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レベルE 全3巻 ネタバレ感想| 宇宙一アホ賢い王子に翻弄される人たち
『レベルE』全3巻のネタバレ感想。作者は冨樫義博。少年ジャンプ(集英社)で不定期連載されてたSFギャグマンガ。
ハンターハンターの連載が再開されるのを祝して、旧ブログで2014年4月頃に更新したレビュー記事です。ちなみに『レベルE』は何年か前に唐突にアニメ化されてたという。おそらくハンターハンターのアニメ人気で、冨樫義博の過去作品が再びクローズアップされた的な?
(1巻)
最初の登場シーンから、いきなり高校に入学したばかりの筒井雪隆の部屋でくつろぎまくり。そして最初に発した王子様のセリフが、「君…誰?」。いや、お前こそが誰やねんっていう。
(2巻)
そういうノリからも分かるように、全体的にはコメディータッチな展開が多め。アホなんだけど、ムダに頭が回る王子様に、同じ異星人も含めて地球人たちが巻き込まれるカタチで、色んなアホな展開が描写されてる。
例えば、凶悪な異星人たちに襲われる王子様と筒井雪隆たち地球人。それをドグラ星の護衛達と共に逃げまわる。
(1巻)
でも、その計画が王子様発案の、ちょっとしたドッキリ。いやいや、大概にせーよっていう。
(3巻)
ジャンルがSFということで、誰かの潜在意識の中に野球部員たちが閉じ込められたり…みたいな回もある。
ただ王子様が積極的に展開をかき回していくというより、ワチャワチャさせられてる周囲の人間を描くことで、王子の存在を描写しようとしてる雰囲気。最近で言えば、ウシジマ君のようなテイストで、あまり主人公が登場してこない。
その中でも2巻が、現在のハンターハンター…もっと言えば、グリードアイランドに繋がる原点が描写されてる。王子様が5人の地球の少年を拉致って、カラーレンジャーを名乗らせる。そこである惑星をRPGゲームそのものに作り変えて、攻略させる。
(2巻)
それが魔法が使えたりする。
(2巻)
ただ詠唱が早口言葉ばりに難しい。
まんまグリードアイランドの世界観と同じで、カード集めやビスケとの修行などを思わず連想させることも多い。例えば、「魔王護衛軍」などもいるんですが、それは明らかにキメラ=アント編に繋がってる。
ハンターハンターの着想の原点は、このレベルEというマンガにある…というより、ゲーム大好き冨樫義博の中に常にあったモノを体現してるんだろうなーと思わせてくれる。
(2巻)
ちなみにオチは、ゲームの目的を大ボスの魔王にインプットするのを忘れてたというオチ。魔王が実はメチャメチャ良い奴っていう。
(2巻)
強いて言えば、かなり昔に連載されたということもあって、やや絵柄が古臭い。古臭いというより写実的。今のポップな絵柄を想像して読むとかなり違和感があるはず。幽☆遊☆白書の絵柄も今見ると大概だと思いますが、それを更に劇画チックにした感じ。
良く言えば、今読んでも大して風化してない絵柄とも言えますが。
絵柄が気持ち悪かったので最初は敬遠してたものの、やっぱり小学生はヒマを持て余してる。そこであるとき、今まで読んだことがなかったタイトルもテキトーに読んだりする。そしたら結構ハマった記憶。
冨樫義博にはジャンルや老若男女問わず、「読ませる」チカラが昔から高かったと言えるのかも。実力はもてあましているけど、性格はグータラでぷらぷらしたい。まさに『レベルE』の主人公であるテキトー王子様よろしく、自分自身(冨樫義博)を思いながら描いてたのかも知れない。
◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★4
◯全巻大人買い★4
◯85点!!!!
ハンターハンターの連載が再開されるのを祝して、旧ブログで2014年4月頃に更新したレビュー記事です。ちなみに『レベルE』は何年か前に唐突にアニメ化されてたという。おそらくハンターハンターのアニメ人気で、冨樫義博の過去作品が再びクローズアップされた的な?
あらすじ
ジャンルがSFということで(多分その位置付けでオッケーのはず)、キャラクターの多くは宇宙人や異星人。そして主人公も異星人。それがドグラ星という惑星の王子様。ただ、めちゃめちゃトラブルメーカー。(1巻)
最初の登場シーンから、いきなり高校に入学したばかりの筒井雪隆の部屋でくつろぎまくり。そして最初に発した王子様のセリフが、「君…誰?」。いや、お前こそが誰やねんっていう。
(2巻)
そういうノリからも分かるように、全体的にはコメディータッチな展開が多め。アホなんだけど、ムダに頭が回る王子様に、同じ異星人も含めて地球人たちが巻き込まれるカタチで、色んなアホな展開が描写されてる。
例えば、凶悪な異星人たちに襲われる王子様と筒井雪隆たち地球人。それをドグラ星の護衛達と共に逃げまわる。
(1巻)
でも、その計画が王子様発案の、ちょっとしたドッキリ。いやいや、大概にせーよっていう。
(3巻)
ジャンルがSFということで、誰かの潜在意識の中に野球部員たちが閉じ込められたり…みたいな回もある。
ただ王子様が積極的に展開をかき回していくというより、ワチャワチャさせられてる周囲の人間を描くことで、王子の存在を描写しようとしてる雰囲気。最近で言えば、ウシジマ君のようなテイストで、あまり主人公が登場してこない。
冨樫義博のゲーム好きの原点
基本的には、ストーリーの前後に脈絡はあまり関係なくて、数話で完結してるようなオムニバス形式が多め。今のハンターハンターと同じで、ある程度原稿が溜まったら掲載して…を繰り返してたのかも。その中でも2巻が、現在のハンターハンター…もっと言えば、グリードアイランドに繋がる原点が描写されてる。王子様が5人の地球の少年を拉致って、カラーレンジャーを名乗らせる。そこである惑星をRPGゲームそのものに作り変えて、攻略させる。
(2巻)
それが魔法が使えたりする。
(2巻)
ただ詠唱が早口言葉ばりに難しい。
まんまグリードアイランドの世界観と同じで、カード集めやビスケとの修行などを思わず連想させることも多い。例えば、「魔王護衛軍」などもいるんですが、それは明らかにキメラ=アント編に繋がってる。
ハンターハンターの着想の原点は、このレベルEというマンガにある…というより、ゲーム大好き冨樫義博の中に常にあったモノを体現してるんだろうなーと思わせてくれる。
(2巻)
ちなみにオチは、ゲームの目的を大ボスの魔王にインプットするのを忘れてたというオチ。魔王が実はメチャメチャ良い奴っていう。
絵柄が古くさい
(2巻)
強いて言えば、かなり昔に連載されたということもあって、やや絵柄が古臭い。古臭いというより写実的。今のポップな絵柄を想像して読むとかなり違和感があるはず。幽☆遊☆白書の絵柄も今見ると大概だと思いますが、それを更に劇画チックにした感じ。
良く言えば、今読んでも大して風化してない絵柄とも言えますが。
総合評価
自分が小学生だった頃に『レベルE』がちょうど連載されてた記憶ですが、子供ながらにも地味にハマってた記憶。ハンターハンターほどではないものの、不定期に連載されてたので前後の関係を覚えてませんでした、掲載されてたらとりあえず読んでた印象。絵柄が気持ち悪かったので最初は敬遠してたものの、やっぱり小学生はヒマを持て余してる。そこであるとき、今まで読んだことがなかったタイトルもテキトーに読んだりする。そしたら結構ハマった記憶。
冨樫義博にはジャンルや老若男女問わず、「読ませる」チカラが昔から高かったと言えるのかも。実力はもてあましているけど、性格はグータラでぷらぷらしたい。まさに『レベルE』の主人公であるテキトー王子様よろしく、自分自身(冨樫義博)を思いながら描いてたのかも知れない。
◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★4
◯全巻大人買い★4
◯85点!!!!
漫画「マンけん。」 全7巻 ネタバレ感想レビュー 【加瀬大輝】
『マンけん。』全7巻のネタバレ感想をレビュー。作者は加瀬大輝。掲載誌は月刊サンデージェネックス。出版社は小学館。ジャンルは青年コミックの漫画家漫画。ちなみにタイトルの意味は「漫画研究部」の略。面白いか面白くないか全巻まとめて考察してみた。
でもひょんなことから、漫画研究部に入るハメになる。その漫画研究部は全員女子で、曲者ぞろいのキャラクターばっかりだった…的な感じの内容。
展開に期待をもたせるが
(1巻)
作者の加瀬大輝は画力があって、ちょいちょい見せる机上での漫画描写は魅せる。ただどこかがで見たような既視感がしなくはないですが。
だから展開でもちょっと期待感を持たせるフリも少なくない。ただ悪い意味で、それをことごとくサラッと見事に裏切る。巻数の割に、何も生んでない。
言っちゃえば、ストーリーの大きな軸がない。文化祭でコスプレやってみたり、コミケに行ってみたり、細かい脱線があちこちあるものの、一体「何がテーマなのか」という肝心の部分がない。
(1巻)
一話目で将来のライバルになりそうな豊崎アリスが登場。漫画好きな日仏ハーフだけど、てんで実力が伴ってない。ただ「漫画好き」という根性だけで、実力をメキメキ伸ばす的なフリ。
(4巻)
でも途中から部活内の謎の実力者・アノスが登場したり、プロ漫画家ではライバルであり姉妹である平野心が登場してみたり、豊崎アリスがそうそうに空気キャラ化。結局、主人公・日笠のライバルは誰やったん?
『アオイホノオ』のようにギャグに割り切るならアリだが、本格的な漫画家漫画を描くとしたら、それなりに実力が伴ってないと厳しい。まずお前ができてへんやんけ!とツッコまれるのがオチ。この『マンけん。』もその好例。
あらすじ物語・ストーリー内容
主人公は、日笠倖(ひがさ・さち)。担当編集者が付くなど、既にプロ漫画家デビュー一歩前の女子高生。ただ家庭の事情などから、学校でもそのことは隠し通してる。言っちゃえば覆面漫画家。でもひょんなことから、漫画研究部に入るハメになる。その漫画研究部は全員女子で、曲者ぞろいのキャラクターばっかりだった…的な感じの内容。
展開に期待をもたせるが
(1巻)
作者の加瀬大輝は画力があって、ちょいちょい見せる机上での漫画描写は魅せる。ただどこかがで見たような既視感がしなくはないですが。
だから展開でもちょっと期待感を持たせるフリも少なくない。ただ悪い意味で、それをことごとくサラッと見事に裏切る。巻数の割に、何も生んでない。
大きなストーリーの軸がないのでつまらない
肝心の内容が面白くない理由が、主人公の日笠が一体どうしたいのか、またこの漫画では一体何を伝えたいのか、全く見えてこない。プロ漫画家を目指すのか、部活ものとして展開していくのか、軸足が定まってない。言っちゃえば、ストーリーの大きな軸がない。文化祭でコスプレやってみたり、コミケに行ってみたり、細かい脱線があちこちあるものの、一体「何がテーマなのか」という肝心の部分がない。
(1巻)
一話目で将来のライバルになりそうな豊崎アリスが登場。漫画好きな日仏ハーフだけど、てんで実力が伴ってない。ただ「漫画好き」という根性だけで、実力をメキメキ伸ばす的なフリ。
(4巻)
でも途中から部活内の謎の実力者・アノスが登場したり、プロ漫画家ではライバルであり姉妹である平野心が登場してみたり、豊崎アリスがそうそうに空気キャラ化。結局、主人公・日笠のライバルは誰やったん?
総合評価・評判・口コミ
キャラクター作りや画力は悪くないものの、それを上手く使いこなすことは最後までムリだった。行き当たりばったりの展開が多すぎる。その割に画力がそれなりに高いのでちょいちょい魅せる良い部分が、却って小賢しく見える。『アオイホノオ』のようにギャグに割り切るならアリだが、本格的な漫画家漫画を描くとしたら、それなりに実力が伴ってないと厳しい。まずお前ができてへんやんけ!とツッコまれるのがオチ。この『マンけん。』もその好例。
漫画「新宿スワン」 全38巻 ネタバレ感想まとめ| ヤクザとスカウトマンの壮絶な復讐劇が面白いので考察してみた【おすすめレビュー】
『新宿スワン』全38巻のネタバレ感想をレビュー。作者は和久井健。ヤングマガジン(講談社)で連載されてた漫画。新宿のスカウトマンを設定にしてるので、ヤクザが絡んだりアングラ系のネタが全部詰まってるような内容。
旧ブログの「すごないマンガがすごい!」で2014年春頃に更新した記事を移行させたレビューになります。2015年5月からは主演・綾野剛(主人公・白鳥タツヒコ役)で実写映画も公開されるそうですが、とりあえず面白いかつまらないか・面白くないか考察してみた。
スカウト会社同士の抗争や、そのバックで管理(ケツモチ)してるヤクザの権力争いなど、スカウト(女性をダマす)という行為を通じて、どんどん裏社会の薄汚い部分が表出。新宿・歌舞伎町の「見ちゃいけない」部分がリアルに描かれてる。
ただ後半になるにつれ、徐々にそういう「スカウト」に関する描写…というより主人公の存在感がみるみる減っていく。そして主人公タツヒコをスカウトの世界に引き入れた『真虎』の復讐にテーマが移っていく。
(38巻)
真虎が復讐しようとしてる相手が、紋舞会の天野修善というヤクザ。日本最大級の暴力団・柚木組のトップになろうと画策。表情からしてまさに極悪。
じゃあ、何故天野を狙ってるのか。主人公のタツヒコが真虎にスカウトマンを誘われたように、真虎もまた辰巳(たつみ)という男に誘われた。
この辰巳を天野が部下を使って殺害。
(33巻)
この時の描写がかなり鬼気迫って、「手に汗を握る」とはまさにこのこと。スカウトマン同士、ヤクザ同士のイザコザも緊張感があったんですが、この時だけは別格。
山城兄妹は真虎が大好き。それでも天野修善の恐怖が勝って、強い葛藤に襲われながらも行動を起こす。真虎は真虎で信頼していた部下に突然さされる。お互いの何とも言えない感情が、この一瞬に全て現れてる。
復讐の鬼と化した真虎は、その後その山城兄弟という男たちの下で働くようになる。そして復讐の機会を虎視眈々と狙う。
(31巻)
ただ次第に、山城兄弟のことを好きになっていく真虎。躊躇してためらうものの、それでも心底尊敬してた辰巳への復讐心が勝る。そして山城兄弟の命を奪う。真虎の揺れ動く心理描写は切ない。
ただ不思議と、このマンガはそこまで戸惑うようなことはない。途中から、「真虎の復讐」がメインの軸になることも大きいんだろうが、複雑な人間関係を巧みに操る作者のストーリー構成力の高さが伺える。もっと言えば、キャラクター作りも上手く、まさに「人間模様が鮮やかに描かれてい」た。
天野など表情の迫力
一方画力は序盤だとかなり微妙。同人誌上がりと表現しても構わないかも。絵柄も90年代チックで、若干古くさい。ただ巻数を重ねることに、それは目に見えて改善・進化していく。絵柄も、この作者しか描けないオリジナルに仕上がっていく。まさに、これぞ「伸び代」。
序盤から片鱗は少し見せてたものの、特に表情のドアップが秀逸。前述の天野修善が好例。
(34巻)
堀田というヤクザの表情。既に天野修善の画像を見ても分かると思いますが、とにかく「オッサンの悪い顔」を描かせたら天下一品。
ただ真虎は天野修善の息子・タイガや山城兄弟の命を奪ってきた以上、勧善懲悪的なスカッとしたオチを期待してた。天野はヤクザだから派手に殺されない方が却って惨めで残酷な死に方だったとも言えますが、やや拍子抜けだった。
(38巻)
そして最終話で真虎は天野のもう一人の息子・レオの手によって命を落とす。
真虎が死ぬというオチ自体は構わないですが、ただタイミング的に不自然。何故なら真虎がビルから出てきた直後。レオがビルの外でずっと待ってたとしか思えず、もし真虎が現れるのを外で待っていたとしたら、何故父親である天野を助けに行かなかったのか?という疑問。仮にギリギリ急いで来たのであれば、ピストルではなくナイフの方がリアリティーはあった気がする。あと真虎はその時に頭を撃たれてるのに、タツヒコと一言二言喋ってる。これも不自然に見えました。
ラストの展開にはもっと丁寧な描写さがあっても良かった。最後の最後で気になる部分も目立った。
(38巻)
そして最終巻38巻のオチは主人公タツヒコが、まだまだスカウト続けるぜ的なオチ。これも悪くはないものの、現実を振り返ってみると新宿は条例によって規制が強化されてスカウトマンがいなくなった。もっと言えば、東京全体での規制が年々強まってる。
だから結局、真虎が復讐を果たしたことで、新宿の中で一体何が残ったんだろうという素朴な疑問。それを考えると虚しいっちゃ虚しい。ある意味「残らなかった」ことが残ったとも言えるので、これを人によっては『余韻』と言い換えることもできるのかも。
ただ個人的には、真虎のこれまでの経緯を考えると、もう少し何かハッピーエンド的な要素があっても良かった。これじゃあ誰も・何も報われない。最新作の『セキセイインコ』を連載したいがために足早に終わった印象。
ちなみに最終38巻の単行本コミックには、描き下ろしのエピローグが追加されています。タツヒコと昔登場したアゲハと付き合って、ハッピーエンドを(唐突に?)迎える。白鳥タツヒコは新たな人生を歩み出したというオチ。ここでは一種救われたのかも知れない。
『新宿スワン』の序盤ストーリーは、新宿の風俗街をしっかり写し出したルポチックなマンガ。作者の和久井健自身が実際にスカウトマンとして働いていたらしく、その描写は結構リアル。「へー」「マジ?」みたいな楽しみ方ができて、それなりにダラダラ読める。
ただNARUTOと同じように、いつの間にかサブキャラ(カカシ)がメインになっちゃう。終盤のNARUTOではそうでもなかったですが、いつの間にか主人公・白鳥タツヒコの空気感がハンパない。それぐらい真虎の物語が鮮明に描かれる。
でも別にそれが悪いということではなく、後半にかけてサスペンスチックな展開も面白い。真虎VS天野の戦いには緊迫感があって、後半の展開の方が面白い。良い意味でスカウトマンのマンガだったことを忘れさせる。絵柄は独特ですが、ストーリーの完成度も高く面白かった。
(38巻)
ちなみに、この記事ではほとんど真虎に関するレビューが占めましたが、主人公・白鳥タツヒコはめちゃめちゃ良い奴。誰にも嫌われないキャラクター。見た目はイカツイものの、性格は優しく純真無垢で、なおかつ芯は熱い。新宿という汚い世界でも、白鳥のように白く輝く。まさに好青年を絵にした、本当に稀有な主人公。果たして、綾野剛はどんな演技を見せてくれるのか?
旧ブログの「すごないマンガがすごい!」で2014年春頃に更新した記事を移行させたレビューになります。2015年5月からは主演・綾野剛(主人公・白鳥タツヒコ役)で実写映画も公開されるそうですが、とりあえず面白いかつまらないか・面白くないか考察してみた。
あらすじ物語・ストーリー内容
主人公は、白鳥タツヒコ19歳。成り上がるために上京するも一文無し。歌舞伎町でブラブラと歩いていたら、そこで真虎というスカウトマンに出会う。その真虎にホレた白鳥タツヒコが同じようにスカウトマンを目指して、新宿歌舞伎町にひしめく水商売や風俗の世界で自分の生き方を探すという話。スカウト会社同士の抗争や、そのバックで管理(ケツモチ)してるヤクザの権力争いなど、スカウト(女性をダマす)という行為を通じて、どんどん裏社会の薄汚い部分が表出。新宿・歌舞伎町の「見ちゃいけない」部分がリアルに描かれてる。
ただ後半になるにつれ、徐々にそういう「スカウト」に関する描写…というより主人公の存在感がみるみる減っていく。そして主人公タツヒコをスカウトの世界に引き入れた『真虎』の復讐にテーマが移っていく。
真虎の壮絶な復讐
(38巻)
真虎が復讐しようとしてる相手が、紋舞会の天野修善というヤクザ。日本最大級の暴力団・柚木組のトップになろうと画策。表情からしてまさに極悪。
じゃあ、何故天野を狙ってるのか。主人公のタツヒコが真虎にスカウトマンを誘われたように、真虎もまた辰巳(たつみ)という男に誘われた。
この辰巳を天野が部下を使って殺害。
(33巻)
この時の描写がかなり鬼気迫って、「手に汗を握る」とはまさにこのこと。スカウトマン同士、ヤクザ同士のイザコザも緊張感があったんですが、この時だけは別格。
山城兄妹は真虎が大好き。それでも天野修善の恐怖が勝って、強い葛藤に襲われながらも行動を起こす。真虎は真虎で信頼していた部下に突然さされる。お互いの何とも言えない感情が、この一瞬に全て現れてる。
復讐の鬼と化した真虎は、その後その山城兄弟という男たちの下で働くようになる。そして復讐の機会を虎視眈々と狙う。
(31巻)
ただ次第に、山城兄弟のことを好きになっていく真虎。躊躇してためらうものの、それでも心底尊敬してた辰巳への復讐心が勝る。そして山城兄弟の命を奪う。真虎の揺れ動く心理描写は切ない。
ストーリー構成力の高さ
『新宿スワン』はとにかくキャラクターがたくさん登場する。個人的に、そういうマンガは苦手。何故なら人数に比例して、ストーリーもゴチャゴチャしがち。結局今どこへ向かって、進んでるのか迷うことも多いから。ただ不思議と、このマンガはそこまで戸惑うようなことはない。途中から、「真虎の復讐」がメインの軸になることも大きいんだろうが、複雑な人間関係を巧みに操る作者のストーリー構成力の高さが伺える。もっと言えば、キャラクター作りも上手く、まさに「人間模様が鮮やかに描かれてい」た。
天野など表情の迫力
一方画力は序盤だとかなり微妙。同人誌上がりと表現しても構わないかも。絵柄も90年代チックで、若干古くさい。ただ巻数を重ねることに、それは目に見えて改善・進化していく。絵柄も、この作者しか描けないオリジナルに仕上がっていく。まさに、これぞ「伸び代」。序盤から片鱗は少し見せてたものの、特に表情のドアップが秀逸。前述の天野修善が好例。
(34巻)
堀田というヤクザの表情。既に天野修善の画像を見ても分かると思いますが、とにかく「オッサンの悪い顔」を描かせたら天下一品。
ラストのオチは慌てた印象
ストーリー自体は悪くないと思いますが、ラストの結末は慌てて風呂敷を畳んだ印象。最終的に真虎は天野修善を追い詰めるんですが、最終回では自分の手で下さない。「オマエを殺すのに武器などいらない」と自害させる方向に持っていく。ただ真虎は天野修善の息子・タイガや山城兄弟の命を奪ってきた以上、勧善懲悪的なスカッとしたオチを期待してた。天野はヤクザだから派手に殺されない方が却って惨めで残酷な死に方だったとも言えますが、やや拍子抜けだった。
(38巻)
そして最終話で真虎は天野のもう一人の息子・レオの手によって命を落とす。
真虎が死ぬというオチ自体は構わないですが、ただタイミング的に不自然。何故なら真虎がビルから出てきた直後。レオがビルの外でずっと待ってたとしか思えず、もし真虎が現れるのを外で待っていたとしたら、何故父親である天野を助けに行かなかったのか?という疑問。仮にギリギリ急いで来たのであれば、ピストルではなくナイフの方がリアリティーはあった気がする。あと真虎はその時に頭を撃たれてるのに、タツヒコと一言二言喋ってる。これも不自然に見えました。
ラストの展開にはもっと丁寧な描写さがあっても良かった。最後の最後で気になる部分も目立った。
描き下ろしの新たなオチ
(38巻)
そして最終巻38巻のオチは主人公タツヒコが、まだまだスカウト続けるぜ的なオチ。これも悪くはないものの、現実を振り返ってみると新宿は条例によって規制が強化されてスカウトマンがいなくなった。もっと言えば、東京全体での規制が年々強まってる。
だから結局、真虎が復讐を果たしたことで、新宿の中で一体何が残ったんだろうという素朴な疑問。それを考えると虚しいっちゃ虚しい。ある意味「残らなかった」ことが残ったとも言えるので、これを人によっては『余韻』と言い換えることもできるのかも。
ただ個人的には、真虎のこれまでの経緯を考えると、もう少し何かハッピーエンド的な要素があっても良かった。これじゃあ誰も・何も報われない。最新作の『セキセイインコ』を連載したいがために足早に終わった印象。
ちなみに最終38巻の単行本コミックには、描き下ろしのエピローグが追加されています。タツヒコと昔登場したアゲハと付き合って、ハッピーエンドを(唐突に?)迎える。白鳥タツヒコは新たな人生を歩み出したというオチ。ここでは一種救われたのかも知れない。
総合評価・評判・口コミ
『新宿スワン』の序盤ストーリーは、新宿の風俗街をしっかり写し出したルポチックなマンガ。作者の和久井健自身が実際にスカウトマンとして働いていたらしく、その描写は結構リアル。「へー」「マジ?」みたいな楽しみ方ができて、それなりにダラダラ読める。
ただNARUTOと同じように、いつの間にかサブキャラ(カカシ)がメインになっちゃう。終盤のNARUTOではそうでもなかったですが、いつの間にか主人公・白鳥タツヒコの空気感がハンパない。それぐらい真虎の物語が鮮明に描かれる。
でも別にそれが悪いということではなく、後半にかけてサスペンスチックな展開も面白い。真虎VS天野の戦いには緊迫感があって、後半の展開の方が面白い。良い意味でスカウトマンのマンガだったことを忘れさせる。絵柄は独特ですが、ストーリーの完成度も高く面白かった。
(38巻)
ちなみに、この記事ではほとんど真虎に関するレビューが占めましたが、主人公・白鳥タツヒコはめちゃめちゃ良い奴。誰にも嫌われないキャラクター。見た目はイカツイものの、性格は優しく純真無垢で、なおかつ芯は熱い。新宿という汚い世界でも、白鳥のように白く輝く。まさに好青年を絵にした、本当に稀有な主人公。果たして、綾野剛はどんな演技を見せてくれるのか?
男たち (漫画) 感想 全2巻| 下町人情あふれる個性的なキャラクターたち
『男たち』全2巻のネタバレ感想。作者はちばてつや。モーニング(講談社)で連載されてた漫画。2014年にちばてつやが文化功労者に選ばれたことを記念して、旧ブログでレビューした記事。
(1巻)
例えば毎晩毎晩、仲間たちと麻雀に明け暮れてる。その中でもダルマはリーダー的な存在で、気に喰わないことがあるとすぐ暴力。新一の母親が送ってくれてた荷物を勝手に自分のモノとして使ってたり、上京したばかりの新一から万札を抜いたり、むちゃくちゃ。
その仲間もノミ屋をやってたり胡散臭い連中ばっか。性格や態度もガサツで、ダルマに負けないぐらいチャランポラン。新一曰く、「とても人間がすむ場所じゃありませんよ」。
だから日常的に金銭的にモメることも当たり前。その中でも倉橋というノミ屋が莫大な借金を背負う。
(1巻)
そこでタケちゃんという取り立て屋とのクダリもハチャメチャすぎる。
最終的に倉橋は、いわゆるタコ部屋労働送り。ただそこは極寒の地で、いかにも悪徳業者が運営してる。壮絶なイジメも受けた結果、倉橋は肉体的精神的に疲弊しまくる。
(2巻)
でも、チャランポランで粗暴な叔父ダルマが助けに行く。男気も見せれてくれて熱い。
個性的な男たち
叔父ダルマ然り、それぞれのキャラクターが個性的。特に主人公は新一はいかにも清廉潔白な性格で、その描写の対比が結構面白い。
新一はエリートサラリーマンだからといって、結構ナヨナヨしてるかと思いきや、自己主張はしっかりする。最初麻雀に熱中して、一向に新一の部屋に案内してくれないダルマ。
(1巻)
それに痺れを切らして、激昂する新一。思わず胡散臭いダルマの仲間たちも、一瞬止まる。
ダルマの仲間たちはテキトー。だから共同トイレでタバコを吸っては、そこら辺に捨てる。でも新一は我慢ならない。
(1巻)
だから空き缶を用意して、母親のように「吸い殻はちゃんと捨てましょう」と注意。それにタジタジするダルマの仲間たち。このギャップ感が面白い。
他にも、オカマのツネというキャラがいる(一応男w)。新一に対して恋心を抱いてるんですが、決して叶わないそれが切ない。最終的に新一はロンドン支店へ異動を命じられる。新一を見送るクダリでダルマの仲間たちといい感じに別れて、新一はやっとまともな人生を歩める雰囲気。
ただオカマのツネだけは新一が乗ってる飛行機にコッソリ乗りこんでる。まさに時限爆弾。また新一に悲惨な生活が待ってるっていう終わり方が、良い感じに後を引く。
ちなみにラストの新一が乗った飛行機が飛び立つコマで、飛行機の煙が文字っぽい。これが何を意味してるか、微妙にモヤモヤして仕方がない。
◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯大人買い★4
◯82点!!!!
あらすじ
主人公は、新一というエリートサラリーマン。会社から転勤を命じられて、田舎から上京せざるを得なくなった。そこで頼ったのが東京に住む叔父・一色留次(いっしきとめじ)。彫金師で生計を立ててる、通称ダルマ。ただ性格は極めて粗暴で、とことんテキトー。(1巻)
例えば毎晩毎晩、仲間たちと麻雀に明け暮れてる。その中でもダルマはリーダー的な存在で、気に喰わないことがあるとすぐ暴力。新一の母親が送ってくれてた荷物を勝手に自分のモノとして使ってたり、上京したばかりの新一から万札を抜いたり、むちゃくちゃ。
その仲間もノミ屋をやってたり胡散臭い連中ばっか。性格や態度もガサツで、ダルマに負けないぐらいチャランポラン。新一曰く、「とても人間がすむ場所じゃありませんよ」。
だから日常的に金銭的にモメることも当たり前。その中でも倉橋というノミ屋が莫大な借金を背負う。
(1巻)
そこでタケちゃんという取り立て屋とのクダリもハチャメチャすぎる。
最終的に倉橋は、いわゆるタコ部屋労働送り。ただそこは極寒の地で、いかにも悪徳業者が運営してる。壮絶なイジメも受けた結果、倉橋は肉体的精神的に疲弊しまくる。
(2巻)
でも、チャランポランで粗暴な叔父ダルマが助けに行く。男気も見せれてくれて熱い。
個性的な男たち
叔父ダルマ然り、それぞれのキャラクターが個性的。特に主人公は新一はいかにも清廉潔白な性格で、その描写の対比が結構面白い。新一はエリートサラリーマンだからといって、結構ナヨナヨしてるかと思いきや、自己主張はしっかりする。最初麻雀に熱中して、一向に新一の部屋に案内してくれないダルマ。
(1巻)
それに痺れを切らして、激昂する新一。思わず胡散臭いダルマの仲間たちも、一瞬止まる。
ダルマの仲間たちはテキトー。だから共同トイレでタバコを吸っては、そこら辺に捨てる。でも新一は我慢ならない。
(1巻)
だから空き缶を用意して、母親のように「吸い殻はちゃんと捨てましょう」と注意。それにタジタジするダルマの仲間たち。このギャップ感が面白い。
他にも、オカマのツネというキャラがいる(一応男w)。新一に対して恋心を抱いてるんですが、決して叶わないそれが切ない。最終的に新一はロンドン支店へ異動を命じられる。新一を見送るクダリでダルマの仲間たちといい感じに別れて、新一はやっとまともな人生を歩める雰囲気。
ただオカマのツネだけは新一が乗ってる飛行機にコッソリ乗りこんでる。まさに時限爆弾。また新一に悲惨な生活が待ってるっていう終わり方が、良い感じに後を引く。
総合評価
作者ちばてつやが「人間くさい男たちを描いちゃった漫画」と述べてるように、まさに「THE下町の男たち」という無骨でチャランポランなキャラクターが登場。だからこそ一人一人のキャラに味があって、最近の漫画には「ないモノ」が詰まってる。80年代に連載してた漫画らしく、その雰囲気もまた味があって良いかも。ちなみにラストの新一が乗った飛行機が飛び立つコマで、飛行機の煙が文字っぽい。これが何を意味してるか、微妙にモヤモヤして仕方がない。
◯展開★3.5◯テンポ★4
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯大人買い★4
◯82点!!!!
キートン動物記 感想| マスターキートンのスピンオフはアニマルだらけ?
『キートン動物記』のネタバレ感想。作者は浦沢直樹。ビッグコミックオリジナル(小学館)で短期集中連載されてた漫画。最近リマスター版が発売された『マスターキートン』のスピンオフ漫画。いわゆるシートン動物記をパロったタイトル。
ただキートン動物記では、父親の平賀大平が動物学者ってことか知りませんが、基本的に動物ネタオンリー。
(11P)
様々な動物をモチーフにした、キートンの知り合いたちの悩みを解決するという、結構ゆるい展開。
またオムニバス形式のマンガとはいえ、一話が4ページ前後と短いので読みやすい。オールカラーだからページ数を増やせない事情もあったんでしょうが、
(80P)
その割に起承転結がしっかりしてて面白い。オチも思わずクスっと来るような、また唸ってしまうような読後感の良さがある。
(27P)
そしてマンガの後は、動物の解説。勉強になる情報も多い。ただ作者の浦沢直樹がべらべら解説してるという設定ではなく、キートンがサブキャラと会話してるという体だからファンにはたまらない。
昨年に発売されたリマスター版のマスターキートンが結構人気だったので、なんとなくレビューしてみた。さすがに20年以上のマンガだから絶版でしょうが、もし中古店で見かけたら読んでみてください。
◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★3.5◯画力★3
◯大人買い★4
◯85点!!!!
動物ネタを絡めた図鑑的オムニバス
キートン動物記の主人公は、マスターキートンと同じく平賀=キートン・太一。考古学者でありつつ、傭兵経験があったりする武闘派。本編では保険組合の調査員をしつつ、ドンパチもありつつの波乱の多い事件に巻き込まれていく。ただキートン動物記では、父親の平賀大平が動物学者ってことか知りませんが、基本的に動物ネタオンリー。
(11P)
様々な動物をモチーフにした、キートンの知り合いたちの悩みを解決するという、結構ゆるい展開。
またオムニバス形式のマンガとはいえ、一話が4ページ前後と短いので読みやすい。オールカラーだからページ数を増やせない事情もあったんでしょうが、
(80P)
その割に起承転結がしっかりしてて面白い。オチも思わずクスっと来るような、また唸ってしまうような読後感の良さがある。
(27P)
そしてマンガの後は、動物の解説。勉強になる情報も多い。ただ作者の浦沢直樹がべらべら解説してるという設定ではなく、キートンがサブキャラと会話してるという体だからファンにはたまらない。
総合評価
ページ量は決して多くない。ちゃんとそれぞれの動物たちの生態や特徴を捉えてて、それが上手いことマンガに絡んでて読み応えはたっぷり。マスターキートンを読んだことがなくても、それなりに楽しめるスピンオフマンガとして評価したい。敢えてフルカラーにする必要があったのかは知りませんが。昨年に発売されたリマスター版のマスターキートンが結構人気だったので、なんとなくレビューしてみた。さすがに20年以上のマンガだから絶版でしょうが、もし中古店で見かけたら読んでみてください。
◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★3.5◯画力★3
◯大人買い★4
◯85点!!!!
終末のラフター ネタバレ感想| 恐怖に立ち向かわなければ何も変わらない
『終末のラフター』のネタバレ感想。作者は田辺イエロウ。少年サンデー(小学館)で短期集中連載されてたのをコミックス化。
内容は悪魔退治をする男の話。主人公の名前はないのか作中では出てこず。妹のハルと各地を転々としながら悪魔を倒して、お金を稼いでるみたいなストーリー。
でも、実はこの男自体が悪魔(厳密には不死者)。
画像は街を襲ってくる悪魔。
主人公の冒頭画像も見てもらえれば分かりますが、模様などの書き込みも秀逸と表現していい。作者の田辺イエロウの頑張ってる感は強くする。
悪魔祓いがテーマなのでバトル展開もつい期待しがちですが、残念ながらそれは少ない。もはや「無い」と断言しちゃってもいいぐらい。一応ゴトーというラスボスがいるものの、知らん間にフワッと終わってるのはモッタイナイ。
主人公は町長や町人から依頼を受けてゴドーを倒すものの、主人公が悪魔ということで契約を反故。主人公に解決金を支払うのを拒否する。そして言うに事欠いて、「いつまでも恐怖で縛れると思うな!」と主人公を批判。
でもそこで主人公は諭すように言う。
「恐怖はあんたの持ち物・飼い犬だ」
恐怖という感情は自分の中で勝手に育つもの。それは正常な思考を奪う。自分から動かないうちにはそれが消えることはないみたいなこと。
実はゴトーは理性的な悪魔だった。厳密に言うと、不死者。その不死者は完全な悪魔として堕ちるまでは、実は一応人間としての理性を保ってる。街に棲み着いたのも自分の故郷だったから。人質の少女たちに対してもしっかりお墓も作ってた。むしろゴトーが暴れるように仕向けるように追い詰めたのは、恐怖に怯えた住民たち自身だった。
テーマ性自体は悪くないと思います。
でもだから何?っていう。「悪魔を倒さないと生きられない」という描写が弱い。二人が敢えて戦う必要性が乏しい。あと主人公である兄がどういう過程で悪魔になったのかも不明。
不死者を迫害する住民を批判したいのか、不死者としての主人公の過去を掘り下げたいのか、また妹との未来を描きたいのか中途半端。濃密な内容に見えて、実は微妙。
◯展開★3◯テンポ★2
◯キャラ★2◯画力★4.5
◆72点!!!!
あらすじ
内容は悪魔退治をする男の話。主人公の名前はないのか作中では出てこず。妹のハルと各地を転々としながら悪魔を倒して、お金を稼いでるみたいなストーリー。
でも、実はこの男自体が悪魔(厳密には不死者)。
高い画力で魅せる
画像は街を襲ってくる悪魔。
主人公の冒頭画像も見てもらえれば分かりますが、模様などの書き込みも秀逸と表現していい。作者の田辺イエロウの頑張ってる感は強くする。
悪魔祓いがテーマなのでバトル展開もつい期待しがちですが、残念ながらそれは少ない。もはや「無い」と断言しちゃってもいいぐらい。一応ゴトーというラスボスがいるものの、知らん間にフワッと終わってるのはモッタイナイ。
本質的なテーマ
ストーリーの本質的なテーマは、ラストのオチにある。主人公は町長や町人から依頼を受けてゴドーを倒すものの、主人公が悪魔ということで契約を反故。主人公に解決金を支払うのを拒否する。そして言うに事欠いて、「いつまでも恐怖で縛れると思うな!」と主人公を批判。
でもそこで主人公は諭すように言う。
「恐怖はあんたの持ち物・飼い犬だ」
恐怖という感情は自分の中で勝手に育つもの。それは正常な思考を奪う。自分から動かないうちにはそれが消えることはないみたいなこと。
実はゴトーは理性的な悪魔だった。厳密に言うと、不死者。その不死者は完全な悪魔として堕ちるまでは、実は一応人間としての理性を保ってる。街に棲み着いたのも自分の故郷だったから。人質の少女たちに対してもしっかりお墓も作ってた。むしろゴトーが暴れるように仕向けるように追い詰めたのは、恐怖に怯えた住民たち自身だった。
テーマ性自体は悪くないと思います。
総合評価
でも主人公が何故妹と一緒に戦ってるのか不明。過去編も書いてくれてるんですが、いまいちピンと来ない。子供時代に妹と一緒に悪魔に襲われました。そこで二人とも悪魔になりました。でもだから何?っていう。「悪魔を倒さないと生きられない」という描写が弱い。二人が敢えて戦う必要性が乏しい。あと主人公である兄がどういう過程で悪魔になったのかも不明。
不死者を迫害する住民を批判したいのか、不死者としての主人公の過去を掘り下げたいのか、また妹との未来を描きたいのか中途半端。濃密な内容に見えて、実は微妙。
◯展開★3◯テンポ★2
◯キャラ★2◯画力★4.5
◆72点!!!!
翠星のガルガンティア 全3巻 感想| 人類が進化した先に行き着いたものとは?
『翠星のガルガンティア』全3巻のネタバレ感想。原作はオケアノス、作画は三途川ワタル。キャラクター原案は鳴子ハナハル。ニュータイプエース(角川書店)、ニコニコ静画(角川ニコニコエース)で連載されてたSFマンガ。既にアニメ化もされた模様。
(3巻)
SF漫画だからロボットなどが登場してアクション描写も展開されますが、比重的にはストーリー部分が高め。ボリュームは3巻と少なめですが、起承転結が比較的しっかりしてた印象。だからどちらかというと、物語性を重視して読むマンガ。
しかしヒディアーズとの戦闘で苦境を強いられ、ワームホールの崩壊でアヴァロンより遥か彼方に飛ばされる主人公・レド。ただその行き着い先は、かつて人類が捨てた故郷・地球だった。
(1巻)
そこでチェインバーと呼ばれる高度な知能を持つロボットと共に、船団ガルガンディアに住む地球人たちと共生しつつレドは故郷アヴァロンへの帰還を模索する…というストーリー。
作品としてきれいにまとまってる
冒頭でも書きましたが、比較的しっかり作品としてまとまってた印象。3巻分というボリュームでありながら、一つのストーリーとしてちゃんと完結してたと思う。
(2巻)
アヴァロンの進んだ文明で暮らしていたレドと、行進的な文明である船団ガルガンディアに住む地球人たちとの間には考え方などに深い溝がある。それは単に高性能な道具の有無だけではなく、『心』の有無を対照的に描写。
文明が進めば進むほど、人間からは温かい心情が失われていった。レドが住んでいたアヴァロンでは戦闘に使えない病人はすぐ殺される。敵であるヒディアーズ撲滅のための『効率』だけが徹底されてた場所。さもありなん。
(2巻)
ただお互いが交流を深めることで、そのギャップ感が徐々になくなり打ち解けていく。レドは次第に人間としての感情を取り戻し、彼らに情が移っていく。
そしてレドは憎き敵「ヒディアーズ」の正体を知ってしまい愕然とする。実はヒディアーズは元々人間だった。遠い昔、寒冷化した地球では過酷な環境に耐えるため、人体実験を繰り返した。その結果生まれたのが強靭な肉体をまとったイカ人間・ヒディアーズ。
だからレドは因縁の敵だと思ってたが、実はずっと人間同士で殺しあっていた。その事実を地球で知ってしまい、強い葛藤を覚える。そこへ同時期にはぐれた中佐クーゲルが地球に現れる。そして船団ガルガンディアをアヴァロンのような場所にすべきと持ち掛けてくる。
(3巻)
でもすっかりヒディアーズと戦うための『大義』を見失い、心も取り戻したレドはクーゲルに抵抗。地球人たちと共に戦い、撃破。ラストはレドの相方だったチェインバーが自爆するんですが、最期に見せたコイツの『粋』がシビれる。
そしてレドは地球人として生きて、子供たちはクジライカ(ヒディアーズ)と現在残ってる人類が歩んできた歴史を学ぶ。「これからどう生きていくのか・いけばいいのか」みたいなポジティブなオチは、読後感は決して悪くない。
そういうテーマ性を強く前面に出したい場合、どうしても作者・制作者側の一方的な自己主張に終わりがち。漫画に限らず。それは自己満的なお説教にも聞こえて、読者側が素直にそれを受け取れないことも多い。
でも、比較的嫌味なく表現できてる感じがして良かったと思う。巻数の少なさが功を奏したのか、却ってウダウダと主張することなくスッキリコンパクトにまとめられたのかも。作品としてしっかり完成させたことは評価したい。
ただ大して気にするほどでもないですが、偶然ワームホールだかワープホールだかが崩壊して、主人公が地球に辿り着いた設定はいささか強引。数万数億とある惑星の中、かつての上官も同じく地球に…とはややご都合主義的な展開という気はした。
◯展開★4◯テンポ★3.5
◯キャラ★3.5◯画力★4
◯全巻大人買い★4.5
◯85点!!!!
(3巻)
SF漫画だからロボットなどが登場してアクション描写も展開されますが、比重的にはストーリー部分が高め。ボリュームは3巻と少なめですが、起承転結が比較的しっかりしてた印象。だからどちらかというと、物語性を重視して読むマンガ。
あらすじ
主人公は少年兵・レド。人類は寒冷化した地球を飛び出し、アヴァロンという理想郷に移り住んでいた。そして、知能に乏しく凶暴なだけの「ヒディアーズ」と呼ばれるイカ・タコのような敵と長年戦闘を繰り広げる。しかしヒディアーズとの戦闘で苦境を強いられ、ワームホールの崩壊でアヴァロンより遥か彼方に飛ばされる主人公・レド。ただその行き着い先は、かつて人類が捨てた故郷・地球だった。
(1巻)
そこでチェインバーと呼ばれる高度な知能を持つロボットと共に、船団ガルガンディアに住む地球人たちと共生しつつレドは故郷アヴァロンへの帰還を模索する…というストーリー。
作品としてきれいにまとまってる
冒頭でも書きましたが、比較的しっかり作品としてまとまってた印象。3巻分というボリュームでありながら、一つのストーリーとしてちゃんと完結してたと思う。(2巻)
アヴァロンの進んだ文明で暮らしていたレドと、行進的な文明である船団ガルガンディアに住む地球人たちとの間には考え方などに深い溝がある。それは単に高性能な道具の有無だけではなく、『心』の有無を対照的に描写。
文明が進めば進むほど、人間からは温かい心情が失われていった。レドが住んでいたアヴァロンでは戦闘に使えない病人はすぐ殺される。敵であるヒディアーズ撲滅のための『効率』だけが徹底されてた場所。さもありなん。
(2巻)
ただお互いが交流を深めることで、そのギャップ感が徐々になくなり打ち解けていく。レドは次第に人間としての感情を取り戻し、彼らに情が移っていく。
そしてレドは憎き敵「ヒディアーズ」の正体を知ってしまい愕然とする。実はヒディアーズは元々人間だった。遠い昔、寒冷化した地球では過酷な環境に耐えるため、人体実験を繰り返した。その結果生まれたのが強靭な肉体をまとったイカ人間・ヒディアーズ。
だからレドは因縁の敵だと思ってたが、実はずっと人間同士で殺しあっていた。その事実を地球で知ってしまい、強い葛藤を覚える。そこへ同時期にはぐれた中佐クーゲルが地球に現れる。そして船団ガルガンディアをアヴァロンのような場所にすべきと持ち掛けてくる。
(3巻)
でもすっかりヒディアーズと戦うための『大義』を見失い、心も取り戻したレドはクーゲルに抵抗。地球人たちと共に戦い、撃破。ラストはレドの相方だったチェインバーが自爆するんですが、最期に見せたコイツの『粋』がシビれる。
そしてレドは地球人として生きて、子供たちはクジライカ(ヒディアーズ)と現在残ってる人類が歩んできた歴史を学ぶ。「これからどう生きていくのか・いけばいいのか」みたいなポジティブなオチは、読後感は決して悪くない。
総合評価
ありきたりっちゃありきたりな設定ですが、示唆に富んだテーマが根幹にあった作品。大げさに言えば「進化一辺倒に対する人類」に対する警鐘。そういうテーマ性を強く前面に出したい場合、どうしても作者・制作者側の一方的な自己主張に終わりがち。漫画に限らず。それは自己満的なお説教にも聞こえて、読者側が素直にそれを受け取れないことも多い。
でも、比較的嫌味なく表現できてる感じがして良かったと思う。巻数の少なさが功を奏したのか、却ってウダウダと主張することなくスッキリコンパクトにまとめられたのかも。作品としてしっかり完成させたことは評価したい。
ただ大して気にするほどでもないですが、偶然ワームホールだかワープホールだかが崩壊して、主人公が地球に辿り着いた設定はいささか強引。数万数億とある惑星の中、かつての上官も同じく地球に…とはややご都合主義的な展開という気はした。
◯展開★4◯テンポ★3.5
◯キャラ★3.5◯画力★4
◯全巻大人買い★4.5
◯85点!!!!
監視官 常守朱 全6巻 感想| 人間の凶悪性は数値化できるか否か?
『監視官 常守朱』全6巻のネタバレ感想。作者は三好輝。ジャンプスクエア(集英社)で連載されてたSF漫画。フジテレビでは「サイコパス-PYSCHO PASS-」というタイトルでアニメ化。
主人公はその監視官に任命された、新人の常守朱(つねもり・あかね)。ただこの監視官の常守朱が潜在犯を取り締まるというよりも、その部下に当たる「執行官」が実働的に取り締まりに動く。
(3巻)
ドミネーターと呼ばれる銃を対象者に向けると、すぐサイコパスの度合いが数値として現れる。この数値が100を超えた時に初めてロックが解除されて撃つことが可能となる。
(2巻)
このドミネーターの威力がハンパない。お前は北斗の拳のケンシロウか。だから執行官は裁判などの過程を踏まずに、一撃必殺で問答無用。
でも少し気になるのが、果たしてこんなことやってる執行官の犯罪係数が高くないのか?という疑問。実は執行官の犯罪係数もしっかり100を超えてる。
(2巻)
『監視官 常守朱』の物語としては、その執行官の一人である狡噛慎也との関わりを通して、シビュラシステムという行き過ぎた治安対策や監視社会に対して疑問に投げかけるようなマンガ。
(4巻)
ただ槙島聖護と呼ばれる犯罪係数がめちゃめちゃ低いのに、次々と凶行に走る悪人が登場。シビュラシステムの限界を露呈。
(4巻)
槙島聖護は更にPYSCHO-PASSの読み取りを防ぐヘルメットも開発。それをあちこちにバラまいて、執行官によるドミネーターの銃撃を回避。そして街は壊滅上に陥る。果たして、未然に犯罪を防ぐという究極の防犯対策が正しいのか?という疑問が生まれ、将来起きる可能性を図るという仕組みの限界が露呈。
(6巻)
シビュラシステムの判別方法が、実は知能犯の脳を使って判別されたことが分かる。しかもシビュラシステム自体が槙島聖護の脳を取り込もうと画策していたり、まさに社会の闇。
そこで主人公である常守朱というキャラクターが最大限生きてくる。常守朱はシビュラシステムが望む、まさに理想的な人物。でもだからこそシビュラシステムに否定的であり、将来的な可能性というだけで殺すというやり方に疑問を持つ。
だから『監視官 常守朱』というストーリーの序盤から、彼女の行動目的に首尾一貫性があって、その清廉潔白さみたいなモノに対して惹かれる。例えば「法が人を守るんではなく、人が法を守るんです」というセリフなど感情移入や共感をしやすい。
ただ個人的には、『監視官 常守朱』の、PYSCHO-PASSの、その中二病的な世界観が微妙。あくまで「将来的な可能性」の話をしてるだけだから、基本的にどういう人間であれ悪事を働かない以前でしょっぴくのってどうなん?結局お前ら公安局が犯罪を煽ってるだけやんけっという側面も強くて、ちょっと共感という点では難しい部分もある。
ストーリーも結局シビュラシステム自体も存続したまま終わるので、個人的には『監視官 常守朱』の読後感としてはあまりスッキリせず、やや腑に落ちない部分が残ったのも事実かな。最終的にVSシビュラシステムという構図が生まれるんならまだしも、結局それに頼った怠惰な社会は変わらんのかい…という。
でも細かい部分さえ気にならなかったら、6巻分というボリュームを考えると、『監視官 常守朱』を全巻大人買いしても損はしないマンガだと思う。1巻2巻では正直どうかと思ってましたが、比較的良い感じに終わった印象。
◯展開…★4◯テンポ…★4
◯キャラ…★4◯画力…★3.5
◯大人買い…★4
◯おすすめ度…85点!!!!
あらすじ
社会が人間の凶悪性を示すサイコパス(PSYCHO-PASS)を測れるようになった時代。治安組織は、シビュラシステムと呼ばれるそのシステムをフルに活用。将来的に罪を犯す可能性(犯罪係数)が高い「潜在犯」の撲滅をあたる組織があった。それが厚生省公安局刑事課の監視官。主人公はその監視官に任命された、新人の常守朱(つねもり・あかね)。ただこの監視官の常守朱が潜在犯を取り締まるというよりも、その部下に当たる「執行官」が実働的に取り締まりに動く。
(3巻)
ドミネーターと呼ばれる銃を対象者に向けると、すぐサイコパスの度合いが数値として現れる。この数値が100を超えた時に初めてロックが解除されて撃つことが可能となる。
(2巻)
このドミネーターの威力がハンパない。お前は北斗の拳のケンシロウか。だから執行官は裁判などの過程を踏まずに、一撃必殺で問答無用。
でも少し気になるのが、果たしてこんなことやってる執行官の犯罪係数が高くないのか?という疑問。実は執行官の犯罪係数もしっかり100を超えてる。
(2巻)
『監視官 常守朱』の物語としては、その執行官の一人である狡噛慎也との関わりを通して、シビュラシステムという行き過ぎた治安対策や監視社会に対して疑問に投げかけるようなマンガ。
ストーリーはしっかり展開
あくまでシビュラシステムは「将来的な可能性」で判断して、常守朱などの監視官や執行官たちは潜在犯を発見してとっちめてる。(4巻)
ただ槙島聖護と呼ばれる犯罪係数がめちゃめちゃ低いのに、次々と凶行に走る悪人が登場。シビュラシステムの限界を露呈。
(4巻)
槙島聖護は更にPYSCHO-PASSの読み取りを防ぐヘルメットも開発。それをあちこちにバラまいて、執行官によるドミネーターの銃撃を回避。そして街は壊滅上に陥る。果たして、未然に犯罪を防ぐという究極の防犯対策が正しいのか?という疑問が生まれ、将来起きる可能性を図るという仕組みの限界が露呈。
(6巻)
シビュラシステムの判別方法が、実は知能犯の脳を使って判別されたことが分かる。しかもシビュラシステム自体が槙島聖護の脳を取り込もうと画策していたり、まさに社会の闇。
そこで主人公である常守朱というキャラクターが最大限生きてくる。常守朱はシビュラシステムが望む、まさに理想的な人物。でもだからこそシビュラシステムに否定的であり、将来的な可能性というだけで殺すというやり方に疑問を持つ。
だから『監視官 常守朱』というストーリーの序盤から、彼女の行動目的に首尾一貫性があって、その清廉潔白さみたいなモノに対して惹かれる。例えば「法が人を守るんではなく、人が法を守るんです」というセリフなど感情移入や共感をしやすい。
総合評価
『監視官 常守朱』というマンガはテーマ性もあって、オチもしっかりまとまってる。ちゃんとストーリーが組み立てられていてた印象。中二病的な設定や世界観も一部読者に対して訴求力が高いのか、それなりに『監視官 常守朱』というマンガが売れてるのも頷ける。ただ個人的には、『監視官 常守朱』の、PYSCHO-PASSの、その中二病的な世界観が微妙。あくまで「将来的な可能性」の話をしてるだけだから、基本的にどういう人間であれ悪事を働かない以前でしょっぴくのってどうなん?結局お前ら公安局が犯罪を煽ってるだけやんけっという側面も強くて、ちょっと共感という点では難しい部分もある。
ストーリーも結局シビュラシステム自体も存続したまま終わるので、個人的には『監視官 常守朱』の読後感としてはあまりスッキリせず、やや腑に落ちない部分が残ったのも事実かな。最終的にVSシビュラシステムという構図が生まれるんならまだしも、結局それに頼った怠惰な社会は変わらんのかい…という。
でも細かい部分さえ気にならなかったら、6巻分というボリュームを考えると、『監視官 常守朱』を全巻大人買いしても損はしないマンガだと思う。1巻2巻では正直どうかと思ってましたが、比較的良い感じに終わった印象。
◯展開…★4◯テンポ…★4
◯キャラ…★4◯画力…★3.5
◯大人買い…★4
◯おすすめ度…85点!!!!
ヤング!ヤング!Fruits 感想| 地獄のミサワの究極至極の一発ネタ!
『ヤング!ヤング!Fruits』のネタバレ感想。作者は地獄のミサワ。現在も地獄のミサワはブログで一枚絵を毎日更新してますが、それを一冊のコミックとしてまとめた漫画。だからまさに一コマ漫画の一発ネタ!ドン!的なギャグ漫画。
(19P)
「つれー!昨日実質一時間しか寝てないからつれーわー!」という、寝てない自慢。中学生や高校生の男子にありがちな自慢。てか実質実質うるせー。
でも、表情を見るとかなり余裕。お前、絶対そこそこ快眠してたやろっていう。
(40P)
「へぇーこの動画2年位前に流行ってたよね」という、オレ流行を先取りしてましたけど?自慢。学生に限らず、ネットしてるとちょっとやりがちな痛い行動。
特に漫画は長期連載が多いので、アニメ化されて途中からブワッと人気が出たりすると、「オレとっくに1巻から目をつけて買ってましたけど?」と言いたがる人も多いんじゃなかろうか。
中学生や高校生がやりがちな、全然痛くないですけ?アピールする痛い行動。
(16P)
ただタンスの角に毒が塗ってあって、右足がかなりヤバイ状態。どういう状況やねん。「へぇー…どぉーりでー」といかにも知ってましたアピールが、この期に及んでウザい。
冒頭に貼った画像の寝てない自慢してるキャラのすなお。コイツが手を変え品を変え、寝てない自慢をアピールしてくる。
(24P)
ただ最終的に何故か「がってんがってん」を連呼。立川志の輔や山瀬まみも、きっとこんな使われ方をしてるとは露にも思ってないでしょう。
他にもチーポーという犬の「そっちじゃないだろ?今日の散歩コースはアイツが待ってる空港だろ?」というセリフが笑った。お前がアイツの何を知ってて、どの立場で言ってんねん。仮にアイツが待ってたとして、間違いなくお前の散歩をしてるどころじゃないやろ…たった一コマだけどツッコミ多すぎ。
他にも米兵をやたら殴りたがってるヤツとかカオスすぎ。
(34P)
例えば「みんなが今悪口を言ってるそのゴリラ女、俺の妹なんだけどね」。どんな状況かを想像しただけで切ない。しかも兄貴だったらもっと怒るとかあるやん。平然とした表情がいつも妹がゴリラ呼ばわりされてるのに慣れてる感が出過ぎ。
ただ途中で飽きが来なくはない。4コマ漫画でも言えますが、毎日毎週チョコチョコ読むからちょうど良いんであって、一気にガバっと読むと正直疲れる部分はある。
◯展開★3◯テンポ★4
◯キャラ★5◯画力★2.5
◯85点!!!!
中二病セリフ
基本的に痛いキャラクターの痛いセリフが収録。いわゆる、中二病。(19P)
「つれー!昨日実質一時間しか寝てないからつれーわー!」という、寝てない自慢。中学生や高校生の男子にありがちな自慢。てか実質実質うるせー。
でも、表情を見るとかなり余裕。お前、絶対そこそこ快眠してたやろっていう。
(40P)
「へぇーこの動画2年位前に流行ってたよね」という、オレ流行を先取りしてましたけど?自慢。学生に限らず、ネットしてるとちょっとやりがちな痛い行動。
特に漫画は長期連載が多いので、アニメ化されて途中からブワッと人気が出たりすると、「オレとっくに1巻から目をつけて買ってましたけど?」と言いたがる人も多いんじゃなかろうか。
もはや意味不明
ただの中二病的なセリフだったらいいんですが、ちょくちょくぶっ飛び過ぎてて意味不明。中学生や高校生がやりがちな、全然痛くないですけ?アピールする痛い行動。
(16P)
ただタンスの角に毒が塗ってあって、右足がかなりヤバイ状態。どういう状況やねん。「へぇー…どぉーりでー」といかにも知ってましたアピールが、この期に及んでウザい。
冒頭に貼った画像の寝てない自慢してるキャラのすなお。コイツが手を変え品を変え、寝てない自慢をアピールしてくる。
(24P)
ただ最終的に何故か「がってんがってん」を連呼。立川志の輔や山瀬まみも、きっとこんな使われ方をしてるとは露にも思ってないでしょう。
他にもチーポーという犬の「そっちじゃないだろ?今日の散歩コースはアイツが待ってる空港だろ?」というセリフが笑った。お前がアイツの何を知ってて、どの立場で言ってんねん。仮にアイツが待ってたとして、間違いなくお前の散歩をしてるどころじゃないやろ…たった一コマだけどツッコミ多すぎ。
他にも米兵をやたら殴りたがってるヤツとかカオスすぎ。
総合評価
中二病、カオス以外だと切なすぎるセリフも。(34P)
例えば「みんなが今悪口を言ってるそのゴリラ女、俺の妹なんだけどね」。どんな状況かを想像しただけで切ない。しかも兄貴だったらもっと怒るとかあるやん。平然とした表情がいつも妹がゴリラ呼ばわりされてるのに慣れてる感が出過ぎ。
ただ途中で飽きが来なくはない。4コマ漫画でも言えますが、毎日毎週チョコチョコ読むからちょうど良いんであって、一気にガバっと読むと正直疲れる部分はある。
◯展開★3◯テンポ★4
◯キャラ★5◯画力★2.5
◯85点!!!!
もやしもん 全13巻 ネタバレ感想| ゆるキャラ細菌たちの本格農業マンガ
『もやしもん』全13巻のネタバレ感想。作者は石川雅之。イブニング(講談社)で連載されてた農業マンガ。何年か前に、フジテレビ系列でアニメ化もされてました。だから結構タイトルぐらいは聞いたことがある人も多そう。
(4巻)
とりあえず可愛らしい細菌たちが登場。しかも口々にしゃべりだす。主人公は、そんな細菌たちが見える・話せるようになった沢木という農大生。
(3巻)
同級生が納豆などを食べると口から菌がブワーッ!悲惨っていうレベルじゃねーぞ。臭いの元はやはり飛び回ってる菌。これより更にすごい描写があって、それが1巻のアザラシの腐乱死体を掘り出した時。この時はちょっとした爆弾テロ。
(7巻)
何故か細菌たちもノリが良くて、急に三国志風の寸劇が始まったりする。
(12巻)
可愛らしいだけじゃなく、時にはリアル三次元っぽい最近も登場。でもここまで来ると、ただのホラー。戦闘力がムダに満ち満ちてる。
こういうデフォルメは菌の毒性によって描き分けられるらしく、O-157なんかは結構ドギツいデザインだったりします。
(3巻)
結構の頻度で色んな農業知識を披露。画像はアジアにおける、納豆の仲間を解説してくれてる。これが良くも悪くも、ヘビーな質と量。
(9巻)
9巻では、日本の地域別の食料自給率を解説。東京と大阪は思った以上にヒドく、北海道に至っては200%近い数字。荒川弘も言ってましたが、北海道に独立されたら日本ピーンチΣ(´∀`;)
最終的には、本格的な日本酒作りを開始。ゆるいっちゃゆるいが、「農業の実態を伝えてやろう!」という意気込みも熱く感じる。だから専門知識もバンバン登場するので、読んでてて頭を結構使うので疲れる。
その割にストーリーの大きな軸も見えず、細切れなショートオムニバスな展開が多い。Amazonのレビューを読むと、「え?これで終わったん?」という意見も散見されますが、読後感としてあまり強く残るものは少なかった。
オチはキレイな終わり方
でも最終13巻は、比較的キレイにまとまってた気がする。
(13巻)
主人公・沢木を取り合って、女装っ子と女子高生がワチャワチャ揉める。良い感じに、今後も楽しそうな学生生活を送るんだろうなーと想像させる。
(13巻)
美里という笑い飯・西田と長谷川が付き合いそうな雰囲気になったり、青春マンガの終わり方としたら上手かった印象。
『もやしもん』の良さを上げるなら、後半にかけての青春チックな展開。10巻あたりで主人公・沢木の兄貴が登場。性格はチャランポランで、勝手に渡米したりしてフラフラした生活を送ってる。でも結構良いセリフを吐く。「お前のいる処(ところ)が、お前の世界の中心なんだ!(だから)お前が回すんだぞ!」とかも良かった。
「菌が見える主人公」というせっかくの設定を、あまり上手く使いこなすのは難しかったんだろうと想像。主人公そのものが登場しなかったりするなど、自分が描きたいと事と描ける事とにギャップもあったのかも。設定自体はそれなりに面白かったからこそ、それに自縄自縛に陥ってた印象。
平たく言えば、普通の農業マンガだと思って買うならアリ。ゆる~いギャグマンガだと思って買うと失敗する。何故、そこまで意味なく売れ続けたかと考えると、限定版が工夫されてて色んなオマケが付いてたからだと予想。
ちなみにキャラクターの評価が★3.5の理由は、女性キャラクターが全員同じに見えたのが残念。女性キャラは比較的多く登場したものの、あまり効果的には活かせてなかったかも。決して画力がない作者だとは思わないですが、キャラを描き分ける力は平凡並。
◯展開★3.5◯テンポ★3
◯キャラ★3.5◯画力★3.5
◯全巻大人買い★3
◯80点!!!!
細菌のデフォルメがかわいい
(4巻)
とりあえず可愛らしい細菌たちが登場。しかも口々にしゃべりだす。主人公は、そんな細菌たちが見える・話せるようになった沢木という農大生。
(3巻)
同級生が納豆などを食べると口から菌がブワーッ!悲惨っていうレベルじゃねーぞ。臭いの元はやはり飛び回ってる菌。これより更にすごい描写があって、それが1巻のアザラシの腐乱死体を掘り出した時。この時はちょっとした爆弾テロ。
(7巻)
何故か細菌たちもノリが良くて、急に三国志風の寸劇が始まったりする。
(12巻)
可愛らしいだけじゃなく、時にはリアル三次元っぽい最近も登場。でもここまで来ると、ただのホラー。戦闘力がムダに満ち満ちてる。
こういうデフォルメは菌の毒性によって描き分けられるらしく、O-157なんかは結構ドギツいデザインだったりします。
農業に関する御託が多い
ただ上の画像だけ見たら可愛らしい細菌たちがいっぱい登場するので、一見ゆる~いコメディータッチな展開が始まるのかと思いきや、「農業」がテーマのガッツリしたマンガだったりする。(3巻)
結構の頻度で色んな農業知識を披露。画像はアジアにおける、納豆の仲間を解説してくれてる。これが良くも悪くも、ヘビーな質と量。
(9巻)
9巻では、日本の地域別の食料自給率を解説。東京と大阪は思った以上にヒドく、北海道に至っては200%近い数字。荒川弘も言ってましたが、北海道に独立されたら日本ピーンチΣ(´∀`;)
最終的には、本格的な日本酒作りを開始。ゆるいっちゃゆるいが、「農業の実態を伝えてやろう!」という意気込みも熱く感じる。だから専門知識もバンバン登場するので、読んでてて頭を結構使うので疲れる。
その割にストーリーの大きな軸も見えず、細切れなショートオムニバスな展開が多い。Amazonのレビューを読むと、「え?これで終わったん?」という意見も散見されますが、読後感としてあまり強く残るものは少なかった。
オチはキレイな終わり方
でも最終13巻は、比較的キレイにまとまってた気がする。(13巻)
主人公・沢木を取り合って、女装っ子と女子高生がワチャワチャ揉める。良い感じに、今後も楽しそうな学生生活を送るんだろうなーと想像させる。
(13巻)
美里という笑い飯・西田と長谷川が付き合いそうな雰囲気になったり、青春マンガの終わり方としたら上手かった印象。
『もやしもん』の良さを上げるなら、後半にかけての青春チックな展開。10巻あたりで主人公・沢木の兄貴が登場。性格はチャランポランで、勝手に渡米したりしてフラフラした生活を送ってる。でも結構良いセリフを吐く。「お前のいる処(ところ)が、お前の世界の中心なんだ!(だから)お前が回すんだぞ!」とかも良かった。
総合評価
オチはマシだったと言いましたが、シンプルにネタ切れだったから最終回を迎えた感じ。途中何度も休載期間があったらしく、9年という年月で13巻というボリュームは明らかに少ない。「菌が見える主人公」というせっかくの設定を、あまり上手く使いこなすのは難しかったんだろうと想像。主人公そのものが登場しなかったりするなど、自分が描きたいと事と描ける事とにギャップもあったのかも。設定自体はそれなりに面白かったからこそ、それに自縄自縛に陥ってた印象。
平たく言えば、普通の農業マンガだと思って買うならアリ。ゆる~いギャグマンガだと思って買うと失敗する。何故、そこまで意味なく売れ続けたかと考えると、限定版が工夫されてて色んなオマケが付いてたからだと予想。
ちなみにキャラクターの評価が★3.5の理由は、女性キャラクターが全員同じに見えたのが残念。女性キャラは比較的多く登場したものの、あまり効果的には活かせてなかったかも。決して画力がない作者だとは思わないですが、キャラを描き分ける力は平凡並。
◯展開★3.5◯テンポ★3
◯キャラ★3.5◯画力★3.5
◯全巻大人買い★3
◯80点!!!!
スクール人魚 全2巻 ネタバレ感想| オンナの恋に対する執念が怖い
『スクール人魚』全2巻のネタバレ感想。作者は吉富昭仁。チャンピオンRED(少年画報社)で連載してたオカルト漫画。
ついセクシーな漫画と期待してしまいがちなタイトルですが、実はホラーチックな内容がメイン。ストーリー性も高く、絵柄は地味ですが読み応えがあった。数話完結のややオムニバスで読みやすく、個人的には意外にも良作。
(1巻)
学校のプールで呪文みたいなんを唱えると大量に現れる。ちなみにそのスクール水着にはアルファベットが貼ってある。その中から自分の好きな男子の頭文字と同じ人魚を探しださなければいけない。
(2巻)
人魚を呼び出した人間にしか見えず、学校の建物の中を自由に出たり入ったりして、すばしっこい。
そして、「人魚の肉を食べる」という設定の時点で、ややシビアな展開が待ってることが分かるはず。恋愛が簡単に成就するわけもなく、夜明けまでに食べないと逆に自分が人魚にされてしまう。この女の子たちは、実は昔人魚を呼び出したが失敗した女の子たち。
その設定を上手くストーリーのオチにも組み込んでて、サスペンスだけではなく笑いや悲壮感ある展開も作れてる。だから結構イロモノ系の漫画かと思いきや、ストーリーがしっかりしてて小説を読み終えたような充足感を得られる。
ただ春子がめっちゃ悪い女の子。何故芳子を一緒に連れて行ったか、その理由が思わず「オンナこえー」となる。芳子の苗字が谷口で「T」だった。春子が好きな男の子の苗字の頭文字も「T」。つまり、その好きな男の子と付き合うため、「T」の人魚を捕まえやすいようにドン臭い芳子を貶めた。
芳子が人魚になった瞬間の表情がコレ。
女の子は大体一人でおトイレも行けないですから、スクール人魚を呼び出すときも複数が多い。それが色んなストーリーを生んで、その一つ一つのレベルが高い。
例えば意中の男子が同じになることも多く、ライバルを蹴落とすために殺そうとする。じゃあ殺されそうになった側がどうしたか。その殺そうとした女の子に対して、自分を好きにさせる。まさかの百合展開。
(1巻)
オンナ担任が出てきたり、女性の泥々した部分が怖すぎる。だが、読ませる!
(2巻)
このスクール水着人形たちは可愛らしいんですが、突如変貌して襲ってくる。正直これは要らんかな。
設定は奇抜だったがシンプルで良かった。ただそこへ更に新しい要素を持ち込んだら、却ってゴチャゴチャ混乱するだけ。唐突感もあって、何か良い作用をもたらしたかどうかは疑問。
「人魚は一見怖そうだが実は怖くなく、一番怖いのはそれを利用する人間側だった」というオチが良かったのに、人魚をリアルで怖い存在に仕上げたら全部それが台無しになった感はある。そこは敢えて可愛らしい存在のまま終わらせるべきだった…とは言え、それでもストーリー性の高さは秀逸な部類だと思う。
◯展開★5◯テンポ★4
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★5
◆85点!!!!
ついセクシーな漫画と期待してしまいがちなタイトルですが、実はホラーチックな内容がメイン。ストーリー性も高く、絵柄は地味ですが読み応えがあった。数話完結のややオムニバスで読みやすく、個人的には意外にも良作。
あらすじ
スクール水着を着た人魚の肉を食べると『恋愛が成就する』というウワサ話が女子生徒の間で信じられていた。(1巻)
学校のプールで呪文みたいなんを唱えると大量に現れる。ちなみにそのスクール水着にはアルファベットが貼ってある。その中から自分の好きな男子の頭文字と同じ人魚を探しださなければいけない。
(2巻)
人魚を呼び出した人間にしか見えず、学校の建物の中を自由に出たり入ったりして、すばしっこい。
そして、「人魚の肉を食べる」という設定の時点で、ややシビアな展開が待ってることが分かるはず。恋愛が簡単に成就するわけもなく、夜明けまでに食べないと逆に自分が人魚にされてしまう。この女の子たちは、実は昔人魚を呼び出したが失敗した女の子たち。
その設定を上手くストーリーのオチにも組み込んでて、サスペンスだけではなく笑いや悲壮感ある展開も作れてる。だから結構イロモノ系の漫画かと思いきや、ストーリーがしっかりしてて小説を読み終えたような充足感を得られる。
高いストーリー性
1話目から続く「芳子と春子の場合」。この二人が人魚を呼び出すんですが、芳子はドン臭い女の子で結果人魚になる。ただ春子がめっちゃ悪い女の子。何故芳子を一緒に連れて行ったか、その理由が思わず「オンナこえー」となる。芳子の苗字が谷口で「T」だった。春子が好きな男の子の苗字の頭文字も「T」。つまり、その好きな男の子と付き合うため、「T」の人魚を捕まえやすいようにドン臭い芳子を貶めた。
芳子が人魚になった瞬間の表情がコレ。
女の子は大体一人でおトイレも行けないですから、スクール人魚を呼び出すときも複数が多い。それが色んなストーリーを生んで、その一つ一つのレベルが高い。
例えば意中の男子が同じになることも多く、ライバルを蹴落とすために殺そうとする。じゃあ殺されそうになった側がどうしたか。その殺そうとした女の子に対して、自分を好きにさせる。まさかの百合展開。
(1巻)
オンナ担任が出てきたり、女性の泥々した部分が怖すぎる。だが、読ませる!
総合評価
(2巻)
このスクール水着人形たちは可愛らしいんですが、突如変貌して襲ってくる。正直これは要らんかな。
設定は奇抜だったがシンプルで良かった。ただそこへ更に新しい要素を持ち込んだら、却ってゴチャゴチャ混乱するだけ。唐突感もあって、何か良い作用をもたらしたかどうかは疑問。
「人魚は一見怖そうだが実は怖くなく、一番怖いのはそれを利用する人間側だった」というオチが良かったのに、人魚をリアルで怖い存在に仕上げたら全部それが台無しになった感はある。そこは敢えて可愛らしい存在のまま終わらせるべきだった…とは言え、それでもストーリー性の高さは秀逸な部類だと思う。
◯展開★5◯テンポ★4
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★5
◆85点!!!!
時坂さんは僕と地球に厳しすぎる 全4巻 感想| 環境破壊的美少女が未来からやって来た話
『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる』全4巻のネタバレ感想。作者は田中ほさな。ゲッサン(小学館)で連載されてたSFギャグ漫画。
(1巻)
そこで未来から現在の地球環境を破壊しにやって来た少女・時坂。
(1巻)
主人公は、空木(うつぎ)という環境美化一筋の高校生。この二人が出会って、一悶着あるというストーリー。
「一体何がどうなったらゴールなのか」というストーリーの目的が見えてこない。時坂と空木が反目してバトルが始まったりする訳でもなく、時坂の環境破壊の行為も地味な嫌がらせレベルの域も超えないし、正直どこをメインで読めばいいのか戸惑う。
(3巻)
文化祭でメイドカフェをやったり、何の緊張感もない、ただダラダラ描写してるだけの、なんでもない学園漫画。ラストは何故か恋愛チックなオチで、最後までどういうマンガかが見えてこなかった。
(4巻)
作者・田中ほさなは、まあまあ画力が高い。
ただ画力がある作者に限って、ストーリーや設定で奇をてらいがち。内心、展開を作る力がないと理解できてるからこそ、「普通のマンガ」から無意識に逃げてるような印象。実力相応の中身を描こうとして、やっと長期連載に繋がるのかなと。
◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★4.5
◯全巻大人買い★2.5
◯72点!!!!
あらすじ
将来、地球が滅亡する。その原因は、現在の行き過ぎた環境美化の結果。(1巻)
そこで未来から現在の地球環境を破壊しにやって来た少女・時坂。
(1巻)
主人公は、空木(うつぎ)という環境美化一筋の高校生。この二人が出会って、一悶着あるというストーリー。
目的やゴールが見えない
最初は画もキレイで面白いかなーと思ったんですが、一巻目の半ばぐらいでほぼ挫折。「一体何がどうなったらゴールなのか」というストーリーの目的が見えてこない。時坂と空木が反目してバトルが始まったりする訳でもなく、時坂の環境破壊の行為も地味な嫌がらせレベルの域も超えないし、正直どこをメインで読めばいいのか戸惑う。
(3巻)
文化祭でメイドカフェをやったり、何の緊張感もない、ただダラダラ描写してるだけの、なんでもない学園漫画。ラストは何故か恋愛チックなオチで、最後までどういうマンガかが見えてこなかった。
画力が高い作者の特徴
(4巻)
作者・田中ほさなは、まあまあ画力が高い。
ただ画力がある作者に限って、ストーリーや設定で奇をてらいがち。内心、展開を作る力がないと理解できてるからこそ、「普通のマンガ」から無意識に逃げてるような印象。実力相応の中身を描こうとして、やっと長期連載に繋がるのかなと。
総合評価
サンデー系でもすぐ連載が終了するようなレベルなので、漫画の内容は推して知るべしという感じ。言っちゃえば、出オチでアイデア止まり。そこから展開が始まることもなく、特に見所はないマンガ。◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★4.5
◯全巻大人買い★2.5
◯72点!!!!
チャンネルはそのまま! 全6巻 感想| 破天荒オンナのなまら楽しいテレビの作り方
『チャンネルはそのまま!』全6巻のネタバレ感想。作者は佐々木倫子。ビッグコミックスピリッツ(小学館)で不定期連載されてた、コメディー要素が満載の仕事漫画。
そして、とにかく主人公である雪丸花子という新入社員が面白い。天然炸裂で、いちいち行動が破天荒。思わずブハッ。まさにドタバタコメディーの典型的な主人公。漫画の大きな軸とも言えて、なかなか読めちゃう漫画。
(1巻)
例えば☆テレビの入社試験に遅れるんですが、まさかのヒッチハイクで局まで駆け付ける。肝心の試験でも粗相に近いことを散々やらかせる。ただそれなのに何故か採用された雪丸花子。その理由が、☆テレビには代々『バカ枠』というのが存在してる。
(1巻)
小倉というディレクター曰く、「バカは失敗を恐れない!化けてストライカーになることがある!」。
ちなみに、この小倉自身がバリバリのバカ枠で言動が面白い。
(5巻)
こんなマリーアントワネット的なコスプレをしたことも。地味にイライラさせる感じが素敵。
その枠で採用された雪丸花子は、まず一番初めに報道番組のレポーターをさせられる。その初っ端からやらかす。大雨で川が増水。そこへ板に乗ったサルが現れ、助けようとするも…
(1巻)
思いっきり格闘。他にもオオトカゲを捕獲してみたり、お前はイモトアヤコか!
他にもヘリコプターから事故を中継してる最中、高速道路のインターチェンジでトラックが横転。大量の魚を撒き散らす。それを見て雪丸花子は「まるで、ちりめんジャコのようです!」と一言。確かにそれっぽいだろうけど!
同期の山根一には笑顔で、
(5巻)
「連続放火犯の再現ビデオに出て!犯人役で!」
ここに悪気がないのが素敵。
中継局のアンテナが吹雪で凍った時には、
(6巻)
思いっきりタイマツで溶かそうとする。おそらくアンテナは繊細な器具だから、きっとこんなことをしたら壊れるんでしょう。そしたら全世帯に電波が届かなくて、もう番組を制作するどころじゃない。あな恐ろしや。
この一つ一つに全部悪意がないだけに、巻き込まれる周りに同情しか禁じ得ない。しかもハプニング要素も満載で、雪丸花子がいる時にだけ何故かちょうどタイミングよく起きる。例えば大地震が起きると、監視カメラから撮影したようなTV局の内部映像が流れがち。雪丸花子がタイミングよく遭遇。だから、その時の雪丸花子の一連の不可思議な行動が全北海道に放送される。
まず地震になかなか気付かない。そして気付いた時に最初に取った行動が、コーヒーをゆっくり飲み干す。慌ててどこかに移動するも、しばらくして焼き芋を取りに戻る。これが東京のキー局を通して全国に流れちゃうっていう。雪丸花子の天然っぷりが豪快で。でも狙ってる感は少なく、すごく自然で良い。
最終6巻だとお店を取材した時、テレビ局のスタッフたちは「放送日を教えない」らしい。もし撮影した情報がライバル局に流出すると、先んじて同じ放送をされるのを防ぐためだとか。同期の山根一も「誰のために番組を作ってるのか」と悩む。
ただ、それを雪丸花子は「だって是非見て欲しいから」とアホ面丸出しで、アチコチに教えまくる。基本的に社会人としてはアウツなんですが、職業人としては全然アリ。むしろそのルール自体が無機質で冷たく、間違ってんじゃねーかと思わせるバカのパワーが凄まじい。
そういう仕事に立ち向かうシンプルな姿勢・魂が根底にあるので、この「天然さ」が世相を切るような気持ち良さも伴う。最初に「笑い」がありきの天然ではなく、結果的に「笑い」に繋がってる天然。だから良い。それらが雪丸花子というキャラを作り上げてる。
◯展開★4◯テンポ★3.5
◯キャラ★5◯画力★4
◯全巻大人買い★4
◆86点!!!!
あらすじ
あらすじを簡単に説明しておくと、北海道のローカルTV局「北海道☆テレビ」が舞台。そこで地方のTV局の裏側を映し出してる。報道番組からバラエティー番組まで、その津々浦々が抱えてる問題点であったり、一つの番組を作り上げていく過程、ライバル局との火花、などなどの要素がてんこ盛り。そして、とにかく主人公である雪丸花子という新入社員が面白い。天然炸裂で、いちいち行動が破天荒。思わずブハッ。まさにドタバタコメディーの典型的な主人公。漫画の大きな軸とも言えて、なかなか読めちゃう漫画。
雪丸花子という天然女
主人公・雪丸花子は今風の表現で言うと、天然。ただ天然を通り越して、もはや『破天荒』。(1巻)
例えば☆テレビの入社試験に遅れるんですが、まさかのヒッチハイクで局まで駆け付ける。肝心の試験でも粗相に近いことを散々やらかせる。ただそれなのに何故か採用された雪丸花子。その理由が、☆テレビには代々『バカ枠』というのが存在してる。
(1巻)
小倉というディレクター曰く、「バカは失敗を恐れない!化けてストライカーになることがある!」。
ちなみに、この小倉自身がバリバリのバカ枠で言動が面白い。
(5巻)
こんなマリーアントワネット的なコスプレをしたことも。地味にイライラさせる感じが素敵。
その枠で採用された雪丸花子は、まず一番初めに報道番組のレポーターをさせられる。その初っ端からやらかす。大雨で川が増水。そこへ板に乗ったサルが現れ、助けようとするも…
(1巻)
思いっきり格闘。他にもオオトカゲを捕獲してみたり、お前はイモトアヤコか!
他にもヘリコプターから事故を中継してる最中、高速道路のインターチェンジでトラックが横転。大量の魚を撒き散らす。それを見て雪丸花子は「まるで、ちりめんジャコのようです!」と一言。確かにそれっぽいだろうけど!
同期の山根一には笑顔で、
(5巻)
「連続放火犯の再現ビデオに出て!犯人役で!」
ここに悪気がないのが素敵。
中継局のアンテナが吹雪で凍った時には、
(6巻)
思いっきりタイマツで溶かそうとする。おそらくアンテナは繊細な器具だから、きっとこんなことをしたら壊れるんでしょう。そしたら全世帯に電波が届かなくて、もう番組を制作するどころじゃない。あな恐ろしや。
この一つ一つに全部悪意がないだけに、巻き込まれる周りに同情しか禁じ得ない。しかもハプニング要素も満載で、雪丸花子がいる時にだけ何故かちょうどタイミングよく起きる。例えば大地震が起きると、監視カメラから撮影したようなTV局の内部映像が流れがち。雪丸花子がタイミングよく遭遇。だから、その時の雪丸花子の一連の不可思議な行動が全北海道に放送される。
まず地震になかなか気付かない。そして気付いた時に最初に取った行動が、コーヒーをゆっくり飲み干す。慌ててどこかに移動するも、しばらくして焼き芋を取りに戻る。これが東京のキー局を通して全国に流れちゃうっていう。雪丸花子の天然っぷりが豪快で。でも狙ってる感は少なく、すごく自然で良い。
根底にあるTVマン魂!
こういう天然さだけだったら、ただのギャグ漫画っぽく終わりがち。でも、雪丸花子には純粋無垢な「TVマン」としての熱い魂がこもってる。だから、すごい好感が持てる。最終6巻だとお店を取材した時、テレビ局のスタッフたちは「放送日を教えない」らしい。もし撮影した情報がライバル局に流出すると、先んじて同じ放送をされるのを防ぐためだとか。同期の山根一も「誰のために番組を作ってるのか」と悩む。
ただ、それを雪丸花子は「だって是非見て欲しいから」とアホ面丸出しで、アチコチに教えまくる。基本的に社会人としてはアウツなんですが、職業人としては全然アリ。むしろそのルール自体が無機質で冷たく、間違ってんじゃねーかと思わせるバカのパワーが凄まじい。
そういう仕事に立ち向かうシンプルな姿勢・魂が根底にあるので、この「天然さ」が世相を切るような気持ち良さも伴う。最初に「笑い」がありきの天然ではなく、結果的に「笑い」に繋がってる天然。だから良い。それらが雪丸花子というキャラを作り上げてる。
◯展開★4◯テンポ★3.5
◯キャラ★5◯画力★4
◯全巻大人買い★4
◆86点!!!!
葛本さんちの四兄弟 全3巻 ネタバレ感想| キャラを増やしすぎると爆死する好例
『葛本さんちの四兄弟』全3巻のネタバレ感想。作者は木下聡志。ジャンプスクエア(集英社)で連載されてた超能力マンガ。
ただ3巻で終わったことからも分かるように、内容は陳腐以下。まさに「典型的な打ち切り漫画」だと思うので、一体何がダメだったのか理由を考察したいと思います。だから『葛本さんちの四兄弟』のレビューというより、マンガ作成の考察に近いかも。
(1巻)
タイトルから想像付くように、主人公たちは4兄弟。全員超能力者。でも二話目から思い出したかのように、新たに3姉妹が追加される。だったら最初から七兄妹とかにしとけや。まさに、行き当たりばったり。しかもみんな名前が覚えづらくて、とにかく萎える。
じゃあ何故、ついつい新キャラを増やしてしまうかと言えば、作者に『話の展開力』が圧倒的に不足してるから。展開させることができないから、新キャラを登場させてページを埋める。要するに安直な逃げ。他のマンガでも、何でいきなりコイツが登場したの?と分からないことが結構ありますが、まさにそんな状態。
ましてや展開力がないのに、どんどん新キャラクター・設定を追加させたらどうなるか?答えとしては、ストーリーの収拾がつかなくなる。仮に連載が少し長引いたとしても、あとあとの展開でいろいろ帳尻合わせができなくなって、結果マンガの寿命(打ち切り)を早めるだけ。
スランプに陥ったら簡単な逃げ道に流れたくなる気持ちも分かりますが、しっかり展開で苦悩することが実力を高めるはず。そもそも3巻4巻のボリュームで内容に挫折してるような漫画家は、自分の中の引き出しの数が圧倒的に少なすぎる。
四兄弟だから何?ということに率直に尽きる。せめて9兄弟ぐらいだったら、大家族ものとして期待できそうですが、絶妙に中途半端。おそらく周りでも探せば、半径3キロ以内に1世帯ぐらい存在するレベル。そんなんをアピールして何になるの?タイトルだけを見てこれからどんな風に展開していくか、読者の誰一人も見当が付かないはず。
改めて、このマンガの設定を軽く説明しておくと、4人兄妹全員が超能力を使える。だったら、「超能力」というテーマをタイトルに盛り込めよって感じ。マンガの売りになるとしたら、まずそこやん。例えば「葛本4兄弟の超能力的日常」みたいなタイトルだったら、ラノベ風だし世界観も伝わってくる。どんな展開が繰り広げられるマンガかも、良い意味で予想できる。
敢えて参考にするなら、例えば『宇宙兄弟』。おそらく読者の大半は、宇宙飛行士の兄弟の話だと直感できる。他にもラノベ風に新たに作るなら、『葛本兄弟の因縁』もアリかも知れない。仲の悪い兄弟がバチバチ戦っていくマンガか、サスペンス風の展開が繰り広げられるのかもと容易に想像が付く。
だからタイトルを付けてる時点から、作者はビックリするぐらい何も考えてないことが分かる。
(1巻)
例えば主人公が必殺技を繰り出す場面ですが指なっが!
関節が5個ぐらいありそうで、ちょっとした心霊写真。また必殺技を繰り出す右手を左手で掴んで支えてるんですが、掴んでる感じが全然表現できてない。絶妙にヘタクソ。それまでの人生で好きな絵しか描いてこなかったタイプ。もし漫画家を目指すなら、嫌いな絵や苦手な絵でも逃げずに頑張って練習すべきという好例。
(1巻)
例えば忍者の敵が、何故かケータイを使用。この無意味なミスマッチ感。忍者だったら手紙とか使えよ。ケータイをわざわざ使うなら、もはや見た目が忍者である必要がないやん。マサイ族がケータイを華麗に使いこなしてるぐらいに意味不明。
(3巻)
作者がラストのあとがきで自白してますが、まさに見切り発車感がハンパない。「次はもっとちゃんと考えて漫画描く努力をします」というセリフには思わず笑っちゃった。そもそも何故デビューさせたんだ!?レベル?
もしこれからプロマンガ家を目指す人は『反面教師』として読んでみるのもアリ。どうしても面白い漫画だけを参考にしがちでしょうが、それより自分のレベルに近い打ち切り漫画を読んだ方が経験値がアップするかも。一体何をしたらダメなのか、また自分に何が足りないのかが現実感を持って体得できそう。
ただ改めてになりますが、もし漫画家になるのであれば、序盤に用意した数人のキャラクターで2巻3巻分ぐらいを余裕で消化できる『話の展開力』が欲しい。最低限それが備わってないと、いくら新キャラで突貫工事しようがすぐ潰れてしまう気がする。もし付け焼刃的な対応を取らざるを得なくなった場合、その時に自分に足りない「モノ」が何であるかは明白でしょう。
◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★2
◯70点!!!!
ただ3巻で終わったことからも分かるように、内容は陳腐以下。まさに「典型的な打ち切り漫画」だと思うので、一体何がダメだったのか理由を考察したいと思います。だから『葛本さんちの四兄弟』のレビューというより、マンガ作成の考察に近いかも。
新キャラクターを増殖させる理由
とにかく全てにおいて行き当たりばったりな漫画なんですが、その最たる例がキャラクターの増殖。(1巻)
タイトルから想像付くように、主人公たちは4兄弟。全員超能力者。でも二話目から思い出したかのように、新たに3姉妹が追加される。だったら最初から七兄妹とかにしとけや。まさに、行き当たりばったり。しかもみんな名前が覚えづらくて、とにかく萎える。
じゃあ何故、ついつい新キャラを増やしてしまうかと言えば、作者に『話の展開力』が圧倒的に不足してるから。展開させることができないから、新キャラを登場させてページを埋める。要するに安直な逃げ。他のマンガでも、何でいきなりコイツが登場したの?と分からないことが結構ありますが、まさにそんな状態。
ましてや展開力がないのに、どんどん新キャラクター・設定を追加させたらどうなるか?答えとしては、ストーリーの収拾がつかなくなる。仮に連載が少し長引いたとしても、あとあとの展開でいろいろ帳尻合わせができなくなって、結果マンガの寿命(打ち切り)を早めるだけ。
スランプに陥ったら簡単な逃げ道に流れたくなる気持ちも分かりますが、しっかり展開で苦悩することが実力を高めるはず。そもそも3巻4巻のボリュームで内容に挫折してるような漫画家は、自分の中の引き出しの数が圧倒的に少なすぎる。
タイトル=目的・方向性
またタイトルからして、読者を惹きつける要素が乏しい。四兄弟だから何?ということに率直に尽きる。せめて9兄弟ぐらいだったら、大家族ものとして期待できそうですが、絶妙に中途半端。おそらく周りでも探せば、半径3キロ以内に1世帯ぐらい存在するレベル。そんなんをアピールして何になるの?タイトルだけを見てこれからどんな風に展開していくか、読者の誰一人も見当が付かないはず。
改めて、このマンガの設定を軽く説明しておくと、4人兄妹全員が超能力を使える。だったら、「超能力」というテーマをタイトルに盛り込めよって感じ。マンガの売りになるとしたら、まずそこやん。例えば「葛本4兄弟の超能力的日常」みたいなタイトルだったら、ラノベ風だし世界観も伝わってくる。どんな展開が繰り広げられるマンガかも、良い意味で予想できる。
敢えて参考にするなら、例えば『宇宙兄弟』。おそらく読者の大半は、宇宙飛行士の兄弟の話だと直感できる。他にもラノベ風に新たに作るなら、『葛本兄弟の因縁』もアリかも知れない。仲の悪い兄弟がバチバチ戦っていくマンガか、サスペンス風の展開が繰り広げられるのかもと容易に想像が付く。
だからタイトルを付けてる時点から、作者はビックリするぐらい何も考えてないことが分かる。
画力は月並みに見えますが…
マンガのテーマやキャラクターの多さ以外でも、気になったのが画力。一見すると月並みな画力に思えるんですが、描き慣れてない絵では下手くそさを一気に露呈。(1巻)
例えば主人公が必殺技を繰り出す場面ですが指なっが!
関節が5個ぐらいありそうで、ちょっとした心霊写真。また必殺技を繰り出す右手を左手で掴んで支えてるんですが、掴んでる感じが全然表現できてない。絶妙にヘタクソ。それまでの人生で好きな絵しか描いてこなかったタイプ。もし漫画家を目指すなら、嫌いな絵や苦手な絵でも逃げずに頑張って練習すべきという好例。
総合評価
ここまで何も考えてない漫画も珍しい。(1巻)
例えば忍者の敵が、何故かケータイを使用。この無意味なミスマッチ感。忍者だったら手紙とか使えよ。ケータイをわざわざ使うなら、もはや見た目が忍者である必要がないやん。マサイ族がケータイを華麗に使いこなしてるぐらいに意味不明。
(3巻)
作者がラストのあとがきで自白してますが、まさに見切り発車感がハンパない。「次はもっとちゃんと考えて漫画描く努力をします」というセリフには思わず笑っちゃった。そもそも何故デビューさせたんだ!?レベル?
もしこれからプロマンガ家を目指す人は『反面教師』として読んでみるのもアリ。どうしても面白い漫画だけを参考にしがちでしょうが、それより自分のレベルに近い打ち切り漫画を読んだ方が経験値がアップするかも。一体何をしたらダメなのか、また自分に何が足りないのかが現実感を持って体得できそう。
ただ改めてになりますが、もし漫画家になるのであれば、序盤に用意した数人のキャラクターで2巻3巻分ぐらいを余裕で消化できる『話の展開力』が欲しい。最低限それが備わってないと、いくら新キャラで突貫工事しようがすぐ潰れてしまう気がする。もし付け焼刃的な対応を取らざるを得なくなった場合、その時に自分に足りない「モノ」が何であるかは明白でしょう。
◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★2
◯70点!!!!
ゾンビッチはビッチに含まれますか? 全6巻 ネタバレ感想
『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』全6巻のネタバレ感想。作者は柊裕一。月刊ガンガンJOKERに連載されてたゾンビ+セクシー漫画。ハロウィン+元モー娘。の矢口真里さんが芸能界復帰されたということで、昨年2014年11月頃に旧ブログでアップした記事。
ただ走馬灯が初野小春とチョメチョメする妄想だったおかげで、鼓動がドクドク心臓が再起動。その日以来、妄想しまくらないと突然死してしまう体になった。まさに二階堂サキナはゾンビッチ!…的な感じのギャグ漫画。
(1巻)
男子生徒がカバンから財布を探す仕草をしただけで、まさかの立ち◯ック!?
普通に「ええと財布は…」とか男子生徒は言ってますけどね。
ファーストフード店で店員に「お持ち帰りされますか?」と尋ねられた時は、
(1巻)
自分がお持ち帰りされるかも知れないとガクブル。
美容室に行った時も酷くて、美容師がチョキポーズで自信ありげに「任せて下さい」とドヤ顔。
(2巻)
ただ、まさかの加藤鷹的な妄想を全開。いや、場所的にどうやって吹かすの?的な。
(1巻)
ありがちな影絵で妄想してみたり。仮にそこまでデカかったとしても、もはや興奮を通り越してただの恐怖でしかないやん。
(2巻)
学校の視力検査では、Cがdのポッチをクリクリ摘む的な妄想。ここまで来ると呆れるしか無い。まさに二階堂サキナによる妄想の応酬。
下ネタ全開のワンパターンさも手伝って、もう少し休憩できる部分・余裕があっても良かったのかも。
だから氏家ト全の作風が好きだったら、この『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』も肌に合うはず。作者・柊裕一は氏家ト全より画力もあってキャラクターの絵柄も可愛らしいので、むしろそれよりオススメ?
ただ個人的には1巻2巻読めばそれで十分かなーという内容。だから大人買いの★は3.5ぐらいに採点してみた。
◯展開★3.5◯テンポ★3
◯キャラ★3.5◯画力★4
◯大人買い★3.5
◯82点!!!!
あらすじ
主人公は二階堂サキナ。高校1年生。初野小春という男子生徒に片思い中。しかしある日、二階堂サキナはトラックに轢かれて死んでしまう。ただ走馬灯が初野小春とチョメチョメする妄想だったおかげで、鼓動がドクドク心臓が再起動。その日以来、妄想しまくらないと突然死してしまう体になった。まさに二階堂サキナはゾンビッチ!…的な感じのギャグ漫画。
小ネタの連続!!
基本的に、この漫画の狙いはシンプル。主人公の二階堂サキナが、延々と妄想を垂れ流してるってだけ。とにかく二階堂サキナのエロフィルターがえげつない。(1巻)
男子生徒がカバンから財布を探す仕草をしただけで、まさかの立ち◯ック!?
普通に「ええと財布は…」とか男子生徒は言ってますけどね。
ファーストフード店で店員に「お持ち帰りされますか?」と尋ねられた時は、
(1巻)
自分がお持ち帰りされるかも知れないとガクブル。
美容室に行った時も酷くて、美容師がチョキポーズで自信ありげに「任せて下さい」とドヤ顔。
(2巻)
ただ、まさかの加藤鷹的な妄想を全開。いや、場所的にどうやって吹かすの?的な。
(1巻)
ありがちな影絵で妄想してみたり。仮にそこまでデカかったとしても、もはや興奮を通り越してただの恐怖でしかないやん。
(2巻)
学校の視力検査では、Cがdのポッチをクリクリ摘む的な妄想。ここまで来ると呆れるしか無い。まさに二階堂サキナによる妄想の応酬。
読むのが疲れる
ただその反面、ボケの量に圧倒されて読むのが疲れる。フードコートのことを風俗コートと聞き間違えたり、さすがに無理あるやろ的なネタも多い。良くも悪くも、際限なく隙間なくボケ倒してくれてる。下ネタ全開のワンパターンさも手伝って、もう少し休憩できる部分・余裕があっても良かったのかも。
総合評価
系統的には、週刊少年マガジンで連載中の『生徒会役員共』の氏家ト全の作風に近い。終始一貫して下ネタオンリー。だから氏家ト全の作風が好きだったら、この『ゾンビッチはビッチに含まれますか?』も肌に合うはず。作者・柊裕一は氏家ト全より画力もあってキャラクターの絵柄も可愛らしいので、むしろそれよりオススメ?
ただ個人的には1巻2巻読めばそれで十分かなーという内容。だから大人買いの★は3.5ぐらいに採点してみた。
◯展開★3.5◯テンポ★3
◯キャラ★3.5◯画力★4
◯大人買い★3.5
◯82点!!!!
帰宅部活動記録 全5巻 感想| ハイテンション系の日常ギャグ漫画!
『帰宅部活動記録』全5巻のネタバレ感想。作者はくろは。ガンガンオンラインで配信されてた日常ギャグマンガ。
(3巻)
(4巻)
「どんな武器」で読者を笑わせたいかという狙いはハッキリしてる。要するに「セリフ」で笑わせてくる感じで比較的笑えるか。
(1巻)
全体的な笑いのノリやテイストは『てーきゅう』に近い印象。ただカオス度はそれより薄め。
(1巻)
(4巻)
ただ今更ドラゴンボールってのも、やや古臭さや無難さを感じなくもない
とりあえずDBネタやってりゃ鉄板だろ、的な安直さは感じる。
また一話8ページしかないからか、話の流れに唐突感を感じなくもない。センスはそれなりに感じるので、もう少しページ数が多ければ…といった感じか。とにかく8ページというボリュームを使いこなせてはない。
(2巻)
カバーの作者あとがきを読むと少し分かりますが、ちょっと凝り過ぎ。それが漫画でも全体的に言えてボケにボケを重ねてくる感じがややウザい。もう少しシンプルさがあると良い。
セリフで笑わせる傾向が強いが、全体的なセリフの質は高くない。ちょっと量が多いので、ページ数の少なさも手伝って「詰め込み」を感じる。だから読んでる内にやや疲れてくる。次回作頑張ってくださいって感じか。
◯展開★3.5◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★3
◯78点!!!!
ややツッコミ多し
『帰宅部活動記録』というギャグ漫画に特徴があるとしたらツッコミが多い。(3巻)
(4巻)
「どんな武器」で読者を笑わせたいかという狙いはハッキリしてる。要するに「セリフ」で笑わせてくる感じで比較的笑えるか。
(1巻)
全体的な笑いのノリやテイストは『てーきゅう』に近い印象。ただカオス度はそれより薄め。
ややパロディー多し
あとはパロディーネタがやや多い。(1巻)
(4巻)
ただ今更ドラゴンボールってのも、やや古臭さや無難さを感じなくもない
とりあえずDBネタやってりゃ鉄板だろ、的な安直さは感じる。
オチとキャラが弱し
ただギャグ漫画として評価すると、キャラクターが弱い。5巻分読んだが、キャラの顔と名前を一切覚えてない。キャラさえ良かったら、それだけで購入できるのがギャグ漫画だったりするので、案外致命的かも。また一話8ページしかないからか、話の流れに唐突感を感じなくもない。センスはそれなりに感じるので、もう少しページ数が多ければ…といった感じか。とにかく8ページというボリュームを使いこなせてはない。
(2巻)
カバーの作者あとがきを読むと少し分かりますが、ちょっと凝り過ぎ。それが漫画でも全体的に言えてボケにボケを重ねてくる感じがややウザい。もう少しシンプルさがあると良い。
総合評価
ナンセンス系か王道系か、やや不明のギャグ漫画。比較的笑える箇所もあるが、「お金を出す」決定打に欠けるのが事実。セリフで笑わせる傾向が強いが、全体的なセリフの質は高くない。ちょっと量が多いので、ページ数の少なさも手伝って「詰め込み」を感じる。だから読んでる内にやや疲れてくる。次回作頑張ってくださいって感じか。
◯展開★3.5◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★3
◯78点!!!!
厨二くんを誰か止めて! 全2巻 感想| サンカクヘッドが中二病を描いたらこうなった!
『厨二くんを誰か止めて!』全2巻のネタバレ感想。月刊ドラゴンエイジで連載されてたマンガ。作者はサンカクヘッド。現在ヤングジャンプで『うまるちゃん』を連載中。
(1巻)
自己紹介からして痛々しく、いきなり包帯グルグルで登場。よしんば「シリウス」という名前はカッコいいから認めたとしても、前半の「真羅・螺旋剣」ってなんやねん。どっちかといえば必殺技の類い。「気円斬・クリリン」的なノリ。
(1巻)
でも身体はめっぽう弱いのか、その包帯でまさかの酸欠。むしろ包帯ってそこそこ通気性いいぞ。どんだけ体弱いねん。
(1巻)
しかもその包帯を巻いてた理由が「俺のパワーを抑えるため」。だったらなおさら包帯というチョイスにツッコミを入れたくなる。
(2巻)
他にも、コーヒーのブラックを飲んだだけで大人気分。むしろ中二病というより、もっと幼い小二病っぽい感じもしますが。
(2巻)
最終的には大雨の中を踊り狂う。どっこいしょという掛け声も意味不明。もはや中二病とか関係ない。
じゃあ周囲の学校の友達はどういう風に厨二(ちゅうじ)を見てるかと言えば、
(1巻)
残酷すぎるほど冷たい。いや、これぞ生温かく見守ってるというやつか。
また男子高校生という設定が微妙。性別的にも年齢的にも可愛げがない。うまるちゃんみたいに女子高生だったらアリなんでしょうが、単に痛いキャラクターだけで終わってる感じ。そっから先の『何か』が足りない。「痛いから何なの?厨二は一体どうしたいの?」という疑問に落ち着く。そもそも中二病を扱ってるんだから、中学生でいいやん。
もし小学生という年齢設定だったら、ちゃんと微笑ましく写ったかも。
ただ2巻というボリュームを考えると集めても損はしないかも。『うまるちゃん』ファンだったら気が向けば。
◯展開★3◯テンポ★3
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2.5
◯75点!!!!
あらすじ
主人公は本間厨二。高校一年生。厨二と書いて「ちゅうじ」と読む。その名前の通り、中二病丸出しの行動しか取らない。ただあまりにそれが度を越してる。(1巻)
自己紹介からして痛々しく、いきなり包帯グルグルで登場。よしんば「シリウス」という名前はカッコいいから認めたとしても、前半の「真羅・螺旋剣」ってなんやねん。どっちかといえば必殺技の類い。「気円斬・クリリン」的なノリ。
(1巻)
でも身体はめっぽう弱いのか、その包帯でまさかの酸欠。むしろ包帯ってそこそこ通気性いいぞ。どんだけ体弱いねん。
(1巻)
しかもその包帯を巻いてた理由が「俺のパワーを抑えるため」。だったらなおさら包帯というチョイスにツッコミを入れたくなる。
(2巻)
他にも、コーヒーのブラックを飲んだだけで大人気分。むしろ中二病というより、もっと幼い小二病っぽい感じもしますが。
(2巻)
最終的には大雨の中を踊り狂う。どっこいしょという掛け声も意味不明。もはや中二病とか関係ない。
じゃあ周囲の学校の友達はどういう風に厨二(ちゅうじ)を見てるかと言えば、
(1巻)
残酷すぎるほど冷たい。いや、これぞ生温かく見守ってるというやつか。
キャラクターを狙いすぎ
ちょっとあからさまに笑いを狙いすぎてて、却って主人公の「厨二」に個性がなくなってる。中二病エピソードをただ羅列してるだけのように見えて、厨二ならでは個人的エピソードが少ない。だから思ったほど魅力的な主人公には仕上がってない印象。また男子高校生という設定が微妙。性別的にも年齢的にも可愛げがない。うまるちゃんみたいに女子高生だったらアリなんでしょうが、単に痛いキャラクターだけで終わってる感じ。そっから先の『何か』が足りない。「痛いから何なの?厨二は一体どうしたいの?」という疑問に落ち着く。そもそも中二病を扱ってるんだから、中学生でいいやん。
もし小学生という年齢設定だったら、ちゃんと微笑ましく写ったかも。
総合評価
作者はサンカクヘッドということですが、うまるちゃんレベルを期待すると失敗するかな。主人公のキャラは悪くないんですが、どこか没個性的でパッとしない。「巷に溢れてる中二病エピソードをそのままマンガで使いました」という域を出てない。他人のギャグをそのままパクってる芸人、みたいな感じか。ただ2巻というボリュームを考えると集めても損はしないかも。『うまるちゃん』ファンだったら気が向けば。
◯展開★3◯テンポ★3
◯キャラ★4◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2.5
◯75点!!!!
シバのヨル 全2巻 感想| サイコサスペンス?ただのDT青春漫画です
『シバのヨル』全2巻のネタバレ感想。作者は松枝尚嗣。漫画サンデー(小学館)で連載されてたマンガ。ジャンル的にはサイコサスペンス。ただ、あんま面白くないっす。
(1巻)
ただ裏の顔は、イケナイ薬を使って悪人を成敗するヒーロー気取りの男。ギースベルト・リザーバーという器具を悪人の脳ミソにぶち込んで思考を操作する。
(1巻)
ギースベルトを頭に突っ込まれた悪人は、こんな感じに脳みそがアロホレリー!
読んでてもそこまで主人公にされなきゃいけないか?って気持ちの方が強い。所詮は『怨み屋本舗』レベル。ただあそこまで下劣にも描けてない。だから主人公に対して、共感や好感を持つことはほぼ不可能。
テンションが意味不明
あと全体的に紫葉のテンションやノリがよく分からない。一見シリアスな展開が続くのかと思いきや、たまに緊張感を台無しにする描写が描かれる。
例えば、主人公・紫葉は実は女の子と付き合ったことのないDT。
(2巻)
主人公の年齢は20代30代にも関わらず、女子の部屋に初めて入ったという設定。しかもその程度でルンルン気分。お茶目っぷりも発揮。悪人を成敗するというアンチヒーローにも関わらず、欲望剥き出し。
ある時、主人公・紫葉は同僚の多摩という女に惚れた。
(2巻)
ただ色んな事があって、多摩は昔かなりお股が軽かった過去を教えられてブチギレ。ショックだったのは分かるが、そんな殴りかかるほど怒る?みたいな。いまいち怒るタイミングが分からない。
(1巻)
他にもワイワイ騒いでる同僚を見て、「いつかコイツらにも薬をぶち込んでやろう(ニヤリ)」。え?そんな仕打ちをされなきゃいけないことをした?みたいな。紫葉の善悪の基準が全く意味不明。中二病がそのまま大人になっただけで、実に幼稚。
そもそも、こういった描写が必要だったのか甚だ疑問。紫葉の多面的な部分を見せたかったのかも知れませんが、おそらくサスペンス漫画で主人公の内面や弱みは一番描いちゃいけない気がする。恋愛マンガだったらいざ知らず、主人公の奥手っぷりを描くことで何の意味をもたらしたかったのか。
「サイコサスペンスの主人公がピュアボーイってどうなん?」という一言に尽きる。組み合わせとして最悪。正露丸とショートケーキを一緒に食べてる気分。絶妙に不快。
画力が中途半端にプロレベルなだけに、中身の陳腐さだけが際立つ。主人公が悪人を成敗する動機や目的に共感できる部分が少なく、ただ「悪趣味」なだけ。スッキリした読後感とは程遠い。『駄作』ってこういう漫画のことを言うんだろうなと。
◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2
◯69点!!!!
あらすじ
主人公は紫葉拓未(しば・たくみ)。警視庁の健康維持管理を担当する部署の臨床心理士。(1巻)
ただ裏の顔は、イケナイ薬を使って悪人を成敗するヒーロー気取りの男。ギースベルト・リザーバーという器具を悪人の脳ミソにぶち込んで思考を操作する。
(1巻)
ギースベルトを頭に突っ込まれた悪人は、こんな感じに脳みそがアロホレリー!
罪と罰のバランス
ストーリーとしては主人公が悪人を退治するという体なんですが、全体的に罪と罰のバランスが合ってない。前述の画像の悪徳弁護士も、無罪判決を出したのは結局裁判官。制裁すべき悪意の対象がズレてる。浪費癖の激しいオンナに対しても、罪と罰のバランスが合ってない。読んでてもそこまで主人公にされなきゃいけないか?って気持ちの方が強い。所詮は『怨み屋本舗』レベル。ただあそこまで下劣にも描けてない。だから主人公に対して、共感や好感を持つことはほぼ不可能。
テンションが意味不明
あと全体的に紫葉のテンションやノリがよく分からない。一見シリアスな展開が続くのかと思いきや、たまに緊張感を台無しにする描写が描かれる。例えば、主人公・紫葉は実は女の子と付き合ったことのないDT。
(2巻)
主人公の年齢は20代30代にも関わらず、女子の部屋に初めて入ったという設定。しかもその程度でルンルン気分。お茶目っぷりも発揮。悪人を成敗するというアンチヒーローにも関わらず、欲望剥き出し。
ある時、主人公・紫葉は同僚の多摩という女に惚れた。
(2巻)
ただ色んな事があって、多摩は昔かなりお股が軽かった過去を教えられてブチギレ。ショックだったのは分かるが、そんな殴りかかるほど怒る?みたいな。いまいち怒るタイミングが分からない。
(1巻)
他にもワイワイ騒いでる同僚を見て、「いつかコイツらにも薬をぶち込んでやろう(ニヤリ)」。え?そんな仕打ちをされなきゃいけないことをした?みたいな。紫葉の善悪の基準が全く意味不明。中二病がそのまま大人になっただけで、実に幼稚。
そもそも、こういった描写が必要だったのか甚だ疑問。紫葉の多面的な部分を見せたかったのかも知れませんが、おそらくサスペンス漫画で主人公の内面や弱みは一番描いちゃいけない気がする。恋愛マンガだったらいざ知らず、主人公の奥手っぷりを描くことで何の意味をもたらしたかったのか。
総合評価
結局、どういう漫画だったかは最後まで分からなかった。テーマや目的が見えてこず、展開も付け焼刃的。ストーリーが情緒不安定もいいとこ。「サイコサスペンスの主人公がピュアボーイってどうなん?」という一言に尽きる。組み合わせとして最悪。正露丸とショートケーキを一緒に食べてる気分。絶妙に不快。
画力が中途半端にプロレベルなだけに、中身の陳腐さだけが際立つ。主人公が悪人を成敗する動機や目的に共感できる部分が少なく、ただ「悪趣味」なだけ。スッキリした読後感とは程遠い。『駄作』ってこういう漫画のことを言うんだろうなと。
◯展開★2◯テンポ★3
◯キャラ★3◯画力★3.5
◯全巻大人買い★2
◯69点!!!!
ラストニュース (漫画) 全7巻 感想| 猪瀬直樹×弘兼憲史がタッグを組んだ本格報道漫画
『ラストニュース』全7巻のネタバレ感想。原作は猪瀬直樹、作画は弘兼憲史。1990年代前半にビッグコミックオリジナル(小学館)で連載されていた報道漫画。何年か前に猪瀬直樹がこの作品のパクってると、どこかのテレビドラマの脚本家を批判してました。
でも、ラストニュースのスタッフはその映像を使用。更にこき下ろす番組を作ろうとした。でもそんな部下に対して、主人公の日野が叱責。
「マスコミは問題提起する義務はあっても、人を裁く権利はない」。
最近実名・顔写真報道をした朝日新聞が訴えられて、残念ながら被告は負けてしまいましたが、誤認逮捕に対しても日野は言及。
「その容疑者を顔写真入りで報道したマスコミは全く責任がないと言えますか?」
個人的にコレはつくづく思う。まだ事実が明らかになってない段階で、新聞やテレビは何の権限があって実名や顔写真を報道するのか。
ただ書類送検の場合は実名報道をしない。でもこの書類送検は、警察官が犯罪を犯したとされる場合に多い。そのことに繋がる批判も展開されてる。
それがマスコミは「警察発表を鵜呑み」してるところ。「速報性」という美名の下、朝日新聞だけに限らず読売・毎日も含めて、特に事件報道については丹念な取材もなく報道されてるのが現実。未だに自省が一切見られないのは残念。
最終7巻ではマスコミが政府の情報を垂れ流すことについても批判。例えば福島原発事故では、そのまま政府民主党の情報を垂れ流してだけだった記憶。最近だと自民党の特定秘密保護法について、ほとんど批判的な報道をテレビで見かけることはなかった。
特にNHK。これまでは「強行採決」という表現を普通に使ってたのに、今回の自民党の強行採決では「成立」という表現を使ってた。NHKは放送法の影響下にあって、「不偏不党」という表現が権力側によって恣意的に用いられがち。そのことについて、猪瀬直樹はこんな見解を作中で述べている。
「不偏不党とは、権力者の意見に左右されないこと」
権力者とは、基本的には議席を持ってる『与党側』。安部総理が百田尚樹あたりを経営委員に任命したことも影響してるのか、正直NHKの報道はポンコツそのもの。いや、民放テレビ局でも同じか。
もちろん、そういう左側の側面からのアプローチだけではなく、例えば4巻だと「声高にハンタイハンタイと叫ぶのはただの正義の商品化」みたいなことも書かれてる。
そして衛星放送を利用したケーブルテレビ局でニュース専門チャンネルを作る。要するに猪瀬直樹的には公共の電波を利用した、TV局以外のニュース番組やニュースコンテンツが隆盛を誇るだろうという予想(願望も含む)を立ててた。一応最近はTV局もケーブルテレビを利用した報道番組を作ってるようですが、結果的にはハズレ。
やはり、この漫画が連載されてた時期を考えると、1990年代初め頃にはインターネットという存在がなかった。厳密にはパソコン通信はあったんですが、10年ちょっとでここまでネット環境が整うとは猪瀬直樹も含めて誰も予想してなかったはず。
だから予想が外れたとしても、そこらへんは許容範囲内かなと思う。掲載時期がもう数年だけズレていたら、また違ったオチになってた気もする。
だから作品的には20年以上前だから相当古い。でも、内容的には現在のマスコミに通じる批判も多くて、また弘兼憲史の絵柄も相まってそこまで「古臭さ」は感じさせない。正直あまり共作したマンガは面白くないんですが、これは二人が見事にシンクロして良い相乗効果を生んでるマンガ。
じゃあこの漫画の根底に何があるかと言えば、「言論の自由とは何か?」という猪瀬直樹なりの疑問。1巻のあとがきで猪瀬直樹が語ってるので軽く紹介。
「メディアは公権力の検閲・監督されるものではない」
「先進国では安易にメディアを規制して解決する方策は取らない」
などなどすごく共感できる内容。画像を貼ろうと思ったんですが、ムダに縦長のサムネイルになったので止めました。作品では終始こういったテーマ性が眠ってて、読んでていろいろと考えさせられるものはたしかにある。
『権力は蜜の味』と言いますが、副知事となり都知事となり政治家として権力を得たことが、猪瀬直樹という一人の人間をここまで変えてしまうのか。改めて権力の恐ろしさとともに、権力を抑えこむチカラや勢力の必要性も痛感させられる。
自ら表現の自由や言論の自由の大切さを謳っておきながら、自らが率先的にそれを蹂躙する。また新聞やテレビ局など大手マスコミを痛烈に批判しておきながら、その新聞の王道とも呼べる『朝日新聞』にすっぱ抜かれて寝首をかかれる始末。
猪瀬直樹の政治家としての経歴や一連の顛末が、この作品のクオリティーを全て台無しにしてしまってる。もはやそれは「無様」以外のなにものでもない。皮肉を込めるなら、そういった茶番劇もこの漫画があってこそ喜劇として更に面白くなったと言える。
◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★4
◆85点!!!!
あらすじ
主人公は、CBSというTV局の報道番組「ラストニュース」のプロデューサーを務める日野。それが自戒を含めて、「報道の責務とは何か?」みたいなことを掘り下げて、既存の新聞やTV局を痛烈に批判してる内容。個人的には的を射た正論ばかり書かれてると思う。既存マスコミに対する批判
例えば1巻だと、ラストニュースのスタッフが疑惑の人物に対して、カメラを向けてしつこく取材を行う。未だに報道番組や情報番組で見られる手法ですが、当然その人物は激昂。カメラを蹴ろうとする。でも、ラストニュースのスタッフはその映像を使用。更にこき下ろす番組を作ろうとした。でもそんな部下に対して、主人公の日野が叱責。
「マスコミは問題提起する義務はあっても、人を裁く権利はない」。
最近実名・顔写真報道をした朝日新聞が訴えられて、残念ながら被告は負けてしまいましたが、誤認逮捕に対しても日野は言及。
「その容疑者を顔写真入りで報道したマスコミは全く責任がないと言えますか?」
個人的にコレはつくづく思う。まだ事実が明らかになってない段階で、新聞やテレビは何の権限があって実名や顔写真を報道するのか。
ただ書類送検の場合は実名報道をしない。でもこの書類送検は、警察官が犯罪を犯したとされる場合に多い。そのことに繋がる批判も展開されてる。
それがマスコミは「警察発表を鵜呑み」してるところ。「速報性」という美名の下、朝日新聞だけに限らず読売・毎日も含めて、特に事件報道については丹念な取材もなく報道されてるのが現実。未だに自省が一切見られないのは残念。
最終7巻ではマスコミが政府の情報を垂れ流すことについても批判。例えば福島原発事故では、そのまま政府民主党の情報を垂れ流してだけだった記憶。最近だと自民党の特定秘密保護法について、ほとんど批判的な報道をテレビで見かけることはなかった。
特にNHK。これまでは「強行採決」という表現を普通に使ってたのに、今回の自民党の強行採決では「成立」という表現を使ってた。NHKは放送法の影響下にあって、「不偏不党」という表現が権力側によって恣意的に用いられがち。そのことについて、猪瀬直樹はこんな見解を作中で述べている。
「不偏不党とは、権力者の意見に左右されないこと」
権力者とは、基本的には議席を持ってる『与党側』。安部総理が百田尚樹あたりを経営委員に任命したことも影響してるのか、正直NHKの報道はポンコツそのもの。いや、民放テレビ局でも同じか。
もちろん、そういう左側の側面からのアプローチだけではなく、例えば4巻だと「声高にハンタイハンタイと叫ぶのはただの正義の商品化」みたいなことも書かれてる。
予想はハズレ
ストーリーとしては最終的に日野がCBSを追われる。そして衛星放送を利用したケーブルテレビ局でニュース専門チャンネルを作る。要するに猪瀬直樹的には公共の電波を利用した、TV局以外のニュース番組やニュースコンテンツが隆盛を誇るだろうという予想(願望も含む)を立ててた。一応最近はTV局もケーブルテレビを利用した報道番組を作ってるようですが、結果的にはハズレ。
やはり、この漫画が連載されてた時期を考えると、1990年代初め頃にはインターネットという存在がなかった。厳密にはパソコン通信はあったんですが、10年ちょっとでここまでネット環境が整うとは猪瀬直樹も含めて誰も予想してなかったはず。
だから予想が外れたとしても、そこらへんは許容範囲内かなと思う。掲載時期がもう数年だけズレていたら、また違ったオチになってた気もする。
言論の自由とは何か?
猪瀬直樹と言えば、なにかとお騒がせだった元都知事。5000万円をカバンに詰め込むのを失敗するコントには爆笑しました。でも本来の職業は物書きだった。1990年台はまさに物書きとしてバリバリ働いていた時期。その猪瀬から弘兼憲史に対して熱烈なラブコールを送ったことで実現したのが、この『ラストニュース』という漫画。だから作品的には20年以上前だから相当古い。でも、内容的には現在のマスコミに通じる批判も多くて、また弘兼憲史の絵柄も相まってそこまで「古臭さ」は感じさせない。正直あまり共作したマンガは面白くないんですが、これは二人が見事にシンクロして良い相乗効果を生んでるマンガ。
じゃあこの漫画の根底に何があるかと言えば、「言論の自由とは何か?」という猪瀬直樹なりの疑問。1巻のあとがきで猪瀬直樹が語ってるので軽く紹介。
「メディアは公権力の検閲・監督されるものではない」
「先進国では安易にメディアを規制して解決する方策は取らない」
などなどすごく共感できる内容。画像を貼ろうと思ったんですが、ムダに縦長のサムネイルになったので止めました。作品では終始こういったテーマ性が眠ってて、読んでていろいろと考えさせられるものはたしかにある。
総合評価
でも、だからこそ猪瀬直樹は副都知事時代に『青少年非実在ナンチャラ条例』を作ったんだという疑問は強く覚える。そのあとがきが書かれたのは、たった10年ちょっと前。『権力は蜜の味』と言いますが、副知事となり都知事となり政治家として権力を得たことが、猪瀬直樹という一人の人間をここまで変えてしまうのか。改めて権力の恐ろしさとともに、権力を抑えこむチカラや勢力の必要性も痛感させられる。
自ら表現の自由や言論の自由の大切さを謳っておきながら、自らが率先的にそれを蹂躙する。また新聞やテレビ局など大手マスコミを痛烈に批判しておきながら、その新聞の王道とも呼べる『朝日新聞』にすっぱ抜かれて寝首をかかれる始末。
猪瀬直樹の政治家としての経歴や一連の顛末が、この作品のクオリティーを全て台無しにしてしまってる。もはやそれは「無様」以外のなにものでもない。皮肉を込めるなら、そういった茶番劇もこの漫画があってこそ喜劇として更に面白くなったと言える。
◯展開★4◯テンポ★4
◯キャラ★3◯画力★3
◯全巻大人買い★4
◆85点!!!!