バズマン。

健全な漫画の感想ブログ。基本的に面白いマンガだけレビューしてるつもり。

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『神様のカルテ』全2巻のネタバレ感想。ビッグコミックで連載されてた医療マンガ。夏川草介の原作小説をもとに、石川サブロウがコミカライズ化。

色んなメディア展開が図られてる作品。2011年と2014年には嵐・櫻井翔主演で実写映画化も公開されたらしい。二作も撮影されたということは、それだけ興行収入が良かったんだろうか。

心を打つ医療マンガ

内容は心に響く医療マンガ。別に派手な手術をしたりするわけじゃないんだけど読ませてくれる。セリフ量・文字量も多いんですが、そこまで苦痛感はない。セリフの質が高いんだろうか。最初は退屈だけど、読んでる内に次第に展開に見せられて、いつしか心が揺さぶられる。

とにかく主人公の栗原一止(くりはら・いちと)が放つセリフがシンプルで、すっと染みる。
神様のカルテ2巻人間の話をしているのだ」
(2巻)
医師の話をしているのではない!人間の話をしているのだ!

神様のカルテ2巻栗原一止1
(2巻)
いかなる逆境においても、ただ良心に恥じぬということが我々のすべてだ

他にも「その確信こそがあればこそ、我々は24時間働き続けることができるのです!」とか。さっきも書いたけど、やっぱり全体的にセリフの質が高めなのかも。おそらく原作小説のおかげ?

この主人公の栗原一止は、全然カッコいい奴でもない。だからと言って、『ゴッドハンド輝』のように普段から熱い奴でもない。でも命に対する向き合い方は実直で不器用。そういう描写が不思議と「コイツいい奴」ということが伝わってくる。その押し付けがましくない感じの伝わり方が良い。

だから患者にも地味に好かれてて、安曇(あずみ)という余命いくばくもない老婆にも慕われる。
神様のカルテ1巻安曇からの手紙
(1巻)
その安曇が残した栗原一止宛の遺書が泣ける。6ページぐらいに渡る長文なんですがグイグイ読める。唯一病気で孤独だった私を癒してくれた…みたいな内容なんですが、最後のコマでは「天国よりめいっぱいの感謝を込めて」というセリフと共に目一杯の笑顔をたたえた安曇の表情が切ない。

青春要素

栗原一止はオンボロアパートに住んでて、他にも大学院生の「学士殿」や売れない絵描きの「男爵」が奴もいる。そこで青春真っ盛り的な展開もある。

大学院生だったはずの「学士殿」は実は単なる高卒。母の死をキッカケで、自殺未遂を図る。とりあえず死にはしないんですが、なんやかんや、そのオンボロアパートを出て行くことになる。

神様のカルテ1巻青春要素
(1巻)
ただ絵描きの「男爵」がラストにオンボロアパートの壁に、桜吹雪を描く。

そして「こいつは敗北ではない。門出だぞ」「この一歩は前への一歩だ!そのための花道だ!」と言い放つ。男気があって、身の丈に合ってない感じも青春。一昔前のマンガでよくありそうな展開ですが、それが一周回って却って新鮮に映る。

ブサイクすぎる櫻井翔の髪型

ちなみにこのマンガを読んだのは、実写映画化されたことがキッカケ。映画化アニメ化されることで作品の知名度が上がって、結果的に売り上げが伸びる理論は概ね正しそう。


ただ櫻井翔のヘンテコリンな髪型がやたら気になって気になって仕方なかった。おそらく原作を忠実に表現するために、こんな髪型をしてるんだとずっと思ってた。漫画や小説では奇抜な髪型のキャラクターも多いから、「そこまで原作に忠実に再現せんでええやん」っていうやつ。

でも既に貼った画像を見てもらっても分かるように、主人公・栗原一止は全然普通の髪型。そんな妙ちくりんな髪型を一切してない。だから監督やスタッフの悪ノリとしか思えなくて強く問い詰めたい。櫻井翔も断れよ。正直ヘンテコな髪型にしか目が行かない!

そしてつくづく人間は髪型って大事だなーと痛感。髪型一つで、櫻井翔をここまでブサイクにさせるんだから。顔面ブサイクがブサイクな髪型してたら、そりゃあブサイクに仕上がるわな…とそんなどうでもいいことを思ってしまった。

総合評価

櫻井翔のクダリは軽くスルーしていただくとして、全体的には人間味あふれる描写が多いマンガ。だから医療マンガというジャンルにとらわれすぎず、まっさらな状態で読んだ方がハマるかも。

自分は実写映画を観てないので分からないですが、おそらく原作と同じように人間味あふれる心を打つような方向性に仕上がってるんではないかと予想。


◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★3.5◯画力★3
◯全巻大人買い★4.5
◯85点!!!

『皇国の守護者』全5巻のネタバレ感想をレビュー。掲載誌はウルトラジャンプ。出版社は集英社。ジャンルは青年コミックの戦記モノ漫画。作者は伊藤悠で、佐藤大輔の同名小説をコミカライズした内容。

ただ結論から書いておくと、マンガ版の『皇国の守護者』は今は絶版で売ってないらしい。『皇国の守護者』のKindle版も配信されていないのは残念。ただ現在も連載中の原作小説だけはキンドルで配信されている不思議(笑)

とりあえず皇国の守護者は面白いか、つまらない漫画か考察してみた。


あらすじ物語・ストーリー内容

「皇国」は小さな島国ながら経済的に反映していた。ただ海洋を隔てて超大国「帝国」が宣戦布告もなく、皇国を侵略してきた。物語は、その北領の天狼原野での一戦から始まり、その後の皇国が遁走するまでの一部始終が描かれている戦記モノ。皇国が日本で、帝国がロシアあたりの位置付け。

主人公は新城直衛(しんじょう・なおえ)。

皇国の守護者3巻サーベルタイガー千早
(3巻)
サーベルタイガーの千早を操る猛獣の陸軍中尉。『皇国の守護者』は基本的に戦争漫画ですが、ドラゴンや道術兵がいるなど実はファンタジー要素も根底にある。新城直衛が唐突に始まった帝国の侵略を軸に、「戦争」の側面を多角的に捉えてる。


戦場でのヒリヒリした駆け引き

『皇国の守護者』の見所があるとしたら、新城直衛が刻々と変わる戦況に対して見せる戦略性。

皇国の守護者3巻 戦略性
(3巻)
見た目こそ地味なものの、知略家で次々と展開を打開していく。迫り来る帝国軍の偵察隊は果たして兵力増強がされてないのか、様々な可能性を考慮しつつ、最適の解を見つけ出す、その駆け引き・判断が見物。予定調和感もあまり感じず、ストーリーも脱線しないので戦争漫画好きには打ってつけか。

敵である帝国側との駆け引きだけではなく、ポンコツの上官が足を引っ張って情勢が悪化したり、皇国内での人間関係が引き起こす障壁にも対応する必要がある。戦線を離脱すべきか否か、そういう判断も適宜求められる。

新城直衛は戦況を打開するために、基本的になんでもする。例えば焦土化作戦。村々を次々と焼き払って、また井戸に毒を撒いて、自分たちを追ってくる敵の帝国軍側にそこを使わせないようにする。そうすることで帝国軍側が干上がる。

ただそのために新城直衛は、帝国軍に偽装して住民たちを襲撃。自分たち皇国軍がヒーローになることで、村人を円滑に追い出す。

でも庶民側から見ると、ひたすら翻弄されてるだけ。軍人が戦争から守ってくれてるとしたら、本来自分が生まれ育った村を出ていく必要はない。
皇国の守護者2巻 軍人が守るのは軍人
(2巻)
だからこそ庶民のモブキャラが言い放った、「いざという時、軍隊が守るのは軍隊、我々庶民じゃない」というセリフが印象的だった。日本の過去の戦争でも起きたことを上手く象徴するようなセリフかも。


新城直衛という人間

でも主人公の新城直衛は気弱で小心者。常に内心ビクビクしてるものの、だからこそ戦場における強烈な「罪悪感」に支配される。それは部下兵士も同じこと。だからこそ、全部の責任を自分が背負おうと悪役キャラに務める。
皇国の守護者2巻 新城直衛大尉
(2巻)
例えば上記の作戦で、漆原という少尉が誤って子供を射殺して錯乱する。その時に「僕の命令を実行しただけだ!」と一喝。部下の罪悪感を全部自分が背負う。

あくまで任務にとことん忠実で、常に戦況を考慮した残虐性に満ちた言動に務める。ただその背景には「人間性」みたいなんが垣間見える。導術兵の金森が死んだ時には、新城直衛は罪悪感で心が張り裂けそうになるのを必死に我慢する。

皇国の守護者4巻 葛藤する新城直衛
(4巻)
戦闘の最終局面では部下兵士が自分の命をなげうってまで、新城直衛を救おうとする。戦略性ばかりが際立つ展開が多かったものの、後半では人間ドラマチックな部分も見れる。

最終的に新城直衛は白旗を揚げて、帝国軍側に投降。皇国側の戦況を少しでも有利にするよう、帝国側に抵抗をしつつ、最後の最後では部下たちの命を守る。リアリスティックな判断と感情論を両立させた、ある意味「軍人の鑑」という表現をすることも可能。


総合評価・評判・口コミ

『皇国の守護者 全巻』のネタバレ感想をまとめると、読者に一定の読み込む力量を求められますが、思ったより面白い。

新城直衛という中尉が主人公の物語。タイトルの守護者というのは、まさに新城直衛。主に新城直衛の戦略性・頭脳戦や戦場での緊張感をメインに描かれてるものの、「何を守るのか」というのがテーマ。国の名誉?国土?部下の命?民の生活?

だからストーリーも新城直衛視点で展開されるので読みやすい…と言いたいところだが、序盤から唐突に展開が始まるので、設定をよく理解できないままストーリーが進む感じ。だから取っ付きにくい漫画っちゃ漫画。2時間ドラマを9時40分辺りから視聴してる感じで、全体的に「読みやすい」とはあまり言えない。

でも何回か読み直せば設定や展開も理解できると思う。また5巻というボリュームを考えても(打ち切りされたというウワサもありますが)、ストーリーは比較的コンパクトにまとまってて読みやすい。硬派な漫画は少ない中、『皇国の守護者』はそれなりにおすすめできます。とはいえ絶版という現実にいかんともしがたいですが(笑)

『予告犯』全3巻のネタバレ感想。ジャンプ改(集英社)で連載されてたサスペンスマンガ。去年の夏頃に完結。そしていつの間にかジャンプ改自体も休刊。作者は筒井哲也。フランスかどっかでは有名らしい。

2015年には生田斗真主演で実写映画化もされるらしい。

あらすじ

予告犯1巻/2
(1巻)
ザックリ説明すると、犯行予告を次々と出して、それを実行するテロリスト集団がメイン。ソイツらは新聞紙を頭にかぶってるから、そのまんま『シンブンシ』という名前を自称。

負け犬底辺たちのリアル

シンブンシたちはもともと社会の底辺で暮らしてる、いわゆる負け犬層。

予告犯1巻/4
(1巻)
シンブンシのリーダー的存在の主人公・ゲイツは、IT系のブラック企業(IT系でブラックじゃないところがあるのかって話ですが)に勤めてて、ホリエモン風上司のあまりの横暴で会社をクビになっちゃう。

予告犯2巻/3
(2巻)
アキバで気弱そうなオタク相手に点数稼ぎしてる悪徳警官も登場。だから社会的な弱者というよりも、ネットでしかイキれない気弱層と言い換えた方がいいのかも知れない。底辺層だからと言って、シングルマザーや障害者などが登場したりはしない。

ネット炎上の具現

予告犯1巻/5
(1巻)
何故、シンブンシがこういうことをするかと言えば、社会に対する鬱憤を少しでも晴らしてやるぜ的なノリ。まとめブログなども登場することからも分かるように、「ネット炎上の具現化」させた感じ。

いかにも2ちゃんねるのスレッドでよく展開されてそうな論調が、根底にある。
予告犯2巻/1
(2巻)
例えばシーシェパードのようなヤツをターゲットにしたり、ネット規制(青少年非実在少年系)をしようとしてる政治家が登場したり、いかにも2ちゃんねる系読者に響きそうなネタのオンパレード。

淡々と山場がない

でもストーリーが面白いか面白くないかで言えば、さほど面白くない。ひたすら展開が淡々としてて山場がない

社会を転覆させてやろうという発想・テーマは嫌いではないですが、やってることが全体的に地味。事件を起こすなら、もっと派手に起こすべきだし、案外すぐ警察にも発見されたりテンポやリズムも欠ける。大きいことを言ってる割に、アクション要素も乏しい。

自分が底辺層だったら具体的に「どう改善されるか」を提案・行動すればいいものを、どうでもいい誰か(もっと言えば、自分たちと変わらない弱者)を叩くことでストレス発散してるだけ。

だから、基本的に無意味で非生産的。他人を不幸に陥れて、自分たちの幸福度を相対的にアップさせようとする浅ましい行為。感情的に理解もできなくはないですが、マンガとして作品として何か同情できるか共感できるかは甚だしく疑問。

ましてやラストで主人公は自殺してしまうんですが、結果的に何も残らない。社会や権力を正々堂々と潰すこともできてないので読後感もよろしくない。一体、なにを汲み取れば良かったのか分からない。サスペンスというジャンルだからこそ、なおさら平凡なストーリーに感じる。

先が読める。いや、ある程度何が起きるかは読めなければいけないんですが、それにしても、宣言した通りの以上の「何か」が起きない。サッカーマンガで言えば、「前半30分に1点、後半45に1点決める!」と宣言したストライカーが、そのまま言葉通りにゴールしてしまう感じ。

総合評価

一応リアルに飛び出して実行した部分があるものの、結局ネット上で吠えてるだけ。彼らの行動から社会に何か生まれることも、社会に何か影響を与えることも、実はそんなにない。だから読んでも『達成感』を得ることがない。

とは言え、全体的に「マンガ的な下手さ」を感じることもない。画力もそれなりに高い作者だと思う。ストーリーだって読みづらさは、あまり感じない。だからこそ、何故こんなに『退屈』なのかが不思議で堪らない。要は、つくづく何かが起きそうで何も起きない。

言ってしまえば、マンガの専門学校の講師(結局パッとせぬまま落ちぶれた元プロ)が描きそうなマンガ。ある程度は理屈や理論は身についてるものの、それを紙の上では活き活きとは体現できないという感じ。


◯展開★3◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★4
◯全巻大人買い★3
◯75点!!!!

『DEATH NOTE(デスノート)』全13巻のネタバレ感想をレビュー。作者は大場つぐみ(原作)、小畑健(作画)。言わずとして名コンビですが、このデスノートが出世作となった漫画。掲載誌は少年ジャンプ。出版社は集英社。藤原竜也主演の実写映画化もそこそこヒットしたらしい。最近また文庫版などが販売されてるなど息が長い人気作。

漫画感想ブログの「すごないマンガがすごい!」でリクエストがあったので随分前にレビューした記事ですが、面白いかつまらないかの考察を加えて改めて再編集してみた。先に結論を書いておくと、トータルの内容はそこそこ面白いです。


デスノートという抜群のアイデア

デスノート13巻/デスノートの説明
(13巻)
やっぱり何と言っても、デスノートという設定やアイデアが見事。秀逸。抜群。

様々に用意されてるルールが絶妙なのばかり。40秒以内であれば死因を選択できるが不可能なことは実現されなかったり、あくまで名前と顔が一致してなければならないや、紙の切れ端であっても効果は有効であったり、死神は好意を抱いた人間の寿命を延ばせば死ぬとか、死神も全てのルールを説明しなくてもいい、などなど。

デスノート7巻/デスノートに触れて記憶を取り戻すミサ
(7巻)
例えば、『所有権』という概念が面白い。その所有権を誰が上げたり譲り受けたりできる。放棄した場合、それまでの記憶を全部喪失。でも再びノートに触れると、全部の記憶が蘇る。

そういう縛られた制約・ルールの中で頭脳戦が展開されるんですが、それらを物語の展開にしっかり活かす『巧みさ』はもはや少年誌の域を超えていた。


夜神月という極悪エリート

その頭脳戦を繰り広げるのが主人公・夜神月(やがみ・らいと)。

デスノート6巻/夜神月
(6巻)
最初は健全なエリート高校生。まさに正義感あふれる好青年。ただひょんなことからデスノートを手にしてしまい、次々と犯罪者(最終的には自分を逆らう相手は手当たり次第に)殺していく。彼の中のモラル道徳が総崩れ。独善的な悪とも正義とも言えない本性が、どんどん明らかになっていく。

デスノート7巻/夜神月の悪い表情「計画通り」
(7巻)
まさに悪魔的な表情を頻繁に見せてくれる。何が「計画通り!」やねん。このコマ然り、色んなコマがアチコチのネット上でネタにされてた記憶がある。


エルとの壮絶な頭脳戦!

その暴走を止めるために日本に送り込まれたのが、世界屈指の名探偵のL(エル)こと竜崎。冷静に読み直すと、「名探偵」という設定は何だよって気はしなくもない。

デスノート3巻/夜神月に迫るL
(3巻)
徐々に夜神月に迫っていくエル。息もつかせぬ一進一退の攻防は、見事。

そして夜神月にターゲットをほぼ絞り、エルは夜神月の部屋に小型カメラを無数に忍ばせて監視。ここからの二人の頭脳戦が面白くて見もの。

当然夜神月はデスノートの存在がバレるわけにはいかない。一介のフツーの高校生で在り続けなければいけない。ただ自分への監視が始まった直後から、犯罪者が死ななくなれば明らかに不自然。エルの自分への疑惑が更に確信めいたものになる。

夜神月は敢えて、テレビやパソコンを見るのを止めた。そうすれば犯罪者を知るための情報源(ニュース)が得られない。その状況で犯罪者が次々と死ねば、自分への疑惑を晴らせるだろうということ。

でも犯罪者の情報を得る必要はある。そこで夜神月はどうしたか?
デスノート3巻/ポテトチップスの中のテレビ
(3巻)
勉強中に食べてるポテトチップスの中に、小型テレビを設置。しかも同時にデスノートの切れ端をポテトチップスの中に忍ばせ、犯罪者たちの殺害を実行。

この地味な戦いこそが、このデスノートの『ツボ』だと確信を持てる。強力すぎる武器なんだけれども、制限的な『ルール』も一方ではある。結局、そういう縛られた制約・制限の中でこそ生まれるバトルが、少年マンガ敵で面白い。ONE PIECE然り、バトルの醍醐味は強すぎてもダメ。


後半の展開はいまいち面白くない

ただ後半の展開があまり面白くない。もっと言うとつまらない?ネタバレしてしまうと、夜神月は最終的にエルの息の根を止めることができる。結果、夜神月が捜査組織のトップ(二代目のエル)に就任。

でも警察組織のトップに就任して大きな権限や権力を得てしまったら、デスノートって果たして要る?という素朴な疑問。

自分の部屋といった『小さな日常空間』を舞台として、ノートというありふれた文房具のみで国際的捜査組織やエルと戦うことに「デスノートの醍醐味」があった。「小さな世界観VS大きな世界観」のアンバランスさこそ見所だった。

デスノート2巻/地味な攻防
(2巻)
こういう地味な駆け引きこそ面白かった。一介の高校生にノートという武器もマッチしてた。小さな世界観があったからこそ、それが入口となって読者も感情移入もしやすかった。一介の高校生だったからこそ色んな制限も存在してて、それが展開にスパイスとして効いてた。

でも夜神月の強くなりすぎて、チート感がハンパなくなって面白くなくなった。これまで色んな制限があったからこそ、エルとバチバチしたバトルが展開できた。でも亡くなったエルの代わりに登場したのが、ニアとメロという二人の少年。エルの雰囲気をしっかり引き継いでるものの、正直全く可愛げがない。

前半は「夜神月がエルをいかに追い詰めるか?」がテーマだったものの、後半からは「夜神月をいかに追い詰めるか?」に代わる。でもニアとメロが主役としての力不足感は否めない。13巻という不吉な数字で終わらせるためか、展開もグズグズとして間延び感がハンパなかった。

しかも、そんなん求めてないねん…っていうぐらい、何故か後半はアクション要素たっぷり。後半からは全く別のマンガに成り下がった印象で、原作の大場つぐみ自身が「デスノートのツボ」を理解してなかったことにガッカリさせられた記憶。


総合評価・評判・口コミ


『デスノート 全13巻』のネタバレ感想をまとめると、割りと面白いです。ただそれは主に序盤に限っての話で、後半にかけては下り坂。『BAKUMAN(バクマン。)』もそうでしたが、大場つぐみが作る設定やアイデアは面白いので序盤は読めますが、後半にかけては失速する傾向。オチをネタバレしておくと最終的に夜神月は死ぬものの、最終回・最終話のラストの結末もキラ(夜神月)の再誕を願うモブカルト集団が写って終わり。分かるようで分からん。

デスノートも最初はネタの斬新さも手伝って読ませるものの、後半は中途半端にスケールが大きくなりすぎてイマイチ。ノートというアイテムが台無しになってる感じ。後半のクダリがなければ90点以上の点数をつけてもよかった。冒頭で書いた「トータルの内容はそこそこ」という意味はそういうこと。

一応しっかり完結させましたが、それほど終わり方もキレイじゃない。むしろ汚い。最終話で登場した女性キャラクターも一体誰なん?読後感が悪すぎるオチの上に、更にもやもや。若干の腹立たしさが残る。『結界師』の点数が低かったのを訝しがられましたが、個人的にデスノートに近い感覚を持ってる。中盤以降のクダリは個人的に不要だったかな。結界師も、すごくダラダラ展開してた印象が強い。

ちなみにストーリーは12巻で完結して、13巻はファンブックやガイドブックのような構成になっています。そしてLの本名も記載済み。ネタバレしておくと「エル=ローライト」がLの本名です。

『ひまわりっ~健一レジェンド~』全13巻のネタバレ感想。作者は東村アキコ。モーニング(講談社)で連載されてた自伝風のギャグ漫画。

あらすじ

東村アキコの少しだけ自伝的なギャグ漫画。東村アキコが漫画家として上京する以前、地元の宮崎県に住んでいた時代をメインにコミカルに描きました的な内容。

ちなみに、タイトルの健一というが東村アキコの実父。だから何気にこの人がメイン。東村アキコの健一パパが織りなす笑えるレジェンド話(逸話)が満載。

健一パパの天然武勇伝!

この健一が天然すぎて、それがほぼ実話だけにメチャクチャ引くっていう。

健一レジェンド1巻/ケーキをカゴの中
(1巻)
例えば、東村アキコが小学生の頃、健一パパがクリスマスの日にケーキを買ってきたはいいんですが、自転車のカゴに横向きでブチ込んでる。当然案の定、ケーキがグチャグチャで幼い東村アキコは大号泣。

ただカバンだけはしっかり荷台でガッチリ。しかも「箱に入ってたら問題ないんちゃうんか!」と健一パパは逆ギレ。もはや同情という感情しか芽生えない。

健一レジェンド1巻/カレーのよそいかた
(1巻)
他にもカレーのよそいかたが独特すぎる。思わず「左の空白地帯はー!」と東村家総出でツッコミ。

このエピソードを東村アキコが大人になってから話をすると、健一パパは「俺こんな全部カレーかけるけ?」と何故か爆笑。当然その発言の意味が分からない一同。

そこで改めて、カレーを掛ける正しい位置をたずねると…
健一レジェンド1巻/カレーのよそいかた2
(1巻)
やっぱりこの人なんも分かってへーん!っていう。

他にも5巻では自分の漫画について悩む東村アキコに対して、「少女漫画とはこういうものぞ」とものすごく的確に批評する。東村アキコがいつのまにそんなに読み込んでたの?と驚くと、「いやいっぺんも読んだことないですけども」と切り替えす。実の娘じゃなくても驚く。

6巻だと東村アキコには同じ漫画家の弟がいるんですが、コイツが高校生の時に香港映画が流行ったらしくヌンチャクを作った。それを父親の健一も見てたはずなのに、ある日学校から帰宅するとそれを嬉々として燃やしてた。改めて現在その理由を聞いてみると、「作品の方向性が見えなかったんですわ」の一言。ますます意味分からん。思考回路が止まるとはまさにこのこと。

非エッセイ部分の展開は微妙

とにかくすごいエピソードが満載。本当にこれがガチなんですから震えるぐらい怖い、けど笑える。たださすがにネタ切れだったのか、実父の健一が出てくるのは主に序盤だけ。東村アキコが漫画家を本格的に目指すストーリーになってくるにつれ、実父と同名の健一という恋人キャラ(おそらく架空)とのラブコメ展開が始まってからは勢いが落ちる。

また自伝マンガとして評価しても、東村アキコの漫画家としてのサクセスストーリーがそこまで描かれてるわけでもない。東村アキコの人生を知りたいなら、まだ『かくかくしかじか』を読んだ方が良い。だから漫画家として成り上がっていく気持良さはない。

健一という恋人キャラとのクダリでキュンキュンすることもなく、やっぱり東村アキコはエッセイ漫画家かなと思わされる。

総合評価

とりあえず自伝漫画というジャンルで読む分には、多分面白い部類に入るはず。でも、そういったエピソード要素は序盤だけ。せいぜいギリギリ半分の6巻程度ぐらいまでで、それ以降は健一パパの出番が顕著に減っていく。それ以外の内容は退屈なだけだった。

健一レジェンド11巻/ジョン・ウーと対談
(11巻)
ちなみに最終的にジョン・ウーと対談しちゃう。これを見て少し笑った。この漫画と一切何も関係ないやんっていう。

ただこの漫画で接点を探すとしたら、ギリギリ…
健一レジェンド12巻/関先生
(12巻)
こんな関先生という三国志が大好きな漫画家先生のキャラを描いてただけ。「関係性、うすッ」っていう。

しかし、三国志好きキャラはどうしてこんな偏屈なキャラが多いんだろうか。いい加減、誰か怒ってもよさそう。ただこのキャラクターは後の『海月姫』にも繋がってるんでしょうが、そこまでの面白さはなかった。根暗っぽい性格なので痛々しさだけが目立ったかも。


◯展開★3◯テンポ★3
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2.5
◯おすすめ度…73点!!!!

『ホムンクルス』全15巻のネタバレ感想。作者は山本英夫。ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載してたオカルト漫画。

あらすじ

主人公は名越。元エリートサラリーマンで、現在はホームレス。そこでお金に困った名越が出会ったのが伊藤学という医大生。「トレパネーション」という頭蓋骨に穴を開けることで、人間の第六感を開花させようという人体実験に付き合ってくれた70万円を渡すという依頼。これを渋々受ける。

ホムンクルス4巻/女子高生
(4巻)
ただトレパネーションを受けた後の名越は、他人のコンプレックスや心の中身が視覚的に見えるようになってしまう。画像は殻に閉じこもってる女子高生。だから『貝』のような描写。見た目の描写が若干ホラー漫画っぽくはありますが、様々なコンプレックスを見事に体現できてる。

設定が秀逸

ただ主人公の名越は、常に他人のコンプレックスを視覚的に見れるわけではない。

ホムンクルス2巻/主人公・名越
(2巻)
右目を隠して左目で見ようとした時だけに、それが見える。これが地味に素晴らしい。どうしてもこういう特殊能力を漫画で描く場合、セリフの説明だけが多い。そこを右目を隠すという制限のおかげで、若干のリアリティも生んでる。これが一種の儀式に近く、漫画の中でそれが映える。

独特の描写がハマる

冒頭でも言いましたが、この他人のコンプレックスの描写が独特。

ホムンクルス2巻/コンプレックス
(2巻)
例えばホテルのレストランのウェイターがダチョウ。序盤はこんな個性的なコンプレックスさんが登場。そのコンプレックスの視覚化が的を射てる。

ホムンクルス1巻/組長のコンプレックス2
(1巻)
例えばヤクザの組長だと、子供の頃に自分の不手際で友達の小指を切り落としてしまう。それをずっとトラウマとして抱えてて、昔の子供がよく遊んだ超合金ロボットの中に入ってバリアーしてる。他だと、男好きしそうなガングロギャルは彼氏から電話がかかってくると、とたんに腰だけが回り出したり面白い。

作者のクセのある絵柄も相まって、それが妙にハマる。このキャラクターや画は一体何のコンプレックスを意味してるか。それをつい考えてしまう。させられてしまう。一枚目の画像のダチョウウェイターも、何を意味してるのか分かりそうで分からない。そのもどかしさがGood。

衝撃のラストに震える

ストーリーとしては、主人公の名越が他人のコンプレックスを解消していく展開がメイン。そこで名越の人柄の良さも醸成されていく。そして最初はこの能力に懐疑的で早く元通りになりたいと願ってたんですが、他人のコンプレックスを解決していくにつれ、名越は次第にその能力に取り憑かれていく。

ホムンクルス12巻/名越自分でトレパネーション
(12巻)
それが狂気に満ち満ちてて怖い。もはや自分でトレパネーションをしてしまう。

ホムンクルス15巻/名越トレパネーション誘う
名越のコンプレックスは実は顔。一見イケメン風に見えますが、整形済み。高校時代まではずっと卑屈も卑屈。そこで心機一転整形。大企業に入社してオンナには苦労しない、まさに勝ち組になった。

でも充実感が得られない。何故なら整形という仮面を被ったことで、全部の視線や注目をバリアー。結局、整形する前も後も「誰も自分の心を見てくれる人がいない」という錯覚・被害妄想は治らなかった。

そこで手に入れたのが、例の能力。ホムンクルスという言葉は「人造人間」という意味らしいですが、この漫画の結論としては、『目の前にいる自分』というのが答え。他人のコンプレックスを見るということは、裏返すと「自分のコンプレックスを見てほしい」ということ。

外見でしか人を判断できない名越は、とにかく目に見えなければ安心できない。この願望が強烈。それが悲劇的なオチに繋がる。こんなに心を揺さぶられる切ない結末はない。

特に雑誌スピリッツには掲載されてないエピローグがキツい。30ページ近く収録されてるんですが、それがまた名越へのトドメに近い内容。「ハッピーなオチでええやん」とつい言いたくなる。こんな胸騒ぎがするオチはあまり読んだことがない。


◯展開★5◯テンポ★5
◯キャラ★4◯画力★4
◯全巻大人買い★4.5
◆90点!!!!

『エアギア』全37巻のネタバレ感想をレビュー。作者は大暮維人(Oh!Great!)。掲載誌は少年マガジン。出版社は講談社。ジャンルは少年コミックのアクション漫画。エアギアの累計発行部数は1600万部超えと、まさにモンスター的な人気を誇る漫画だったらしい。

そこで面白いか面白くないか考察した。


あらすじ物語・ストーリー内容

『エアギア』のあらすじに説明しておくと、エアトレック(AT)と呼ばれる電動モーターを搭載したローラスケートを履いて、若者たちがスピードレースでランクを競い合うというマンガ。しかも、主人公・イッキやアギトたちがバトルしてみたり、派手なアクション描写が展開される。

エアギア12巻エアトレック
(12巻)
特に作者・大暮維人は画力が高くて、スピードレース自体は疾走感があって迫力たっぷり。

エアギア5巻パーツウォー
(5巻)
エアトレックには様々なパーツを組み込むことができるので、そのパーツを巡ってバトルしあう。各々にはヒエラルキーやランキングがあって、その上位を目指していく。殴り合っても良いし、何でもアリ。

エアギア3巻エアトレック
(3巻)
エアトレックバトルは学校の校舎など、街中だったらどこでもオッケー。大暮維人の画力を活かしたダイナミックなアクション漫画。


アクションはかっこいいが展開はつまらない

ただストーリーが進んでいくに連れて、エアギアの内容がチンプンカンプンになっていく。主なストーリーの軸としては、最強のパーツである玉璽(レガリア)を巡るバトルがある。

エアギア36巻バトル描写 主人公イッキ
(36巻)
ただいつの間にか主人公・イッキがオーラ弾のようなものを手からボーンと発するようになってたり、

エアギア30巻バトル描写
(30巻)
胸からロケット砲のようなものを発射する敵が登場したり、もう足(エアトレック)関係ねーじゃねーかよっていう。

エアギア36巻宇宙でバトル
(36巻)
最終的には戦いのフィールドが宇宙まで突入。

バトルは壮大な方が良いに決まってますが、あまりに壮大すぎて描写が大味。下町あたりでレースしてた頃から飛躍しすぎじゃね?個人的には、エアギアはちゃんとレース部分を機能させてった方が良かったのかなと。

エアギア27巻READ 主人公イッキのレベル
(27巻)
百歩譲って壮大なバトルが始まるのは良いですが、「レベル要素」の設定を使うのが遅すぎる。確か序盤から登場してるものの、これはすぐ消えちゃった設定。だからレベル設定がなくても、別に問題なくストーリーが進行してたのに唐突にまた出現した。「ん?」みたいな。画像はアギト、イッキ、仏茶(ブッチャ)。


有り難みのない登場人物の露出過多

エアギアは、とにかく露出が多い。もちろん、言うまでもなく美少女キャラクター。それと作者・大暮維人の画力の高さとが化学反応を起こして、まさに鬼にチン棒!セクシャルバイオレット!

エアギア17巻セクシー描写
(17巻)
エアギア22巻セクシー描写
(22巻)
エアギア30巻セクシー描写
(30巻)
でも、エアギアの女性キャラクターは「常に脱いでる状態」。

一見オッ!と思うんですが、あまりに多すぎて却って有り難みを感じない。こういうセクシー描写はある程度は出し惜しみをしないと、どうしても目が慣れてしまう。またフルカラーではなくモノクロなので、無機質なマネキンの身体のように見えてしまうのも難点。

露出がドーンと大胆すぎて、侘び寂びを感じない。周りのキャラクターも脱いでて当然のような反応で、全体的に繊細さやデリカシーが足りない。キャラクターが羞恥心を感じないと、それを見てる読者としてもグッと来るものが少ないのかも。

またエアギアはバトルアクションも見所だから、読者としてはどっちに集中すればいいか分からない。見出しタイトルはややトゲがありますが、もう少し「見せ方」を考えながら女性キャラは露出させるべきだったかも。ただ脱げば良いってもんじゃないと、読者としてもエアギアを読んで勉強になった。ToLOVEるぐらい「中身のなさ」を割り切るぐらいでちょうど良い。


総合評価・評判・口コミ


『エアギア』のネタバレ感想をまとめると、ストーリーは取り立てて面白くないです。絵は上手いんですが、それだけの漫画。最初は絵が気に入って買う。だからそれが「面白い」と錯覚しがちですが、長いこと読んでると漠然としたモヤモヤが読後感として残る。いつの間にか「え?このマンガって面白いっけ?」みたいな疑問がふと頭をよぎる。

昔『ゲットバッカーズ』という漫画が連載されてて一時期自分もハマってましたが、まさに少年マガジンを代表するような漫画。だから『エアギア』の10巻台ぐらいまでならまずまず読めますが、巻を重ねるごとに読むのが辛くなっていく感じ。最終回・最終話もよくわからない。最初は作者・大暮維人の絵の上手さやセクシー描写がピカピカ輝いて見える。でも時間が経つほどに徐々にメッキが剥がれて「つまらなさ」が顔を出して現れる。

ただ作者・大暮維人の画力は序盤から上手いんですが、更に回を重ねるごとに上手くなっていく。まさに「目に見えて」っていうぐらい明白なレベル。絵が上手い作者がメキメキと絵が上手くなっていく過程を楽しむのも一興。だからこそ中身がそれに伴ってると良かったなーとつくづく思います。

『百舌谷さん逆上する』全10巻のネタバレ感想。作者は篠房六郎。月刊アフタヌーン(講談社)で連載されてたマンガ。ジャンルは不明ですが、おそらくコメディー要素が多めかな。

あらすじ

百舌谷さん逆上する1巻転校してきた百舌谷
(1巻)
金髪の女子小学生の主人公・百舌谷小音が「ツンデレ」。しかも親から受け継いだ遺伝。主人公・百舌谷はツンデレたくないのにツンデレてしまう自分に悩んでる。その百舌谷がある小学校へ転校してきたところからストーリーは始まる。

でも結論から言ってしまうと、そこまで面白い内容ではない。

ツンデレに対する典型的な勘違い

まず作者はツンデレに対して典型的な誤解をしてる。

百舌谷さん逆上する6巻百舌谷のドロップキック
(6巻)
主人公はとりあえず他人に対して攻撃的。そこさえ満たしてればツンデレが成立すると思ってる節があって、肝心の『デレ』の部分がない。

百舌谷さん逆上する1巻セリフが多い1
(1巻)
本当にただただ口汚いだけ。ツンデレ喫茶もそうだけど、『ツン=サディスト』ではない。そもそも「サディスト=暴力をふるう・罵倒好き」でもない。口汚いセリフも空々しくて、いちいち知性も愛嬌も感じさせない。

だから平たく言えば、主人公の百舌谷に『好感』が持てない。キャラクターとしても人間としても魅力に欠ける。ツンデレって、基本的に「デレる」部分が大半を占めててナンボ。常識的に考えて、こんなに攻撃的なだけのキャラを好きになれる訳がない。

ツンデレのツンは、無視する「ツーン」。結局恥ずかしいから、構いたくないし、構われたくもない。それなのに何故、そんなに汚い言葉がスラスラ口から飛び出るのか。またツンデレである、お前の方からグイグイ来てくれてんねん。

ツンデレ自体が既に使い古されてるアイテムだから今更アレコレ指摘しても仕方ないですが、『ツン2割・デレ8割』ぐらいの配分でちょうど良い。またセリフを多用することよりも、態度や行動で表現させた方が良い。

全体的にセリフが多い

上記の画像を見ても分かるようにやたらセリフが多い漫画。

百舌谷さん逆上する1巻セリフが多い2
(1巻)
もはやページのほとんどがセリフと吹き出しで埋め尽くされてる勢い。

せめてセリフが多い部分と少ない部分にメリハリがあればいいんですが、全体的にこんな調子。だから読んでても疲れるだけで苦痛。「この漫画は暇つぶしや気晴らしにだらだら読むものではなく、ガッツリ読む人向けといった印象」というAmazonのレビューがあったが、まさにその通り。

せめてガッツリ読みごたえがある『凝縮された中身』が詰まってればいいんですが、ひたすら主人公が脈絡なく暴れてるだけ。ページをめくる度に「俺は何を読まされてるんだろう…」という疑問が頻繁に頭をよぎる。テンポ感はゼロ。

脇役キャラも魅力に欠ける

脇役キャラも魅力に欠ける。
百舌谷さん逆上する2巻樺島番太郎
(2巻)
例えば、樺島番太郎。百舌谷のペット的な扱い。ちょっとしたメイン脇役。性格はいわゆるドM。

でもやはり「M(マゾヒズム)」についても、作者は勘違いしてる。コイツは一方的に、殴られてるだけ。これでは単なるイジメっ子とイジメられっ子の関係でしかない。百舌谷の行為に愛を感じないし、コイツが気持ち良くなる部分の描写もない。だから、二人の関係性を見てても心地良くはない。

全然反応しない大人向けのビデオを観てるよう。監督はしっかり要求通りのことをしてるものの、肝心の監督が『フェチ』の意味を理解できてないので、「なんか違うんだよなー(´・ω・`)」と全然ピンコ立ちしない。

そもそも、「ツンデレ好き=M男」でもない。むしろツンデレ好きとは、本当は堂々とデレデレしたいクセにツンツンした態度しか取れない女の子を見て、ニタニタ楽しんでるようなサディスト。閉ざされた心の扉を開けてあげようとする能動的な性格。

総じて全般的にコミカルに描こうとしてるものの、あまり笑いには繋がってない。

シリアス展開?ギャグ展開?

だからといってギャグ展開が多いと思いきや、シリアス展開もたまにある。冒頭でも説明したように主人公の百舌谷のツンデレは遺伝。それに苦しむ過去描写のクダリもあるんですが意味不明。

百舌谷さん逆上する3巻シリアス展開
(3巻)
何故か、主人公を巡って父親がマフィアと戦う。笑わせたいのか泣かせたいのかなんなのか、作者が「何を狙ってるのか」が見えない。だから読者としても何を読み取ればいいのか分からない。それが結果的に『読むのが苦痛』という部分に繋がってる。

百舌谷さん逆上する4巻ムダに丁寧なケンカ描写
(4巻)
そして殴り合う描写も結構多くて、これが地味にグロテスク。作者の篠房六郎は画力がある方だと思うが、そこまでアクションに派手さを感じない。ただ不快なグロさだけが残ってる印象。

総合評価

全体的に笑えるわけでもないし、泣けるわけでもないし、キュンキュンするわけでもない。作者が色んな試みをしようとする意図は伝わってくるが、何一つとして成功してない印象。セクシー描写があるならまだしも、全体的に見所を探すのは難しいマンガの一つ。

無駄にセリフが多い割に、あんまり共感できる部分も少ない。自分の価値観や意図を一方的に伝えようとしてるだけで空回りしてる。しかも読んでる人に伝わらなくても、「アホな読者の方が悪い」とすら作者が思ってそうな感じ。


◯展開★2.5◯テンポ★2
◯キャラ★3◯画力★4.5
◯全巻大人買い★2
◯67点!!!!

『WxY』全7巻のネタバレ感想。作者はマドカマチコ。ヤングジャンプ(集英社)で連載されてたマンガ家漫画。タイトルから想像付くように、少しだけセクシーなマンガ。中学生ぐらいでWXYの意味を知った時軽く感動を覚えたのは内緒。

あらすじ

主人公・横田たかしは漫画家。ただしセクシーな内容。大手のヤングジャンプで連載はしてるものの、創作に駆り立てるものが工口以外に存在しないので、もはや自らを「エ口マンガ家」と自負。

ただ内容はフツーのエ口マンガではなく、ずっと自分の幼い姪・愛美をネタにセクシーなマンガを描いていた。しかもマンガのタイトルが「あいみのつぼみ」。完全にアウトー!

WxY1巻/横田たかしと姪の愛美
(1巻)
ただ血筋のおかげか、実は愛美も自分でマンガを描くようになってた。しかもその漫画がそこそこ面白かったので、ひょんなことから叔父と姪がタッグを組んでマンガを描くようになるというストーリー。

好感が持てる主人公?

主人公の横田たかしは、典型的な非モテなオタク。描いてるマンガからして痛い。オタクだからって訳でもないんですが、どっか憎めない。不器用な誠実さが共感を呼ぶし、また卑屈な弱さが良い感じに同情を誘う。そして、たまに見せる男らしさ・前向きさがカッコいい。

WxY4巻/キモいと言われる横田たかし
(4巻)
ただルックスは少し狙い過ぎ。明らかに女子ウケはしないだろうし、男のオタクからしてもむさ苦しい男を延々と見せられても困るのが正直な本音のはず。

とりあえず、こういうルックスのキャラクターを描いておけば、同じ大勢のオタクが共感を呼ぶに違いと思ってるとしたら勘違い。もちろんカッコ良く描く必要もないですが、早い段階でマシなルックスを施す処置があって良かったかも。

ダラダラ読める

『WxY』のストーリーはダラダラ読める。大きな山場も特にないんですが不思議と読める。主人公・横田たかしのキャラが成せるワザかは不明ですが、読んでて苦痛ということはなかった。

WxY1巻/若月
(1巻)
ギャグ展開を描くのも上手く、クスッと来る笑いがちょいちょい挟んであるので読みやすい。シリアスな展開もあるが、それが程よく中和してくれてる。日常マンガとして読めば、それなりに評価して問題なさそう。

ヒロインは誰?

でもマンガの狙いやストーリーの大きな軸はあるに越したことはない。

例えば、ヒロイン。主人公・横田たかしは姪の愛美とも美人編集者・鷲尾とも、いかにもな関係に発展しそうな描写がある。5巻か6巻からは、ザネリという天才オンナマンガ家も登場。横田たかしは若い頃、お互いがセ◯レみたいな関係だった。

結局、誰と主人公を近づけたいのかが見えてこない。オチを先に書いておくと、最終的に主人公は美人編集者の鷲尾をくっつくんですが達成感は弱い。立ち位置の曖昧さがマンガのクオリティーを押し下げてた。「オタクの不器用な愛」を重点的に描いてるのに、軽くハーレム。でもセクシー描写も実用性という点では見劣りする。全てにおいて中途半端。

WxY3巻/編集者・鷲尾
(3巻)
しかもマンガ家としての成り上がり感も薄い。画像は編集者の鷲尾に叱咤されてる主人公・横田たかし。愛美が親バレしてみたいな感じで、最終的には打ち切り気味に連載終了。だから愛美と二人三脚で売れていくという展開がなかったのは残念。結局は「お、おう」みたいな読後感。

ポコニャン先生

個人的にツボったキャラクターが、ポコニャン先生。主人公とは昔ながらの仲間。だから当然100%女性ウケしない。男から見てもかなりキツいキャラクター。主人公と同じ系統のはずなんですが、全く逆で人間性が腐りきってる。同期のマンガ家の結婚式で、嫁さんをブス呼ばわりしたりする。

WxY4巻/ポコニャン先生
(4巻)
例えば、風俗嬢にも思いっきり説教。「お前のしみったれた身の上話なんか知ったこっちゃねーよ!」。男が聞いてもヒドい(笑)

WxY5巻/ポコニャン先生
(5巻)
BLマンガ家との口論バトルもヒドい。「男のケツを描いて喜んでる女が偉そうに、男のエ口を批判してんじゃねーよ」。相手のワカメというBLマンガ家もかなり痛いんですが、史上最低の口げんか。

ちなみに常に帽子をかぶってるのは、やくみつる的な理由。中身だけではなくルックスもキツいんですが笑えた。

総合評価

『WxY』というマンガはそれなりにダラダラ読めて面白いものの、強く買いたいと思わせるほどの「何か」に乏しいのも事実かなぁ。セクシー描写ならセクシー描写、ストーリー展開ならストーリー展開、キャラならキャラ。どれもが基本的には突出した部分は少ない。

ただ作者・マドカマチコはそこそこ実力があると思うので、あまり目的を作らずダラダラ展開するマンガを描いた方が作風的には合うのかも。ストーリーものを描きたいなら、目的や設定を作ってしっかり展開させないと、いくらキャラが良くても画力があっても駄作になりがち。


◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯全巻大人買い★4
◯83点!!!!

『どうぶつの国』全14巻のネタバレ感想。別冊少年マガジン(講談社)で連載されてた漫画。作者は雷句誠。少年サンデーで「金色のガッシュベル!!」を連載してた漫画家。小学館といろいろ揉めたようだから、講談社に移っちゃった感じか。

あらすじ

人間が死に絶えた星「どうぶつの国」。動物たちが暮らす「弱肉強食の世界」だった。そこにたった一人だけ「人間」が存在した。

どうぶつの国3巻全ての鳴き声が理解できるタロウザ
(3巻)
それが主人公・タロウザ。全動物の言葉を理解できる人間。でもそんな弱肉強食の世界につねづね疑問を強く抱いてた。

どうぶつの国4巻弱肉強食ハンタイ
(4巻)
むやみに小動物を殺めるライオンたちに対しては「くだらないことで生命を奪おうとするなぁぁ!」と激怒する。

どうぶつの国5巻2
(5巻)
ただ「動物を食べなきゃいけない現実」も存在。一方ではそれを受け入れる成長さも見せる。凶悪な動物同士によるアクション描写がありますが、どちらかと言えば「メッセージ性」に重きを置いたストーリー展開がメイン。いわゆる、お説教系。

動物に命の重さを問う無意味さ

しかし面白いか面白くないかで言えば、やはり微妙。

表紙から可愛らしいキャラクターが登場するので、『金色のガッシュベル』のようなポップな展開を期待してしまった。でも中身を開けば、めんどうくさいテーマの内容。またリアルな動物しか登場しないので、画的に地味な印象。金色のガッシュベルと比較すると、肩透かし感がハンパなかった。

あと『命の重さ』などを問いかけるのは構わないんですが、ただし「動物相手に説得して意味ある?」というのが正直な感想。逆に動物たちが人間に問いかけるならまだしも、例えば飼い犬相手に「何故、こんな所でオツッコするの!?」と説教してるようなもん。また動物が動物を殺すことにしても、自然の摂理だから仕方なくね?としか思えない。

中盤以降はカオス

しかも中盤の青年編以降は更に「カオス」としか表現できない。序盤の世界観も取っ付きにくいんですが、そこへ更に意味不明な展開が始まる。

どうぶつの国7巻意味不明な敵
(7巻)
例えば、それまで普通の動物が登場してたのに形容しがたい敵が登場。悪い意味で「斜め上」的なSF要素がどんどん追加。設定としては、今の世界は大昔の人類が作ったということらしい

そして、派手なバトルアクションがバリバリ展開されていく。序盤では主人公のバトルらしいバトルは見られなかったものの、途中から「金色のガッシュベルのようにしてください」と編集者に要求されたとしか思えないほど後半の展開はバトル三昧。

どうぶつの国14巻壮絶なバトルアクション
(14巻)
例えば、かめはめ波ーー!!

どうぶつの国13巻壮絶なバトルアクション
(13巻)
レーザー光線がビュインビュイン!!

読者としてもはやこの展開の振り幅に付いて行けない。一体作者はどうしたいんだ!?状態。

描き込み頼み

画像を見てもらったら分かるように描き込み自体は細かくて丁寧。悪く言えば、よく分かんないストーリーの「罪滅ぼし」と言わんばかりに作者アシスタントが懸命に頑張ってくださってる。

どうぶつの国12巻緻密な描き込み
(12巻)
例えばライオンの数とかめっちゃ多い。徹夜で頑張ったんだろうなーと、素人目にも直感できる大変な作業っぷり。

どうぶつの国9巻緻密な描き込み
(9巻)
巨大なビルの断面も、かなり細かく描写されてる。画質を落とした画像では伝わりづらいかも知れないですが、見てるだけで目が痛くなってくる。

つくづく涙ぐましい努力を感じるんですが、逆に言えばそれ以上でもそれ以下でもない。頑張って時間を掛けて描いた以上の価値を見出すことはできず、この「緻密な描写」以外に見所を探すのも難しい。言っちゃえば、頑張ったら平凡な人でもこれぐらいは描けそう?というレベル。

総合評価

金色のガッシュベル!!のような漫画を期待すると失敗します。ホメる所を探すのが難しかった。

Amazonの擁護レビューではやたら「難しいテーマ」という言葉が散見されましたが、個人的には批判の言葉としても聞こえた。テーマ自体は手垢にまみれて、目新しさには欠ける。普遍性もあるテーマですから、そこだけをもって言い訳とするのは難しそう。

また色んな賞を取ったみたいですが、その小難しいテーマを採用したことだけをもって評価された可能性が高そう。逆に考えると、商業漫画としては駄作という裏返し。

どうぶつの国(1)
雷句誠
講談社
2012-11-30

◯展開★2.5◯テンポ★2.5
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2.5
◯76点!!!!