほどほどレベル。ただ無理してチェックするほどでもないという深夜アニメ。

お色気重視するのであれば、量と質(画力)ともに中途半端。少年サンデー連載漫画で全7巻で完結ってことで、何となくクオリティーは察することが可能。できれば、もう少し抜きん出た何かが欲しい。





◯展開★3.5◯テンポ★3.5
◯キャラ★3◯画力★3
◯大人買い★3.5
◯77点!!!!

『一休』全2巻のネタバレ感想。作者は橋本エイジ。ヤングキング(少年画報社)で連載してた格闘マンガ。

あらすじ

主人公は高校生の一休(いっきゅう)。家は代々お寺の住職をやっている。ただ病死した祖父が莫大な借金を抱えてたことが分かる。

一休1巻 主人公
(1巻)
そこで一休は祖父が遺した寺を守るために、ケンカで賞金を稼いで借金返済に走る…みたいなマンガ。

画力は高い

作者の橋本エイジは、基本的に画力が高い。格闘マンガってことで、十分及第点。コマ割りやセリフの吹き出し、トーンの貼り方など、特にアラを探すのは難しい。

一休1巻 殴られ描写
(1巻)
ただ殴られてる描写などを見ると、やや表現力という部分で迫力に欠ける。表情がイマイチなのかな?

総合評価

旧ブログで1月9日に更新した記事。タイトルの『一休』とをかけてみました。

で、肝心の『一休』というマンガですが、全体を通して「何か」が足りない。前述に殴られてる描写など含めて、具体的な部分は指摘しづらいですが、ライバルの不在?ヒロインの不在?主人公のキャラクター性?ストーリー性?

「祖父の借金返済のため」という動機は構わないんですが、肝心の祖父との関係性があんま見えない。不良のくせに祖父のために動くというのも感覚的に理解しづらかった。


◯展開…★3◯テンポ…★3.5
◯キャラ…★3.5◯画力…★4.4
◯大人買い…★3
◯おすすめ度…76点!!!!

『潔く柔く』全13巻のネタバレ感想。作者はいくえみ綾。Cookieで連載してた恋愛漫画。長澤まさみと岡田将生がW主演で実写映画化もされたらしい。ちなみにタイトルの読み方は「きよくやわく」。

そこで「潔く柔くが面白いかどうか」の考察記事をレビューしたいと思います。


あらすじ


『潔く柔く』は数話完結のオムニバス形式を取ってるんですが、一貫して瀬戸カンナというキャラクターが登場する。

カンナの幼なじみ・ハルタは15歳の若さで事故死。
潔く柔く11巻/赤沢禄とカンナ
その過去がカンナにずっと深い影を落としていて、それが漫画の一つのテーマとして根底にある。そしてカンナは赤沢禄という青年と出会い、ぐいぐいとアプローチをかけられる。

潔く柔く10巻
ただ想像以上に瀬戸カンナに根付くハルタの影は濃かった。果たして瀬戸カンナは…という内容。

もちろんカンナ以外のキャラクターもたくさん登場するので、注意深く読んでいかないと一本のストーリーということに気付きづらい。カンナと似た名前を見かけるなーと思ってたら、「実は」というパターン。

オムニバスでありストーリーもの

潔く柔く9巻
(9巻)
だから間接的に周りのサブキャラクターの物語を描いていくことで、遠回しのカンナたちのキャラクターを縁(ふちど)っていくという手法。各々の別々のオムニバスを読み進めていく内に、カンナなど主要キャラクターの人物性や過去がじょじょに浮かび上がっていく仕掛けは面白いと思った。

そして最終的には10~13巻でカンナとハルタの話が全てを占めるわけですが、ある意味それまでは壮大なフリ。もちろん個々のオムニバス自体もそれなりにクオリティが高く、それが見事に最後で絡み合ってくるのでストーリー全体の完成度の高さを物語ってる。

多くの少女漫画はキスなどを「する・しない」でワーキャーしがちですが、キャラクターが大人ということで「する・してる」が大前提でストーリーが進む。だから少女漫画にありがちな華やかさは欠けますが、リアリティに帯びた女性の嫉妬や悩みが描かれてる。

いくえみ綾自身が大人向けの漫画を描いてることが多いイメージですが、これもご多分に漏れず酸いも甘いも噛み分けた大人の女性向けの漫画かなと。


総合評価

だから『潔く柔く』を読むのは一筋縄ではいかない。

オムニバスそれ自体が読みづらいことはないが、カンナ(長澤まさみ)の話を理解しようとすると難しい。エピソードエピソードが点在してるので、全体としてのストーリー展開はやや複雑。悪く言えば、行き当たりばったり的に見えて読みづらい。

例えば、時間軸も結構バラバラ。順調にそのままページをパラパラめくって読んでいったら、その通りに時間も進んでいくかと思ったらそうじゃない。このACTはあのACTに繋がっていて…という理解は、意識的に読み込まないと気付きづらい。

それゆえ発見した時の喜びや驚きも少しある。複数のバラバラだったエピソードが次第に収斂していく様は、まさに別々だったピーズがパズルのように重なりあい一つの絵を成していくよう。その過程はなかなか見事。

だから中高生のキャラクターもたくさん出てきますが、中高生の読者層が読んでもチンプンカンプン。少なくとも面白いときっと感じないはず。それだけストーリーには読者を選でしまうハードルの高さがある。

また話のテーマが重くて切ない。小説などを読んでる感覚に近く、逆に言うと大人が読めばそれなりに「読み応えがある漫画」だと思いました。ちなみに映画のあらすじを読むと、多分10から13巻あたりのACTを題材にしてるっぽい。


◯展開★4◯テンポ★3
◯キャラ★3.5◯画力★3.5
◯全巻大人買い★4
◯おすすめ度…85点!!!!

『ドラゴン桜』全21巻のネタバレ感想。作者は三田紀房。モーニング(講談社)で連載されてた受験をテーマにした漫画。一昔前にTBSで阿部寛や新垣結衣でドラマ化もされましたが、その原作マンガ。

◆旧ブログで2015年2月25日にアップロードした記事です◆

今日2月25日は国公立大学の前期日程試験が行われる日。こんな日にさすがに閲覧してくれてる受験生はいないかと思いますが、って私立大学はほとんど合格発表が終わってるか、そこで今回は東大合格をテーマにしたマンガ『ドラゴン桜』をレビュー。

あらすじ

舞台は、経営破綻状態に陥った学校法人・私立龍山学園。典型的な底辺高校。その救済へ任されたのが、弁護士・桜木建二。そこで龍山学園を民事再生法に基づいて事業再生計画を考える。

ただし桜木は元暴走族で、型破りな性格だった。その事業再生計画というのも、「5年後までに東京大学合格者100人を輩出する」という目標。

その第一号として選ばれた生徒が水野直美。水商売で働く母親に幻滅して、人生全てに悲観してる落ちこぼれ。案の定、水野直美は拒否。
ドラゴン桜1巻 桜木のセリフ
(1巻)
そこで桜木建二が言い放ったのが「自分でルールを作る側に回れ!」というセリフ。世の中の不条理は上に立つことで変えられるという意味。

他にも矢島勇介という男子生徒も巻き込まれて、果たして偏差値30台の無気力な高校生たちが東京大学に合格できるのか?奇抜な受験指導や目からウロコな受験攻略法を駆使することで、大手予備校にも負けない学力向上術が展開されていく漫画。

東大入試に向けた戦略と実践術

漫画に限った話じゃないかも知れないですが、受験をテーマにした作品は観念的なアドバイスが多い印象。ただドラゴン桜の場合、東大入試に向けたアドバイスや指南がいちいち具体的。

とりあえず設定としては「東京大学に入学できたらどの学部でもいい」というスタンス。それが良いか悪いかはさておき、じゃあ主人公の桜木はどの学部をおすすめしたか?(東大は少し特殊で二回生から学部を選択するらしいですが)
ドラゴン桜1巻 東大入試の攻略法1
(1巻)
それが理科一類。理由が定員が多くて倍率も低い。要するに、東京大学の中で一番間口が広いところ。

でも理科系の教科はみんな苦手としてるところ。ただ敢えて桜木は、そこで英語と国語で勝負しろと発破をかける。
ドラゴン桜1巻 東大入試の攻略法2
(1巻)
実は理系学部とは言え、文系の科目配点が高いのが理科一類。しかも難易度が低くて、内容が基礎的レベルの範疇。

ドラゴン桜7巻 東大入試理科の攻略法
(7巻)
理系科目のテストの傾向もそれに近い。いちいち披露してくれる戦略にムダに安心感がありすぎて、「あれ?俺でも東大合格できそう?」と思わせるのが怖い。

東大に限らず、国公立大学ではセンター試験対策が必須。このセンター試験で点数が良くないと、国公立大学では受験すらできない。
ドラゴン桜13巻1センター試験対策の世界史
(13巻)
例えば世界史だと教科書の後半(近現代史に近い歴史)に重点が置かれてるなど、やはりこちらもアドバイスが具体的。下手な受験対策雑誌よりも役に立つ。

ただ10年以上前に発売した漫画だから、これらの情報が今でもどこまで通じるかは不明。例えば予備校の正しい選び方も指南してくれてるんですが、多分10年前とかなり状況は変わってるはず。大手予備校ですら倒産してるぐらいだから。

また政治家の影響で受験のあり方はちょくちょく変わりがち。センター試験がまさに好例で、これからの受験生は鵜呑みにしすぎるのも危険だと、一応付け加えておきたいと思います。

社会人でも役立つ考え方のシンプル化

もちろん戦術だけ身につけても、学力そのものが向上しないと入試には意味がない。
ドラゴン桜21巻 数学の解き方
(21巻)
例えば数学だと補助線の使い方など、答えではなく解き方や考え方を教えてくれる。同じように国語だったらこんな考え方をしろ、物理だったら…という具合に、ありがちな言葉を引用すると、「魚を与えるんじゃなく、魚の捕り方を教えろ」的なことを実践。

ただこうやって入試対策のアドバイスに具体性が伴ってるが故、受験生以外の読者には役に立たないように思いがち。でも真逆。

例えば世界史や日本史は「時事問題」に置き換えることが可能。世界史に強くなれば、時事問題にも強くなる。そこで主人公の桜木建二がどんなアドバイスをしたかと言えば…
ドラゴン桜13巻世界史の学び方・時事問題でも通じる
(13巻)
「何故起きたのか?」という疑問を先に持ってきて考えろ、ということ。テレビの情報番組やニュース番組でも結論や出来事を羅列してるだけで、その背景やそれまでの流れを知らない人にはチンプンカンプン。

そして更に面白いと思ったアドバイスが、世界史・日本史は「人間関係から読み取れ」。切り口が新鮮で、言い得て妙。ナポレオンにしても織田信長にしても三国志まで遡っても、結局時代を動かしてるのは人間。今生きてる人間と同じく、ほとんどが「感情」で動いてる。そこを理解できるだけで、歴史の見え方がかなり変わってくる。

試験に対する向き合い方も具体的。
ドラゴン桜21巻 テストに臨む姿勢
(21巻)
ひたすら自分が普段からやってる解き方をしろ、とのこと。つい試験が始まると浮足立って、普段とは異なる解き方をしてしまいがち。試験や東大入試に限らず、スポーツや仕事でも同じことが言えそう。

ドラゴン桜1巻 明確な目標設定
(1巻)
人間ははっきりとゴールが見えれば準備をし達成へと着実に進む」というアドバイスとか、むしろ社会人や大人の方が身に染みるアドバイス。何故なら、むしろ社会人になった時の方が「ゴール」を設定するのが難しいから。中学生や高校生たちは周りの大人達から、ある意味試験というゴールを半強制的に用意してもらってると言い換えられる。

総合評価

ドラゴン桜の着想を得たのは、作者・三田紀房の東大出身の担当編集者からだそう。「東大合格なんて楽勝っすよー」という典型的な天才肌タイプだったらしく、だからこその奇抜だけど役に立つ入試対策法が描けたのかも。

東大入試向けの対策だけではなく、日常生活でも応用可能な実践的な考え方も多い。受験生以外でも学べる点も多く、実用書という点でも評価できそう。資格取得や通信講座などでもきっと役立つ。世界史のクダリでは漫画のストーリー作りにも援用できそう。

ドラゴン桜21巻 勉強とは一体?
(21巻)
勉強するとは何か?学ぶとは何か?」という観念的な問いに、少なからず何らかの示唆を与えてくれるマンガ。ただ、だからこそじゃあ漫画としてどこまで面白いのか?という部分も少なからずある。もし既に浪人生活が決定した方は、少し一休みしてドラゴン桜を読んでみるのも良いのかも。

ドラゴン桜(1)
三田紀房
講談社
2012-09-28

◯展開…★4◯テンポ…★4
◯キャラ…★3.5◯画力…★3
◯大人買い…★4.5
◯おすすめ度…86点!!!!

『神様のカルテ』全2巻のネタバレ感想。ビッグコミックで連載されてた医療マンガ。夏川草介の原作小説をもとに、石川サブロウがコミカライズ化。

色んなメディア展開が図られてる作品。2011年と2014年には嵐・櫻井翔主演で実写映画化も公開されたらしい。二作も撮影されたということは、それだけ興行収入が良かったんだろうか。

心を打つ医療マンガ

内容は心に響く医療マンガ。別に派手な手術をしたりするわけじゃないんだけど読ませてくれる。セリフ量・文字量も多いんですが、そこまで苦痛感はない。セリフの質が高いんだろうか。最初は退屈だけど、読んでる内に次第に展開に見せられて、いつしか心が揺さぶられる。

とにかく主人公の栗原一止(くりはら・いちと)が放つセリフがシンプルで、すっと染みる。
神様のカルテ2巻人間の話をしているのだ」
(2巻)
医師の話をしているのではない!人間の話をしているのだ!

神様のカルテ2巻栗原一止1
(2巻)
いかなる逆境においても、ただ良心に恥じぬということが我々のすべてだ

他にも「その確信こそがあればこそ、我々は24時間働き続けることができるのです!」とか。さっきも書いたけど、やっぱり全体的にセリフの質が高めなのかも。おそらく原作小説のおかげ?

この主人公の栗原一止は、全然カッコいい奴でもない。だからと言って、『ゴッドハンド輝』のように普段から熱い奴でもない。でも命に対する向き合い方は実直で不器用。そういう描写が不思議と「コイツいい奴」ということが伝わってくる。その押し付けがましくない感じの伝わり方が良い。

だから患者にも地味に好かれてて、安曇(あずみ)という余命いくばくもない老婆にも慕われる。
神様のカルテ1巻安曇からの手紙
(1巻)
その安曇が残した栗原一止宛の遺書が泣ける。6ページぐらいに渡る長文なんですがグイグイ読める。唯一病気で孤独だった私を癒してくれた…みたいな内容なんですが、最後のコマでは「天国よりめいっぱいの感謝を込めて」というセリフと共に目一杯の笑顔をたたえた安曇の表情が切ない。

青春要素

栗原一止はオンボロアパートに住んでて、他にも大学院生の「学士殿」や売れない絵描きの「男爵」が奴もいる。そこで青春真っ盛り的な展開もある。

大学院生だったはずの「学士殿」は実は単なる高卒。母の死をキッカケで、自殺未遂を図る。とりあえず死にはしないんですが、なんやかんや、そのオンボロアパートを出て行くことになる。

神様のカルテ1巻青春要素
(1巻)
ただ絵描きの「男爵」がラストにオンボロアパートの壁に、桜吹雪を描く。

そして「こいつは敗北ではない。門出だぞ」「この一歩は前への一歩だ!そのための花道だ!」と言い放つ。男気があって、身の丈に合ってない感じも青春。一昔前のマンガでよくありそうな展開ですが、それが一周回って却って新鮮に映る。

ブサイクすぎる櫻井翔の髪型

ちなみにこのマンガを読んだのは、実写映画化されたことがキッカケ。映画化アニメ化されることで作品の知名度が上がって、結果的に売り上げが伸びる理論は概ね正しそう。


ただ櫻井翔のヘンテコリンな髪型がやたら気になって気になって仕方なかった。おそらく原作を忠実に表現するために、こんな髪型をしてるんだとずっと思ってた。漫画や小説では奇抜な髪型のキャラクターも多いから、「そこまで原作に忠実に再現せんでええやん」っていうやつ。

でも既に貼った画像を見てもらっても分かるように、主人公・栗原一止は全然普通の髪型。そんな妙ちくりんな髪型を一切してない。だから監督やスタッフの悪ノリとしか思えなくて強く問い詰めたい。櫻井翔も断れよ。正直ヘンテコな髪型にしか目が行かない!

そしてつくづく人間は髪型って大事だなーと痛感。髪型一つで、櫻井翔をここまでブサイクにさせるんだから。顔面ブサイクがブサイクな髪型してたら、そりゃあブサイクに仕上がるわな…とそんなどうでもいいことを思ってしまった。

総合評価

櫻井翔のクダリは軽くスルーしていただくとして、全体的には人間味あふれる描写が多いマンガ。だから医療マンガというジャンルにとらわれすぎず、まっさらな状態で読んだ方がハマるかも。

自分は実写映画を観てないので分からないですが、おそらく原作と同じように人間味あふれる心を打つような方向性に仕上がってるんではないかと予想。


◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★3.5◯画力★3
◯全巻大人買い★4.5
◯85点!!!

『皇国の守護者』全5巻のネタバレ感想をレビュー。掲載誌はウルトラジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは青年コミックの戦記モノ漫画。作者は伊藤悠で、佐藤大輔の同名小説をコミカライズした内容。

ただ結論から書いておくと、マンガ版の『皇国の守護者』は今は絶版で売ってないらしい。『皇国の守護者』のKindle版も配信されていないのは残念。ただ現在も連載中の原作小説だけはキンドルで配信されている不思議(笑)

とりあえず皇国の守護者は面白いか、つまらない漫画か考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

「皇国」は小さな島国ながら経済的に反映していた。ただ海洋を隔てて超大国「帝国」が宣戦布告もなく、皇国を侵略してきた。物語は、その北領の天狼原野での一戦から始まり、その後の皇国が遁走するまでの一部始終が描かれている戦記モノ。皇国が日本で、帝国がロシアあたりの位置付け。

主人公は新城直衛(しんじょう・なおえ)。

皇国の守護者3巻サーベルタイガー千早
(3巻)
サーベルタイガーの千早を操る猛獣の陸軍中尉。『皇国の守護者』は基本的に戦争漫画ですが、ドラゴンや道術兵がいるなど実はファンタジー要素も根底にある。新城直衛が唐突に始まった帝国の侵略を軸に、「戦争」の側面を多角的に捉えてる。


戦場でのヒリヒリした駆け引き

『皇国の守護者』の見所があるとしたら、新城直衛が刻々と変わる戦況に対して見せる戦略性。

皇国の守護者3巻 戦略性
(3巻)
見た目こそ地味なものの、知略家で次々と展開を打開していく。迫り来る帝国軍の偵察隊は果たして兵力増強がされてないのか、様々な可能性を考慮しつつ、最適の解を見つけ出す、その駆け引き・判断が見物。予定調和感もあまり感じず、ストーリーも脱線しないので戦争漫画好きには打ってつけか。

敵である帝国側との駆け引きだけではなく、ポンコツの上官が足を引っ張って情勢が悪化したり、皇国内での人間関係が引き起こす障壁にも対応する必要がある。戦線を離脱すべきか否か、そういう判断も適宜求められる。

新城直衛は戦況を打開するために、基本的になんでもする。例えば焦土化作戦。村々を次々と焼き払って、また井戸に毒を撒いて、自分たちを追ってくる敵の帝国軍側にそこを使わせないようにする。そうすることで帝国軍側が干上がる。

ただそのために新城直衛は、帝国軍に偽装して住民たちを襲撃。自分たち皇国軍がヒーローになることで、村人を円滑に追い出す。

でも庶民側から見ると、ひたすら翻弄されてるだけ。軍人が戦争から守ってくれてるとしたら、本来自分が生まれ育った村を出ていく必要はない。
皇国の守護者2巻 軍人が守るのは軍人
(2巻)
だからこそ庶民のモブキャラが言い放った、「いざという時、軍隊が守るのは軍隊、我々庶民じゃない」というセリフが印象的だった。日本の過去の戦争でも起きたことを上手く象徴するようなセリフかも。


新城直衛という人間

でも主人公の新城直衛は気弱で小心者。常に内心ビクビクしてるものの、だからこそ戦場における強烈な「罪悪感」に支配される。それは部下兵士も同じこと。だからこそ、全部の責任を自分が背負おうと悪役キャラに務める。
皇国の守護者2巻 新城直衛大尉
(2巻)
例えば上記の作戦で、漆原という少尉が誤って子供を射殺して錯乱する。その時に「僕の命令を実行しただけだ!」と一喝。部下の罪悪感を全部自分が背負う。

あくまで任務にとことん忠実で、常に戦況を考慮した残虐性に満ちた言動に務める。ただその背景には「人間性」みたいなんが垣間見える。導術兵の金森が死んだ時には、新城直衛は罪悪感で心が張り裂けそうになるのを必死に我慢する。

皇国の守護者4巻 葛藤する新城直衛
(4巻)
戦闘の最終局面では部下兵士が自分の命をなげうってまで、新城直衛を救おうとする。戦略性ばかりが際立つ展開が多かったものの、後半では人間ドラマチックな部分も見れる。

最終的に新城直衛は白旗を揚げて、帝国軍側に投降。皇国側の戦況を少しでも有利にするよう、帝国側に抵抗をしつつ、最後の最後では部下たちの命を守る。リアリスティックな判断と感情論を両立させた、ある意味「軍人の鑑」という表現をすることも可能。


総合評価・評判・口コミ

『皇国の守護者 全巻』のネタバレ感想をまとめると、読者に一定の読み込む力量を求められますが、思ったより面白い。

新城直衛という中尉が主人公の物語。タイトルの守護者というのは、まさに新城直衛。主に新城直衛の戦略性・頭脳戦や戦場での緊張感をメインに描かれてるものの、「何を守るのか」というのがテーマ。国の名誉?国土?部下の命?民の生活?

だからストーリーも新城直衛視点で展開されるので読みやすい…と言いたいところだが、序盤から唐突に展開が始まるので、設定をよく理解できないままストーリーが進む感じ。だから取っ付きにくい漫画っちゃ漫画。2時間ドラマを9時40分辺りから視聴してる感じで、全体的に「読みやすい」とはあまり言えない。

でも何回か読み直せば設定や展開も理解できると思う。また5巻というボリュームを考えても(打ち切りされたというウワサもありますが)、ストーリーは比較的コンパクトにまとまってて読みやすい。硬派な漫画は少ない中、『皇国の守護者』はそれなりにおすすめできます。とはいえ絶版という現実にいかんともしがたいですが(笑)

『予告犯』全3巻のネタバレ感想。ジャンプ改(集英社)で連載されてたサスペンスマンガ。去年の夏頃に完結。そしていつの間にかジャンプ改自体も休刊。作者は筒井哲也。フランスかどっかでは有名らしい。

2015年には生田斗真主演で実写映画化もされるらしい。

あらすじ

予告犯1巻/2
(1巻)
ザックリ説明すると、犯行予告を次々と出して、それを実行するテロリスト集団がメイン。ソイツらは新聞紙を頭にかぶってるから、そのまんま『シンブンシ』という名前を自称。

負け犬底辺たちのリアル

シンブンシたちはもともと社会の底辺で暮らしてる、いわゆる負け犬層。

予告犯1巻/4
(1巻)
シンブンシのリーダー的存在の主人公・ゲイツは、IT系のブラック企業(IT系でブラックじゃないところがあるのかって話ですが)に勤めてて、ホリエモン風上司のあまりの横暴で会社をクビになっちゃう。

予告犯2巻/3
(2巻)
アキバで気弱そうなオタク相手に点数稼ぎしてる悪徳警官も登場。だから社会的な弱者というよりも、ネットでしかイキれない気弱層と言い換えた方がいいのかも知れない。底辺層だからと言って、シングルマザーや障害者などが登場したりはしない。

ネット炎上の具現

予告犯1巻/5
(1巻)
何故、シンブンシがこういうことをするかと言えば、社会に対する鬱憤を少しでも晴らしてやるぜ的なノリ。まとめブログなども登場することからも分かるように、「ネット炎上の具現化」させた感じ。

いかにも2ちゃんねるのスレッドでよく展開されてそうな論調が、根底にある。
予告犯2巻/1
(2巻)
例えばシーシェパードのようなヤツをターゲットにしたり、ネット規制(青少年非実在少年系)をしようとしてる政治家が登場したり、いかにも2ちゃんねる系読者に響きそうなネタのオンパレード。

淡々と山場がない

でもストーリーが面白いか面白くないかで言えば、さほど面白くない。ひたすら展開が淡々としてて山場がない

社会を転覆させてやろうという発想・テーマは嫌いではないですが、やってることが全体的に地味。事件を起こすなら、もっと派手に起こすべきだし、案外すぐ警察にも発見されたりテンポやリズムも欠ける。大きいことを言ってる割に、アクション要素も乏しい。

自分が底辺層だったら具体的に「どう改善されるか」を提案・行動すればいいものを、どうでもいい誰か(もっと言えば、自分たちと変わらない弱者)を叩くことでストレス発散してるだけ。

だから、基本的に無意味で非生産的。他人を不幸に陥れて、自分たちの幸福度を相対的にアップさせようとする浅ましい行為。感情的に理解もできなくはないですが、マンガとして作品として何か同情できるか共感できるかは甚だしく疑問。

ましてやラストで主人公は自殺してしまうんですが、結果的に何も残らない。社会や権力を正々堂々と潰すこともできてないので読後感もよろしくない。一体、なにを汲み取れば良かったのか分からない。サスペンスというジャンルだからこそ、なおさら平凡なストーリーに感じる。

先が読める。いや、ある程度何が起きるかは読めなければいけないんですが、それにしても、宣言した通りの以上の「何か」が起きない。サッカーマンガで言えば、「前半30分に1点、後半45に1点決める!」と宣言したストライカーが、そのまま言葉通りにゴールしてしまう感じ。

総合評価

一応リアルに飛び出して実行した部分があるものの、結局ネット上で吠えてるだけ。彼らの行動から社会に何か生まれることも、社会に何か影響を与えることも、実はそんなにない。だから読んでも『達成感』を得ることがない。

とは言え、全体的に「マンガ的な下手さ」を感じることもない。画力もそれなりに高い作者だと思う。ストーリーだって読みづらさは、あまり感じない。だからこそ、何故こんなに『退屈』なのかが不思議で堪らない。要は、つくづく何かが起きそうで何も起きない。

言ってしまえば、マンガの専門学校の講師(結局パッとせぬまま落ちぶれた元プロ)が描きそうなマンガ。ある程度は理屈や理論は身についてるものの、それを紙の上では活き活きとは体現できないという感じ。


◯展開★3◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★4
◯全巻大人買い★3
◯75点!!!!

『DEATH NOTE(デスノート)』全13巻のネタバレ感想をレビュー。作者は大場つぐみ(原作)、小畑健(作画)。言わずとして名コンビですが、このデスノートが出世作となった漫画。掲載誌は少年ジャンプ。出版社は集英社。藤原竜也主演の実写映画化もそこそこヒットしたらしい。最近また文庫版などが販売されてるなど息が長い人気作。

漫画感想ブログの「すごないマンガがすごい!」でリクエストがあったので随分前にレビューした記事ですが、面白いかつまらないかの考察を加えて改めて再編集してみた。先に結論を書いておくと、トータルの内容はそこそこ面白いです。


デスノートという抜群のアイデア

デスノート13巻/デスノートの説明
(13巻)
やっぱり何と言っても、デスノートという設定やアイデアが見事。秀逸。抜群。

様々に用意されてるルールが絶妙なのばかり。40秒以内であれば死因を選択できるが不可能なことは実現されなかったり、あくまで名前と顔が一致してなければならないや、紙の切れ端であっても効果は有効であったり、死神は好意を抱いた人間の寿命を延ばせば死ぬとか、死神も全てのルールを説明しなくてもいい、などなど。

デスノート7巻/デスノートに触れて記憶を取り戻すミサ
(7巻)
例えば、『所有権』という概念が面白い。その所有権を誰が上げたり譲り受けたりできる。放棄した場合、それまでの記憶を全部喪失。でも再びノートに触れると、全部の記憶が蘇る。

そういう縛られた制約・ルールの中で頭脳戦が展開されるんですが、それらを物語の展開にしっかり活かす『巧みさ』はもはや少年誌の域を超えていた。


夜神月という極悪エリート

その頭脳戦を繰り広げるのが主人公・夜神月(やがみ・らいと)。

デスノート6巻/夜神月
(6巻)
最初は健全なエリート高校生。まさに正義感あふれる好青年。ただひょんなことからデスノートを手にしてしまい、次々と犯罪者(最終的には自分を逆らう相手は手当たり次第に)殺していく。彼の中のモラル道徳が総崩れ。独善的な悪とも正義とも言えない本性が、どんどん明らかになっていく。

デスノート7巻/夜神月の悪い表情「計画通り」
(7巻)
まさに悪魔的な表情を頻繁に見せてくれる。何が「計画通り!」やねん。このコマ然り、色んなコマがアチコチのネット上でネタにされてた記憶がある。


エルとの壮絶な頭脳戦!

その暴走を止めるために日本に送り込まれたのが、世界屈指の名探偵のL(エル)こと竜崎。冷静に読み直すと、「名探偵」という設定は何だよって気はしなくもない。

デスノート3巻/夜神月に迫るL
(3巻)
徐々に夜神月に迫っていくエル。息もつかせぬ一進一退の攻防は、見事。

そして夜神月にターゲットをほぼ絞り、エルは夜神月の部屋に小型カメラを無数に忍ばせて監視。ここからの二人の頭脳戦が面白くて見もの。

当然夜神月はデスノートの存在がバレるわけにはいかない。一介のフツーの高校生で在り続けなければいけない。ただ自分への監視が始まった直後から、犯罪者が死ななくなれば明らかに不自然。エルの自分への疑惑が更に確信めいたものになる。

夜神月は敢えて、テレビやパソコンを見るのを止めた。そうすれば犯罪者を知るための情報源(ニュース)が得られない。その状況で犯罪者が次々と死ねば、自分への疑惑を晴らせるだろうということ。

でも犯罪者の情報を得る必要はある。そこで夜神月はどうしたか?
デスノート3巻/ポテトチップスの中のテレビ
(3巻)
勉強中に食べてるポテトチップスの中に、小型テレビを設置。しかも同時にデスノートの切れ端をポテトチップスの中に忍ばせ、犯罪者たちの殺害を実行。

この地味な戦いこそが、このデスノートの『ツボ』だと確信を持てる。強力すぎる武器なんだけれども、制限的な『ルール』も一方ではある。結局、そういう縛られた制約・制限の中でこそ生まれるバトルが、少年マンガ敵で面白い。ONE PIECE然り、バトルの醍醐味は強すぎてもダメ。


後半の展開はいまいち面白くない

ただ後半の展開があまり面白くない。もっと言うとつまらない?ネタバレしてしまうと、夜神月は最終的にエルの息の根を止めることができる。結果、夜神月が捜査組織のトップ(二代目のエル)に就任。

でも警察組織のトップに就任して大きな権限や権力を得てしまったら、デスノートって果たして要る?という素朴な疑問。

自分の部屋といった『小さな日常空間』を舞台として、ノートというありふれた文房具のみで国際的捜査組織やエルと戦うことに「デスノートの醍醐味」があった。「小さな世界観VS大きな世界観」のアンバランスさこそ見所だった。

デスノート2巻/地味な攻防
(2巻)
こういう地味な駆け引きこそ面白かった。一介の高校生にノートという武器もマッチしてた。小さな世界観があったからこそ、それが入口となって読者も感情移入もしやすかった。一介の高校生だったからこそ色んな制限も存在してて、それが展開にスパイスとして効いてた。

でも夜神月の強くなりすぎて、チート感がハンパなくなって面白くなくなった。これまで色んな制限があったからこそ、エルとバチバチしたバトルが展開できた。でも亡くなったエルの代わりに登場したのが、ニアとメロという二人の少年。エルの雰囲気をしっかり引き継いでるものの、正直全く可愛げがない。

前半は「夜神月がエルをいかに追い詰めるか?」がテーマだったものの、後半からは「夜神月をいかに追い詰めるか?」に代わる。でもニアとメロが主役としての力不足感は否めない。13巻という不吉な数字で終わらせるためか、展開もグズグズとして間延び感がハンパなかった。

しかも、そんなん求めてないねん…っていうぐらい、何故か後半はアクション要素たっぷり。後半からは全く別のマンガに成り下がった印象で、原作の大場つぐみ自身が「デスノートのツボ」を理解してなかったことにガッカリさせられた記憶。


総合評価・評判・口コミ


『デスノート 全13巻』のネタバレ感想をまとめると、割りと面白いです。ただそれは主に序盤に限っての話で、後半にかけては下り坂。『BAKUMAN(バクマン。)』もそうでしたが、大場つぐみが作る設定やアイデアは面白いので序盤は読めますが、後半にかけては失速する傾向。オチをネタバレしておくと最終的に夜神月は死ぬものの、最終回・最終話のラストの結末もキラ(夜神月)の再誕を願うモブカルト集団が写って終わり。分かるようで分からん。

デスノートも最初はネタの斬新さも手伝って読ませるものの、後半は中途半端にスケールが大きくなりすぎてイマイチ。ノートというアイテムが台無しになってる感じ。後半のクダリがなければ90点以上の点数をつけてもよかった。冒頭で書いた「トータルの内容はそこそこ」という意味はそういうこと。

一応しっかり完結させましたが、それほど終わり方もキレイじゃない。むしろ汚い。最終話で登場した女性キャラクターも一体誰なん?読後感が悪すぎるオチの上に、更にもやもや。若干の腹立たしさが残る。『結界師』の点数が低かったのを訝しがられましたが、個人的にデスノートに近い感覚を持ってる。中盤以降のクダリは個人的に不要だったかな。結界師も、すごくダラダラ展開してた印象が強い。

ちなみにストーリーは12巻で完結して、13巻はファンブックやガイドブックのような構成になっています。そしてLの本名も記載済み。ネタバレしておくと「エル=ローライト」がLの本名です。