バズマン。

健全な漫画の感想ブログ。基本的に面白いマンガだけレビューしてるつもり。

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『ワンパンマン』8巻9巻のネタバレ感想。原作はONE、作画は村田雄介。となりのヤングジャンプ(集英社)で配信中のヒーロー漫画。アニメも絶賛放送中。ワンパンマンが面白いかどうかの考察した記事はアップ済み。


キングの正体はキモオタだったでござるの巻

ワンパンマン8巻の主役はS級ヒーロー・キング。ボロス襲撃時にもS級ヒーローたちの会合に参加済み。何故か座ってるだけなのに、背景に「ドッドッドッ」という擬音が書かれていた男。

ワンパンマン8巻 S級ヒーロー・キングの本性1
(8巻)
ただセリフの「むふっ」が無性に気になる。それもそのはず。画像は恋愛シュミレーションゲーム「どきどきシスターズ」を購入直後、テンションMAXで帰宅しようとしてる場面。つまりキング氏はガチオタクだったんですぞwwwフヒヒwwwみたいなこと。

要するにキングは一切強くない。ヒーローとしての実力は、そこら辺にいる市民と大差ない。じゃあ、何故こんなキングがS級ヒーローまで上り詰めることができたのか?
ワンパンマン8巻 S級ヒーロー・キングの本性2
(8巻)
別のヒーローが怪人を倒す場面に偶然何度も遭遇しただけ。別のヒーローが倒したのを、さも自分が倒したかのように勘違いされた。普通は真実を打ち明ければいいんですが、キングはあまりにチキンすぎてそれが出来なかった。前述の「ドッドッドッ」という擬音は、キングの心臓の音。昔『すごいよマサルさん』で目の瞬きの音が聞こえるネタがありましたが、あれ以来の衝撃。

決してやましい気持ちはないんですが、普段否定する行為に慣れてないが故に、その程度の勇気すら芽生えてこないことは往々にして誰しもが経験したことがある?程度に差はあれど、キングに共感できる読者は多そう。

そして空気に流されるまま、キングのランキングだけがどんどん昇格していった。ただ冷静に考えてみると、主人公・サイタマやジェノスもヒーロー試験を受験した。その過程の中で本来キングはふるい落とせたはずやろ、って感じはしますが。ヒーロー協会の連中も目が節穴にも程がある。

ちなみに偶然怪人を倒してくれた無名のヒーローが、既に何となく察しがついてる人もいると思いますが、主人公のサイタマ。既にワンパンマン1-5巻でレビューしてますが、サイタマは正式なヒーローになる前は「野良ヒーロー」みたいなことをしてた。

だからキングとサイタマは運命的なもので結ばれているのか、今回もばったり遭遇してしまう。しかもキングが怪人に襲われようとしてる最中。言うまでもなく、キングは一度も戦闘経験がないので逃げるしかない。これまでは「風評」と「強面のルックス」と「心臓の音(キングエンジンw)」で勝手に怪人たちが逃げていた。でも今回ばかりはとてつもない強敵が襲来。

そこでサイタマは「で、なんでさっき逃げたんだ?今ジェノスが代わりに戦ってるんだけど?」とグイグイ追い詰めていく。
ワンパンマン8巻 S級ヒーロー・キングの本性3
(8巻)
もしかして強くなりすぎて戦うことが嫌になったのか?何を考えてんだ?頼む教えてくれ」とサイタマKYすぎ。基本的に実力者は相手の実力を推し量れるんじゃないのか!?いや、キングとは知ってか知らずか何度も遭遇してる以上、これを知ってて追い詰めてるとしたらサイタマはとんでもないドエス!!

ワンパンマン8巻 S級ヒーロー・キングの本性4
(8巻)
ウダウダしたやり取りをサイタマとキングがやってる内に、とうとう怪人の方から襲撃してくる。キングはそこそこ良い高層マンションに住んでるので、なかなか壮観な場面。ファンタジーものやバトルものの多くは地上戦。あってもリアリティーのない空中戦。だから意外に新鮮な構図。

果たしてキングとサイタマの運命は!?…という陳腐な煽り方をしてもどうせ勝つことは織り込み済みですが、キングがようやく真実を白状。サイタマは激怒するかと思いきや、まさかの「強くなればいいんじゃね?」と拍子抜けするような提案。そして「たまにゲームやりに来るから」とアッサリ立ち去り、二人は何故かゲーム仲間になる。爽やかというのか、読後感としては何か良い感じ。


ランキングなんて意味ないじゃーん!?

ワンパンマン9巻 地獄のフブキ1
(9巻)
ワンパンマン9巻では、ランクは下がってB級1位ヒーロー・地獄のフブキがサイタマ宅を訪れる。ヒーロー業界でも派閥なるものがあるらしい。ランキングを効率的にアップさせるにはヒーロー間の協力が必要。そこでフブキはサイタマを取り込むため意気揚々とやって来た。取り込むと言えば可愛らしいですが、仲間にさえすれば自分のランクを超えられることはないので、体の良い新人潰し・飼い慣らし。

フブキはB級ヒーローたちを牛耳ってる立場。当然「1位」という順位から考えて、既に自分の名前は周囲に知れ渡っているだろうと考えてる。だからこそ「私は地獄のフブキ…と言えばわかるかしら?」というドヤ顔全開のセリフに繋がっている。

ただサイタマの実力を考えると、S級ヒーローでも物足りないレベル。放っておいてもすぐA級にランクアップする。B級ヒーローたちは当然眼中に入ってない。
ワンパンマン9巻 地獄のフブキ2
(9巻)
だから「えっ全然わからん、誰?」とアホ顔全開。見事なギャップ感。

フブキはB級上位のポジションを守ってあげると提案するものの、サイタマは「安心しろよ、どうせ俺A級ランクに上がるから。つか何でお前A級に行かないの?」とズバズバと核心をついてくる。結果、フブキから一方的に攻撃を仕掛けてくる。

ワンパンマン9巻 地獄のフブキ3
(9巻)
言うまでもなく、サイタマに太刀打ちできるはずもないんですが、この時に熱く語るサイタマがカッコ良かった。ランキングの順位がどうこうより、まずヒーローは怪人を倒してなんぼ。

ちなみに同場面でジェノスとソニックがバトルをおっ始めてる。ジェノスもソニックもまさに音速対決を展開。画像は割愛しますが、圧巻のバトル描写です。ただスピードによる攻撃はパワーが知れてるので、お互い一進一退の攻防に終始。決着が付かない。
ワンパンマン9巻 ソニックVSジェノス2
(9巻)
そこでジェノスが辺り一面を消し飛ばすため、焼却砲を最大出力にして発射しようとする。当然サイタマが止めるわけですが、新手のウルトラマンか!「敵さえ倒せたら別に何やったって構わないよね」的な理論は、リアルでは勘弁して欲しいところ。アメリカ政府やロシア政府あたりには耳を傾けて欲しいなと。

じゃあ、どうやってソニックを返り討ちにしたかというと、やはりサイタマの出番。ソニックはNARUTOの影分身の術ではないですが、音速の動きで10人程度の残像を作りながら攻撃してくる。
ワンパンマン9巻 サイタマのマジ反復横跳び・リアルナルト
(9巻)
ただサイタマが本気を出すと、反復横跳びするだけで100人以上の残像ができあがる。ソニックは思わず驚愕するんですが、「あばッふッ」とまさに言葉にできない by小田和正。

しかも風圧だけでソニックを一蹴。ここまで威力とスピードがすごかったら、先程ジェノスの暴発を止めたばかりですが、それぐらいの被害が周囲に起きそうなもんですけどね(笑)


総括

ワンパンマン8巻9巻も面白かったんですが、じゃあ全体的にどうなんだと言われると少し微妙な点も。6巻7巻ではボロスという最強宇宙人が襲来しました。ストーリーはそれを超える「過去最大の危機」が半年以内に起きるらしい。そこでヒーロー協会は裏社会の人間…というか怪人たちに助けを求める。

ワンパンマン9巻 人間怪人ガロウ1
(9巻)
そこで主体的に活躍するのが、人間怪人ガロウという敵。S級ヒーロー・タンクトップマスターを圧倒するぐらい強いんですが、やはりボロスと比較すると力不足感は否めません。

やはりボロス戦でかなりインフレが極まったと言ってもいい。元からサイタマが強すぎるので、実際のところインフレは最初から極まってるんですが、それでもどこかげでハードルを下げざるを得ない状況。それがこの8巻9巻。言っちゃえば、濃厚な料理を食べた後、今はお茶や水で必死に口の中をゆすいでる状態。

つまるところ「インフレ解消法」を実践してる最中ですが、いかんせんそれが長い印象。本編がストーリー仕立ての様相を呈していることも含め、この足踏み感に対して多少の不満を抱いているのは自分だけではないでしょう。是非10巻ではインフレバトルに期待したいところ。

ワンパンマン8巻 読み切り
(8巻)
ちなみに8巻では少年ジャンプやヤングジャンプで掲載された読み切りマンガが多数収録されてます。

『よつばと!』2巻のネタバレ感想。作者はあずまきよひこ。月刊コミック電撃大王(カドカワ)で連載中の日常漫画。よつばとが面白いという考察記事はアップ済み。

主人公は5歳児の「小岩井よつば」。『よつばと!』は、このよつばの日常を描いた漫画。だから漫画タイトルも「よつばと一緒に遊ぼう」的なニュアンスが込められてます。


よつばは絵が上手い?

一巻につき7話分が収録されてるんですが、このレビューでは2話分のみ取り上げたいと思います。まずは8話の「よつばとおえかき」。

よつばと!2巻 8話 おえかき1
(2巻)
ジャンボという父親の友達を描こうとするよつば。ただジャンボはかなりの巨体。それを表現しようと、いきなり紙から大きくはみ出す。「ジャンボはおおきいのに、このジャンボはちいさい」と悩む。もし等身大を描こうとしていたら、そもそも紙の小ささで気付けよっていうw

そこでよつばは道路に出て、思いっきり落書きしだす。結果、単なる事件現場。ただ偶然、隣りに住む恵那という小学生と出会う。新キャラ・早坂みうらと一緒に公園で写生会をやろうとしてた。ヒマなよつばも同行することになる。
よつばと!2巻 8話おえかき2 早坂みうら
(2巻)
ただ早坂みうらが見た目と違って、かなりガサツ。よつばは公園の池を見て、「海」と表現した。幼児だから言葉の言い間違い、覚え間違いは仕方ない。それを早坂みうらはよつばの頭をガッと掴んで、「どこがだよ!」と乱暴なツッコミを入れる。早坂みうらは良く言えば、素直。悪く言えば、空気が読めない。

よつばと!2巻 早坂みうら
(2巻)
別の回では、田んぼで見かけるカラスよけを被って、よつばを襲ってくる。『20世紀少年』のトモダチか!悪フザケにも程があるw

よつばと!2巻 8話おえかき3
(2巻)
だから、よつばの絵に対して「下手」とキッパリ切り捨てる。よつばは周囲から「上手」と言われてきたので、まさに愕然。背景を真っ黒にしただけですが、孤独感が見事に表現されてる気がします。節子風のセリフをあてるなら、「知らんかったん?ウチだけなん?」といったところか。

よつばと!2巻 8話おえかき4
(2巻)
早坂みうらは曲がりなりにも年上。よつばに対して一歩退いてあげて、「自分がウソついちゃった」と認めあげたらいいんですが、それもつい頑なに拒否。恵那の「お前いい加減空気読めや」という表情が笑う。よつばの悲しそうな表情も切ない。ツインテールのタレ具合でテンションの下がり具合も表現されてます。犬かよw

よつばと!2巻 8話おえかき5
(2巻)
前述のジャンボと偶然遭遇した時は、二人は思わず「うまいって言えー!」と心の中と叫ぶ。元はといえば、お前らが全ての元凶やろって感じですが。普段はおちゃらけてますが、当然ジャンボは大人ですので下手とは言わない。

よつばと!2巻 8話おえかき6
(2巻)
そうすると、よつばは思わずバンザイ。何故かつられて、恵那や早坂みうらもバンザイ。お前らは選挙で当選した政治家か。可愛らしいな、おい、というオチでした。


よつばはガンマン?

続いて、9話「よつばと復讐」。銃撃シーンがあるアメリカドラマかハリウッド映画を見て、すっかり感化されてしまったよつばの話。

よつばと!2巻 ドンパチごっこ1
(2巻)
父親に水鉄砲を構えながら、作中のセリフ「いいわけはじごくできく」を真似る。

よつばと!2巻 ドンパチごっこ2
(2巻)
ついでに一緒に映画を観てたジャンボにも銃口を向けてバンバン。ただ「いのちをたいせつに」は色々と矛盾してないか?w

よつばと!2巻 ドンパチごっこ3
(2巻)
この後どういう展開が待ってるのかなと思ったら、よつばは被害者の仲間役も兼務。ストーリーの流れが見えないので、付き合わされる方は大変。誰にやられた?って、いや、お前やろっていう。

よつばは、すっかり名うてのガンマンの気分。そこで隣に住む綾瀬家にまで乗り込む。
よつばと!2巻 ドンパチごっこ4
(2巻)
前述の恵那の部屋へは、思っきりドアを蹴り飛ばす。はた迷惑も極まれり。ちなみに何故か丁寧にでんぐり返りで入室。映画やドラマでは回転しながら部屋に入ることが多いので、多分それを模してるんだと思われます。


総括

他に面白かった回を少し触れておくと、10話「よつばとケーキ」。

綾瀬家の一部とよつばがみんなでケーキを食べてた。そこへ長女・あさぎが帰宅。自分だけ除け者にされた恨みもあってかフザケて、よつばが食べてたショートケーキのイチゴを奪う。
よつばと!2巻 イチゴを奪われるよつば
(2巻)
この時に浮かべる表情。状況が把握できないぐらい驚いてるのか、はたまたショックで今にも泣こうとしてるのか、一体どういう感情が芽生えてるかが読み取れない。でも、とりあえずイチゴを食べたらアカンことは伝わりますw

11話「よつばとどんまい」だと、よつばの父親を翻訳業を生業としているので家にずっといる。ただ請け負う仕事によっては夜通し完徹することも。ある日、何日も徹夜してやっと翻訳し終えて、身体はクタクタ。よつばは優しさから魔法か何かで眠らせようとしてあげる。

ただ呪文が全然言えない。「わかった!とーちゃんはよつばがねむりさして…ねむららせ…ねむさらし…ねむ…ねろ!!」とラストは二語。まさかの命令形。確かに言いづらい。「られる」系(?)はたまに注意を受けることもありますが、大人になってもどう言えばいいか迷うときはあります。

ちなみによつばとが面白いかの考察レビューはアップ済み。

『ヤングブラック・ジャック』1巻のネタバレ感想。作者は大熊ゆうご。脚本は田畑由秋。ヤングチャンピオン(秋田書店)で連載中の医療漫画。いわゆる手塚治虫の『ブラックジャック』のスピンオフマンガ。

あらすじ

時代は1960年代。学生運動が盛んだった時代。特に運動に拍車をかけたのが、1968年に起きた東大紛争。

このキッカケは医学部。医学部を卒業すると、半強制的にインターンと呼ばれる研修医として働かないと受験資格すら得られなかった。でもこのインターン生は無休で働かされていたため、制度そのものの廃止を願う医学部生が増加。一種の待遇改善運動やデモとしての盛り上がりが、いつの間にかイデオロギー色の強い過激な紛争・闘争に結びついていった。

ヤングブラックジャック1巻 間黒男
(1巻)
主人公は、この東大医学部の学生として在籍していた、22歳の間黒男(はざまくろお)。後のブラックジャック。要するにブラックジャックの学生時代が描かれてるスピンオフマンガ。

1960年代の時代背景を強烈に描写

『ヤングブラックジャック』最新9巻まで全部は読めてませんが、1960年代はちょうどベトナム戦争があった時代。だからこそ学生運動が盛んだったりもしたんですが、当時の時代背景が色濃く描写されています。

ヤングブラックジャック1巻 ベ由連
(1巻)
例えば、「ベトナムに自由を市民連合(通称・ベ由連)」。でも実際に存在したのは「ベ平連」。何故か、ここだけは架空の組織名ではありますが、ベトナム戦争に使われた毒ガス兵器のことや、戦場でPTSDを負ったアメリカ兵士など、キング牧師の反差別国際運動といったものまで幅広いネタが登場します。

政治色やイデオロギー色が強いとまで思いませんが、当時の世相をふんだんに取り入れた内容になっていて、当時リアルタイムで体験した高齢者層でもない限り、やや取っ付きにくい側面もあります。

研修医から何故闇医者になったのか?

じゃあ『ヤングブラック・ジャック』のメインが何かと考えると、間黒男の生き様。

間黒男ことブラックジャックは、取り立て屋・立入に3億円もの借金を背負ってる。何故なら、間黒男の母親は東京大空襲の不発弾の犠牲にあって、重篤な怪我を負ってしまう。そして植物状態。そこで生命維持装置を止めさせないために、幼いながらも借金を背負った。ただ残念ながら母親は長生きできずに、莫大な借金だけが残った。

また間黒男も同じタイミングで瀕死の重傷を負うものの、間黒男は無事生還。命の恩人は、神の手を持つ外科医・本間丈太郎。この本間丈太郎に憧れ、日夜、魚を縫合することで腕を鍛えていた。東大医学部へ入学した時は、既に手術の腕前は群を抜いていた。

ヤングブラックジャック1巻 真っ当な道を歩もうとする
(1巻)
だからブラックジャックは最初から闇医者になろうとしたわけではなく、実は真っ当な医者として強く生きていこうと決意していた。ひたすら「普通の生活を送りたい」と願っていた、どこにでもいる普通の若者だった。

ただ間黒男は、2巻では既に闇医者。もっと厳密に言うと、1972年2月の段階では闇医者。ちなみに3巻ではブラックジャックの高校時代編が描かれたり時間軸はたまにアチコチ飛んだりしますが、基本的には22歳前後のブラックジャックが描写されてます。

1972年は、ブラックジャックが26歳のとき。つまり研修医としての期間を終え、本来であれば医師免許も取得した直後ぐらい。でも闇医者として活動してるということは、結果的に間黒男が医師免許を取得できなかったことを意味してる。

その理由は様々な理不尽にブラックジャックが直面するから。

例えば幼い子供が事故に遭って、それをブラックジャックが救ってあげたとき。多額の借金を背負ってるので、法外な手術料(成功報酬)を要求する。医師免許を取得してない状況もあって、「断る」意味合いも強かったのかも。

ヤングブラックジャック1巻 不条理1
(1巻)
両親は最初快諾したものの子供が無事救われると、手術料を値切ってきた。しかも無免許であることを理由に、ブラックジャックに対して「警察に訴えてもいいんだ」と脅迫してくる始末。ブラックジャックの「子供の命を値切るのか?助けたいと思ったあの気持をウソにするのか」というセリフが印象的。

ヤングブラックジャック1巻 不条理2
(1巻)
前述の「ベ由連」のメンバーからは法外な成功報酬をすると「人命ですよ?救って当たり前っていうか、人として当然だろ!」「金金言える立場か?正規の医師免許もないくせに!」と悪態をつかれる始末。まさに「こいつら本物のエゴイスト!」。

お前らは逮捕されてもたいした罪にはならないだろうよ…だが!ここで医療行為を行えば一番罪に問われるのは医師免許のない俺だ!」とブラックジャックは直後に激昂するんですが、それだけ正規の医者として真っ当な人生を送りたがっていることが伺えます。

ただブラックジャックは結局、ベ由連のメンバーを救ってあげる。ブラックジャックは借金があるので金銭を優先するものの、自分は本間丈太郎に救われた過去があるので、目の前で苦しんでる患者を簡単に見過ごすことができない。その狭間に揺れる心理描写や葛藤に軸足が置かれているのかなーと推察されます。だから本名も「間(はざま)」なのかも知れません。

ブラックジャックは天才であるがゆえに多くの患者たちから救いを求められ、その要求に応え続けた結果、本来は正しいこと(人助け)をしてるにも関わらず、自分の人生の歯車が徐々に狂っていく過程に切なさややり切れなさを感じさせます。

総合評価

まだ4巻5巻ぐらいまでしか読めてませんが、内容はやや時事要素も強く読者を選びそうですが、作者・大熊ゆうごの画力は高いので、ブラックジャックもカッコ良く描けてます。また「人の命」に対して誰より真摯的な姿勢、だからこそ葛藤するブラックジャックの姿は好感が持てます。デメリットがあったとしても、そういった部分が打ち消してくれる気がします。

ヤングブラックジャック1巻 ギャグ展開
(1巻)
ただ唐突に始まるイチャコラorギャグ展開は、間の抜けた印象を少し与えて好みが分かれそう。演出として賛否両論ありそうですが、考えてみると原作『ブラックジャック』はピノ子というキャラクターがいるので、そういう意味で世界観的な部分をあまり気にする必要もないのかも。

確か先月から『ヤングブラックジャック』のアニメが放送されてるらしいので、何となくレビューしてみた。



◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★4.5
◯全巻大人買い★3.5
◯おすすめ度…82点!!!!

『サムライせんせい』1巻のネタバレ感想。作者は黒江S介。クロフネZERO(pixiv)で配信中のマンガ。この実写ドラマが最近放送されてるらしいので記事化。またぞろジャニーズの誰かが主役を演じてるらしい。

あらすじ

サムライせんせい1巻 武市半平太
(1巻)
主人公は幕末期に活躍した武市半平太。牢屋に入れられ今にも処刑されようとしたところ、武市半平太が気付くとそこは150年後の日本だった。武市半平太は命からがら処刑から逃れたものの、長期間の獄中生活で身体はボロボロ。精魂尽き果てて、その場で倒れてしまう。

ただそんな武市半平太を拾ってくれた人がいた。それが佐伯という塾を経営する老人。
サムライせんせい1巻 武市半平太が塾講師アルバイト
(1巻)
武市半平太は自分を助けてくれたお礼も兼ねて、佐伯の塾で講師としてアルバイトする…みたいなお話。

武市半平太の驚愕

あらすじを読めば分かりますが、ありがちなSFモノ。昔の日本人が現代の日本へやって来て、様々な時代の変化に驚くという展開。例えばエアコン。温かい空気も、冷たい空気も送風できるコンディショナー。150年前の日本には多分扇風機もなかったはずですので、そりゃ驚く。

でもエアコンはどんな原理で動くのか?言うまでもなく、電気の力を借りて動く。最近は風力や太陽光で発電することも可能だとか。じゃあ電気の力はどこから持って来るのか?やはり言うまでもなく、コンセント。
サムライせんせい1巻 コンセント
(1巻)
そのコンセントを初めて見た武市半平太は「なんだあの穴は、虫が入ってくるじゃないか」。うん、そりゃそうだ。何も知らない状態でコンセントを見たら、確かに壁に穴が開いてるようにしか見えない。まあエアコンは室外機へホースを通す穴が必要ですけどね。

他だと自販機に尊敬したり、テレビのオンオフにビビったりもします。

サムライせんせい1巻 ガングロギャルに驚く1
(1巻)
またある時には、街中でガングロギャルに遭遇した武市半平太。

サムライせんせい1巻 ガングロギャルに驚く2
(1巻)
まさかの「山賊」と勘違い。よく見ろ!コイツラは武器を持っていない!ガングロギャルはすっかり絶滅してる状態ですから、もし街中で、しかも田舎で遭遇したら、現代の人間でもビビりますが(笑)

考えてみるとガングロは、2000年前後の10年間も見たない期間しか流行ってないファッション。これからの歴史にどう受け継がれていくのか興味津々。ガングロギャルはネタとしてこれほど面白い存在はないので、マンガ家さんに限らず、もっと長生きして欲しかったと思ってる方は多数いる気がします(笑)

塾講師アルバイトしてる武市半平太。3DSで遊び呆ける生徒には問答無用で没収。ただ魔が差して、3DSでピコピコ遊び始めると意外にハマっちゃう。ただ気付いたら時間が経ってたのか、生徒が「漢字ドリル終わったよー」と障子を開けると、
サムライせんせい1巻 ゲームをさっと隠す武市半平太
(1巻)
シュバッと懐に3DSを隠す。多分、音でバレてるはず。Hな本を読んでる最中、母親に部屋に入って来られた中学生並みの俊敏さ。アレはマジでビビる。昔風でいうと春画か(笑)

幕末期は剣道が盛んだったらしい。お侍さんがギリギリいた時代ですから、当然といえば当然。ただ現代では剣道を嗜んでる子供は非常に少ない。だから「剣道ってダセー」という子供も非常に多い。
サムライせんせい1巻 剣道がダサいと言われて凹む
(1巻)
その現実を知らされた時の、武市半平太の表情がこれ。「ダサい」という表現が幕末の志士に伝わるのかという細かいツッコミはさておき、ショック受けすぎやん。

笑いに走るのか?シリアスに走るのか?

ただ『サムライせんせい』の軸足が定まってない印象もしました。笑いに走りたいのか、シリアスな展開に走りたいのか、方向性がいまいちハッキリしてない。

サムライせんせい1巻 凶悪犯
(1巻)
ストーリーの後半は若干シリアスな展開。生徒の子供たちが山中へ遊びに行くと、そこには逃亡中の凶悪犯がいて捕まってしまうので、そこへ武市半平太が救出へ向かう。2巻へ行く直前で武市半平太が子供たちを発見するんですが、わざわざ巻をまたぐ程の展開ではない。

ページ数を割いてる割に、読者の興味を惹き付ける展開を作れてない。塾講師として働くのがテーマのくせに、子供たちとの絡みも意外に少なく、基本的に武市半平太がグズグズと一人で悩んでるだけ。だからといって、そこまで武市半平太の人物像を掘り下げられてもいない。

ネット連載だからこそのペース配分なんでしょうが、フツーのマンガに読み慣れてるとモヤモヤする。また「『サムライせんせい』はどういうマンガなのか?」を固めることができないまま、ただページと時間だけが浪費されていくので、そういう状態で出し惜しみ的に次巻へ展開を引っ張っても、なかなか読者に対して2巻目を買いたいとは思わせないかも。

総合評価

設定は定番ではあるものの、いや定番だからこそ、それ自体は面白いと思います。

でも、この原作漫画1巻の段階では、武市半平太の先生らしい描写はほとんど描かれない。そこの話をもっと広げろよと思うんですが、何故か「教室外」での展開が多く、違和感を感じざるを得ませんでした。こちらが期待する展開はいくら待ってても、ついぞ起きない。山場がないというのか、ボリュームは200ページとしっかりページ数を割いてるはずですが、読後感として何か残るものは少なかったです。

もし「武市半平太」という歴史上の人物を描きたかったら、もっと別の漫画タイトルがあったはず。仮にそうだとしても、前述のように武市半平太の人物像の掘り下げは弱い。グダグダと息巻いてるだけで、別に無名の一介のサムライでも良いんじゃね?と。

ちなみに先週放送の実写ドラマ版にゲストとして出演する予定だったオスカー女優さん(高部あい)が逮捕されちゃったらしく、テレビ朝日は少しテンヤワンヤだったとか。この女優さんが声優をやってた『キルミーベイベー』も近々レビュー予定。



◯展開★3◯テンポ★3
◯キャラ★4◯画力★5
◯全巻大人買い★3
◯おすすめ度…77点!!!!

『パパと親父のウチご飯』1巻2巻のネタバレ感想。作者は豊田悠。コミックバンチ(新潮社)で連載中のグルメ漫画。最新3巻は今月11月9日に発売予定。何となくレビューしてみる。

あらすじ

主人公は4人。千石哲というシングルファーザー。職業は整体師。突然、元カノが現れる。自分との間にできた子供という娘・愛梨を預けられて育てるハメに。だから厳密にはシンパパではないのかも。もう一人のシングルファーザーは、晴海昌弘。職業は漫画編集者。奥さんと離婚して息子・清一郎を引き取る。

パパと親父のウチご飯1巻 千石哲と晴海昌弘
(1巻)
この二人のシンパパが同居して、一緒に子供を育てていくみたいなストーリー。千石哲が怖い父親役で、晴海昌弘が優しい母親役的な位置付け。漫画タイトルの『親父』は千石、『パパ』は晴海といったところ。まさに凸凹コンビですが、決してBL的な展開はございませんのでご注意。

また二人は壇ゆかりが経営する料理教室に通うなど、テイスト的には『稲妻と甘々』に近い側面も。子育てマンガを描く上では、グルメ要素は欠かせないのかも知れません。

親も一緒に成長していく

子育てマンガというジャンルはどうしても子供キャラがメインになりがちですが、この『パパと親父のウチご飯』はどちらかと言えば「父親(親)」がメインのように感じました。

子供を育てた経験がない状態で、基本的には誰しもが初めての子供を育てる。学校でも子育ての仕方を教えてくれない。「子供」はもちろん何もかもが初めての経験だったりするんでしょうが、それは「親」でも同じことが言えるはず。だから「分からないこと」だってたくさんある。

特に男は小さい子供の扱いにそもそも慣れていない気がするので、父親だったら尚更のことかも知れません。だから子供たちとたびたび衝突することもある。

パパと親父のウチご飯1巻 千石哲が謝る
(1巻)
ただ千石哲だったら素直に謝罪。そして命令口調気味に言うことで、娘を安心させてやる。粗暴なパパらしい優しさ。

パパと親父のウチご飯2巻 晴海昌弘と息子・清一郎
(2巻)
一方、晴海昌弘は優しく息子に同意を求めるカタチでさとしてあげる。あらすじでも少し説明しましたが、二人の相反する父親を対比的に描けてる感じはします。

パパと親父のウチご飯2巻 千石哲の心配
(1巻)
ぶっきら棒な千石哲が見せる「心の弱さ」は思わず女性読者もキュンキュン?画像は娘・愛梨が幼稚園で運動会があることを黙ってた。でも娘は脚が遅いのがバレるのがイヤで黙ってただけ。千石哲はてっきり自分に運動会に来てほしくないと思ってたので一安心してる場面。ちょっとした乙女心を炸裂。

総合評価

マンガの目的や狙いは明確。それなりに描きたいことも表現できてるような気もします。

パパと親父のウチご飯1巻 千石愛梨の表情
(1巻)
娘・千石愛梨の表情は可愛らしいと思いますが、ただキャラクター的には弱かった気がします。もう一人の子供・晴海清一郎も同じく、あまり言動全体を見て「愛おしい」と思うことは少ないかも。

『パパと親父のウチご飯』はあくまで親目線の展開が多く、「子育てって大変だよねー」という共感を誘うようなアプローチが多い印象。だから子供の可愛らしさやトンデモキャラっぷりを期待して購入すると、少し肩透かしを食らうかも。

まだ2巻分しか発売されてないのでボリューム的な部分をツッコむのもアレですが、序盤で煽った割に肝心の「二人のシングルファーザーの絡み」も意外に少なかった印象。悪く言えば、総花的で印象に残る場面も少なかったかも。

◯展開★3◯テンポ★3.5
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2.5
◯おすすめ度…75点!!!!

『はねバド!』1巻から6巻のネタバレ感想。作者は濱田浩輔。good!アフタヌーン(講談社)で連載中のバドミントンマンガ。

あらすじ

舞台は北小町高校バドミントン部。主将は荒垣なぎさ、副主将は泉理子。二人の実力はそこそこ強かったものの、新しく赴任したコーチ・立花の練習がキツすぎて、次々と部員が辞めて今にも廃部寸前だった。

はねバド1巻 羽咲綾乃2
(1巻)
これからどうすべきか苦慮している立花コーチが偶然出会ったのが羽咲綾乃(はねさき)。一見すると穏やかでノホホンとした出で立ちですが、手の平には何故か大量のマメ。ひらめく立花。

はねバド1巻 羽咲綾乃
(1巻)
そこでバドミントンをやらせてみると、めちゃめちゃ強かった。羽咲綾乃は廃部寸前の北小町高校バドミントン部の救世主となるのか?…みたいなストーリー。だから漫画タイトルも「はねさきがバドミントンをやっちゃうぜ!」的なことの略語。

バドミントン描写は上手い方

結論から書いておくと、『はねバド!』のストーリーはさほど面白くないです。

はねバド4巻 バドミントン描写
(4巻)
敢えて、『はねバド』の良さ・面白さをピックアップするとしたら、バドミントン描写・試合描写。

はねバド6巻 バドミントン描写
(6巻)
スマッシュを打って、バドミントンの羽がズドーン!迫力があります。

はねバド5巻 バドミントン描写
(5巻)
ラケットの持ち手と足の踏み込みをドアップに描写することで「躍動感」を表現。他のスポーツ漫画でもありそうですが、意外に少なそうな演出だと思うので、個人的には新鮮でした。今後、他のスポーツ漫画でも使われそうな表現。

はねバド2巻 セクシー描写
(2巻)
登場キャラクターたちが女子高生ということで、試合描写では若干セクシーなものも。

はねバド3巻 セクシー描写・コニークリステンセン
(3巻)
確かに女子選手によるバドミントンの試合を見ていると、男性の心をくすぐるようなコスチュームを着用してることも多い印象。スポーツマンガで女性キャラクターを多用する以上、こういう要素は欠かせない気がします。せっかく男子とは異なる武器がある以上、それを使わないのはもったいないですよね。

ちなみに画像はコニー・クリステンセン芹ヶ谷薫子。

羽咲綾乃のキャラがよく分からん

漫画タイトル『はねバド!』にも使われていることからも分かるように、主人公はおそらく羽咲綾乃。何故「おそらく」という表現を使ったかというと、展開を読む限りは主将の荒垣なぎさがメインっぽく感じることも多い。

はねバド3巻 羽咲綾乃
(3巻)
羽咲綾乃は試合に入ると、こんな風に覚醒することがある。もちろん羽咲綾乃の普段は声が小さく穏やかな性格だから「ギャップ感」を描くのは定番ですが、ただ表現としては少し苛烈。ここまで極端に描いちゃうと「悪役」にしか見えない。最終的には試合外でも覚醒。

はねバド5巻 羽咲綾乃
(5巻)
他の選手の試合を寝転んでヒジをつきながら観戦。怖くて誰も羽咲を注意できない。そして勝ち上がってきた主将・荒垣なぎさに対して「強くなったなー」と上から目線でポツリ。お前は正月にしか会わない親戚のオッサンか!「◯◯ちゃん、大きくなったなぁ」的なノリ。

はねバド6巻 羽咲綾乃
(6巻)
試合が休憩に入ると、こんな風にドカッと座る。さすがに男でも、ここまで態度が悪い選手なかなかおらんぞ。完全なヒール。

ストーリー展開的には「才能の羽咲綾乃 VS 努力の荒垣なぎさ」を描きたかったらしい。羽咲綾乃は絶対防御型のプレースタイルに対して、荒垣なぎさは超攻撃型。試合展開そのもの対比的に描かれていますが、それにしてもキャラ変貌しすぎやん。

羽咲綾乃というキャラをどういう視点で、どういう角度で評価していいか分からない。羽咲綾乃は母親の影響でずっとバドミントンを続けてた割に、大会のルールや仕組みもイマイチ理解してなかったり、キャラクターの肉付けは甘い。もしこれが主人公だとしたら見せ方は上手くない。

もっと言っちゃうと、メインのキャラクターを探すのが難しく、一体誰に感情移入していいのか戸惑う。

総合評価

作者・濱田浩輔の画力は比較的高く、試合描写は上手い。吹き出しの描き方も豪快で、スポーツマンガとしては良い作用をもたらしてる気がします。美少女キャラクターも可愛らしいっちゃ可愛らしい。

ただ全体的に面白くはない。ストーリーを展開させる力がイマイチ。廃部寸前の部活を復活させていく高校部活モノなのか、羽咲綾乃が母親を探しに行く主人公メインのストーリーなのか、一体何を描きたいのかが曖昧で「マンガとしてのまとまり感」みたいなものに欠ける。

読んでて面白いことはないですが、美少女好きor試合描写にグッと来た読者であれば買い。ハードルを低くして読めば、そこまで気にならないかも。



◯展開★2.5◯テンポ★3.5
◯キャラ★4◯画力★4.5
◯全巻大人買い★2.5
◯おすすめ度…76点!!!!

『ばくおん』1巻から6巻のネタバレ感想。作者はおりもとみまな。ヤングチャンピオン烈(秋田書店)で連載中のバイクマンガ。来年2016年1月にアニメ化されることが決定したらしいので、何となくレビューしてみます。

あらすじ

丘の上女子高等学校に通う新入生たちがバイク生活に明け暮れるマンガ。タイトルの「ばくおん」はまさに「爆音」のこと。

ばくおん1巻 美少女キャラクター
(1巻)
ただ登場キャラクターは全員美少女。

ばくおん6巻 佐倉羽音
(6巻)
主人公は佐倉羽音(さくらはね)。見た目も含めて、まさに『けいおん』の主人公よろしく、おっとりした性格の不思議ちゃん。バイクとは程遠い印象を持ちますが、そのギャップ感が良いのかも知れません。

ばくおん5巻 佐倉羽音
(5巻)
本当に嫌味なく「バイク好き」を表現できてるキャラクターなので、素直に好感を持てる人が多そう。

ばくおん3巻 バイク描写・天野恩紗
(3巻)
バイク屋の娘・天野恩紗(あまのおんさ)に影響を受けて、佐倉羽音はバイクに乗り始めます。高校はかなり坂道の連続だったので、最初は「バイクいいなー」というシンプルな理由で憧れる。

この二人がバイク部に入部すると、常にヘルメットを被ってる来夢というヘンテコな先輩が待っていた。しかも超絶無口。ヘルメットを被ってるので話せないのが実情か。他にも清楚メガネな三ノ輪聖や、後に高飛車なお嬢様+スズキマニアの鈴乃木凛も加わって、女子トークさながらバイクトークを繰り広げるコメディーテイストが強いマンガ。

実在するバイクでかっ飛ばす!

とにかく実在するバイクがたくさん登場します。とは言っても、自動車以上にバイク市場は苦境に立たされているようですので、車種名を挙げられても知ってる方がどこまでいるかは分かりませんが。

ばくおん3巻 BMWモトラッド
(3巻)
例えば、BMW・モトラッド。どうしても高級車メーカーとしてのイメージが強いBMWですが、意外にもバイクだって生産してるらしい。BMWには「K1300R」といった車種も登場します。

国産のバイクメーカーだとスズキ・ヤマハ・ホンダ・カワサキが有名。例えば、主人公の佐倉羽音の愛車はホンダ・CB400SF、天野恩紗はヤマハ・TZR250、鈴乃木凛はスズキ・カタナ400、来夢先輩はカワサキ・スクーターエプシロン250を所有してる模様。パッと映像が思い浮かべば、きっと貴方はバイクマニア!他にもGS1200SSやKTM DUKE200など、単なる記号の羅列にしか見えません。

ばくおん2巻 バイク描写
(2巻)
美少女モノだからといって、バイク描写は手抜かりはなく、しっかりカッコ良く仕上がってます。

ちなみに冒頭でも触れましたが、この『ばくおん』はバイクメーカー全面協力でアニメ化されることが決定。そりゃこんだけ宣伝されてりゃ、とてつもない宣伝効果。メーカーさんはホックホクでしょう(笑)

美少女たちのバイク愛が止まらない!

登場するバイクは本物なので、かなり内容がマニアックな一面も。バイクに関する知識も色々と披歴してくれていて、作中では専門用語もバンバン飛び交う。だから話の内容や会話に付いていけない読者が大半だと思われますが、敢えてマンガではその「マニアの痛さ」を笑いに繋げようとしています。

例えば、文化祭でバイク部はレースを行うことが決定。初っ端から来夢先輩は盛大にコケるものの、部員たちは壮絶なレースを繰り広げる。結果、全員が同着に近い状態でゴール。でもこのレースを観戦し盛り上がっていた、他の女生徒たちが「どこのメーカーが良い」かで紛糾。
ばくおん3巻 痛い笑い
(3巻)
それを見た天野恩紗が「奇跡だ」と思わず感涙。バイク市場が元気がないので、話題にされてるだけで感動を覚えてしまう。ちょっとした末期症状。

ただ自動車でもマニア同士の痛い対決がネット上では見られます。トヨタ自動車がどうだの、ホンダ自動車がどうだの、マツダ自動車がどうだの。ホンダ嫌いの人だとほぼ必ず「アホンダ」というワードを使いたがる。ガキかよっていう。不毛な議論は見てるだけで疲れるので、マジで勘弁してくれって感じw

ある日、天野恩紗が急激にスズキ車がカッコ良く見え出す。そして、ついにはスズキのバイクを舐め回したくなる症状にかられる。これは何故なんだと原因を追及していくと、スズキの菌に感染していた。スズキマニアはネット上だと「鈴菌(すずきん)」と揶揄されてるので、そこから来た自嘲ネタだと考えられます(笑)

スズキのバイクは一般的にダサいと言われがちらしい。だからスズキが大好きと公言すると、「お前スズキのバイクが好きなのかよ?」とバカにされるんだとか。体内に感染した鈴菌は否定されればされるほど活発化。苦しむ天野恩紗だったんですが、前述でも少し触れましたが鈴乃木凛はスズキマニア。愛車はカタナ。
ばくおん4巻 痛い笑い
(4巻)
だから鈴乃木凛は「スズキを怖がらなくていいんだよ。もっとスズキを好きになっていい」と天野恩紗を温かく抱きしめてあげる。シュールすぎるにも程がある。

巻数が進むと、佐倉羽音たちは進級。中野千雨という新一年生が入学してくるんですが、彼女はミニバイクレースの天才。「ポケバイ」と言い換えてもいいのかも。

でも中野千雨は実はバイクが苦手。何故なら、レース車両と車道を走る市販車は仕組みが全然違う。自動車教習所では最初走り出すことすらできなかった。周囲からは羨望の眼差しで見られてるもんだから、自分から言い出せない。でも、さすがに耐えかねた。
ばくおん6巻 中野千雨
(6巻)
そして「バイクの初心者です」と涙ながらに白状。笑っていいのか、切なくなっていいのか、少し戸惑います。そこまでしてバイクに乗りたいのか?という。スラムダンク風に言ったら「安西先生、バスケがしたいです!」的なノリか(笑)

ばくおん5巻 中野千雨
(5巻)
ちなみにバイク部の新入生に向けた部活動説明会では、あまりにバイク愛が強すぎて、中野は新一年生にも関わらず、自分が壇上に踊り出て「エアバイク運転」をかましてアピール。当時はミニバイクしか乗ったことがないからか、ハンドル位置の高さがエグい。多分アニメでも暴走してくれそうな中野千雨でした。

バイクはアホしか乗れない?

ばくおん1巻 天野恩紗「バイクはバカにしか乗れん」
(1巻)
そういえば天野恩紗が作中で「バイクはバカしか乗れない」と発言する場面があります。バイクには「何も考えずに純粋に楽しめる奴だけが乗れる」みたいなニュアンスだと思われます。

ここからは余談になりますが、つい最近日曜日の「朝8時」にバイクの集団を見かけました。バイクでつるむ人たちは、言うまでもなくヤンチャな方々。まさに爆音を鳴らしながら自分の目の前を駆け抜けて行きました。

ただせめてバイクで爆走するなら「夜8時」だろ!っていう。まだ「夜に暴走=カッコいい」というイメージを抱くのは理解できますが、多分日曜朝8時は一週間の中で一番健全な時間帯。プリキュアとハーモニーを奏でて、社会に対して一体何を訴えたいんだと。漠然とした不満が積もっててストレス発散したいだけなら、ラジオ体操でも踊っとけと。

確かにバイク乗りのオツムは「アレ」なのかなと思った出来事でした。

総合評価

バイクに関するマニアックな知識や記述が多く、大半のボリュームを占めることもあって、やっぱり読む人は選びそう。かつてFC2のブログで1巻2巻あたりをレビューしたとき、そこそこ高得点に採点した記憶があるんですが、改めて6巻まで読み直すと「そうでもなかった」というが正直な感想。

ばくおん2巻 セクシー描写
(2巻)
『ばくおん』はヤングチャンピオン烈で掲載されてることもあって、ちょっとしたセクシー描写もあります。序盤の段階では徐々に増えていくかと思いきや、意外に増えなかったのも一因かも。たまに温泉に入ったりするものの、画力が高いだけに良くも悪くも「健全なマンガ」の範疇に収まってます。自分が少し期待しすぎただけかも知れませんが。

そういえば自分は『くるまン。』という自動車ブログを運営してることもあって、バイクに限らず、こういう乗り物系のマンガが増えるといいなと思いました。例えば自動車の新車は年間500万台前後売れてるらしい。アベノミクスのダメダメっぷりで、最近は500万台を切ることも当たり前になってきましたが、逆に考えるとこれだけ「潜在的な読者」がいるという裏返し。

この『ばくおん』然り、『頭文字D』然り、どうしてもマニアックな方向に流れてしまいがちですが、しっかり幅広い層にウケることを意識すれば、意外に爆発的にヒットしそうな予感がします。最近は国産車でもカッコいいデザインの車もありますからね。



◯展開★2.5◯テンポ★4
◯キャラ★4.5◯画力★5
◯全巻大人買い★4
◯おすすめ度…80点!!!!

『ナルト外伝 七代目火影と緋色の花つ月』のネタバレ感想。作者は岸本斉史。少年ジャンプ(集英社)で掲載されていた読み切りマンガ。

あらすじ

舞台は木ノ葉隠れの里。ナルトとサスケがカグヤを封印してから、かなりの年月が経った頃の話。

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 うちはボルト
ナルトにはボルトという息子がいた。画像は二人が親子ゲンカしてる場面。確か今年の夏頃にアニメ映画化もされまして、その時の主人公がボルト。ただチラッとは登場するものの、このスピンオフマンガの主人公ではありません。

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 うちはサラダ1
じゃあ誰が主人公かというと、サスケとサクラの間に産まれたサラダという娘。父であるサスケは家に帰宅することはほとんどなく、サラダは写真でしか見たことがないレベル。それ故に寂しさを感じてたサラダだったんですが、まさか二人には「血の繋がりがなかった?」ことを知る。画像は水月がDNA型鑑定の結果をサラダに教えてる場面。

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 うちはサラダ2
自暴自棄になるサラダ。でも瞳には写輪眼(?)がクッキリ。あれ?

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 うちはシン1
そこへ「うちはシン」と名乗るナゾの男が木ノ葉隠れの里へ襲来。画像では見えませんが、全身に写輪眼が埋め込まれてる。このうちはシンに、サクラがさらわれてしまう。自暴自棄になったサラダの「なんでママでもない人を助けに行かなきゃいけないのよ」というセリフはこの流れ。

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 うちはシン2
しかも率いている部下(?)に至っては、万華鏡写輪眼まで開眼済み。果たして、彼らの正体は何なのか?サラダの運命は?…みたいなストーリー。だから時間軸として、本編から多分10年後ぐらいの話。

うちはシンの正体とは?

1巻完結というボリュームからも分かりますが、仰々しく煽ってはみましたものの、内容的にはアッサリ終わります。だからストーリーをザックリとネタバレしておきます。

まずサスケはカグヤの跡を調べてる。カグヤは超絶的に強かったものの、何故か白ゼツ集団を造っていた。そこに違和感を抱いたサスケは「カグヤすら脅かす存在」がいるに違いないという仮説を立てる。だから娘・サラダと会う機会がなかった。

そして今作の敵である「うちはシン」の正体は誰なのか。結論から書くと、大蛇丸の元実験体。移植された組織に拒絶反応を示さない特異体質だったので、大蛇丸はコイツのクローンを大量に作るなど重宝されていた。ダンゾウの右腕も、元々はコイツの右腕だった。だから、うちは一族ではない。うちはイタチに憧れていたから名乗ってるだけ。

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 大量のクローン
この「うちはシン」が大蛇丸から離れて、今度は自分で自分のクローンを量産。つまり部下と思われていた小さな前述の万華鏡写輪眼を開眼した子供は、うちはシン自身。コイツが自分のクローンを使うことで、再び暁(あかつき)の復活を目論んでいるという展開。

ストーリーは「うちはシン」の本体がクローンに倒されて、大量のクローンが蜂起。ナルトたちに向かってくる。でも先程書きましたが、かなりアッサリ終わってしまう。もしこれが連載だったらかなり引っ張って引っ張っての展開になると思いますが…
NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 ラストがショボい
まさか九喇嘛(九尾)のメンチにビビッて、クローンうちはシンが戦意喪失してチャンチャン。ショッボ!後味としては何とも言えません。

親子の絆はDNA以上に強い?

うちはシンを倒すバトル漫画的な側面で読むと面白くはないですが、作者・岸本斉史が描きたかったのは「うちはサラダ」のこと。

うちはシンに母親・サクラをさらわれてしまうわけですが、血の繋がりがなかったことに怒りを覚えるサラダ。でも同時に「助けたい」という気持ちも強く芽生える。この相反する感情に苦しむサラダ。ただナルトが諭す。

NARUTO外伝 七代目火影と緋色の花つ月 ナルト
「偽物だろーが本物だろーがそんなものはどうだっていい。助けてって想いがあったんならそれが本物だ!」

要するにサラダの目線を通して、「親子の絆はDNA以上に強く結ばれている」みたいなことを伝えたかったのではないかと思います。だから最初はサスケがメインで活躍しそうな印象も受けましたが、あくまでフリとして利用されてるだけで脇役感は拭えません。

ちなみにちょっとした手違いがあっただけで、サラダはサスケとサクラの正真正銘の娘がラストで明らかになります。

総合評価

内容的には可もなく不可もなく。けなすほどでもなく、ホメるほどでもなく。サラダはやっぱり実の娘でしたという大団円のオチも含めて、これといって特筆すべき点は少ない。アニメ版ナルトでありがちな「オリジナル回」と表現したら分かりやすいかな。レビュアー泣かせといえばレビュアー泣かせ。

◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★3.5◯画力★3.5
◯おすすめ度…80点!!!!

『アルスラーン戦記』3巻4巻のネタバレ感想。作者は荒川弘。別冊少年マガジン(講談社)で連載中の戦争漫画。

あらすじ

舞台は、パルス国にある王都エクバターナ。パルス国は経済が発展した豊かな国だった。反面、貧富の格差が激しく、街中には多くのドレイがいた。ドレイの多くはルシタニア人だった。ルシタニア国は信仰に篤く、人を平等に扱うイアルダボード神を信奉していた。

一見すると穏やかな国家と聞こえますが、その信仰心は度を越していた。「異教徒は全て排除」という思想のもと、パルス国と度々衝突。しかし経済力を背景にパルス国はルシタニアを圧倒。その結果、パルス国にはルシタニア人のドレイが増加していく。

主人公は、王都エクバターナの少年王子・アルスラーン。性格は優しく、剣の腕は人並み以下。物語はアルスラーンがルシタニア国との戦争で初めて駆り出された場面から始まります。当然今回もルシタニアに勝利するはずだったものの、カーラーンの裏切りによって戦況は逆転。

結果、王都エクバターナがルシタニアに侵略され、そこを奪還するためにアルスラーンが奮闘する…みたいなストーリー。ざっくり言うと「パルス国 VS ルシタニア国」の間で戦争が起きてまっせーという状況。

銀仮面卿の正体はヒルメス

カーラーンの裏切りがパルス国を致命的に追い込むわけですが、この背後には銀仮面を被ったナゾの男がいる。剣の腕は立つ、頭も切れる。唯一の欠点が、顔に負った火傷痕。正体不明感バリバリ。

アルスラーン戦記3巻 銀仮面卿ことヒルメス
(3巻)
3巻では銀仮面の正体が発覚。パルス国の現国王・アンドラゴラスの兄・オスロエスの息子・ヒルメス。関係性が少しややこしいですが、ヒルメスは主人公・アルスラーンとは血が繋がった従兄弟。そして、アンドラゴラスの甥。

実は現国王・アンドラゴラス(アルスラーンの父)は兄オスロエスを倒すことで、かなり強引に国王に就任してた。兄から后タハミーネも奪う。王族や皇族は、基本的に長兄の家系が優先的に国王を継承する。その理屈は『アルスラーン戦記』の世界観でも同じらしく、兄・オスロエスの血を継ぐ者が優先的に国王を継承する権利がある。

つまりオスロエスの息子であるヒルメスも消さなければ、アンドラゴラスは自分が国王になれない。そういった背景を考えると、何故ヒルメスが顔に火傷のキズを負ったのかが見えてきます。

アルスラーン戦記4巻 ヒルメスとアンドラゴラス逆転の立場
(4巻)
2つのコマを並べて比較することで、現在と過去の状況・立場の違いが対比的に描写されてます。要は銀仮面卿ことヒルメスは、父親オスロエスの敵を討つために敵国・ルシタニア国に潜入。虎視眈々と機会を狙っていた。そしてルシタニア国を扇動し戦争を仕掛けることで、ついには王都エクバターナの陥落にまで至ったということ。

じゃあアンドラゴラスを捕らえた以上、もう処刑すればいいやんって話なんですが、ヒルメスの復讐の炎は簡単には消えない。アンドラゴラスの息子・アルスラーンと同時の処刑を画策している状態。

アルスラーン戦記4巻 カーラーンの息子・ザンデ
(4巻)
ちなみにカーラーンの息子・ザンデも4巻で登場します。だからヒルメスの工作はパルス国に広く浸透していて、裏切り者の数も大規模と推察できます。

果たして、主人公・アルスラーンは父・アンドラゴラスを救い出せるのか?…と言いたいんですが、
アルスラーン戦記4巻 笑うアンドラゴラス
(4巻)
かつて自分がコロそうとした少年が眼前に再び現れたことに、アンドラゴラスはまさかの笑い。

これは一体何を意味しているのか?これが因果応報と自分の運命・人生の最期を嘲笑っているのか、確実に最後のトドメをささなかった自分の間抜けさを笑っているのか、はたまた今度こそヒルメスの命を奪ってやろうと考えているのか。1巻からの言動を見ていても、やはり素直に応援できないオッサン。

交錯するそれぞれの思惑

ただ状況は更に複雑。

まずルシタニアの国王はイノケンティス。異教徒に対して徹底的に弾圧。赤ちゃんから女性まで万遍なく。そして書物も焼き払いまくり。まさに恐怖の大王。反面、敬虔な信者という見方もできます。ただイノケンティス王の背後には聖職者・ボダンがいた。

アルスラーン戦記3巻 ボダン
(3巻)
このボダンがとにかく強烈。「イアルダボード神を心から敬う者には病魔など取り付かぬ!」と、味方のルシタニア兵すら手にかける。言い分がめちゃめちゃ。

マルヤム人150万人の命を奪ったときは、「女はいずれ子を産む。子は成人して異教の戦士となる。老人や病人もかつてはイアルダボード教徒を迫害したかも知れぬ」と老若男女問わず殲滅。イノケンティス国王はボダンたち聖職者の影響を受けていてる可能性が高い。

まさに、現代で言うところのイスラム国に負けない。そういえば日本人もイスラム国の被害に合いましたが、その間、安倍総理はのんきにフジテレビの社長と仲良くゴルフを楽しんでたという。だからテレビで全く報じられてなかったのが何とも。

アルスラーン戦記3巻 タハミーネの謀略
(3巻)
それはさておき、イノケンティス国王は敵国・パルスの王妃・タハミーネに一目惚れ。当然パルス国は最大の異教徒。ボダン然り、聖職者たちからしてみると、そこの王妃と結婚するのは言語道断。加害者と被害者の遺族が結婚する感覚に近い。

つまりルシタニア国はイアルボード教を国教としているものの、信仰度はマチマチ。イノケンティスは単に横暴な振る舞いに酔っていただけのアンポンタン。
アルスラーン戦記4巻 タハミーネの誘導・イノケンティス七世
(4巻)
それを見透かしていたのがタハミーネ。自分の旦那である「パルス国王・アンドラゴラスの首を持ってきたら結婚してあげる」とイノケンティスに持ちかける。前述のアンドラゴラスの処刑という点では、ルシタニア国王・イノケンティスも聖職者ボダンも目的が一致しているものの、その先に待っている結末は真逆。

ちなみに画像下の呆れ返ってる男は、イノケンティスの弟・ギスカール。こちらは優秀。軍上層部はボンクラのイノケンティス王をこれを機会に引きずり降ろし、ギスカールを次期国王にしたいものの、肝心のギスカールは王座につく気がサラサラない気配。こちらはこちらでどうなるのか。

要は、タハミーネがルシタニア国内の火種を撒こうと画策してる。しかも自分の旦那の命を利用しての揺さぶり。イノケンティスがボダンを処刑したらタハミーネと結婚できるものの、当然聖職者側が幅を利かせている国情を考えると対立は必至。この記事がいつまで読まれるか分かりませんが、現在の「維新の党」みたいに分裂。

でもアンドラゴラス処刑を許さないのが、前述の銀仮面ことヒルメス。厳密には、その息子・アルスラーンと一緒に処刑したいので、それまではアンドラゴラスを生かしておきたい。まさに三者三様の思惑が交錯してる状態。当然ヒルメスは素性を隠していますが、やはりゴリゴリの異教徒。もしボダンにバレたら、どうなるかは言うまでもない。ヒルメスはどう難局を乗り越えようとして、無事復讐は果たせるのか?

そしてストーリーは、イアルダボードの聖堂騎士団が到着。ボダンを武装化したようなオッサン連中。聖職者の一派がルシタニア国内で地盤を固めつつある。
アルスラーン戦記3巻 ボダン2
(3巻)
この武力を盾に、ボダンは国王であろうと容赦しない。「一国の王といえども!異教徒の女を娶ろうなどと邪心を起こしたとき!病毒は神の杖となって撃つだろう!」と半ば脅迫。狂信的なカルト信者たちが着々と勢力を拡大させる中、物語はどういう風に進展してくのか?

自由とは何か?

奴隷制度も根幹には一つのテーマとしてあります。

主人公アルスラーンがホディールというハゲに助けを求めに行くんですが、結果的に裏切られてホディールを倒すハメになる。まさにダリューン無双。

このホディールは金持ちで、たくさんのドレイを抱えてた。当然主人がこの世から消えた以上、アルスラーンは彼らを開放してあげる。1巻を読む限り、アルスラーンも「ドレイとして生きる方が安泰じゃね?」という考えだった気がしますが、徐々に「自由」の大事さを認識した模様。

アルスラーン戦記4巻 奴隷たちの反乱
(4巻)
ただドレイたちは主人が倒されたことに憤怒。アルスラーンに対して、「許さない!略奪者め!」と逆に敵意むき出しで攻撃されそうになる。実はホディールは彼らに対して優しかった。ドレイ側から考えると遊ぶ自由や出かける自由はなかったものの、安定的な「衣食住」は確保されてた。むしろ彼らはホディールに対して感謝の念すら抱いてた。

考えてみると、現代の「社宅住まい」に近い。サラリーマンや労働者も社畜と揶揄されることもありますが、厳密にはドレイに近い。プライベートの時間も奪われることも多く、サービス残業を強要されることも多い。もちろん、その仕事を辞める自由は一応確保されてますが、そういう自由を何度も行使することが幸せな人生に結びつくかは微妙なところ。

その現実に直面し、まさに困惑した表情を浮かべるアルスラーン。全国的なドレイ開放という夢に迷いが生じるものの、ナルサスとエラムの話を聞くことで、一応アルスラーンは夢を諦めません。

アルスラーン戦記3巻 ルシタニア兵
(3巻)
ルシタニアはイアルダボード教を信仰しているのでドレイも平等に扱うのかと思いきや、「貴様らは豚や牛と約束をするのか?」と突き放す一面も描写されてます。まさに口先だけの信仰。これがイアルダボード教の真の信者の目にはどう映るのか?意外に物語に影響を与えそうな部分かも。

総合評価

クセのあるキャラクターばかりですが、それでも上手いこと扱えてる気がします。採点は86点にしてますが、ラストまで読んでみないとorもう少しまとまったボリュームで読まないと評価しづらいのかなとも思います。読者を選ぶマンガだとも思いますので、全巻大人買いの評価も★4に。

5巻へ続く展開としては、主人公・アルスラーンたちが万騎長キシュワードがいるペシャワール城を目指すものの、ペシャワール城までには聖マヌエル城がある。そこはかつてはパルスの砦だったんですが、現在はルシタニア軍が改築して根城にしている場所。城主・バルカシオン伯爵を筆頭に、エトワール(1巻でアルスラーンを襲った少年兵)も常駐。次巻も一悶着がありそう。

◯展開★4.5◯テンポ★3.5
◯キャラ★5◯画力★5
◯全巻大人買い★4
◯おすすめ度…86点!!!!

『高遠少年の事件簿』のネタバレ感想。原作は天樹征丸、作画はさとうふみや。マンガボックス(講談社)で配信されてた推理マンガ。いわゆる金田一少年の事件簿シリーズのスピンオフ。

あらすじ

主人公は秀央高校に満点でトップ合格した、若かりし日の高遠遙一。

高遠少年の事件簿 高遠遙一1
高校一年生なのに英語だってベラベラ喋れちゃいます。ピアノの伴奏も余裕で、色んな曲を弾きこなすことが可能。

寡黙で孤独を愛する性格に姫野という女教師が心配してくれるものの、高遠遙一は「クラスメイトに心を開けたらいいんですが…」と話すものの、どこか意に介さず。女教師・姫野がモーツァルトのように明るい曲を弾いてみたら?と提案するんですが…
高遠少年の事件簿 高遠遙一2
「モーツァルトも孤独な人だったそうですよ」とピシャリ。いけ好かねえ!(笑)

高遠少年の事件簿 秀央高校マジック部
ある日、高遠遙一は霧島純平という物言いが率直で明るい同級生に誘われて、マジック部に入部することになる。部長・片倉猟介、副部長・荒木田陸、部員・藤枝つばき、黒江真砂也、霧島純平。そしてマジック部の顧問が前述の姫野という女教師。

当初は困惑していたものの、個性の強いメンバーたちのマジックを見るのは楽しく、高遠遙一は初めて「自分の居場所」を確保できたかのような安心感を得た。「こんな日常も悪くない」という気持ちにさせるなど、心穏やかな日々を送っていた。

しかし、「死神マジシャン」と名乗るものからナゾのメールが届く。高遠遙一だけではなく、他のマジック部の部員たちにもそれは届き、全員で古びた生物準備室に呼び出されるままに行くと、小さな鍵穴から覗くと部員の一人・藤枝つばきの生首が飾ってあった。もちろん室内は密室。そして次々と他の部員が死神マジシャンの毒牙にかかっていく。

高遠少年の事件簿 高遠遙一3
この挑戦に受けて立つカタチで、若かりし頃の高遠遙一が事件のナゾと真相に迫っていくストーリー。だから漫画タイトルが『高遠少年の事件簿』。

総合評価

高遠少年の事件簿 マジック部・黒江
表面上は優しい部員(画像は黒部)に実は裏表があったり定番の前フリがあるものの、基本的にトリック自体は月並み。犯人の意外性もそこそこ。ただ無料のマンガボックスで配信されていたことを考慮すると、かなりクオリティーは高かった印象もするので少し評価は甘めに採点。

高遠遙一の「やっぱり」で「意外」な一面が見れて、『高遠少年の事件簿』はスピンオフとして素直に楽しめます。犯人探しも決して善意からではないのも、高遠らしい理屈で動いてて筋が通ってるので違和感なく読めます。

高校生時代から「悪魔」のようなヤツなんですが、当初は「普通の人間らしさ」が垣間見られる部分もあって、もしこの事件に巻き込まれていなければ真っ当なマジシャンとして人生を送れていたかもしれないと思うと、少し切ない気分になります。

高遠少年の事件簿 明智警部
あと実は明智警部も秀央高校の卒業生で、高遠遙一と同じく満点でトップ入学してた。性格は真逆で、明智は自己主張の塊。そして華があり、誰からも好かれるような存在だった。事件後に二人はうっすら邂逅を果たすんですが、二人の運命性が強調付けられることで、金田一少年の事件簿シリーズの世界観も深まった印象。

『金田一少年の事件簿』が最近またアニメ化されてるのでレビューしてみた。

高遠少年の事件簿
天樹征丸
講談社
2014-05-09


◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★4.5◯画力★3.5
◯おすすめ度…86点!!!!